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継承開業1年目のイロハと自己紹介
#1. 継承開業1年⽬のイロハ 〜開業準備編 前編〜 くるとん@消化器内科 twitter︓@Dr_Claude_Japan
#2. はじめに • 本スライドは私が実家のクリニックを継承開業するまでの記録 • 今後継承開業や新規開業を考える先⽣⽅にとって少しでも参考にな ればと思い,作成した • 親の多⼤なる⼿助けがあったため,通常の新規開業と⽐べて資⾦⾯ や⼿続きなどかなり恵まれた⾯もあったと思うが悪しからず
#3. ⾃⼰紹介 • 2023年3⽉現在,開業1年以内の新⽶開業医 • 医師1○年⽬で専⾨は消化器内科,内視鏡,肝臓内科 • 他県の⼤学を卒業し,⼤学卒業と同時に地元に戻り初期研修開始 • 初期研修終了後に⼤学医局に⼊り,医局⼈事で計5箇所の病院に勤務 • 実家近くの基幹病院で部⻑職を経験し,継承開業
継承開業までの大まかな流れ〜幼少期から入局前まで〜
#4. ⽬次 1. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜幼少期〜 2. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜⻘年期〜 3. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜⼊局前〜 4. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜⼊局後〜 5. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜⼟地購⼊〜 6. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜トラブル編〜 5. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜コンサルト編〜 6. 継承開業までの⼤まかな流れ 〜間取り編〜 7. 継承開業Q and A
#5. 継承開業までの⼤まかな流れ〜幼少期〜 • クリニックの敷地内に実家があるという特殊な環境であり,幼少期 から病院,そして医師という仕事が⾝近なものだった • 県庁所在地ではあったが,郊外に位置しており良い意味で⽥舎の病 院であり,⽗親は今でいう総合診療科的な診療を⾏なっていた • 夜間・休⽇関係なく患者さんが診察を希望されることもあったが, 感謝される様⼦を⾒て憧れもあり漠然と医者になることを決⼼した ⽗への尊敬・憧れで 医師を志しました
#6. 継承開業までの⼤まかな流れ〜⻘年期〜 • ⽗親の勧めもあり,中学から親元を離れて寮⽣活をすることを決意 • 第⼀希望(⽗親の⺟校)は不合格も,第⼆希望の中⾼⼀貫校に無事合格 • ⽂系(弁護⼠など)に⼼動かされた時期もあったが,最終的には 幼少期からの夢である医学部進学を決め,地⽅の国⽴医⼤に進学 • ⼊学後モチベーションを失っていたが,5年時の病院実習を機に気 持ちを⼊れ替え,国家試験に無事合格 実習で患者さんと接し, ⼈を助けたいという 初⼼を思い出しました!
#7. 継承開業までの⼤まかな流れ〜⼊局前〜 • ⼤学卒業後地元に戻り,基幹病院で初期研修を⾏った • ⽗親は元消化器外科医だったが,⾃分は⼿先が器⽤な⽅ではなく⼊局 先として外科という選択肢は外した • ⼀番臓器の多い科であり,当直などで腹部の症状を訴える患者が多い こと,⽗の専⾨としていた分野と同じ消化器ということで消化器内科 に⼊局した • 内視鏡⽬的に⼊局する若⼿は多いが,当初は内視鏡はあまり興味なし
継承開業までの大まかな流れ〜入局後と土地購入〜
#8. 継承開業までの⼤まかな流れ〜⼊局後〜 • 都市部の医局は消化器内科の中でも臓器別に分かれていることが多 いが,地⽅の医局であり消化器内科⼀般の診療/治療を経験出来た • 実家のクリニック近くにある複数の基幹病院全てに勤務することが でき,各病院の特性や雰囲気を知ることができた • ⾃分の医局だけでなく,他科の先⽣⽅とも積極的に交流を深め(飲み 会に⾏ったりなど),交友関係を広げた
#9. 継承開業までの⼤まかな流れ〜⼊局後〜 • 消化器専⾨医,内視鏡専⾨医,肝臓専⾨医と消化器内科のメイン所の 専⾨医資格は全て取得した • 臨床研究の論⽂が学位論⽂となり,医学博⼠を取得した • 3次救急病院の部⻑/内視鏡の責任者を拝命される ⇨⼊局後周りから⾒れば順調な道のりと⾔われたが, 消化器内科=内視鏡全盛期の現在 次のスライドから開業の本格的な準備編です ⾃分の中で技術/才能の限界を感じ,継承に向けて動き始める
#10. 継承開業までの⼤まかな流れ〜⼟地購⼊〜 • 約5年前:実家のクリニックの⽼朽化が進み(築30年以上), 今後の継承に向けて建て替えを検討し始める ※この時点では継承の具体的なタイミングは決まっておらず • 建て替えにも多額の費⽤が掛かることが判明したが前クリニックの 近く(徒歩数分以内)の⼟地を格安で購⼊できることになり, 移転に向けて動き出した
継承開業までの大まかな流れ〜トラブル編〜
#11. 継承開業までの⼤まかな流れ〜トラブル編〜 • ⼟地は農地であり,農地転⽤の⼿続きや造成を開始した ここで最⼤の問題が発⽣!! • 接⾯道路の幅員が4m未満,さらに1000m2を超える⼟地であり, 開発許可申請が必要な可能性が浮上した 1000m2を超える⼟地の建築には開発許可申請が必要となることがある 開発許可が下りるまで数年掛かったり,許可⾃体が下りない場合もある
#12. 継承開業までの⼤まかな流れ〜トラブル編〜 • ⼟地家屋調査⼠や不動産会社など専⾨業者数⼈を交えて,議論を重 ねるも責任の押し付け合いで全く話が進まず • 並⾏して建築事務所にクリニックのデザインを仮依頼するも,仕事 は遅く上記の話には全く関与せず⾼額のデザイン料を提⽰される ⇨お断りを⼊れると多額の違約⾦を請求された 新クリニックの計画⾃体,頓挫する可能性が浮上した
#13. 継承開業までの⼤まかな流れ〜トラブル編〜 • 途⽅に暮れている時に,⾃分のマイホームを建てた某⼤⼿ハウス メーカーの営業に何気なく相談 ⇨同ハウスメーカーがクリニック建築も⾏っていることが判明!! 役所への交渉などを⾏なって頂き,建設が可能との回答 前述の建築事務所が2ヶ⽉掛かった案をわずか2週間で超える提案 ⇨建築費⽤は⾼額だが,依頼を即決した 費⽤は⾼額ですがアフター フォロー含めおすすめです!
継承開業までの大まかな流れ〜コンサルトと間取り編〜
#14. 継承開業までの⼤まかな流れ〜コンサルト編〜 • クリニックの設計は決まったが開院に向けての⼿続きが不明 • ⽗親も30年以上前の記憶でほとんど覚えていない状態 • 開業コンサルタントは⾼額な費⽤や⾊々な条件(コンサルト指定の ⾨前薬局にするなど)を提⽰されると聞いており,良い印象なし • メインの卸の担当者に両親が相談した所,同社にコンサルタント部 ⾨があり,無料で開業⽀援をして頂けることに! ⾝近な業者さんや知り合いの 医師の紹介が安⼼です!
#15. 継承開業までの⼤まかな流れ〜間取り編①〜 • 某⼤⼿ハウスメーカーの医院建築の責任者の⽅が設計を担当 • 医療に関する知識も豊富で安⼼して任せることが出来た *前述の建築事務所はデザインは秀逸も,動線含め疑問点も多かった
#16. 継承開業までの⼤まかな流れ〜間取り編②〜 最低限必要な部屋をお伝えした上,以下の点を組み込んでいただいた ①コロナ渦の開業であり,感染対策への配慮 ②⼤腸内視鏡検査まで⾏うクリニックであり,個室の前処置室の設置 ③栄養指導を⾏うため診察室のほか患者説明室の設置 その結果・・・
継承開業に関するQ and Aと医局の考察
#17. 継承開業までの⼤まかな流れ〜間取り編③〜 ①コロナ渦の開業であり,感染対策への配慮 発熱外来⽤の診察室を別に作り,待合を通過せず⼊室/退室できる動線 ②⼤腸内視鏡検査まで⾏うクリニックであり,個室の前処置室の設置 3部屋準備し,その全てにトイレを設置した ③栄養指導を⾏うため診察室のほか患者説明室の設置 待合室と連続性を持たせ混雑時には待合としても使⽤可能とした
#18. 継承開業 Q and A • 継承開業を⾏った上で,知り合いの医師に聞かれたことやSNSなどで よく話題になっている項⽬をいくつかピックアップしました • あくまで個⼈的な意⾒であり, 最終的にはご⾃⾝の判断で決定する ことをお勧めします
#19. 医局は⼊るべきでしょうか? • 最近は医局に⼊らず開業するケースも増えていると思うが,地⽅で はまだ医局の⼒が強く個⼈的には⼊局が無難と思われる • 医局⼈事次第では,各基幹病院で勤務することが出来,開業してから の紹介先の特性や雰囲気を知ることが出来る • ただし⼊局前に関連病院や退局のし易さを可能な限りリサーチする 必要はある
継承開業の準備とTAKE HOME MESSAGE
#20. 医局を円満に退局するには? • 将来的に開業するというビジョンがあれば,早めに医局に伝えるこ とが⼤切! • ⾃分の場合は10年での開業を考えていたので(+α掛かったが),⼊局 時に教授/医局⻑にお伝えし常⽇頃から周りに吹聴していた • 「あいつは開業するんだな」と思われており,多少の引き⽌めは あったが問題なく退局することができた
#21. ⼤学院は⾏った⽅がよい? • 研究に興味があるのであれば,勿論⾏ったがよいと思われる • ⾃分は基礎研究に興味が全くなく,可能な限り早く開業(=臨床において1 ⼈前になる)したかったので,⼤学院には⾏かなかった • ただし若⼿時代の上司が臨床研究に熱⼼で,論⽂を作成し, (論⽂)博⼠号を 取得することが出来た • ⾜の裏の⽶粒と揶揄されるが,データの解析⽅法などを学ぶことが出来,同 研究を通じて海外の学会で表彰されたり⾃分の⾃信に繋がった
#22. 前勤務先はいつ退職した? • 継承開業(特にクリニックの建て替えなどなく,先代もまだ在籍して いる)の場合は,準備期間はほとんど必要ないと思う • 当院の場合,移転,クリニックの名称変更などの事務⼿続きに加え,⼤ 腸内視鏡検査の導⼊,電⼦カルテの変更,ホームページの開設など あったが2ヶ⽉前の退職で⼗分だった • 元々のスタッフが残り,流れのノウハウはあったため,シミュレー ションをほとんど⾏う必要がなく準備時間の短縮に繋がった
#23. コンサルタントは⼊れた⽅がよい? • 卸の会社のコンサルタントの場合,無料だが医療機器の購⼊の際には同社 を通じて購⼊することが原則となる • 明⽂化はされておらず,当院の営業はその点は緩く会社次第と思われる • 他のコンサルタントの詳細は不明だが,集患などの具体的な提案というよ りは開業サポートという⽴場で⼿続きの代⾏がメイン ⇨継承開業かつ移転開業(+名称変更)であったため,諸⼿続きが⾮常に ⾯倒であり,コンサルタントに⾮常に助けられた
#24. 継承開業におすすめの診療科は? • 経営的なことや個⼈の希望など⾊々な意⾒があると思うが,個⼈ 的には先代と同じ専⾨科/分野(ex.私:消化器内科,⽗:消化器外科) に進むのはお勧め • 通院している患者さんをそのまま受け継ぐことが出来る • 内視鏡,超⾳波装置が既にあるため, コストを抑えることが出来た
#25. TAKE HOME MESSAGE • 将来的に開業するというビジョンがあれば,早めに医局に伝えるこ とが⼤切! • 各種⼿続きが複雑(特に新規開業の場合)なため,開業サポートとして コンサルタントは頼んだ⽅がよいと思われる • 集患だけでなく,紹介のし易さの点でも開業前に直近の基幹病院で 勤務することはオススメ! 〜開業準備編 後編〜に続く