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総合病院皮膚科
目次
・はじめに:ステロイドの作用機序と吸収経路
・ステロイド外用剤の剤形の種類と選び方
・本邦ではステロイド外用剤は強さに応じて、5つのランクに分類される
・ステロイドの吸収効率は部位によって異なる
・外用ステロイドの塗り方
・外用ステロイドの注意点その1
・外用ステロイドの注意点その2
・外用ステロイドの注意点その3
・外用ステロイドの注意点その4
・外用ステロイドの注意点その5
・最後に:皮膚科への紹介はお気軽に
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はじめに:ステロイドの作用機序と吸収経路 • ステロイドは細胞質内のステロイド受容体に結合し、NF-κβや AP-1といった転写因子を阻害し、抗炎症作用を示す1)。 • 同時に免疫抑制作用や細胞増殖抑制作用も有し、有害事象を引き 起こす。 • ステロイド外用剤は、経表皮・経付属器経路から吸収される。 • ステロイド外用剤の経皮吸収は角層の厚さ2)や剤形に左右される。 1) Barnes PJ. Molecular mechanisms and cellular effects of glucocorticoids. Immunol Allergy Clin North Am. 2005, vol.25, p451-468. 2) Malkinson FD. Studies on the percutaneous absorption of C14 labeled steroids by use of the gas-flow cell. J Invest Dermatol. 1958, vol. 31, 19-28.
ステロイド外用剤の剤形の種類と選び方 →発毛部はローション、それ以外は軟膏 ステロイド外用剤の剤形には軟膏、クリーム、ローションがある。 基本的にはどれを選んでも構わない。 (参考) • 抗炎症作用 :軟膏>クリーム>ローション※3) • べとつき :軟膏>クリーム>ローション ※薬剤により異なる 3) Boguniewicz M. Conventional topical therapy of atopic dermatitis. Atopic Dermatitis (Bieber T, et al, ed.), Mercel Dekker Inc, 2002.
本邦ではステロイド外用剤は強さに応じて、 5つのランクに分類される。 ランク 薬剤の例(一般名) Ⅰ群 ストロンゲスト クロベタゾールプロピオン酸エステル Ⅱ群 ベリーストロング 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン ジフルプレドナート Ⅲ群 ストロング ベタメタゾン吉草酸エステル フルオシノロンアセトニド Ⅳ群 ミディアム 吉草酸酢酸プレドニゾロン クロベタゾン酪酸エステル Ⅴ群 ウィーク プレドニゾロン 4) アトピー性皮膚炎ガイドライン, 2018 薬剤の例(商品名) デルモベート アンテベート マイザー ベトネベート,リンデロンV フルコート リドメックス キンダベート プレドニゾロン
ステロイドの吸収効率は部位によって異なる 頭皮 3.5 頬部 13.0 頸部 6.0 背中 1.7 腋窩 3.6 前腕内側 1.0 前腕外側 1.1 手掌 0.83 陰嚢 42 足首 0.42 足底 0.14 5) Feldmann RJ. Regional variation in percutaneous penetration of 14C cortisol in man, J invest Dermatol. 1967, vol.48, no. 2, p181-183.
どこにどのステロイドを塗って良いか ⇨体にはストロング、顔・首・陰部にはミディアム ストロング以下は処方箋なしで購入できるため
外用ステロイドの塗り方 →1日2回、0.5gで手の平2枚分 0.5gの目安 少しテカる ティッシュが張り付く <注意点> • 薬剤は擦り込まないように • ローション剤は必ず手に取る
外用ステロイドの注意点その1 →2週間以上の長期使用は控える 部位 ランク 局所性副作用 発生予想期間 顔面、頸部、陰部 全群 その他の部位 安全期間 2週以内 ストロンゲスト 4週以上 2週以内 ベリーストロング 6週以上 3週以内 ストロング 8週以上 4週以内 6) 島雄周平. ステロイド外用剤の外用期間と外用方法. 日本医事新報. 1993, vol. 3625, p135-136.
外用ステロイドの注意点その2 →外用過多は副腎皮質機能抑制のリスク 副腎皮質機能抑制が生じうる予想量7) ランク 成人 小児※ ストロンゲスト 10g/日以上 5g/日以上 ベリーストロング 20g/日以上 10g/日以上 ストロング以下 40g/日以上 15g/日以上 ※小児は(局所性、全身性)有害事象のリスクが高い 外用ステロイドの吸収が良く、体重あたりの体表面積が広いため ただし、上記外用量は皮膚科でもそれほど使うことはない。 7) 島雄周平. 外用ステロイド剤による全身的影響. Therapeutic Research. 1988, vol. 8, p222-231.
外用ステロイドの注意点その3 →感染症や潰瘍は避けること 外用ステロイドの適応:湿疹・皮膚炎群、虫刺され、など 湿疹の3徴:そう痒、多様性、点状状態 → 痒いところに外用する 外用ステロイドの禁忌: • 感染症:痛いところ、特に膿瘍は避ける。 • ステロイドによる接触皮膚炎の既往 • 潰瘍、2度以上の熱傷・凍瘡
外用ステロイドの注意点その4 →女性顔面、高齢者前腕への外用は慎重に 外用ステロイドの有害事象9):毛包炎、痤瘡、真菌感染、皮膚萎縮、皮 膚線条、毛細血管拡張、紫斑、多毛、色素脱失、酒さ様皮膚炎 酒さ様皮膚炎 • 女性に多い • 顔面の丘疹・紅斑 • 顔への外用を続けている となる • 治療:ステロイド中断する が、リバウンドがあり難治 紫斑(押しても消えない) • 高齢者に多い • 加齢、ステロイドによる皮膚 の萎縮、脆弱化が原因 • スキンテアの原因に • 治療:ステロイド中断+保湿 8) 相馬良直. ステロイド外用薬を長く使っていますが、副作用は大丈夫でしょうか。 皮膚科の臨床. 2021, vol. 63, no. 6, p734-737.
外用ステロイドの注意点その5 →眼周囲への外用は慎重に 粘膜部への外用は顔面、頸部、陰部に準じる。 眼周囲への外用は緑内障のリスク8) →短期使用に留める or 眼科受診を。 9)有川順子. アトピー性皮膚炎患者の眼圧と顔面へのステロイド外用療法との関連性についての検討. 日皮会誌. 2002, vol.112, p1107-1110.
外用ステロイドの注意点その6 →妊婦・授乳婦への外用は基本的にはOK 外用ステロイドは、ヒトにおいて催奇形性はない。 ストロンゲスト/ベリーストロングクラスのステロイドを長期大 量塗布すると低出生体重児のリスク10)。 乳頭部への外用直後の授乳は避ける11)。 10) Chi CC. Risk of intrauterine growth retardation, malformations and other birth outcomes in children after topical use of corticosteroid in pregnancy. Acta Obstet Gynecol Sand. 2002, vol.81, p234-239. 11) Butler DC. Safety of dermatologic medications in pregnancy and location: Part Ⅱ. Location. J Am Acad Dermatol. 2014, vol. 70, no. 417, e1-e10.
最後に:皮膚科への紹介はお気軽に • 2週間のステロイド外用で反応しない皮疹 • 広範囲にわたる皮疹 • 疼痛、潰瘍、膿瘍を伴う皮疹 • ステロイド外用の有害事象が出た症例。 以上の場合は皮膚科への紹介をご検討下さい。 皮膚科医がいない場合はAntaa QAへ 参考文献:塩原哲夫. ステロイド外用薬パーフェクトブック. 南山堂, 2015.