#4.
1. 脳梗塞の病型のおさらい 病型の詳細説明は脳神経内科の 他のスライドを是非ご参照ください! それらが一通りわかった上で、 退院時サマリー記載時の参考として 参照してください 心臓由来の塞栓子による脳梗塞。 心房細動(発作性/持続性/永続性、弁膜症性/非弁膜症性)や、 心不全、奇異性脳塞栓症(卵円孔開存症かつ、深部静脈血栓症や肺塞栓) 2) その他の 脳梗塞 17% 心原性 脳塞栓症 21% ESUS (塞栓源不明の 脳梗塞) 21% ラクナ 梗塞 21% アテローム 血栓性 脳梗塞 19% <脳梗塞発症病型の内訳1)> サマリー記載例① #1. 心原性脳塞栓症(発症日や病巣など) #2. 弁膜症性持続性心房細動(僧帽弁置換術後) サマリー記載例② #1. 心原性脳塞栓症(発症日や病巣など) #2. シャント性疾患(卵円孔開存症) #3. 深部静脈血栓症 脳動脈、頸動脈の有意狭窄による脳梗塞。 血栓閉塞やartery-to-artery塞栓、血行力学的な機序を含む。 TOAST分類※では有意狭窄は50%以上だが(当時は潰瘍病変などの 概念は明らかではなく)、50%以上の狭窄がなくても明らかに 責任病巣と考えられる場合はアテローム血栓性としても良い。 サマリー記載例 #1. アテローム血栓性脳梗塞 #2. 症候性右内頚動脈狭窄症(狭窄率●%、潰瘍性病変あり など) ※TOAST分類(Trials of Org 10172 in Acute Stroke Treatment:1993年に定義された脳梗塞の病型分類)
#5.
1. 脳梗塞の病型のおさらい その他の 脳梗塞 17% 心原性 脳塞栓症 21% ESUS (塞栓源不明の 脳梗塞) 21% ラクナ 梗塞 21% アテローム 血栓性 脳梗塞 19% <脳梗塞発症病型の内訳1)> 病型の詳細説明は脳神経内科の 他のスライドを是非ご参照ください! それらが一通りわかった上で、 退院時サマリー記載時の参考として 参照してください 2014年から提唱されている概念。 臨床的に塞栓症と考えられる脳梗塞だが、下記の検査で原因を特定 できない場合に用いる。 <最低限必要な検査>主幹脳動脈検査(MRA/超音波/CTA/DSA)、 12誘導心電図、24時間以上のホルター心電図、経胸壁心エコー <できれば追加する検査>経食道心エコー、大動脈CT/MRI、下肢静脈エコー 脳幹や皮質下のいわゆる穿通枝領域に20mm以下の病変を認める か、画像上責任病巣を認めないもの。 (責任病巣を認めない場合は特に)皮質症状を呈さず、古典的 ラクナ症候群を呈する。 20mm超えるものは「その他の脳梗塞」とする。
#6.
1. 脳梗塞の病型のおさらい 病型の詳細説明は脳神経内科の 他のスライドを是非ご参照ください! それらが一通りわかった上で、 退院時サマリー記載時の参考として 参照してください 「大動脈原性」、「動脈解離」、「穿通枝領域」、「その他の原因」、 「複数の原因」など その他の 脳梗塞 17% 心原性 脳塞栓症 21% ESUS (塞栓源不明の 脳梗塞) 21% ラクナ 梗塞 21% アテローム 血栓性 脳梗塞 19% <脳梗塞発症病型の内訳1)> ※大動脈原性:他の原因がはっきりせず、大動脈複合粥腫病変がある 場合に用いる(単に4mm以上のプラークだけでは不可) ※穿通枝領域:明らかな塞栓源や有意主幹動脈狭窄がないことが前提。 (BAD type) 前方循環(水平断>20mm、長軸>4スライス)の皮質下病変、 後方循環(腹側に達する橋梗塞) ※その他の原因:凝固異常、血管炎、血液疾患、巨大動脈瘤からの飛来血栓、 Trousseau症候群など 非若年層に比較し、若年層の脳梗塞は その他の脳梗塞に含まれるものが多い!
#7.
2. 若年性脳梗塞の鑑別 ◆若年性の定義は? ➢明確な定義はない。文献によっては40歳以下や50歳以下としている。 脳卒中データバンク2021では44歳以下の脳梗塞は全体の3.4%(男性:女性 68.9%:33.1%) 総合病院だとおよそ50歳強くらいまでは若年性としてスクリーニング採血を追加している印象。 ◆若年性脳梗塞だが、発症直後かつ意識障害や皮質症状があるとき ➢通常の脳梗塞緊急対応(脳神経内科の他のAntaaスライドを参照)をする。 緊急対応の後に鑑別を検討する。
#8.
2. 若年性脳梗塞の鑑別 ■脳梗塞の臨床病型 (%) 40 若年性でも上位3病型の比率は 高いが、上位3病型以外の 病型の占める割合は非若年より 多い 35 30 濃色(左):若年性 淡色(右):非若年性 25 20 15 10 5 0 心原性 脳塞栓症 アテローム 血栓性 脳梗塞 ラクナ 梗塞 動脈 解離 血管炎 その他・ 原因不明など ※文献3を参考に作成
#9.
2. 若年性脳梗塞の鑑別 ◆若年性脳梗塞でみられる原因の鑑別 <血管系> 脳動脈解離 もやもや病 Dolicoectasia 若年性脳梗塞の 危険因子は この3つが多い <凝固系の異常> 抗リン脂質抗体症候群 SLE 凝固異常(プロテインC/S欠乏症) 多血症 静脈洞血栓症 経口避妊薬 妊娠や分娩 DIC <血管炎など> Marfan症候群 大動脈炎症候群 アレルギー性血管炎 線維筋形成不全 <その他> CADASIL Fabry病 MELAS
#10.
2. 若年性脳梗塞の鑑別 ◆スクリーニングでオーダーすることが多い若年性脳梗塞の採血項目 ・一般項目(血算、肝機能・腎機能・電解質などの生化学) ・アンチトロンビンⅢ ・D-dimer ・プロトロンビン時間 ・活性化トロンボプラスチン時間 ・フィブリノゲン ・血中総ホモシステイン ・FT3、FT4、TSH ・BNP ・プロテインC/S抗原量 ・プロテインC/S活性 ・ループスアンチコアグラントdRVVT ・赤血球沈降速度 ※各鑑別疾患に合わせて追加オーダー 一般的にスクリーニングする目的で提出する 項目はこれらの項目を目安にしよう! ・抗核抗体 ・抗ds-DNA IgG抗体 ・抗CL.β2GP1 ・抗SS-A/SS-B抗体(CLEIA) ・C-ANCA ・MPO-ANCA ・ACE ・IgG型リウマチ抗体 ・可溶性IL-2レセプター ・ビタミンB12 ・葉酸 ・抗カルジオリピンIgG抗体
#11.
3.臨床兆候から推測する若年性脳梗塞 ◆若年性脳梗塞の臨床兆候 疾患 臨床兆候 SLE 貧血、皮膚や腎障害、女性多め 抗リン脂質抗体症 候群(APS) 繰り返す流産など、女性多め 高安病 血圧左右差、女性多め、頸部痛 もやもや病 頭痛、高次脳機能障害 疾患 臨床兆候 脳動脈解離 頭頚部の外傷の既往、頭 頚部痛、Horner症候群 アテローム血栓 性脳梗塞 一過性脳虚血発作(TIA)に 引き続く脳梗塞 心原性脳塞栓 症 皮質徴候(失語・偏視など) 遺伝性血栓性素因 家族歴、繰り返す脳梗塞 家族歴、繰り返す脳梗塞、片頭痛 小血管病 高血圧症、糖尿病 常染色体優性脳動 脈症(CADASIL) 卵円孔開存症 Valsalva負荷で発症 Fabry病 肺動静脈瘻 SpO2正常下限 家族歴、心筋症、腎障害、皮膚血 管角化症、四肢痙痛、角膜混濁、 難聴、めまい、発汗低下 ミトコンドリア病 脳卒中様発作、片頭痛、半盲、 けいれん、ミオパチー、聴力障害
#12.
3.臨床兆候から推測する若年性脳梗塞 ◆若年性脳梗塞の臨床兆候 疾患 臨床兆候 脳動脈解離 頭頚部の外傷の既往、頭 頚部痛、Horner症候群 アテローム血栓 性脳梗塞 TIAに引き続く脳梗塞 心原性脳塞栓 症 皮質徴候(失語・偏視など) 小血管病 高血圧症、糖尿病 卵円孔開存症 Valsalva負荷で発症 肺動静脈瘻 SpO2正常下限 <脳動脈解離の問診のポイント> ・頭頚部痛(「緩徐発症」>突然発症」(5:1程度)) ・頸を過度に回していないか(関節の音を鳴らす癖) ・カイロプラティックの利用 ・片肩だけ重い荷物をかけている ↑これらがよく挙げられるポイントではあるが、 実際は自然発生的に起こることが多い ※脳動脈解離は日本・アジア人では 椎骨脳底動脈系が多い (内頚動脈系17.4%、椎骨脳底動脈系81.2%) 5) ⇒後方循環の障害で起きうる症状に注目する
#13.
3.病歴・臨床所見から推測する若年性脳梗塞 ◆若年性脳梗塞の臨床兆候 <もやもや病の問診のポイント> ・一過性脳虚血発作(脱力発作) ・一過性の感覚障害 ・てんかん発作 ・意識障害(過換気に伴う) ・不随意運動(うち舞踏運動が67%) 6) ・突然の起立に伴うlimb shaking(責任血 管の対側の上下肢の不随意運動) ※20歳未満だと60~80% が虚血発作で発症、 成人では脳内出血、脳室内出血などが多い 疾患 臨床兆候 SLE 貧血、皮膚や腎障害、女性多め 抗リン脂質抗体症 候群(APS) 繰り返す流産など、女性多め 高安病 血圧左右差、女性多め、頸部痛 もやもや病 頭痛、高次脳機能障害 遺伝性血栓性素因 家族歴、繰り返す脳梗塞 CADASIL 家族歴、繰り返す脳梗塞、片頭痛 Fabry病 家族歴、心筋症、腎障害、皮膚血 管角化症、四肢痙痛、角膜混濁、 難聴、めまい、発汗低下 ミトコンドリア病 脳卒中様発作、片頭痛、半盲、 けいれん、ミオパチー、聴力障害
#14.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 ◆若年性脳梗塞の画像等検査 疾患 画像検査(生理検査含む) 疾患 画像検査(生理検査含む) SLE、APS 標準検査 脳動脈解離 CT angiography(CTA)、MRI・ A(含BPAS)、脳血管造影(DSA) 頸動脈エコー(頭蓋外の場合) 線維筋性異形成 頸動脈エコー、頸部MRA、腎動脈エコー 高安病 造影MRA、頸動脈エコー、造影CT、 FDG-PETなど アテローム 血栓性脳梗塞 頸動脈エコー、MRI、 MRA(含plaque imaging) もやもや病 MRI・A、CTA、DSA 心原性 脳塞栓症 心電図(24時間心電図、植込 み型心電計含む)、心エコー 遺伝性血栓性素因 標準検査 CADASIL 皮膚生検で血管平滑筋のGOM(+) 小血管病 MRI 卵円孔開存症 経食道心エコーや経頭蓋ドッ プラーのmicro bubble test、 下肢静脈エコー 肺動静脈瘻 胸部造影CT (※Notch3は33エクソンの巨大な遺伝子のため遺伝子検査に時 間がかかるため生検の方が簡便) Fabry病 MRAでdolicoectasia、腎生検、心筋生 検(※乾燥ろ紙血を用いた酵素活性測定と臨床症状の組み合 わせ、GLA遺伝子解析なども行う) ミトコンドリア病 CT、MRI、筋電図、筋生検、(※mtDNAの点変 異)
#15.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 ◆脳動脈解離の画像検査のポイント 撮像方法 みているもの 特徴 MRA 血流の信号 ・細い血管や血流が遅い血 管は見えない ・ルーティン撮像に含まれる (撮りながらそのままBPASを追加する か、検査後のCTAやDSAの追加を検討 できる) BPAS 血管の外径 (脳動脈解離において pearl and strings signの pearl(血管拡張・瘤形成) を評価できる) ・細い血管や蛇行は評価しに くい CTA 血流の有無 MRAより細かい血管も評価で きる DSA 血流 血流の入る速度や方向を評 価できる(一番精確だが、侵襲高い のが難点) 撮像方法 みているもの 特徴 MRI (T1WI) 血腫 ・亜急性期の血腫検出は thin sliceで可能 頸動脈エ コー 血管の外径・フラッ プ、血流のドップ ラーの確認 ・壁在血栓も同時に評価で きる ・CTAができない場合はVA の流速も参考にできる 若年性脳梗塞で 脳動脈解離を疑う臨床所見、 MRAで脳底動脈の描出不良があれば まずはBPAS追加、 さらにCTAやDSA追加を 検討しよう!
#16.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 イレギュラーパターン ですが、 考える練習をしましょう! ◆脳動脈解離の画像検査のポイント(実際の症例) <60歳代女性、頸部痛・頭痛とめまいで他科入院中、頭痛の鑑別のためMRI施行> MRI DWI ①右小脳半球に 新規梗塞巣あり (右PICA域?) MRA ②右椎骨動脈(VA) 低形成?閉塞? 解離? 頸動脈エコー・右VA MRI BPAS ③BPASは副鼻腔炎の影響で 血管径を評価するスライスが 見えにくかった ④頸動脈エコーで右VAは血管径が 確認でき、拡張期血流が消失して いるため、遠位側閉塞や動脈解離? (正しく撮像できれば、解離なら血管径が見えるはず) ※ご本人の許可を得て掲載
#17.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 ◆脳動脈解離の画像検査のポイント(実際の症例) 単純CT ⑤CTで右AICA域 に出血あり 3D CTA ⑥右VAの解離を疑っていた が、右AICAに動脈瘤あり MRA TOF ⑦改めてMRAを確認すると ⑥と同部位に血管拡張あり ※AICAは典型的にはBAの下1/3から分枝 ※ご本人の許可を得て掲載
#18.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 ◆脳動脈解離の画像検査のポイント(実際の症例) ➢右小脳半球の脳梗塞があり、MRI、MRA、BPAS、頸動脈エコー所見より 右VA解離によって右PICA域に脳梗塞が生じたものと疑った ➢追加撮像したCTAでは右VAの描出はなく、右AICAが解離・動脈瘤を形成し 出血を伴っていた。 ➢右小脳半球の通常PICA域の部位は無形性のためAICAからの灌流を受けており、 右AICAの解離によって右小脳半球の背側の脳梗塞が生じた。その後右AICAの 動脈瘤は出血した。(右VAの遠位側はおそらく低形成か。) ※PICA無形性(4‐26%)の場合はAICAからの血流で小脳下面が灌流される8) このように、CT/CTA・MRI/A・BPAS・頸動脈エコー等を用いて 血管支配や血管の破格(血管の様々な灌流パターン)を考える!
#19.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 ◆脳動脈解離の画像検査のポイント(実際の症例) 参考 <治療> 脳動脈解離は ①虚血症状の有無 ②解離部が頭蓋内か頭蓋外 ③解離部の瘤形成の有無 によって 本症例のように、 ①虚血発症で ②頭蓋内に ③動脈瘤形成がみられる 場合は抗血栓療法は禁忌と考え られているため9)、 一通りの画像検索をしましょう! ・安静、降圧のみ ・抗凝固薬や抗血小板薬を使用する が、いずれもガイドライン上はC~E(エビデンスレベル低)のため、症例毎の検討が必要
#20.
4.画像から鑑別する若年性脳梗塞 ◆もやもや病の画像のポイント 撮像 方法 みてい るもの MRA 血流の ・細い血管や血流が遅い血管 信号 は見えない DSA 血流 特徴 ・途絶血管の先のもや血管を 描出できる ・側副血行の発達の状態を評 価できる <注意点> ■20歳未満では60~80%の症例が虚血発作で発症 成人症例では60%以上が脳出血で発症する ■MRA・CTAで中大脳動脈(MCA)の M1の途絶を確認 ■DSAでもや血管を確認 (M1途絶の鑑別は慢性狭窄やtwig-like MCAなど)
#21.
Take home Message 1. まずは基本から。通常の脳梗塞の病型分類をしよう! ~若年性と言えど、多いのは主病型~ 2. 病歴を押さえよう! ~外傷や頭痛はある?家族歴や内服も重要なヒント~ 3. 若年性脳梗塞の鑑別を前提に、追加する画像検査を知ろう! ~MRIのいろいろな撮像方法、CT Angiography、脳血管造影、各種エコーを駆使しよう!~
#22.
参考文献 1)喜友名扶弥 第42回日本脳卒中学会学術集会(STROKE2017)日本人ESUS患者の臨床的特徴お よび長期予後 2)国立循環器病研究センター 脳内科診断マニュアル 3)藤岡雄介 若年性脳梗塞の臨床特徴 脳卒中31巻1号(2009.1) 4)峰松一夫ら 若年性脳卒中診療の現状に関する共同調査研究 若年性脳卒中共同調査グルー プ(SASSY-JAPAN). 脳卒中 2004;26:331-39より 5)松岡秀樹ら 脳動脈解離診療の手引き2009 6)金星匡人ら 初老期に片側舞踏病で発症したもやもや病の一例 臨床神経52巻1号(2012:1) 7)Ferro JM, et al.Aetiological diagnosis of ischemic stroke stroke in young adults.Lancet Neurol 2010:9:1085-96 8)松原俊二 椎骨脳底動脈系の発生、解剖、バリエーション. Niche Neuro-Angiology Confertrnce 2018 9)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会 脳卒中治療ガイドライン2021 CQ Ⅵ-a 動脈解離 に対して抗血小板薬の投与は推奨されるか?