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結核再考と重要な要点
#1. 飯 塚 病 院 総 合 診 療 科 山 口 裕 崇 と い う ひ と の た め の ミ ニ マ リ ズ ム 体 現 型 講 義 必い結 要つ核 最かを 低遭よ 限遇く のす診 知るる 識かわ をもけ しで にれは つなな けいい た結け い核れ けにど どつ 難い して い こ と は 遠 慮 し た い ケッカク 結核 再考 サイコウ
#2. 要点 Take Home Message 〜 医者をやるなら覚えておくべきポイント 〜 • 結核患者の半分以上は、70歳以上である。 • 粟粒結核や肺外結核が「不明熱」の病像となりやすい。 • 肝生検や骨髄生検も、粟粒結核の診断に有用である。 • 粟粒結核の80%以上で肝臓病理に「肉芽腫」が診られる。 • IGRA陽性と結核患者であることは、同義ではない。 • IGRA陰性であることをもって、結核を除外できない。
活動性結核と潜在性結核の定義
#3. 用語の整理① 活動性結核 Tuberculosis (Tb) “ Tb disease ” • 明らかに発病している状態 • 肺結核が代表 • 排菌している場合も多く、感染対策が必要 • 粟粒結核など肺外結核も含まれる
#4. 用語の整理② 潜在性結核 Latent tuberculosis infection “ Tb infection ” • 生きた結核菌が体内に潜伏している状態 • 排菌なし • 活動結核ではないことの確認が必須
#5. 用語の整理③ イグラ Interferon gamma release assay (IGRA) • T-SPOTやクオンティフェロンが代表 • 過去に結核菌に暴露された証拠 • 活動性があるか否かは判断できない • IGRA陰性でも結核を捨象できない • IGRA陽性だからといって結核症とは限らない
結核の臨床像と診断の難しさ
#6. 結核のよくある臨床像 〜 世界3大感染症のひとつ 〜 • 結核患者の半分以上が70歳以上 • 戦後の日本(『ゴジラ-1.0』の時代)を生き抜いた人びと • 初発よりも再活性化が多い(=二次結核) • 近年では都市部の若年層の結核も目立つ • 適切な治療を受けても1〜3%が再発 • 病像は、もはや何でもあり(症状や熱型のみで判断できない)
#7. 肺結核の診断 〜 結核菌を証明することが至上命題 • 肺結核ならではの臨床像は少ないものと心得る • 細胞性免疫不全を考慮 • 診断まで空気感染対策が必要 • どの検査も万能とはいえない • 胃液培養の感度が高い 〜
#8. 結核の難しさ 〜 排菌の有無と肺外結核の考慮が必要 〜 • 粟粒結核や結核性胸膜炎も肺外結核 • 感染が想定される臓器から「繰り返し」検体を採取 • 検査は「泥臭く」提出すべき • 肝臓や骨髄生検の病理像では「乾酪壊死と肉芽腫」が特徴 • ALP上昇や肝腫大があれば肝生検を検討 • 微生物学的証明が原則
見逃しやすい結核のパターン
#9. 見逃しうるパターン その① 〜 いつもの肺炎かと思ったら、肺結核 • 入院時の検体で塗抹/培養/PCRを出しておくこと • 一般細菌に結核菌が併存しているかも知れない • 肺炎像の分布で結核か否かは判断困難 • 「治らない肺炎」では結核菌の考慮が必須 • 慢性咳嗽では若年者の「気管支結核」もありうる 〜
#10. 見逃しうるパターン その② 〜 無菌性髄膜炎のふりをした結核性髄膜炎 • アデノシンデアミナーゼ(ADA)も提出 • 原因不確定の髄膜炎、繰り返す髄膜炎 • 中枢神経系の悪性リンパ腫との鑑別を要するかも • 高齢者や寝たきり患者でも要注意 • 脳神経麻痺や精神症状がみられる場合もある 〜
#11. 見逃しうるパターン その③ 〜 心不全と思ったら、結核性胸膜炎 • 両側胸水でも結核性胸膜炎がありうる • 単核球優位の細胞数上昇、ADA高値がポイント • 胸水の培養やPCRの感度も不十分 • 咳嗽や胸膜痛があれば手がかり 〜
#12. 見逃しうるパターン その④ 〜 肝硬変だと思ったら、結核性腹膜炎 • 腹水貯留の原因は肝硬変が多い • 腹水のADAを確認すること • 肺病変や粟粒結核からの播種が多い • 診断まで月単位で症状が遷延しうる • 安易に「肝硬変のSBP」と結論しないこと 〜
結核との向き合い方と要点
#13. 見逃しうるパターン その⑤ 〜 よくあるリンパ節腫脹で、結核性リンパ節炎 • 原因不明のリンパ節腫脹でも無痛 • 原因不明のリンパ節腫脹で慢性経過 • ほとんど片側のリンパ節腫脹 • 外来診療でリンパ節腫脹はよくみる • 穿刺吸引細胞診で診断できなければリンパ節生検 • IGRA陽性でも結核性リンパ節炎とは限らない 〜
#14. 結核との向き合い方 〜 見逃さないポイント 〜 • 診断がわからないときは「診断不明」と認識すること • 暫定的なものである初期診断に「甘んじない」こと • 初期診断は「その後の経過」で結核に取って代わられうる • 細菌学的、病理所見として結核菌を「証明」すること • T-SPOTなどのIGRAを「その根拠としない」こと • 採れる検体は積極的に「採れるだけ採る」こと
#15. 要点 Take Home Message 〜 医者をやるなら覚えておくべきポイント 〜 • 結核患者の半分以上は、70歳以上である。 • 粟粒結核や肺外結核が「不明熱」の病像となりやすい。 • 肝生検や骨髄生検も、粟粒結核の診断に有用である。 • 粟粒結核の80%以上で肝臓病理に「肉芽腫」が診られる。 • IGRA陽性と結核患者であることは、同義ではない。 • IGRA陰性であることをもって、結核を除外できない。 完