テキスト全文
#1. 気候変動と医療 ゆきあかり診療所管理者
小林聡史
#2. Nansai K, Fry J, Malik A, Takayanagi W, Kondo N. Carbon footprint of Japanese health care services from 2011 to 2015. Resour Conserv Recycl. 2020 Jan 1;152:104525. 今回訳してみた論文 藤沼康樹先生がFacebook上でご紹介されてました。
昔から環境問題には興味があったので、訳してみることにしました。
国立環境研究所、シドニー大学、東大の公共健康医学専攻の先生らが執筆されてます(Drじゃないかも?)。
#3. 論文まとめ 日本全体の温室効果ガスのうち、ヘルスケアは4.6%を占める。
高齢化の影響もあり、その割合は年々増加傾向である。
不要な医薬品処方の削減、健康増進による疾病罹患や入院の予防、再生可能エネルギーの活用等が有効かもしれない。
日本だけでなく海外、より広く言えば地球全体を考えた“Planetary health”がこれからの時代は重要である。 全部読むのは面倒な方のために・・・
#5. 世界の人口と平均寿命は増加傾向 2000年 4.36年↑ 13.2億人↑ 世界の人口 平均寿命 72.04歳 74.4億人 2016年 2016年
#6. 平均寿命と医療費は相関関係あり 平均寿命 ∝ 医療費 特にOECD諸国では!
#7. 医療費は経済的な負担になる 医療費↑ 経済的負担↑ 2000年:3.375兆ドル
↓
2017年:6兆ドル
@OECD諸国
#8. ・・・だけじゃなく環境面でも負担に 医療費↑ 経済的負担↑ 環境的負担↑
#9. Q:
各国の温室効果ガス全体に占める、
ヘルスケアの割合は?
#12. 日本のヘルスケアの温室効果ガス排出事情 2005年 にはStudyがある でも2011年 の東日本大震災で発電燃料の構成に変化あり そこで2015年 にどうなったか?を調べました。
#14. 詳しくは読んでもわかりませんでした。 温室効果ガスインベントリ
産業連関表
総合エネルギー統計
国民医療費統計これら4つの指標を合わせて試算を行うことで、医療サービス毎の温室効果ガス排出量や、医療機関の調達品の温室効果ガス排出量を算出した。
#16. 4.6% 日本の温室効果ガスのうち、ヘルスケアの割合は?
#19. 介護サービス 施設サービス以外 施設サービス 公設介護サービス 固定資産形成:施設や機械、備品など 私設介護サービス 公設公衆衛生 私設公衆衛生 公設医療サービス 私設医療サービス 一般用医薬品 医療サービス 入院:25.1% 外来:22.7% 歯科 調剤:13.1% その他:産院、訪問看護ステーション、手術室、アイバンク、骨髄バンク、衛生検査センター、医療機器無菌化、治験 公衆衛生 営利組織 非営利組織 全体の約2/3を占めている! 家庭用常備薬 ヘルスケアサービスのカーボンフットプリントを、5つの大分類と16の小分類に区分
#21. カーボンフットプリントに貢献している購入商品の上位10 品目 当該カテゴリーのサプライチェーン全体で、重大なGHG排出量を直接排出しているトップ10のセクター 介護サービス 固定資産形成 医療サービス 公衆衛生
#22. 医薬品
電力
現場でのガス排出
卸売業
道路貨物輸送
雑多な医療サービス
廃棄物処理
不動産賃貸
人の輸送 カーボンフットプリントに貢献している購入商品の上位10 品目 当該カテゴリーのサプライチェーン全体で、重大なGHG排出量を直接排出しているトップ10のセクター 電力
医療サービス(入院)
医療サービス(非入院)
現場でのガス排出
道路貨物輸送
人の輸送
貨物の輸送
廃棄物処理
石油精製製品 医療サービス 不要な処方を減らす対策が有効かも 積極的に環境対策に取り組む商社と取引することが有効かも 再生可能エネルギーの活用などが有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも
#23. カーボンフットプリントに貢献している購入商品の上位10 品目 当該カテゴリーのサプライチェーン全体で、重大なGHG排出量を直接排出しているトップ10のセクター 電力
公衆衛生
現場でのガス排出
廃棄物処理(企業)
人の輸送
石油精製製品
道路貨物輸送
貨物の輸送
どれにも分類されない活動
廃棄物処理(公的) 公衆衛生 再生可能エネルギーの活用などが有効かも 再生可能エネルギーの活用などが有効かも 電力
現場でのガス排出
廃棄物処理
どれにも分類されない活動
医薬品
人の輸送
公衆衛生
工業用ソーダ薬品
紙
その他の工業用無機薬品 電気自動車等の技術革新が有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも
#24. カーボンフットプリントに貢献している購入商品の上位10 品目 当該カテゴリーのサプライチェーン全体で、重大なGHG排出量を直接排出しているトップ10のセクター 現場でのガス排出
電気
自己輸送(人)
飲食サービス
廃棄物処理
清燥
下水道処理
穀物製粉
医療用の紙織物
自己輸送(貨物) 介護サービス 電気
介護(施設サービス以外)
介護(施設サービス)
自己輸送(人)
現場でのガス排出
廃棄物処理
自己輸送(貨物)
石油精製製品
道路貨物輸送
米 水田からのCH4やN2Oの発生が関連しているかも
#25. カーボンフットプリントに貢献している購入商品の上位10 品目 当該カテゴリーのサプライチェーン全体で、重大なGHG排出量を直接排出しているトップ10のセクター 非住宅建設(非木造)
医療器具
その他の土木工学と建築
応用電子機器
卸売業
乗用車
非住宅建設(木造)
冷蔵庫とエアコン
情報サービス
道路貨物輸送 固定資産形成 電力
銑鉄
セメント
道路貨物輸送
自己輸送(人)
冷蔵庫とエアコン
自己輸送(貨物)
現場でのガス排出
石炭製品
石油精製製品 石灰石を原料としているため、割合が大きくなっている 電気自動車等の技術革新が有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも 電気自動車等の技術革新が有効かも リサイクル等で循環型経済を行うことが有効かも
#28. 2011年の日本の医療サービスにおける傷害疾病毎のカーボンフットプリントを年齢別に分けたもの 全体の58%を占める 感染症
悪性腫瘍
血液/免疫障害
内分泌代謝・栄養障害
精神行動障害
神経系障害
眼科疾患
耳鼻科疾患
心血管疾患
呼吸器疾患
消化器疾患
皮膚軟部組織疾患
筋骨格系疾患
泌尿生殖器疾患
妊娠出産
出生前診断
奇形や染色体異常
分類不能な症状徴候
外傷や中毒等の外的要因 全体の56%を占める
#29. 2011年の日本の医療サービスにおける傷害疾病毎のカーボンフットプリントを年齢別に分けたもの 全体の58%を占める 感染症
悪性腫瘍
血液/免疫障害
内分泌代謝・栄養障害
精神行動障害
神経系障害
眼科疾患
耳鼻科疾患
心血管疾患
呼吸器疾患
消化器疾患
皮膚軟部組織疾患
筋骨格系疾患
泌尿生殖器疾患
妊娠出産
出生前診断
奇形や染色体異常
分類不能な症状徴候
外傷や中毒等の外的要因 全体の56%を占める
#30. 2011年の日本の医療サービスにおける患者1人当たりの傷害疾病毎のカーボンフットプリントを入院と外来に分類 感染症
悪性腫瘍
血液/免疫障害
内分泌代謝・栄養障害
精神行動障害
神経系障害
眼科疾患
耳鼻科疾患
心血管疾患
呼吸器疾患
消化器疾患
皮膚軟部組織疾患
筋骨格系疾患
泌尿生殖器疾患
妊娠出産
出生前診断
奇形や染色体異常
分類不能な症状徴候
外傷や中毒等の外的要因 入院が外来の23倍多い 入院が外来の12倍多い 入院の方がカーボンフットプリントが多い
↓
外来患者の症状悪化を防ぎ、
入院を減らすことでカーボンフットプリント削減に繋がる
#33. 日本全体の温室効果ガス排出に占めるヘルスケアサービスの割合を、年次で分けてカテゴリー別に分類したもの 固定資産形成 医薬品 介護サービス(施設以外)
介護サービス(施設) 公衆衛生(営利)
公衆衛生(非営利) 雑多な医療サービス
調剤
歯科
外来
入院 医療や介護サービスからの排出量増加
→高齢化の影響もありそう
#36. サービスや製品の需要を減らす
(需要側) サービスや製品を作るのに必要な
温室効果ガスを減らす
(供給側)
#37. 例①不要な処方を減らす 処方されたまま使われない医薬品は、6500億円分に上ると言われている。
概算で1.24MtCO2eの温室効果ガス排出削減に繋がり、これは市販薬による温室効果ガス排出量(1.15MtCO2e)よりも多い。 サービスや製品の需要を減らす
(需要側)
#38. 例②再生可能エネルギー等の促進 再生可能エネルギー利用により、電力賛成時の温室効果ガス排出が削減できる。
ほかにも、例えば車を用いる際に電気自動車などエコな製品を用いることで、温室効果ガス排出を減らす。 サービスや製品を作るのに必要な
温室効果ガスを減らす
(供給側)
#39. 例③病気や入院の予防 多くの人は温室効果ガス排出の削減よりも、自身の健康に興味がある。
健康の促進は、病気や入院の予防に繋がり、結果として温室効果ガス排出の削減に繋がるかもしれない。 サービスや製品の需要を減らす
(需要側)
#41. 多くの医療機器や医薬品は輸入品! グローバルなサプライチェーンの中で生み出される温室効果ガスについても
目を向ける必要がある
#42. これからの時代は、“Planetary health” 自分だけでなく、地球も健康にしよう
#43. 論文まとめ 日本全体の温室効果ガスのうち、ヘルスケアは4.6%を占める。
高齢化の影響もあり、その割合は年々増加傾向である。
不要な医薬品処方の削減、健康増進による疾病罹患や入院の予防、再生可能エネルギーの活用等が有効かもしれない。
日本だけでなく海外、より広く言えば地球全体を考えた“Planetary health”がこれからの時代は重要である。