#4.
症例提⽰ 【年齢・性別】72歳 男性 【主訴】呼吸が苦しい 【現病歴】2⽇前より呼吸困難を⽣じ改善しないため救急外来を受診した. 【既往歴】胃癌, 発作性⼼房細動, 慢性⼼不全, 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 【バイタルサイン】意識清明, ⼼拍数101回/分・洞調律, ⾎圧112/54mmHg, 呼吸数28回/分, SpO2 94%(室内気) 体温37.3度 【⾝体所⾒】頸静脈怒張を認めない, 胸部聴診ではⅢ⾳を聴取するが呼吸⾳に異常を認めない, 腹部は平坦・軟で圧痛なし, 左下腿に浮腫を認める あなたはいくつかの鑑別疾患が頭に浮かびました. 鑑別のために, 検査を いくつかオーダーし結果待ちの間にPOCUSをおこなうことにしました... では⼀緒にBLUE protocolを勉強していきましょう︕ いちばん最後にBLUE protocolをベースにした実践的なフローチャートを掲載しているのでご安⼼を
#5.
プローブの種類 Convex/Curvilinear Phased array Linear ※BLUE protocolの初出時1はMicroconvexプローブを⽤いていましたが, 現在の救急外来でこの3つが⼀般的に利⽤可能です 参考⽂献: [1] Lichtenstein DA. Chest. 2008;134(1):117-125.
#6.
どこにプローブを当てる? • プローブを当てる場所はBLUE BLUE point PLAPS point ×は横隔膜 h a n d と い う 考 え ⽅ で 決 定 1( 患 者 の ⼿のサイズであることに注意) • 上の⼿の⼩指を鎖⾻に当てる→下に 他⽅の⼿を並べる(親指除く)→それ ぞれの⼿の中⼼=BLUE point1 ü ü • Upper BLUE point Lower BLUE point Lower BLUE pointから後腋窩線 ⽅向にできるだけ後⽅に⽔平移動 =PLAPS point1 画像: Lichtenstein DA, Mezière GA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110.より引⽤ (Licensed under CC BY 2.0) Upper BLUE point≒鎖⾻中線の第2肋間2 Lower BLUE point≒鎖⾻外側の第5-6肋間2 参考⽂献: [1]Lichtenstein DA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110. [2] Hendin A. Chest. 2020;158(5):2082-2089.
#7.
BLUE protocolの基本所⾒はこの4つ 1.Lung sliding 2.A line 3.B line 4.PLAPS 参考⽂献: Hendin A. Chest. 2020;158(5):2082-2089.
#8.
1.Lung sliding or ✔Upper BLUE point Bat sign • 呼吸に伴い胸膜が動き, 胸膜が滑って⾒える所⾒1 • 基本view:画⾯の中⼼に肋間を描出=Bat signを描出1 ü 肋⾻がコウモリの⽻のように⾒える(左図) 気胸は否定的1 slid L u ng ing • Lung slidingあり: • Lung slidingなし︓気胸, 無気肺, 重度の肺炎, 胸膜癒着など1 • 補助的所⾒❶Seashore sign1 :Mモードで肺の動きを検出. Lung slidingあり 検査画像:筆者提供 (健康な若⼿医師の肺) の場合, 海岸(seashore)のような結果になる(次ページ参照) • 補助的所⾒❷Lung pulse1 :⼼臓の周波数で胸膜が動く. 気胸では認められない 参考⽂献: [1] Hendin A. Chest. 2020;158(5):2082-2089.
#9.
1.Lung sliding ✔Upper BLUE point or 気胸の肺のエコー画像 正常肺のエコー画像 画像: Lichtenstein DA, Mezière GA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110. より改変引⽤ (Licensed under CC BY 2.0) Seashore=海岸 画像: Lichtenstein DA, Mezière GA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110. より改変引⽤ (Licensed under CC BY 2.0) (左画像)Bモード (左画像)Bモード ※実際はLung sliding消失 • 縦⽩⽮印: Bat sign (左画像)Mモード • 横⽩⽮印(上):胸膜は⾼エコーに⾒える • Lung slidingの消失を反映してBarcode • 横⽩⽮印(下):A line(次ページ参照) sign(Stratosphere sign)を認める (右画像)Mモード • Lung slidingの存在を反映してSeashore signを認める ※横⿊⽮印: 胸膜 参考⽂献: Lichtenstein DA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110.
#10.
2.A line • or ✔ BLUE points A lineは⾼エコーで⽔平な線で, 繰り返し出現する 正常所⾒ • 空気によるアーチファクト 空気は超⾳波を通さないため正常な肺そのものは描出できない • つまりA lineが存在するということは, 空気が存在 するということ 正常所⾒だが, 気胸でも認められる(Lung slidingで鑑別!) 画像: Ketelaars R. Crit Ultrasound J. 2018;10(1):17. より改変引⽤(Licensed under CC BY 4.0) 肺の含気が悪くなるような病態ではA lineが⾒えづらくなります 肺⽔腫が代表的で, 代わりにB lineが⾒えてきます(次ページ参照) ⼀⽅, 肺塞栓や気管⽀喘息ではA lineは観察できるということですね 参考⽂献: Hendin A. Chest. 2020;158(5):2082-2089.
#11.
3.B line • or ✔ BLUE points 含気のある肺胞と, 液体を含む組織が隣接 これらがB line︕(左が重症) すると超⾳波を散乱させB lineを作り出す • 間質性病変をきたす病態で認める =Sonographic interstitial syndrome • 1肋間に2本以上のB line=Lung rocket と呼びInterstitial syndromeを⽰唆 • 画像: Lichtenstein DA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110. より改変引⽤ (Licensed under CC BY 2.0) 原因は⼼原性・⾮⼼原性肺⽔腫, 間質性肺炎 など (必ずしも⼼不全ではない) • B lineが多いほど重症であることを⽰唆 • B lineの存在は気胸の可能性を低下させる 参考⽂献: Hendin A. Chest. 2020;158(5):2082-2089.
#12.
4.PLAPS or ✔ PLAPS point • PLAPS=Posterolateral alveolar or pleural syndromes • 横隔膜, 肝臓/脾臓, 横隔膜直上の肺を⾒る • カーテンサイン:肺の拡張に伴い呼吸のたびに横隔膜と腹腔内が不明瞭になる ü 胸⽔:横隔膜上の低エコー領域 ü Consolidation:肺組織がつぶれて含気不良となり⾼エコーな不規則な組織になる 肺炎のほか無気肺, 腫瘍 肺出⾎でも認められる ü もちろんPLAPS以外に認めうる Hepatization:⾼度なConsolidationでは肝臓のような固形臓器のように⾒える 胸⽔ Consolidation Consolidation 画像: Lichtenstein DA. Crit Ultrasound J. 2011;3(2):109-110. より改変引⽤(Licensed under CC BY 2.0) 参考⽂献: Hendin A. Chest. 2020;158(5):2082-2089.
#13.
さらに勉強していきましょう ここまででKeyとなる所⾒は, 勉強できました! 本protocol に出てくる所⾒をもう少し勉強 していきましょう! さらに, そのほかにも救急で呼 吸困難患者に役⽴つエコー所⾒ を紹介します! ⽬標は“Beyond BLUE!”です! 画像: Lichtenstein DA. Ann Intensive Care. 2014;4(1):1.より改変引⽤ (Licensed under CC BY 2.0)
#14.
DVT検索&Lung point DVT検索 Lung point flog reg • 総⼤腿静脈と膝窩静脈の⾎栓を検索 (2-point strategy)1 • 下肢はflog reg ⾎栓 1 • ⾎栓は⾼エコーに描出される1 • ⾎栓検出の参考所⾒:静脈の圧迫に反応 しない, ドプラーでの⾎流が⽋損する • 簡易法なので⼀定の⾒逃しがある2 • 左:Bモード, 右:Mモード • Lung slidingが存在する部分と消失している 部分の境界線 • 気胸の存在を⽰唆する 画像: Lichtenstein DA. 2011;3(2):109-110.より改変引⽤(Licensed under CC BY 2.0) 画像:Varrias D. J Clin Med Res. 2021;10(17). より改変引⽤ (Licensed under CC BY 4.0) 参考⽂献: [1]Varrias D. J Clin Med Res. 2021;10(17). [2]Adhikari S. Ann Emerg Med. 2015;66(3):262-266.
#15.
Beyond BLUE! 肺⽔腫の成因 • Sonographic interstitial syndromeの⼀般的な原因は⼼原性肺⽔腫 • ⼼原性肺⽔腫(⼼不全)の確度を上げ, その成因を検討することも⼤切 • ⼼不全の原因は複数あり鑑別は⼤切! 頻度は1.虚⾎ 2.⾼⾎圧 3.弁膜症1 • BLUE protocolで⼼不全を疑ったらFoCUS (Focused cardiac u l t r a s o u n d ) 2に チ ャ レ ン ジ し て み よ う ! • 今回はFoCUSのエッセンスを紹介 参考⽂献: [1]国⽴循環器病研究センター.⼼不全と虚⾎性⼼疾患の疫学. https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211209_05.htmll (2023-2-14) [2]Via G. J Am Soc Echocardiogr. 2014;27(7):683.e1-e683.e33.
#16.
Beyond BLUE! FoCUSのターゲット 6-targets 傍胸⾻左縁⻑軸・短軸像 (PLAX/PSAX) ① 左室のサイズと収縮能 ② 右室の収縮能 ③ 体液ボリューム ④ ⼼嚢液, タンポナーデ ⼼尖部四腔像 (SLAX) ⑤ 慢性⼼不全の明らかな徴候 A ⑥ 弁膜症の明らかな徴候, ⼤きな⼼臓腫瘍 C LV failure RV failure HypoChronic Gross valve Tamponade volemia disease disease B ⼼窩部 四腔像 (A4CH) 下⼤静脈 ⻑軸断⾯ 参考⽂献:WINFOCUS, WINFOCUS’ FOCUSED CARDIAC ULTRASOUND (WBE), 2016.
#17.
Beyond BLUE! ⼼臓のサイズ RULE OF THUMB: no more than..(cm) 0.5 1 2.5 3 右室径 (PLAX) 右室壁の 厚さ 左室壁の厚さ 4.5 5 通常はRV/LV size<0.6 2:3 右房径 (A4CH) 右室径 (A4CH) 左室径 (PLAX) RV Strain 参考⽂献:WINFOCUS, WINFOCUS’ FOCUSED CARDIAC ULTRASOUND (WBE), 2016.
#18.
Beyond BLUE! ⼼室の収縮能 TA P S E 基準値: >17mm MAPSE • 左室収縮⼒ 1. Ejection fraction(EF) 基準値: >10mm 2. Fractional shortening(FS) 3. MAPSE (Mitral annular plane systolic excursion =僧帽弁輪収縮期移動距離) 収縮期に弁輪が ⻑軸⽅向へどれくらい 動いたか?を計測する • 右室収縮⼒ 1 . TA P S E ( Tr i c u s p i d a n n u l a r plane systolic excursion =三尖弁輪収縮期移動距離) 参考⽂献:WINFOCUS, WINFOCUS’ FOCUSED CARDIAC ULTRASOUND (WBE), 2016.
#19.
Beyond BLUE! 古典的な循環⾎液量減少の3徴 1. SMALL LV (end diastole<φ3.5mm) 2. SMALL RV 3. SMALL IVC (end expiration<φ10mm) 参考⽂献:WINFOCUS, WINFOCUS’ FOCUSED CARDIAC ULTRASOUND (WBE), 2016.
#20.
ここまでのまとめ 救急外来での呼吸不全の鑑別に 役⽴つBLUE protocolをおこなう ために必要な知識を勉強しました. 更に⼼臓領域の知識を深める上級編 としてFoCUSに簡単に触れました. 難しいですよね..でも⼤丈夫! エコー単独で臨床判断をするのでは なく, ⾝体所⾒やほかの検査所⾒と 組み合わせて使うのが◎です!! 画像: Lichtenstein DA. Ann Intensive Care. 2014;4(1):1.より改変引⽤ (Licensed under CC BY 2.0)
#21.
本症例への対応 【年齢・性別】72歳 男性 【主訴】呼吸が苦しい 【現病歴】2⽇前より呼吸困難を⽣じ改善しないため救急外来を受診した. 【既往歴】胃癌, 発作性⼼房細動, 慢性⼼不全, 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 【バイタルサイン】意識清明, ⼼拍数101回/分・洞調律, ⾎圧112/54mmHg, 呼吸数28回/分, SpO2 94%(室内気) 体温37.3度 【⾝体所⾒】頸静脈怒張を認めない, 胸部聴診ではⅢ⾳を聴取するが呼吸⾳に異常を認めない, 腹部は平坦・軟で圧痛なし, 左下腿に浮腫を認める あなたはいくつかの鑑別疾患が頭に浮かびました. 鑑別のために, 検査を いくつかオーダーし結果待ちの間にPOCUSをおこなうことにしました...
#22.
POCUSの結果 D-Shape! 1. Lung sliding -あり 2. Upper lung point -A lineあり, B lineなし 3. PLAPS point -特記すべき異常なし 胸⽔の貯留なし 4. 2-point strategyによる下肢静脈エコー -左⼤腿静脈に⾎栓あり 5. FoCUS -⼼尖部四腔像で右室径の拡⼤(3.5cm)とIVCの拡張(22mm)あり このパターンは..肺⾎栓塞栓症の可能性が⾼そう..!! 採⾎結果を待たずに, すぐに下肢を含めた造影CTを撮影する必要があるな.. ベッドサイドで診断に迫れた👏CTの検査範囲に関する意思決定に役⽴った👏 画像: :Varrias D. J Clin Med Res. 2021;10(17). およびKetelaars R. Crit Ultrasound J. 2018;10(1):17.より改変引⽤(Licensed under CC BY 4.0) Riley DC. Crit Ultrasound J. 2011;3(3):155-160.より改変引⽤(Licensed under CC BY 2.0)
#23.
Take Home Message 呼吸困難を訴えて救急外来を受診した患者に BLUE protocolを活⽤して鑑別しよう! まずはLung sliding, Aline, B line, PLAPS習得を! 次はDVTとLung point!さらに学びたい⼈はFoCUSを! POCUSは, ほかの所⾒と組み合わせて使い, 意思決定の円滑化, 質の向上に役⽴てよう 最後に今⽇のまとめのフローチャートをチェック!!!
#24.
Lung Sliding BLUE point あり A-line(+) B-line(+) Sonographic interstitial syndrome 肺⽔腫, 肺線維症, 間質性肺炎etc B-line(+) Consolidation(+) DVT検索 限局性 LUNG point LUNG point(+) 気胸 PLAPS point 肺塞栓症 PLAPS(+) 肺炎 LUNG point(-) ??? DVT(-) DVT(+) A-line(+) 肺炎 肺炎 2-point strategy ✔FoCUS ✔RV Strain なし PLAPS(-) 喘息/COPDなど BLUE protocol & Beyond BLUE! 画像出典はスライド各ページを参照ください(Creative Commons Licenseのもとで改変引⽤しています)