中毒まとめ〜症状、臓器障害別原因物質とトキシドローム

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山本 康之

山本 康之

健和会大手町病院

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日常の救急外来で中毒に出会うシチュエーションのスライド。どんな時中毒を疑うか、循環器系、意識障害、肝障害、腎障害、横紋筋融解、偶発性低体温を起こす中毒物質を紹介。最後にトキシドローム toxidromeについても学べます。

中毒まとめ〜症状、臓器障害別原因物質とトキシドローム

1. こんな時、中毒 超実践的! 中毒診断のアプローチ 健和会大手町病院 救急科 山本 康之
2. 本日の流れ 導入 こんなとき、中毒!? Toxidromeについて
3. とある日常 研修医A:いやぁ、T先生の教育回診半端なかったよなぁ。俺もこれで身体診察完璧っ。少し自信ついたから、患者こねぇーかなぁー。 研修医B:お前、また調子乗ってるとこの間みたく怒られるぞ。 研修医A:大丈夫だって、あれからちゃんとODは気をつけて診てるから。 ♪プルルルル~~プルルルルル~ 「お疲れ様です、救急隊ですけど、患者さんの搬入依頼です。28歳男性、主訴腹痛と嘔吐です。夜中に突然の腹痛と嘔吐のようです。特に下痢等消化器症状はその他ありません。 バイタルサイン報告します。 意識レベル0ですが、悪心が強いようでかなりきつそうにしています。発汗著明で血圧は180/100mmHg 脈拍は110回 呼吸数は24回 体温36.8度になります。到着まで5分ですが受け入れお願いします。」 研修医A:よし、俺の出番。ちゃんと腹部のフィジカルのとり方習ったし、俺診るわ 研修医B:気をつけろよ、なんか嫌な予感がする・・・・。
4. とある日常 研修医A:はい、お願いします。今から診察しますね。 患者C:先生、腹いてぇよ。おえっ、はきそう。まじきつい・・・。 研修医A:きついですね。看護師さん、鎮痛剤と制吐剤お願いします。よし、腹部診察・・・っと。あれっ、腸蠕動少し鈍いか・・・、きこえないかも。おーい、B、聞いてくれない?俺聞こえない気がするんだ。 研修医B:どれどれ・・・。うん、たしかに腸蠕動音鈍い気がする。 研修医A:よかった、だよな?ってことは・・・イレウスとかかな。腹壁固くないし、筋性防御もない、反跳痛もない・・・。腹部膨満もない。うーんお腹っぽくないかも。血圧高かったし、頭蓋内出血の否定のために身体所・・・・あぁ、もういいめんどくさい。とりあえず採血して、頭部・腹部単純レントゲンとあとCTも、でエコーも当てる。脈も早かったし、心電図も取っちまおう。 研修医B:おいおい・・・、わからんでもないけど・・・。にしてもなんかおかしいね。 患者C:うっ、きついよ・・・。おえっ、か、かふぇ・・おえっ。 研修医A:看護師さん、鎮痛剤と制吐剤いってくれました? 看護師D:言われた直後にいきましたけど、全然改善ないですよ・・・・。
5. とある日常 頭部CT、腹部CT終了 研修医A:あれっ、頭も出血ないし、腹部も全然イレウスっぽくないし、軽度便が溜まっているくらい。エコー上もはっきりしたものないし、心電図はsinus tachycardiaか・・・。採血はCPKが3000台・・・。うーん。 Lac 5.3mmolとpH:7.1 HCO3 11mEq/Lの代謝性アシドーシスで、Kは2.1mEq/L・・・。あれっ?某国試予備校のM先生が「アシドーシスは高K,アルカローシスは低K、アシドーシスなのに低Kはおかしいの」って言ってたよな、なんかおかしいよな・・・。普通じゃない気がする。 患者C:おえっ、かふぇ、カフェ・・・。おえぇぇ、腹痛い・・・・。 研修医B:かふぇ?なんか患者さん言いたげだぞ。 研修医A:なんか、心当たりますか? 患者C:か、カフェイン飲みすぎました。
6. なんか 変だな、おかしいなと思ったとき、 もしかしたらそれは 中毒かも 指導医A
7. こんなとき、中毒!・・・かも CPA 重症不整脈(房室ブロック、QT延長など) 血圧低下 意識障害 肝障害 腎障害 横紋筋融解症 偶発性低体温
8. 循環器に影響を与えるもの
9. 意識障害をきたす物質
10. 肝障害を起こす物質
11. 腎障害をきたす物質
12. 横紋筋融解症~CASH~
13. 偶発性低体温
14. Toxidromeについて Toxic Syndrome 略して Toxidrome 日本語では中毒症候学と言われる バイタルサインの特徴などからおおよその薬剤を推定する考え方
15. 代表的なtoxidrome ※ ↑:増加 ↓:減少 ±:どちらもあり -:ほとんど変化なし
16. それぞれのtoxirdome 抗コリン性 アトロピン スコポラミン 抗ヒスタミン剤など。バイタルサインでは頻拍 体温上昇 瞳孔散大がメイン。皮膚は乾燥して、紅潮している コリン作動性SLUGE 有機リン・カーバメイト系農薬・ウブレチドなど。アセチルコリンエステラーゼの不活化が原因 Salivation(流延) Lacrimation(流涙) Urination(尿失禁) Diarrhea(下痢) Gastrointestinal upset(胃腸症状) Emesis(悪心)の頭文字を取ってSLUDGEと呼ばれる。拮抗薬はアトロピン・PAMなど。 交感神経興奮性 コカイン・アンフェタミン・カフェインなど。 中枢神経興奮作用によりFight or Flightの身体状態になる 発汗を伴うのが抗コリン性との鑑別に重要 鎮静剤・睡眠薬/エタノール 抑制作用がメイン オピオイド 抑制がメイン。呼吸抑制が強く出ることが多い。拮抗薬はナロキソン セロトニン症候群 SSRIおよびSSRIとの薬剤の相互作用で発症することが多い。ミオクローヌス出現が鑑別に有用
17. とある日常 研修医A:そっか、カフェインなら中枢神経興奮性だから頻拍発作も発汗も説明がつく。加えて、消化管の運動が低下するから確かに腹が痛いわけだ。 患者C:おえっ、かふぇ、カフェ・・・。おえぇぇ、腹痛い・・・・。 研修医B:で、治療どうするんだ・・・。 研修医A:と、とりえず急いで上級医に報告しよう。あっ、その前に検体提出しよう。今できること・・・・。そういえば、前回活性炭と血液浄化って話が出たな。とりあえず、活性炭はいけるだろう、活性炭が効かないってやつには入ってなかったし、血液浄化は適応なのかな・・・。それは上級医に相談しよう。
18. 参考文献 臨床中毒学 中毒症の全て~いざというときに役立つ、的確な治療のために~ ERマガジン2014年 Vol11 toxidrome 薬毒物を疑ったときのアプローチ こんな時 フィジカル! 超診断的 身体診察のアプローチ