過量服薬-本当は怖いoverdose- 危険な薬剤/対処法

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山本 康之

山本 康之

健和会大手町病院

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日常診療で出会う過量服薬(OD:Over Dose)。単なるヤク中として対応すると危険な場合があります。8枚目から危険な薬のまとめ、12枚目からに対処法まとめ、血液浄化、拮抗薬について解説あります!

過量服薬-本当は怖いoverdose- 危険な薬剤/対処法

1. 本当はこわいover dose ~そのまま放っておくと大変なことになりますよ~ 健和会大手町病院 救急科 山本 康之
2. 本日の内容 導入 Over dose概要 危険なクスリ 対処法 最後に
3. とある日常 研修医A:昨日さぁ、当直してたらさ、P(精神科患者)がODで来たんよ、くそ眠たい2時とかにさ 大変だったなぁ、それで。何飲んできたの?:研修医B 研修医A:えっと、なんだったっけなぁ。えーっっと、「カロナール®」と「ハルシオン®」と「デパス®」と「リーマス®」と・・・・なんか色々。興味ねぇから覚えてねーわ。あっ、なんか「トメル・・・・なんとか」とかいう聞いたことのない名前のやつも飲んでたっけ。 お、おいっ・・・、お前・・・。それやべぇぞ。で、どうしたんだ?まさかそのままなんもせず、「はいはいODね。経過観察」とか言って返したんじゃないよな・・・・(汗):研修医B 研修医A:えっ、えええっ。どういうことだよ・・・俺なんかやばいことした?えっ、・・・・・ ・・・・・(゜o゜;
4. とある日常 ばっかもーーーん!! 指導医A
5. とある日常 おそらくよくある光景ではないでしょうか? 救急外来にも慣れ、重症は少しは診療できるかなと思っている年代 俺も(私も)少しは重症見れるし、後輩もできたしかっこいい姿見せたいなとか思っている時期 しかも眠たい時間にP(精神科患者)でしかもODかよ・・・・と一件軽症扱いされてしまうOD 本当にその対応で大丈夫ですか? 放って置くと、大変なことになりますよ・・・・。
6. Over dose 概論 どうしても、単なる「ヤク中」で話が済まされることが多い 大半は単なるヤク中で話が済む しかし単なるヤク中で話がすまないときに大事になってしまう
7. 危ないクスリ それではどのようなクスリが大丈夫でどのようなクスリが危ないのでしょうか 処方薬は危険?市販薬(OTC)なら大丈夫? 漢方とか安全そう、やっぱ精神科系のクスリってヤバそうだよね? 本当にそうですか?
8. 危ないクスリ 頻度は当院比です。重症度判定に関しては参考資料を参考にしています。 ある程度一般論踏まえて書いていますが、地域差が大きいのも特徴です。
9. 危ない薬 レアだが重要なものとして「どう考えてもこれ飲み過ぎたらやばいよなとわかる薬」 経口血糖降下薬・降圧剤など機序が明確でODするとどうなるか結末が予想し易い薬
10. とある日常 それではさきほどのとある日常の会話に戻りましょう 研修医A:昨日さぁ、当直してたらさ、PがODで来たんよ、くそ眠たい2時とかにさ 大変だったなぁ、それで。何飲んできたの?:研修医B 研修医A:えっと、なんだったっけなぁ。えーっっと、「カロナール®」と「ハルシオン®」と「デパス®」と「リーマス®」と・・・・なんか色々。興味ねぇから覚えてねーわ。あっ、なんか「トメル・・・・なんとか」とかいう聞いたことのない名前のやつも飲んでたっけ。 お、おいっ・・・、お前・・・。それやべぇぞ。で、どうしたんだ?まさかそのままなんもせず、 「はいはいODね。経過観察」とか言って返したんじゃないよな・・・・(汗):研修医B 研修医A:えっ、えええっ。どういうことだよ・・・俺なんかやばいことした?えっ、・・・・・ 研修医Aくん何がわるかったでしょうか?
11. とある日常 そうですね、この中にかなり危険な薬剤が3つ カロナール®(アセトアミノフェン)とリーマス®(炭酸リチウム製剤)ですね。 あと一つはさっきの会話でわかればすごいと思いますが、トメルなんとかとは正式名「トメルミン®」、市販薬で売られてるカフェイン製剤です。これで眠気をトメルミン・・・ということでつけられたとか。 他にはエスタロンモカ®などがカフェイン製剤では有名ですが。 カフェイン製剤はもともとあまり過量内服はなかったようですが、自殺サイト等で取り上げられて頻度が高くなってきています 具体的に何mgを何錠 いつ飲んだかによって大きく話が変わってきます
12. 対処法 まずはABCDの安定化+合併症予防 別の言い方をするとAB&3Cs Airway Breathing Circulation CNS (Dysfunction of CNS) Complications(合併症) ①Aspiration Pneumonitis(誤嚥性肺炎) ②Abnormal Body Temperature (異常体温) ③atraumatic crush syndrome/compartment syndrome(非外傷性クラッシュ症候群およびコンパートメント症候群) 救急でいつもおなじみのABCD
13. 対処法 ABCDが安定していることが前提で、対症療法に加えて吸収阻害および排泄促進。 対処療法 活性炭(消化管除染):吸収阻害+排泄促進 血液浄化:排泄促進 (拮抗薬・解毒剤:排泄促進) (胃洗浄:吸収阻害) となります。ただし、4に関しては基本的に拮抗薬がある薬自体がまれなので、大きくわけて上3つになります。 今では適応できる時間・嘔吐のリスク等でかなり頻度が低くなった胃洗浄というのも一応あります・・・。
14. 対処法:活性炭 われらが味方 活性炭 大体の中毒には聞いてくれる便利者 基本的には服薬1時間以内が目安(吸収の阻害) しかし、上記時間を超えたとしても繰り返し反復投与することで排泄促進にもなる(腸管透析) 合併症はあまりないことが多い 禁忌としては誤嚥・イレウスを伴う患者など
15. 対処法:活性炭 活性炭がむしろ効かないもの A fickle:きまぐれ A:alcohols(アルコール類) alkalis(アルカリ類) F:fluorides(フッ化物) Ic: Iron(鉄) Iodide(ヨウ化物) Inorganic acids(無機酸類) K:Kalium(カリウム) L:Lithium(リチウム) E:ethylene glycol(エチレングリコール) 金属類 アルコール類 酸塩基が絡むものは 基本厳しい
16. 対処法:血液浄化 ある意味最終手段:血液浄化 血液灌流法(吸着法)・血液透析法がある 緊急透析ができない場合は転院も考慮 血液透析法のよい適応 分布容積(体重あたりの体内の薬物総量を薬物血中濃度でわったもの)が小さいもの すなわち分母:血中濃度が大→血液中にいっぱいあるから浄化して取れる 分子量が小さく、蛋白結合率が低いものが効果的 分子量が小さい=透析膜をとおることができる 蛋白結合率が低い=くっついていない分血中に多い→いっぱい取れる 血液潅流法(吸着法)は特に分子量・蛋白結合率の影響は受けないため効率がいい
17. 対処法:血液浄化のよい適応 ・CAT-MEAL(猫の餌) C: carbamazepine(カルバマゼピン) caffeine(カフェイン) A:Anti convulsants:抗けいれん薬→フェノバルビタール フェニトイン カルバマゼピンなど T:theophyline(テオフィリン)→実はカフェインの代謝産物の1つ M:methanol(メタノール) E:ethylene glycol(エチレングリコール) A:aspirin(アスピリン/サリチル酸塩) L:lithium(リチウム)
18. 対処法:拮抗薬(解毒剤)
19. 最後に なんでそこまで薬を飲んだのかそれが一番重要になってきます 希死念慮があって本気で死のうとおもったのか 単なる興味本位だったのか パラ自殺なのか(境界型パーソナリティ障害のように相手の興味を引きつけるためか) 本人も気づかないうちになっていたのか(添加物がたまたま中毒物質だったなど) もし希死念慮があって本気で死のうと思っているのなら SAD PERSONS scoreなどをつけるなり、精神科に併診依頼をかけるなりしないと、助けたのに変わり果てた姿で帰ってくることがありますよ・・・・。
20. 参考文献 具体的な致死量・対処法等を知りたい方へ 臨床中毒学(医学書院 2009年 上条 吉人氏ら) 薬毒物情報インデックス(日本医事新報社 2014年11月鈴木 修氏ら)