#4.
#5.
貧血を見たら、まず何を見ますか? Hbが低い=診断ではない。「どうして赤血球が減ったのか」を考える。 貧血の原因 主訴 健診で貧血指摘/軽い倦怠感 症例 35歳女性 Hb 8.2 g/dL 失っている 作れない 基準 女 12–16 g/dL WBC Plt 5,800 /μL 28万 /μL まず、鑑別を絞り込むための第一歩 MCV (平均赤血球容積) 壊れている
#6.
まず、赤血球はどうやって作られる? 赤血球は骨髄で作られ、網状赤血球を経て完成する。 血管 エリスロポエチン(赤血球つくる指令) 葉酸・ビタミンB12=細胞分裂に必要 鉄=ヘムを作る材料
#7.
赤血球は "分裂しながらHbを詰める" 赤芽球では細胞分裂(核)とHb合成(細胞質)が同時に進む。 DNA複製 → 細胞分裂 → 分裂を繰り返して 小さくなる → 核を捨てる ▲ 核・細胞の大きさ 分裂 分裂 脱核 多染赤芽球 前赤芽球 中/核 中/Hb 中 正染赤芽球 成熟赤血球 小/核 小/Hb 多 核なし/Hbで充実 大きい/核 大/Hb 少 ▼ ヘモグロビンの量 鉄が届く → Hb合成 → 分裂の間ずっと 中身が充実していく 分裂が進むほど小さくなり、その間ずっとHbを作り続ける。
#8.
赤血球の大きさは、なぜ変わる?MCVの意味を考えよう 小球性 MCV < 80 正球性 80~100 Hbを作れないと小さく、分裂できないと大きくなる。 大球性 MCV > 100
#9.
つまり,MCVは赤血球がどう作られたかの"履歴書" MCVを見れば、赤血球産生のどこがおかしいかの見当がつく。 小球性 正球性 MCV < 80 Hb合成 ↓ 「材料」を疑う 代表的な疾患 MCV 80–100 大きさは正常 → 網赤血球と他系統を確認 代表的な疾患 大球性 MCV > 100 細胞分裂 ↓ 「分裂の障害」 代表的な疾患 鉄欠乏性貧血 急性出血 B12・葉酸欠乏 サラセミア 溶血性貧血 MDS(骨髄異形成症候群) 慢性炎症(鉄の利用障害) 腎性貧血・慢性炎症 典型的な肝不全・アルコール 骨髄疾患(一部) 暗記ではなく、“なぜその大きさになったのか” を考える!
#10.
CASE 1 Hb 8.2、MCV 68。何を考える? 主訴 健診で貧血指摘/軽い倦怠感 症例 35歳女性 Hb MCV WBC Plt 1 8.2 68 5,600 35万 STEP 1 MCVを読む 小球性 → Hb合成の障害を疑う g/dL 小球性を見たら、まず"鉄が足りているか"を確認する。 fL ↓ 小球性 /μL 正常 2 STEP 2 「材料」は? Hbの材料 = 鉄 の動態を確認する /μL 正常 フェリチン / TSAT(トランスフェリン飽和度)
#11.
鉄動態:フェリチンは鉄の金庫 トランスフェリンに結合して運ばれる
#12.
鉄動態:トランスフェリン飽和度 通常 鉄欠乏時 体はトランスフェリン増やしてもっと鉄を運ぼうとする でも鉄の在庫がなくて運びだせない
#13.
鉄欠乏性貧血は "結果" です 鉄剤を出す前に、"なぜ鉄がなくなった?" を考える。 必要量が増えている 出血で失っている 妊娠・授乳期 成長期(乳児・思春期) 月経(過多月経) 消化管出血(潰瘍・腫瘍・痔) 鉄欠乏 入ってこない その他 偏食・極端なダイエット 献血の反復 胃切除後・吸収障害・PPI長期 スポーツ性・血尿 成人男性・閉経後女性の鉄欠乏 → 消化管出血(潰瘍・大腸癌など)をまず疑う。 鉄剤で改善したから終わり、ではない。上下部内視鏡など原因検索を進める。
#14.
CASE 2 MCV 122、LDH 1,800。これは溶血? 鑑別として,何を考える? 症例 78歳 主訴 数週間の倦怠感、労作時息切れ。 MCV 7.8 122 WBC Hb ? g/dL LDH↑・間接Bil↑ の説明にはなる fL ↑ 大球性 3,000 /μL ↓ 減少 Plt 9万 /μL ↓ 減少 LDH 1,800 U/L ↑↑ 間接ビリルビン 3.0 溶血性貧血? ? 骨髄異形成症候群? 高齢+汎血球減少+大球性で該当 ? mg/dL ↑ B12・葉酸欠乏? DNA合成障害 → 大球性、無効造血
#15.
MCVだけで終わらない。次は網状赤血球。 MCVは“形”、網状赤血球は"骨髄の反応"を見る。 骨髄は反応している ✓ 網状赤血球数 造血 亢進あり 代表的な疾患 出血 (急性・慢性) 10万 溶血性貧血 (真の溶血) /uL以上 補充療法への反応期 → 「作れないのではなく、失っている/壊れている」 造血 亢進なし 作れていない ✗ 網状赤血球数 典型例では 2万 /uL以下 代表的な原因 鉄・B12・葉酸欠乏 腎性貧血(EPO↓) 骨髄疾患(MDS・再生不良性など) 無効造血 → 「作る過程のどこかがおかしい」
#16.
作っているのに完成しない = 無効造血 骨髄で壊れるから “溶血っぽく” 見えるのに、網状赤血球はあまり増えない。 フル稼働 → でも出荷できない 検査で "溶血っぽく" 見える 起きていること 骨髄で頑張って作る 成熟できない 骨髄内で崩壊 出荷はごく僅か ↑ 上がる 項目 ↑↑ LDH 間接ビリルビン ↑ ハプトグロビン ↓ しかし 血 管へ 届く のは . .. 網赤血球はごく少数 網赤血球(Retic) ↑せず "工場はフル稼働。でも不良品ばかりで出荷できない。" = 溶血ではなく、無効造血 骨髄で壊れるか,骨髄卒業してから壊されるか
#17.
CASE 2 MCV 122、LDH 1,800。これは溶血? 症例 78歳 主訴 数週間の倦怠感、労作時息切れ。 MCV 7.8 122 WBC Hb g/dL fL ↑ 大球性 3,000 /μL ↓ 減少 Plt 9万 /μL ↓ 減少 LDH 1,800 U/L ↑↑ 間接ビリルビン 3.0 mg/dL ↑ 網状赤血球数 4万 VitB12 80 pg/uL 葉酸 10.2 ng/uL /uL
#18.
B12・葉酸がないと、赤芽球は小さくなれない DNAが作れない → 分裂できない → 大きいまま。 内因子受容体
#19.
最後に見るのは "他の2系統" 赤血球だけの異常か、骨髄全体の異常か。 汎血球減少 赤血球系だけの異常 Hb Hb ↓ 低下 ↓ 低下 血液内科 相談 汎血球減少 WBC WBC 正常 ↓ 低下 芽球の出現 Plt Plt 原因が説明できない vs 末梢血に異常細胞 急速な血球低下 正常 ↓ 低下 赤血球のトラブルに絞れる 骨髄全体のトラブルを疑う 典型的な鉄欠乏/腎性/溶血 など B12/葉酸欠乏/MDS/再生不良/急性白血病 など
#20.
貧血を見たら、この3つ 1 MCV どんな赤血球を作った? 小球 → Hb合成異常 → 鉄 大球 → 分裂異常 → B12・葉酸 正球 → Retic / 他系統を確認 2 Retic 網赤血球 骨髄は反応している? ↑ 骨髄OK → 出血・溶血 ↓ 骨髄NG → 作れない LDH↑でRetic↑せず → 無効造血 3 WBC・Plt 赤血球だけの問題? 正常 → 赤血球系に絞れる 低下 → 骨髄全体を疑う 芽球・異常細胞 → 早期に相談 CONSULTATION 血液内科への相談目安 GREEN 自科でOK YELLOW 血液内科へ相談 RED 早めに相談 原因が明瞭 説明できない貧血 緊急性あり 典型的な鉄欠乏/典型的なB12・葉酸欠乏 /腎性貧血 など 原因不明の貧血/高度大球性/ 治療反応不良/進行性 汎血球減少/芽球・異常細胞/ 急速な血球低下/DIC所見
#21.
#22.
血小板の "仮止め" を、フィブリンで固める 今日の 凝固異常 の話は、主に 二次止血 について。 一次止血 = 仮止め 二次止血 = しっかり補強 血管損傷 血管内皮 補強 血小板プラグ + フィブリン網 血小板プラグ まず血小板が寄り集まって "仮の栓" を作る でもこれだけでは弱く、剝がれやすい トロンビン → フィブリンで "血小板の仮止め" を強固に補強する
#23.
凝固カスケード、全部覚えなくて大丈夫です 大事なのは どこで火がつくか と どこで増幅されるか。 生体内の凝固は1本のバトンリレー トリガー スターター ブースター フィブリン 血管損傷 外因系 内因系 止血 TF 点火 増幅 完成 スターター (外因系):点火係。少量トロンビンを作る ブースター (内因系):増幅して大量のトロンビンを作る フィブリン:トロンビンがフィブリンを作って止血完成 全部暗記? …しなくていい!
#24.
凝固のスイッチを入れるのは "組織因子(TF)" トリガー 外膜 スター ター TF + VIIa 少量 Xa ↓ 少量 トロンビン 内皮 血管損傷 → TF が血液に触れる ブ ース タ ー 凝固の "点火" この後の話 まだ止血には足りない TFPI が すぐにSTOP 外因系の火は すぐ消える Tissue Factor Pathway Inhibitor 組織因子経路阻害因子。 TF–VIIa をすぐ止める → だから増幅が必要 (ⅧaとⅨaの準備) 外因系 = スターター。TF が触れた瞬間に "点火" される。
#25.
内因系は、凝固を一気に増幅する ブースター 小さな火 → VIIIa–IXa → 大量のトロンビン = トロンビンバースト ブース ター スター ター ト リガ ー TF + VIIa 少量 Xa VIIIa – IXa ↓ 血管損傷 → TF が血液に触れる 少量 トロンビン BOO STER VIIIa + IXa トロンビンバースト 大量のXa→ 大量のトロンビン 凝固の "点火" フィブリン網 血小板プラグを固めて 止血を完成させる 内因系 = ブースター。フィードバックで次々とトロンビンが作られる
#26.
つまり,生体内の凝固は、、、 内因系ブースターが回って 反応をさらに加速 核となる 凝固エンジン
#27.
PT・APTT は "体内の凝固" そのものではない プロトロンビン時間(PT) 試験管で 人工的に 凝固を起こし、フィブリンまでの秒数を測るテスト。 活性化部分トロンボプラスチン時間(APPT) 陰性荷電物質 を加える (Ca2+とリン脂質もいれる リン脂質依存性高い) 大量のT F を加える XII は試験管専用のスターター (Ca2+とリン脂質も) 血漿 過剰なTF で持続的なTF-VIIa複合体生成 血漿 生体内の止血に必須でないXIIを活性化 XI→IXと活性化し,外因系に頼らず 少量トロンビンができる VIIIaとIXaが揃って, トロンビン産生がすすむ 外因系 のみでフィブリン産生を強制点火 フィブリンまでの時間を測る
#28.
PT・APTT は "どこから火がつかない?" で読む 対応表の暗記ではなく、試験管のスタート方式 で考える。 PT ↑ / APTT → PT ↑ TF側 APTT → 外因系側で火がつかない? PT → / APTT ↑ PT → APTT ↑ 内因系側で火がつかない? PT ↑ / APTT ↑ PT ↑ 内因側 APTT ↑ 共通系 or 凝固全体? VII の低下 VIII / IX / XI の低下 or インヒビター DIC ワルファリン初期 ループスアンチコアグラント 肝不全 肝障害の初期/VitK 欠乏の始まり ヘパリン投与中 VitK 欠乏(進行) PT/APTT は “どこから火がつかない?” を教えてくれる便利な検査 両方
#29.
CASE 3 APTT だけ 90 秒。なんか筋肉出血している 症例 83歳女性 1 パターン判定 PT 正常 + APTT 単独延長 → 内因系側 経過 これまで出血歴なし。 1-2日のうちに,急に広範な皮下出血・筋肉内出血が出現 。 Plt 21万 /μL PT 正常 秒 APTT 90 →正常 → 外因系 OK 2 3 秒 身体所見 広範な皮下出血、筋肉内出血 ↑↑ 著明延長 出血の様子 突然・広範・皮下+筋肉内 → 大出血 ブースターが突然止まった? → 後天性インヒビターを疑う(次スライド)
#30.
VIII 因子を自己抗体が止める = 後天性血友病A 正常 内因系ブースターが回って 反応をさらに加速 後天性血友病A バイパス製剤 内因系ブースターが 完全に停止 核となる 凝固エンジン Ⅷa-Ⅸa複合体を つくれない 抗Ⅷ抗体が FⅧの機能を 阻害する ステロイド薬 PT 正常(外因系 OK) APTT 著明延長(内因系 NG) VIII 活性 低下 抗VIII抗体 陽性
#31.
CASE 4 同じ APTT 延長。でも、この人は出血していない。 症例 69歳女性 1 パターン判定 PT 正常 + APTT 単独延長 → 症例①と同じ 経過 術前検査などで偶然、凝固検査を実施。 出血歴なし、現在も出血なし。 PT 正常 APTT 80 身体所見 2 → 外因系 OK 秒 ↑↑ 著明延長 出血なし → 症例①とは別の病態? なぜ? APTT ↑ = 出血ではない? 3 出血 なし でも患者は違う LA(ループスアンチコアグラント)? → 試験管の中の "邪魔者"
#32.
ループスアンチコアグラント:試験管中の凝固を邪魔する LA は リン脂質の足場 を邪魔して、APTT を延長させる抗体の総称 APTT 試験管 内 ■ 正常 IXa VIIIa X V II → トロンビン → APTT 正常 因子が リン脂質上に整列 して 複合体を形成 → 凝固が回る APTT 延長 リン脂質依存の反応が 試験管内でうまく回らない リン脂質の足場 (Phospholipid surface) ■ LA あり(試験管内) LA LA LA LA LA LA LA LA ← リン脂質 が LA で覆われる 複合体が作れない 生体内 凝固を促す = 血栓側 LA は血小板・血管内皮のリン脂質に結合すると,活性化方向に働く LA LA LA LA 血管内皮でTF発現↑ 血小板活性化 LA ← 血管内皮・血小板の表面 結果として 血栓症のリスク を高める 臨床像は "出血" ではなく 深部静脈血栓、肺塞栓、動脈血栓、習慣流産 など 血栓形成 APTTは検査上伸びているのに,むしろ血栓ができやすい
#33.
同じ APTT 単独延長でも、患者は正反対 APTT ↑ PT 正常 / APTT 単独延長 LA = 血栓側(多くの場合) 後天性血友病 = 出血 突然 の広範な出血 出血していない(多くの場合) 機序:VIII インヒビター → ブースター 停止 機序:試験管内リン脂質依存反応への干渉 VIII 活性 低下 生体内では血栓リスク↑(DVT・肺塞栓・流産) 確認:LA テスト、抗リン脂質抗体 臨床方針 臨床方針 出血制御 + 免疫抑制 → 血液内科へ 抗凝固の適応を判断 → 膠原病内科・血液内科へ APTT ↑ を見たら、まず出血症状の確認
#34.
DIC は "凝固因子が減る病気" ではない 本質は 全身の血管で凝固スイッチが多数 ON になること。 傷口だけで凝固スイッチ ON 全身血管でスイッチON 局所的にTF ON 血栓生成 全身の血管は正常 DIC時 大量のTFが持続的に 凝固カスケードを回す 全身でTF ON vs 全身の微小血管で血栓生成 核となる 凝固エンジン
#35.
だから DIC では "原因を止める" 輸血は 下流の補充、原因治療は 上流のスイッチ OFF。 上流治療 ★ 主軸 敗血症 → 感染源制御・抗菌薬 下流治療 = 補充 白血病 → 化学療法 悪性リンパ腫 → 化学療法 FFP:凝固因子+Fib HLH → 原疾患治療 クリオプレシピテート:Fib重点 産科合併症 → 分娩・摘出等 血小板輸血:Plt が枯れそうな時 上流を止めなければ AT・トロンボモジュリン(適応時) D IC は止まらない 下流だけでは 穴あきバケツと同じ 上流を止める と 下流を補う を、必ず並行して。
#36.
凝固異常を見たら、この3つ 1 PT / APTT どの試験管で火がつかない? PT ↑ → 外因系側? APTT ↑ → 内因系側? 両方 ↑ → 共通系 or DIC ? 2 患者をみる 出血している? 血栓できてる? 3 全身をみる DIC なら原因は何? 出血 → 因子欠乏 / インヒビター 血栓・出血なし → LA も考える 敗血症・悪性腫瘍・産科 検査値だけで判断しない 原因を止めなければDICは止まらない 原因不明なDICは悪性腫瘍の検索 血液内 科への相談目 安 自科でOK 相談検討 早急に相談 軽度・原因明瞭 原因不明の持続する PT/APTT 異常 不明熱、出血や著しい血球減少 軽度の PT/APTT 軽度延長で原因 (薬剤・肝など)が明瞭 → まず原因評価 原因が説明できない/LA 疑い/繰り返す血栓 新規出血 + APTT 著明延長 DIC + 原因不明 高熱 + 血球減少 + DIC など
#37.
#38.
WBC 40,000 /μL 血液検査の1行だけ。数字は高い。でも中身は未確認。 好中球 細菌に対する 自然免疫 リンパ球 ウイルス防御 など 単球 好酸球 好塩基球 マクロファージや 樹状細胞になる アレルギー反応 アレルギー反応 感染症? ステロイド? 腫瘍性? → まず「何が増えている」か 芽球 本来末梢には いない
#39.
白血球増多は「なぜ血中に増えた?」で考える 骨髄 ③つくる 組織 ①放出 → ④死なずにたまる (実働の場) ②辺縁から移る ① 骨髄から放出された 感染、炎症など ③ 産生が増えた 感染、G-CSFなど ② 辺縁プールから移った ステロイド、カテコラミン ④ 腫瘍細胞が増えた/たまった 急性/慢性白血病など 感染時に遊走
#40.
白血球増多を見たら、この3つ 01 02 白血球数 + 分画(血液像) + 絶対数 時間軸(急性/慢性) 「何が増えた細胞か」 「いつから高いか」 「/μL で表すと何人いるか」 「ずっと高めか・最近上がったか」 WBC12000(Neut 80%) WBC12000(Lymp 80%) で病態は大きく違う 03 他の血球や患者の状態 「Hb と Plt はどうか」 「複数系統が崩れていないか」 「感染徴候はあるか / ステロイド使用中か」 「出血や全身状態はどうか」
#41.
CASE 5 一番よくある白血球異常「発熱と好中球増多」 症例 79歳女性 経過 1週間前から左腰痛。2日前から38度の発熱があり、改善な いため救急外来を受診 20,000 WBC 骨髄球 桿状核球 分葉核球 リンパ球 単球 1.0 6.0 79.0 8.0 6.0 10.5 Hb MCV 93.0 Plt 24万 PT・APTT 正常 身体所見 左CVA叩打痛+ /uL % /uL いつから増えている? 好中球の増加 不明 WBC↑ % % % % % g/dL 何が増えている? 他の血球はどうか? 軽度貧血 軽度貧血 患者の状態は? 感染兆候あり
#42.
白血球はダイナミックに数字が動く 通常 骨髄 → 循環プール 組織 血管中央を流れる → 採血で測れる (実働の場) 感染時に遊走 辺縁プール:血管壁に沿って滞留→ 採血に含まれない 炎症環境 骨髄 組織 動員 → 接着 遊走 炎症では「末梢から組織へ出ていく力」と「骨髄から補充する力」が同時に働く
#43.
炎症が続くと、骨髄は増産モードになる 末梢血 骨髄 本来、末梢血に出ていく閾値はここ 好中球産生が亢進して、 勢いでここまで末梢にでていく =左方移動 骨髄が急いで 出荷しているサイン 閾値が左方に移動 骨髄 末梢血
#44.
ステロイドでもWBCは変動する 通常 骨髄 (造血の場) 貯蔵プール含む 循環プール 組織 → (実働の場) 感染時に遊走 辺縁プール ステロイド投与 骨髄 (造血の場) 貯蔵プール含む 循環プール 組織 → (実働の場) 感染時に遊走 辺縁プール 接着因子の低下 好酸球 アポトーシス ステロイド リンパ球抑制 アポトーシス 好中球 貪食能低下 遊走能低下 好中球のプール間移動をはじめ、ダイナミックに変化する
#45.
CASE 6 WBC 40,000。超緊急で血液内科? 症例 82歳男性 経過 1か月前に近位で血液検査で白血球増多を指摘された。再 検されたが白血球増多が持続し、紹介受診となった WBC 40,000 /uL 分葉核球 単球 好酸球 8.0 0.6 0.1 % % % 異常なリンパ様細胞 91.3 % WBC↑ 何が増えている? いつから増えている? リンパ球様の細胞 好中球はある 少なくとも1か月持続 変な細胞が たくさん 他の血球はどうか? Hb MCV 10.8 93.0 Plt 15万 PT・APTT 正常 身体所見 特に症状なし。体表リンパ節触知しない g/dL fl /uL 患者の状態は? 軽度貧血 軽度貧血 血小板は正常 全身状態よい DICもない
#46.
時間軸:白血球増多が一過性か、持続性か」 一過性(よくある反応性) 持続性(腫瘍性を疑う) きっかけが去れば戻る きっかけなく、長く保たれる 好中球 好中球 ・細菌感染症 ・急性炎症・組織損傷 ・ストレス・急性運動 ・ステロイド投与 ・慢性骨髄性白血病や骨髄増殖性腫瘍 ・反応性でも長期化する炎症 など リンパ球 リンパ球 ・ウイルス感染症(EBウイルスなど) ・百日咳 ・結核 など ・慢性リンパ性白血病などのリンパ系疾患 ・反応性でも長期化する炎症 など
#47.
リンパ球が増えている。次は「反応性か腫瘍性か」 正常 様々なB cellが 様々なBCRをもっている 単クローン性 B細胞増多症 単一のB cellが増え始める 慢性リンパ性白血病 血液中に単一なB cellが 増殖している Hb 10g/dL未満やPlt 10万/uL未満、B症状などがあれば治療適応 落ち着いていれば経過観察できる
#48.
では、WBC低い場合は? WBC 2,000 /μL 少し白血球低め。まあちょい下がりだから数日後再検査? 好中球 細菌に対する 自然免疫 単球 リンパ球 ウイルス防御 など 好酸球 好塩基球 マクロファージや 樹状細胞になる アレルギー反応 アレルギー反応 → 何が減っているのか,中身を確認しよう 慌てるのは、好中球が減っているとき 芽球 本来末梢には いない
#49.
好中球減少も「なぜ減った?」で考える ③体内で壊される 骨髄 ①作れない 組織 → (実働の場) ②使われる・組織に移る 感染時に遊走 ①骨髄で産生できない ②組織で消費され過ぎる ・薬剤性骨髄抑制(化学療法含む) ・重症感染症の消費 ・再生不良性貧血などの骨髄不全 ・遊走亢進 ・白血病細胞による置換 ③体内で破壊される ・薬剤性 ・脾腫での捕捉 ・免疫の関与
#50.
貧血パートと同じく、 “他の2系統”や全身状態をみる 汎血球減少 白血球系だけの異常 血液内科 Hb Hb 正常 ↓ 低下 WBC WBC ↓ 低下 ↓ 低下 芽球の出現 Plt Plt 原因が説明できない vs ↓ 低下 白血球のトラブルに絞れる 骨髄全体のトラブルを疑う 多くは一過性。②消費がメイン ①、③ B12/葉酸欠乏/MDS/再生不良/急性白血病 など ・感染徴候はあるか ・出血症状や凝固検査、全身状態はどうか 汎血球減少 末梢血に異常細胞 急速な血球低下 正常 患者の状態 相談
#51.
CASE 7 WB C 2,000。超緊急で血液内科? 何が増減している? いつから増えている? 症例 69歳男性 経過 数日前から発熱,倦怠感が続いており,近位受診。四肢に 点状出血を認め,血液検査で血球減少を指摘されて紹介受 診となった WBC 分葉核球 リンパ球 単球 芽球様 前骨髄球 Hb MCV 2,000 18.0 60.0 1.0 6.0 15.0 7.5 95.0 Plt 1.8万 PT-INR APTT 1.28 30 身体所見 四肢に点状出血、口腔内に血腫あり。 /uL % % % % % g/dL 好中球減ってる なんとなく急な変化 未熟な細胞でてる WBC少し低い 他の血球はどうか? 芽球や前骨髄球 が出てる まあまあ貧血 fl /uL 血小板低い 秒 ちょっと凝固 動いている? 貧血 血小板減少 患者の状態は? 発熱あり 凝固は少し動いてる 出血傾向+
#52.
APL(急性前骨髄性白血病)のDICは出血リスクが段違い!! PT-INR APTT Fib FDP 1.28 30 95 148 秒 mg/dL µg/mL 低Fibは PT/APTT延長に 影響しづらい
#53.
WBC 40,000 vs 2,000。どちらが緊急? 40,000 2,000 /μL リンパ球様の細胞 優位 ・Hb・Plt 大きく崩れない ・DIC 所見 なし ・全身状態 安定 急がずに鑑別すすめられる /μL 多系統低下 + DIC VS ・好中球↓・Hb ↓・血小板↓↓ ・フィブリノゲン ↓・FDP ↑ ・出血症状 あり 超緊急対応が必要 WBC の大きさ ≠ 緊急度 中身と全身状態がすべて
#54.
好中球が少ないと、何が困る?
#55.
好中球少ない + 発熱 は、エマージェンシー FN は感染症かどうかの確認作業を待たずに、対応(評価+治療)を始める!
#56.
FNを見たら、まず同時に動く
#57.
白血球異常を見たら、この3つ 1 白血球数 + 分画(血液像) + 絶対数 何が増えている? 何が減っている? 好中球?リンパ球?単球?芽球? %ではなく絶対数(ANC / ALC) 異常があれば末梢血像も確認 2 時間軸(急性/慢性) 一過性? 持続性? 感染・炎症・薬剤 → 短期間で動く 数週〜月単位で持続 → 腫瘍性も考える 急激な増減は緊急病態のサインになりうる 3 他の血球・全身状態 白血球だけ? 患者は危なくない? Hb・血小板も低い → 骨髄病変を疑う 芽球・明らかな異常細胞 → 血液腫瘍を疑う 発熱+好中球減少 → F N 血液内科への相談目安 自科でOK 相談検討 早急に相談 軽度・原因明瞭 状態が落ち着いている腫瘍性増殖 明らかな異常細胞やDICを伴う血球異常 ・典型的な感染症による WBC 上昇 ・化学療法中など、血球減少の原因がはっきり しているFN ・長引く WBC 異常 ・分画の偏り (リンパ球・単球の持続的な増加) ・芽球・明らかな異常細胞 ・複数系統の急速な血球減少 ・DIC を伴う血球異常
#58.
血液内科は内科的ダイナミックさが面白いところです 化学療法 待てない状況では ケモ!! 抗がん剤・ 分子標的薬
#59.
来年春ころ出版を目指して, 医学生~研修医~一般内科医のための 血液内科の参考書を執筆してます!! ご清聴ありがとうございました