#4.
初めに 医師の⽅では、医局に⼊局すると⼤学院へ⼊学する、ということが多いの ではないでしょうか。今回のスライドは、予備知識なく⼤学院に⼊学し右 往左往した放射線科医の記録と、博⼠号取得に対する調査などをまとめた ものです。皆さんの役に⽴てば幸いです。
#5.
01 筆者の⼤学院⼊学までの 道のりと苦労したこと
#6.
筆者の⼤学院⽣活は初期研修後すぐに始まりました 1 2 初期研修 ⼤学院⼊学 3 4 放射線科 医局員 ・画像 診断 メイン 5 6 がんセン ター ・放射線 治療部レ ジデント ⼤学院の授業を受けつ つ、がんセンターにて 論⽂執筆 (2本)学位取得 7 8 放射線科 医局員 ・放射線 治療 メイン ⼤学院卒業 ⻑男出産 その後、産後休暇+有給消化 計4か⽉程度で復帰 9 ⻑ ⼥ 出 産 産 休 育 休 10 11 12 保健所(公衆衛 ⽣医師) 13 14 健診クリ ニック 卒後年次
#7.
筆者の学位取得への道のり 初期研修2年⽬で、放射線科(放射線治療)を専攻したいと考えました。 私の卒業⼤学は地域では中⼼的な⼤学だったので、他の⼤学の情報収集すること もなく、安直に卒業⼤学の医局に⼊局することに。 私が⼊局した放射線科では、初期研修修了後、⼊局と同時に⼤学院に⼊るのが標 準コースでした。 内科や外科など、しばらく市中病院などで臨床経験を積んでから⼤学院に⼊るこ とも多いようです。
#8.
⼀般的な学位取得コースは︖ ⼀般的には学位を取得にするためには、⼤学院に籍を置きます。 そして、基本4年間⼤学院の授業を受け、研究(実験)を⾏います。 さらに、実験で得られた研究成果を英語論⽂にして投稿し、accept(論⽂受理) をもらいます(⽇本語の論⽂を認めている⼤学院もある)。 その研究成果を教授に承認されたら学位取得となる、というものになります。
#9.
医師が学位をとることに対しての⽂部科学省の⾒解は 「医療系⼤学院は、従来、研究者として⾃⽴するに必要な研究能⼒を培い、医学・医療における 特定の専⾨分野について深い研究を⾏い得る研究者の養成を⾏い、また、学術研究を遂⾏するこ とを主たる⽬的としていた。しかし、現在における医療系⼤学院は、これら研究者のみならず、 医師・⻭科医師など⾼度の専⾨性を必要とされる業務に必要な能⼒と研究マインドを涵養するこ とも求められるようになってきており、医療系⼤学院が果たすべき機能は多様化している。」 「このような状況を踏まえ、今後における医療系⼤学院の在り⽅としては、およそ専攻単位程度 で、研究者養成を主たる⽬的としているのか、優れた研究能⼒等を備えた医療系⼈材の養成を主 たる⽬的としているのか、その⽬的と教育内容を明確にすることが必要である。 特に、医学・⻭学系⼤学院にあっては、専攻や分野の別を超えて、研究者養成と、優れた研究 能⼒等を備えた臨床医、臨床⻭科医等の養成のそれぞれの⽬的に応じて、研究科として⼆つの教 育課程を設けて、⼤学院学⽣に選択履修させることが適当である。」→つまり臨床系と研究系が 明確に分けられる(すでにコースとして分けられている⼤学院もある)ということ 引⽤)医療系⼤学院の⽬的とそれに沿った教育等の在り⽅について[医療系ワーキング・グループ報告書] ⽂部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1415137.htm
#10.
参考︔医師に学位が必要か︖について答えている⼤学HP 第⼀に、学位は医学の進歩に貢献した証です。学位をとるためには医学研究をしなくてはなり ません。基礎研究であっても臨床研究であっても構いません。医学研究をすることで、単に個 ⼈として診療できるというのではなく、我が国の、ひいては世界の診療レベルを全体として上 げることに貢献するわけです。 第⼆に、⼤学院研究の充実は我が国の重要な政策のひとつです。⼤学院研究は⾼度専⾨医学研 究の導⼊部分にあたり、我が国の⼈々が⾼⽔準の医療を受けられるか否かは、⻑期的には⼤学 院研究の充実にかかってる⾯があるからです。 第三に、この学問上の貢献(学位)に対する尊敬は現実の評価となって現れます。例えば、⼤ 学病院はもちろん⼀般病院においても、医師の採⽤や昇進時に学位の有無を参考にするとして いるところが多く、また給与などにも差があります。 引⽤)⼤学院医学系研究科 Q1︓そもそも学位は必要なの︖ 聖マリアンナ医科⼤学 u.ac.jp/gs/qanda_gs/qanda_gs_01.html https://www.marianna-
#11.
そもそも博⼠には2種類ある 課程博⼠ ⼤学院に⼀定年数以上在籍し、既定の単位数以上を修得し、かつ必要 な研究指導を受けた上、⼤学院の⾏う博⼠論⽂の審査及び試験に合格 するこの課程を修了した者が「課程博⼠」←医師の多くはこちらと思 われます。 論⽂博⼠ ⼤学や⼤学院が決め、執り⾏う博⼠論⽂の審査に合格し、かつ、⼤学院 の博⼠課程を修了した者と同等以上の学⼒を有することを確認された者 が「論⽂博⼠」 参考︓⽤語の整理に関する参考資料 ⽂部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/attach/1412781.htm
#12.
筆者にとって学位取得は⼤変だったか︖ 実はそこまで、労⼒としては苦になりませんでした。 独⾝で若く、彼⽒もいなかったので、病院勤務が終わってから研究を することは苦ではなかった→時間的な制約が、少なかったということ もあります。 今思うと、無給で働いていたので、かなりセルフブラックなことをし ていた・・・。 今では考えられないですね。
#13.
学位取得と結婚・出産のタイミングについて ⼤学院に⼊学してから、仕事の合間をぬって単位取得のために講義に 参加していました。 ⼤学院1年⽬では、仕事(画像診断)に加えて、⼤学院の講義(当時 はオンライン授業などはありませんでした)などもあり、しばしば⽇ をまたぐことになったりもしました。 ⼤学院2年⽬では、だいたい単位もとれて、仕事にも慣れてきました。 プライベートでも、婚活で出会った男性(⼀般サラリーマン)と出会 ってから3ヶ⽉くらいでスピード結婚、その後1年半くらいで⻑男を 出産しました。
#14.
筆者が苦労したこと リサーチ不⾜だったことによる教授からのお叱りに尽きる︕ 当時⾃分の⼤学では3年卒業の短縮特例措置がありました。 筆者は担当教官に「3年で卒業を⽬指しましょう」というアドバイス をもらいました。 学費が1年分かからなくなるし、と、3年で卒業することを⽬指し、 論⽂を3年間で2本書くことを⽬標とし、なんとか達成しました。
#15.
そもそも、3年卒業の短縮特例措置とは︖ 通常は⼊学から卒業まで4年間で、学習会への出席、eラーニングなども駆 使し、必要な単位をとっていきます。 論⽂を1本書く、卒業研究発表会での発表を⾏い、その内容をまとめること が必要です。 ⼀⽅、3年卒業したい場合には、IF(Impact factor)が⾼い(ここは教授 判断︕)論⽂1本か、査読ありの論⽂2本がAcceptされるという条件があり ました。 筆者はこちらを⽬指していたのですが。。。
#16.
筆者が3年卒業の短縮特例措置を教授に上申したら 筆者が2本⽬の論⽂をかきあげ、アクセプトされた段階で教授に打診しまし た。 結果は、担当教官とともにかなり怒られてしまいました。 なぜ教授は怒り⼼頭だったのか︖ 「話が⾶躍している。1本⽬の論⽂はそもそも雑誌といえるところに掲載し ていない」(注︓IFが無い雑誌にしかとってもらえなかった) 科のトップであり、卒業の権限を担う⾃分になんの相談も無く、話を進めよ うとしたことがまずかった・・・
#17.
こうしておけば良かったということはあるのか︖ 筆者としては、上司である担当教官から教授に打診があると思い込んでい たため、⾃分から根回しをすることを怠っていました。 結局、短縮特例措置は認められませんでした。論⽂を2本書いたのに、と いう思いが募りました。 今思うと、かなりの無知ぶりが明らかになり恥ずかしいが、研修医が終わ ったばかりで事情がわからなかったため、と致し⽅ない部分もあると思い たい。 きちんと私から教授に相談し、⽅針を決めておけばよかったと思います。 初めから3年卒業が無理そうであればそのつもりにしていたのに。
#18.
結局はどうなったのか 結局は4年間⼤学院に在籍し、論⽂作成・研究発表を経て卒業しました。 私の卒業研究は臨床研究だったので、基礎研究などで成果を出すことより は多少楽だったかもしれません。 ただし、ちょうど第⼀⼦を産んだばかりだったこと、⼤学以外で勤務して いたこともあり、研究発表の準備のために夜に⼤学に⾜を運ぶことは⼤変 でした。 実際にはかなり実家のお世話になりました。 なんとか博⼠号(学位)が取れました。
#19.
02 筆者の考える医師が博⼠号を とるメリットデメリット
#20.
学位をとることのメリット・デメリット では、ここでは筆者の考える学位取得のメリットとデメリットをご紹介します。 メリット • • • • ⼤学病院や公的病院の病院⻑になる際に有利になる可能性 内容によっては、動物実験などの基礎研究に携わることができる 論⽂を書く経験になるかもしれない 留学等希望の場合には必要な場合もあるようだ デメリット • • • 学費がかかる 時間がとられる すでに親の医院を継ぐなどの進路が決まっている場合、学位は不要なことも
#21.
筆者としては学位はとるべきと思うか 結論、筆者は専⾨医取得と学位取得のタイミングがほぼ同じになりました。 学位をとることで実質なにかメリットがあると現時点では思いませんが、 もしも医師として病院以外の企業などで働く場合には役⽴つかもしれない と思います。 例えば、外資系の会社に就職したい場合には、博⼠号を取得しているかが ポイントになることも。実際に、とあるコンサルタント会社のエントリー シートには、⼤学院での学位取得の有無の記載欄がありました。 ⽇本以外の欧⽶⼀流企業では、博⼠号をとっているかどうかは採⽤時に重 要視されるようです。
#22.
参考までに外国では学位取得者を重視しているのか アメリカの情報系産業では、 博⼠⼈材の顕著な活⽤をして いるようです。 医師とは直接関係ありません が、特に新興領域であるAI 分野について、トップ⼤学か ら博⼠号取得者を最も多く採 ⽤した企業にはGAFAやマイ クロソフトが上位に挙がって います。 引⽤)令和4年度産業技術調査事業(産業界における博⼠⼈材の処遇向上に関する調査)調査報告書 p4 https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/houkokusho/reiwa4_hakasejinzai_tyousahoukoku.pdf
#23.
03 効率よく学位を取得したいなら どうすればよいか
#24.
もしも筆者がやり直しできるならこのようにします 1)学費がどれくらいかかるのか試算し、⽤意できるか検討します。 2)⾃分の科の先輩医師に具体的にはどれくらいの給料がもらえるかなど を聞きます。(マネープランは⼤切です︕) 3)教授(難しければ、教授と親しい教官など)とコミュニケーションを 取り、学位取得に関する情報を共有します。 結局学位がとれるかどうかは教授次第というところがありますので。。。 4)時間的にも体⼒的にも余裕のある独⾝時代にとる(注︓これに関して は、実際に⾏ったことです)。
#25.
筆者の周りの医師たちの例 筆者の周りの数少ない医師(主に⼥性)の例をあげてみましょう。 30代同期⽿⿐科の⼥性医師 臨床研修2年終了し⽿⿐科に⼊局後、市中病院、⼤学病院勤務をへて3年間で博⼠号取得 (IFの⾼い論⽂がアクセプトされたとのこと) 30代同期⿇酔科の⼥性医師 研修した病院の⿇酔科にそのままフィックス。特に所属医局なし。⼤学院に進む医師も いるようであるが、特に興味なし。 30代同期腎臓内科の⼥性医師 はじめから博⼠号取得の意思なし。研修修了後、そのまま同じ病院で勤務。年に1回くら い⼤学病院に来ないかとお誘いがあるものの、うまくかわしている。
#26.
04 ⽇本と諸外国を⽐較した 学位に関する研究をご紹介
#27.
学位に関する研究︓⽇本と諸外国の博⼠号取得者の⽐較 2000年代の⼈⼝100万⼈あたり の博⼠号取得者数はドイツが主 要国の中で⼀番の規模。 ⽇本は⽶韓と2000年度には同 程度であったが、その後⽶韓は 順調な伸びを⾒せ、最新値では ⽇本の倍以上の値となっている。 引⽤)科学技術・学術政策研究所 3.4 学位取得者の国際⽐較 https://www.nistep.go.jp/sti_indicator/2021/RM311_34.html
#28.
学位に関する研究︓⽇本の分野別博⼠号取得者 2018年度の取得者数について、 その主要専攻別の内訳を⾒ると、 「保健(医学、⻭学、薬学及び保 健学)」が最も多く、6,273⼈と 全体の41.4%を占めている。 次いで「⼯学」が3,253⼈ (21.5%)、「理学」は1,403⼈ (9.3%)となっている。 引⽤)科学技術・学術政策研究所 3.4 学位取得者の国際⽐較 https://www.nistep.go.jp/sti_indicator/2021/RM311_34.html
#29.
学位に関する研究から考えられることは・・・ 博⼠号をとることは、⽇本においてはそこまでメジャーでない 中、医師を含む保健分野での学位取得者の割合が多いという調 査結果がでています。 博⼠号をとるような医師が周りに多いから⾃分もそうしようと 思う、あるいは他の分野に⽐べて学位が取りやすい、という理 由があるのかもしれません。
#30.
Take home message ● ⼤学院で苦労することの多くは情報・リサーチ不⾜が原因︕きちんと情報を 集めたいものです。 ● 学位をとることにはもちろんメリット・デメリットがあります。 ● 効率よく学位を取るためには綿密なシミュレーションと根回しが⼤切です。 ● 学位がとれるかどうかは結局教授次第ではあるが、研究や学習は全くの無駄 にはならないと思います。 ● ただし相当な時間と体⼒、お⾦が必要であることは覚悟しましょう。
#31.
まとめ ● 今回は、筆者が学位をとる際に苦労した点や、それについてどのようにすれ ば効率よく博⼠号がとれたのかについてご紹介しました。 ● 学位をとるためには、⽇常臨床とはまた違った苦労があるかと思いますが、 ⼀度博⼠号を取ろうと思ったのであれば、諦めずに頑張ってもらいたいと思 います。 ● もし医師として病院以外の職場(特に外資系)で働きたい、と考える場合に は、きっと博⼠号が役⽴つ場合もある・・のかもしれません。