#4.
化学療法前のスクリーニング ➢ 化学療法の前の検査も一般的なスクリーニングに加えて必要なものを追加 一般的なスクリーニング 問診 (既往歴、家族歴、生活歴など含む) 画像検査 (レントゲン・CT・PET・MRIなど) 血液検査 血算 生化学(肝・腎・電解質) 代謝(脂質・血糖・HbA1c) ➢ 追加が必要な項目は 治療内容 に加えて、患者要因の 年齢・臓器障害・ 既往歴・背景疾患 などをもとに考える
#5.
年齢:高齢者の評価 ➢ 高齢になるほど 身体機能 や 認知機能、合併症の有無 は ばらつきが大きく、 暦年齢(Chronologic age)だけでは決められない 65歳以上の患者には 高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment: CGA) を行うことが推奨されている ✓ 評価ツールは乱立しているが、重要なのはどの項目を評価するかを知ること ✓ 身体機能に関して最初はECOG performance status(PS)、Karnofsky PS(KPS)、 手段的日常生活動作(IADL)などで十分な印象(他の医師や職種と共有するためにも便利) ✓ 疾患特有のツールがあれば使ってもよい
#6.
CGA項目の一例 評価項目 身体機能 合併症 社会的環境 認知機能 感情の状態 常用薬 栄養状態 高齢者特有の問題 評価内容 Performance status(PS)、ADL、IADL、起床までにかかる時間 合併症の数、それぞれの重症度 居住環境、介護者の有無と関わりの強さ MMSEなど 老年期うつ病評価尺度 薬の数、薬の必要度、相互作用の有無 簡易栄養状態評価表 認知症、せん妄、抑うつ、転倒、虐待、骨折 The Oncologist 2008; 13:390より引用
#7.
化学療法の副作用ごとの対応 ➢ 抗癌剤によっては特定の臓器に対する 臓器障害 を起こすことがあるため、 追加でスクリーニングが必要 例 心機能障害 ドキソルビシン、イダルビシン(アントラサイクリン系)、トラスツズマブ → 心エコー 肺障害 ブレオマイシン → 呼吸機能検査 ➢ 検査が必要なくても症状や既往歴から必要であれば追加する
#8.
抗癌剤による臓器障害 ➢ 抗癌剤によっては 腎障害 や 肝障害 がある場合は 減量が必要 薬剤 シスプラチン 腎機能 投与量 Ccr 46〜60 mL/分 75%に減量 Ccr 30〜45 mL/分 50%に減量 Ccr メトトレキサート イマチニブ 〜30 mL/分 Ccr 15〜60 mL/分 Ccr 〜15 mL/分 禁忌 50%に減量 禁忌 Ccr 40〜59 mL/分 1日1回最大600mg Ccr 20〜39 mL/分 50%に減量(400mgまで増量可) Ccr 〜20 mL/分 1日1回100mg がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2022より引用 ✓ 腎機能は「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン」が日本語でよくまとまっているが、肝障害はあまり良いものがない ✓ 英語では「UpToDate」に薬剤ごとのページがあり腎障害・肝障害時の減量基準がまとまっている
#9.
免疫チェックポイント阻害薬 ➢ 免疫チェックポイント阻害薬 を使用する場合は 免疫関連有害事象(irAE)が 起こる可能性があるため事前にスクリーニングが必要 評価項目 評価内容 評価項目 間質性肺炎 KL-6、SP-D、BNP、胸部CT、呼吸機能検査 神経障害 重症筋無力症 CK 腎障害 大腸炎 CRP 副腎障害・下垂体異常 I型糖尿病 肝炎 甲状腺機能障害 血糖、HbA1c、尿検査 HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体 自己抗体 血栓塞栓症 評価内容 尿中β-MG、尿中NAG 血中コルチゾール 抗核抗体 フィブリノゲン、PT、APTT TSH、FT3、FT4、抗Tg抗体、抗TPO抗体 院内で項目やフォロー方法が決まっている場合が多い
#10.
既往歴・背景疾患への対応 ➢ 既往歴 や 背景疾患 が原因となる副作用にも注意が必要 例 糖尿病 → ステロイド投与に伴う糖尿病の悪化に注意 間質性肺炎 → EGFR阻害薬投与に対する注意 腹部手術歴 → 便秘の原因となる抗癌剤(ビンクリスチン)や麻薬の投与に注意 ➢ HBVの再活性化 など、血液検査でしかわからない 背景疾患もある
#11.
HBVの再活性化 ➢ B型肝炎(HBV)の既感染者 において 免疫抑制状態 になることでHBVが増殖 肝炎を一部で発症し、劇症化した場合は死亡率が高い 予防が最重要 ➢ 化学療法施行前に、HBs抗原・ HBs抗体・HBc抗体を測定する HBs抗原 HBs抗体 HBc抗体 + 投与量 キャリア ー + + 既感染 ー ー + 既感染 ー + ー ワクチン接種歴がなければ既感染 キャリア・既感染の場合は「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」に従って治療・モニタリング開始
#12.
免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン スクリーニング(全例)HBs抗原 HBs抗原 (+) HBs抗原 (−) HBs抗体、HBc抗体 HBc抗体 (+) または HBs抗体 (+) HBe抗原、HBe抗体、 HBV DNA 定量 拡散アナログ投与 HBV DNA 定量 20 IU/mL以上 (1.3 logIU/mL 以上) 20 IU/mL 未満 (1.3 logIU/mL 未満) HBV DNA 定量、AST、ALT:3ヶ月ごとフォロー HBc抗体 (−) 、HBs抗体 (−)
#13.
Take Home Message ➢ がん治療患者さんや悪性腫瘍の状態に合わせたスクリーニングが大切 ➢ 高齢者では総合的な評価がより重要 ➢ 使用する抗癌剤の副作用に応じた事前の検査を心がける ➢ 既往歴や背景疾患へのケアを忘れずに ➢ HBV再活性化など意識しなければ拾えない合併症を確実に対応する