#4.
初療 移乗・体位変換は愛護的に実施
電気毛布で加温開始(救急隊により既に脱衣済)
末梢静脈路確保・採血後に,加温乳酸リンゲル液の投与開始
→後に生理食塩水へ変更
BP, HR・心電図波形, 呼吸・SpO2, 意識レベルに加えて,直腸温も
モニタリング継続
直腸温が上昇し,バイタル等著変ないことを確認後に画像検査へ
移動開始
#5.
(注):フォーレ挿入を試みたが断念
COVID-19緊急PCRは陰性
#6.
12誘導心電図 HR 101
RR間隔不整
QTc:0.505〜0.550
#7.
頭部CT:異常なし
胸部・骨盤・左手X線:
骨折等の異常なし
#8.
Q2. 本人やキーパーソンから聞いておきたい 追加情報は?
#9.
ADL:要支援度2。入浴・食事・排泄は自立, 杖歩行がやっとで自宅から
殆ど出ない。独居。
最終健常確認時間, ‘event’
本人曰く「朝に屋外に出たと思うが,どうやって転んだか記憶にない」
非同居の長女が毎日午後に当日の夕食と翌日の昼食を作りに行っている。
朝は◯時台に起床するが身支度するのがやっとで,朝食を摂らない
前日夕の時点で食事は全量摂取しており,直近で食欲低下のエピソードなし
生活歴: 喫煙歴:現在はなし, 飲酒:週2回, 少量
キーパーソン(とそのプロファイル)
長女(妹):県内在住, 自営業
長男(兄):県外在住, 医療従事者 追加情報
#10.
初期のアセスメントと方針 #1 低体温症
復温し,入院後に直腸温は35 ℃へ
「頭部打撲→意識消失」が原因と考えたが…
「他の要因の可能性もある」と長女に説明
#2 脳震盪, 顔面挫創
挫創は洗浄・縫合
破傷風トキソイド筋注, テタノブリンIH IV
翌朝に頭部CTフォローの方針
#3 肝機能障害, #4 高CK血症, #5 トロポニンT陽性, #6 高K血症
#11.
電気毛布off 胃液を多量に嘔吐→その後,繰り返す
一過性にsBP 80台へ
随時血糖 63 mg/dL ←50%Glu 40mL IV 第2病日の朝の採血 ※他に
肝機能障害
高CK血症
低血糖
CRP増加
プロカルシトニン増加
あり Q3. 懸念すべき病態/疾患は?
Q4. まず行うべき治療は? 頭部CT異常なし 入院後経過
#12.
診断と治療 #1 敗血症性ショック
#1-1 尿路感染症:尿Gram染色で陰性桿菌多数
フォーレ挿入
抗菌薬開始
ノルアドレナリン持続点滴開始
#1-2 DIC
トロンボモジュリン製剤開始
AT3低下を確認後,アンチトロンビン製剤
も開始
#2 低K血症, 低リン血症
まず低Kへの補正を開始
#3 高CK血症, #4 肝機能障害
#13.
生食 Glu入り晶質液 高カロリー 5%Glu
+アミノ酸 PIPC/TAZ Mg リン酸Na Cre 0.7 Cre 0.95 Cre 2.11 Cre 1.59 血小板数 高Na血症
低リン悪化 輸液 抗菌薬 電解質
補正 KCl
#14.
その後の経過 第5病日
NSTチーム介入とリハビリ開始(入院が週末・連休に被ったため)
消化器科紹介
第6病日
NGTを挿入して経管栄養開始(初期にはドンペリドン,
ファモチジン内服を併用)
血培結果(速報)判明:2セットともGNR
→その後,Morganella morganiiと判明。尿培養でも検出。
その後,全身状態は改善傾向。
#15.
【解説】低体温症について
#16.
定義と症候 定義:「中心部体温が35 ℃ ≧ に低下した場合」
症候:参考文献の表を改変し引用 『救急診療指針 第5版』(日本救急医学会)より
#17.
低体温症の治療 復温の目標:中心部体温35 ℃, 循環の安定
復温方法の例:電気毛布, 『アークティックサンTM』, 加温輸液,
『サーモガードシステム』 etc.
心停止の場合:30 ℃に復温するまでは
除細動とアドレナリン投与は1回だけ
通常のCPR継続
呼吸・気道管理
体液・循環管理
40~42 ℃に加温した細胞外液を投与
ECMO(熱交換器付)を使用する場合も 『救急診療指針 第5版』より
#18.
低体温症の疫学 日本国内で実施された前向き・他施設参加型観察研究‘Hypothermia study
2018 and 2019’より (解析対象被験者数:1,194名)
年齢中央値:79歳, 65歳<の患者の割合:81%
低体温症の原因:急性内科疾患が最多(49.3%)
e.g.) 感染症, 脳血管疾患, 低血糖, 消化器疾患, 低栄養, 心不全 etc.
30日間死亡率:24.5% (292名/1,194名)
ICU滞在期間中央値:4日, 入院期間中央値:13日
死亡予測因子:75歳≦, 男性, ADL全介助, GCS低値, K>5.5 mEq/L Takauji S et al. Accidental hypothermia: characteristics, outcomes
and prognostic factors - A nationwide observational study in Japan
(Hypothermia study 2018 and 2019) Acute Med Surg 2021; 8:e694
#19.
低体温症の患者年齢の分布図
Takauji S et al. Acute Med Surg 2021; 8:e694より引用 濃い灰色:屋内発症
薄い灰色:屋外発症
#20.
Take Home Message 低体温症とは,中心部体温≦35 ℃の致死的になり得る病態である。
低体温症の初療の基本は「循環の安定」と「中心部体温:35 ℃」。
心停止の場合,中心部体温30 ℃になるまでは除細動とアドレナリンは1回だけ。
低体温症の背景に何らかの基礎疾患が存在する可能性を認識すべし。
∴集中治療(e.g., 電解質補正, 循環管理, 栄養, リハビリ etc.)には多職種の連携
が欠かせない。
高齢者に多く,死亡率は約25%; ∴社会的・心理的サポート(e.g., ACP, 退院後
の介護サービス etc.)も重要である。多職種連携はここでも重要。
#21.
最後に:チーム医療の発展に必要なこと 各々がBLS, ACLS, JPTEC等のコースを学んで,実践に努めること
各々が各種最新ガイドラインを熟読し,実践に努めること
ネット上で閲覧可能なガイドラインの例
日本版敗血症診療ガイドライン
ARDS診療ガイドライン
PADISガイドライン
日本版重症患者の栄養療法ガイドライン
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
診療の現場で,多職種ディスカッションをやる機会を増やすこと