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発熱の赤ちゃんの救急対応について
#1. 救急外来に発熱の⾚ちゃんが来られました ー どう対応しますか︖ ー どっと@⼩児科
#2. はじめに どっと@⼩児科医 です 今回は、⼩児科救急で最も多い症候の⼀つである 「発熱」についてまとめたいと思います ー このスライドの主な対象者 ー ・初期研修医の先⽣ ・⼩児科後期研修医 ・久しぶりに⼩児科対応を含めた救急対応をする先⽣
発熱のポイントと熱型表の活用
#3. 発熱のポイント ① 救急を受診する発熱のほとんどは 感染症 ② 重要なのは 重症度 の評価 ③ 予防接種歴を確認する ④ 周辺の 流⾏状況 を確認する ⼩児では、ほとんどが⾃然治癒するウイルス感染症 数少ない細菌感染症や重症感染症を⾒逃さないことが⼤切
#4. 熱型表を活⽤しよう ・熱の程度 ・熱の持続期間 ・服⽤した薬とそのタイミング ・他の症状 もちろん救急には発熱当⽇という⽅も受診 されますが、34⽇続いている⽅では 客観的な情報源は有⽤ なるべく 熱型表 をチェックしましょう︕
発熱患児対応の流れと基礎疾患
#5. もくじ 1. 発熱患児対応の流れ 2. ⽣後3か⽉未満の発熱 3. ⽣後3か⽉以降の発熱 4. 検査や治療介⼊ 予防接種によって細菌性髄膜炎 などは著しく低下しています。 多くが軽症の中で、介⼊が必要な 患者を⾒分けることが重要です。
#6. 発熱対応の流れ 単純化したフローチャート 37.5度以上の発熱 全⾝状態不良 ⽣後3か⽉未満 注意が必要な基礎疾患 発熱3-4⽇⽬以降 経⼝摂取不良・脱⽔所⾒ 解熱剤を処⽅して帰宅 翌⽇かかりつけ受診を指⽰ 全例⼩児科コンサルト 注意が必要な基礎疾患の例 ・免疫不全症 養育者に普段通りか確認 必要に応じて⼩児科コンサルト ・代謝異常症 ・先天性⼼疾患 採⾎や補液 必要に応じて⼩児科コンサルト ・重症⼼⾝障害児 ・予防接種が未接種 *主治医が発熱時の対応を 指導していることもある
発熱の鑑別疾患と問診の重要性
#7. 発熱の鑑別疾患 ほとんどは感染症であり、多くは随伴症状で判断する 症状が乏しい場合 尿路感染症 や 髄膜炎 を疑う また、 川崎病 は常に頭にいれておく 感染症 最多 ▷ 上気道炎、咽頭炎、扁桃炎、胃腸炎 頻回 ▷ 中⽿炎、尿路感染症、肺炎、リンパ節炎、蜂窩織炎 稀に ▷ 髄膜炎、⾻髄炎、関節炎、⼼筋炎 免疫異常 川崎病 、若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患など その他 熱中症、うつ熱(こもり熱)
#8. 発熱患児の問診 現病歴 発熱の期間、熱の経過、熱以外の随伴症状(咳、⿐⽔など) ⾷事や⽔分の摂取状況、尿・便性状、服薬の有無など *可能なら、待合で熱型表の作成を依頼する 既往歴 反復感染しやすい疾患の既往(尿路感染症や中⽿炎など) 注意が必要な基礎疾患がないか 接触歴 ⼩児では家族や保育所などでの感染が圧倒的に多い RSウイルスや溶連菌などは診断や治療への近道になる また、⺟⼦⼿帳から予防接種歴や感染症などの確認も重要
発熱患児の身体診察の方法
#9. 発熱患児の⾝体診察 まずは第⼀印象をPAT法で評価する よろしければ「こどもの診察」 スライドもご参照下さい
#10. 発熱患児の⾝体診察 症状がある部位を主として 全⾝を観察 する 全⾝観察 ・⽪疹 ・表在リンパ節 ・結膜充⾎ 聴診 ・crackles ・wheezes ・左右差 腹部所⾒ ・視診+腸蠕動⾳ ・圧痛部位 ・腹膜刺激徴候 ⼝腔内 ・⼝腔内乾燥 ・咽頭発⾚ ・扁桃腫⼤+⽩苔 可能であれば ⿎膜 も観察
診断に有用な咽頭所見と川崎病
#11. 診断に有⽤な咽頭所⾒ ヘルパンギーナ ・咽頭⼝蓋⼸部に⽔疱や 潰瘍を形成する ・典型的には数個-⼗数個 溶連菌感染症 ・扁桃の発⾚、腫⼤、⽩苔 ・咽頭発⾚・点状出⾎ ・⾆乳頭の発⾚(いちご⾆) ⼿⾜⼝病 アデノウイルス ・⼝腔粘膜、⾆、⼝唇に ・扁桃の発⾚、腫⼤、⽩苔 ⽔疱や潰瘍を形成する ・⼿⾜はもちろん、膝や 殿部などにも出現する ・咽頭発⾚ ・咽頭結膜熱では結膜炎 を伴う
#12. 川崎病は常に頭に⼊れておく ① 発熱 (⽇数は問わなくなった) ② 両側眼球結膜の充⾎ ③ ⼝唇の紅潮、ひび割れ、いちご⾆ ④ 発疹 (BCG接種部位の発⾚を含む) ⑤ 四肢末端の変化 急性期︓⼿⾜の硬性浮腫、四肢先端の紅斑 回復期︓指先からの膜様落屑 ⑥ 急性期の⾮化膿性頚部リンパ節腫瘤 5項⽬以上で診断 、3-4項⽬でも他の疾患が除外される場合は 不全型川崎病 と診断
3か月未満の発熱に関する考慮事項
#13. 考慮が必要なパターン うつ熱(熱のこもり) 予防接種後発熱 低⽉齢児は熱がこもりやすい ⽣後2か⽉から始まる予防接種 38度前後の熱の出始め + 服装が厚着すぎる 少し環境を調整し 15-30分後に再度検温 特に肺炎球菌ワクチン接種後に多い *報告にもよるが5-10%程度は熱が出る 不活化ワクチン接種 48時間以内 + 24時間以内に解熱 感染症も否定はできないが 少し経過をみることも選択できる
#14. part.2 3か⽉未満の発熱 3か⽉未満の発熱 基本的に全例⼩児科コール うつ熱 新⽣児期は特に重症感染症のリスクが⾼く 全例⼩児科コール ⾝体所⾒のみでは重症度の評価は困難 ⾎液・尿・髄液検査を⾏い、⼊院管理 新⽣児 1-3か⽉児 基本的に全例 全⾝状態・哺乳量 ⼊院・精査 予防接種などから 適応を判断する ⽣後1か⽉以降は少しリスクが低下する ⾎液・尿検査は⾏い、結果と全⾝状態で判断
#15. 3か⽉未満児の発熱を対象としたクライテリア ⽣後60-90⽇未満を対象にした対応基準がいくつか報告されている ▷ Philadelphia Criteria, Rochester Criteria, Boston Criteria など 最近では 安曇野クライテリア や Step-by-Step法 なども有名である 簡単にまとめると、以下の4つ全てを満たせば低リスクと判断できる ① 5000 < WBC <15000 /μL ② 膿尿なし ③ 胸部レントゲンで異常なし ④ 髄液検査で異常なし
3か月以降の発熱と検査・治療介入
#16. 5段階チェックのStep-by-Step法 step.1 全⾝状態は不良か step.2 ⽣後21⽇以下か step.3 膿尿の有無 step.4 PCT ≦ 0.5 ng /mL step.5 CRP ≦ 2.0 mg /dL、 重症感染症のリスク評価 全てNoであれば 低リスク 感度 92.0% 陰性適中率 99.3% または好中球 ≦ 10000 /μL Validation of the “Step-by-Step” Approach in the Management of Young Febrile Infants. Pediatrics 2016, Vol.138 (2)
#17. part.3 3か⽉以降の発熱 3か⽉以降の発熱 ⽣後3か⽉以降 重症感染症のリスクは低下する 注意が必要な基礎疾患 全⾝状態と検査基準を意識して対応する 必要に応じて ⼩児科コンサルト 3か⽉以降の発熱の多くは「⾵邪」 発熱3-4⽇⽬以降 ⾵邪らしくない場合 経⼝摂取不良・脱⽔所⾒ 経⼝摂取不良を伴う場合 検査・介⼊ 解熱剤を処⽅して帰宅 かかりつけ医受診を指⽰ → 検査や介⼊を考慮する 特に2歳未満、39度以上、⾵邪症状がない場合は尿路感染を疑う * 基 本 的 に ⽣ 後 6か ⽉ 未 満 は 解 熱 剤 は 使 ⽤ し な い
#18. part.4 検査や治療介⼊ むやみな検査や介⼊は不要、適応を意識する 「こどもの診察」 スライドもご参照下さい
迅速検査の目安と解熱剤の処方
#19. 迅速検査の⽬安 感度・特異度・保険適応を意識する 項⽬ 検査の⽬安 溶連菌 3歳以上・発熱・扁桃所⾒・前頸部リンパ節腫脹など アデノウイルス 発熱・扁桃所⾒(特に⽩苔)・結膜炎・CRP⾼値 RSウイルス ⿐汁・咳・喘鳴(流⾏期は3ヶ⽉未満は積極的に検査) hMPV 発熱・咳嗽・肺炎を疑う所⾒ * 保 険 適 応 は 1歳 未 満 (ヒトメタニューモウイルス) * 保 険 適 応 は 6歳 未 満 で 肺 炎 が 疑 わ れ る 児 インフルエンザ 流⾏期における⾼熱・咳嗽・⿐汁 周囲で流⾏
#20. 解熱剤の処⽅について 基本的にアセトアミノフェンだけでOK 「⼩児科頻⽤薬」 スライドもご参照下さい
Take Home Messageと参考文献
#21. Take Home Message • 熱型表 を活⽤しよう • 全⾝状態が良好であれば、救急で⾏う必要のある 検査や治療はあまりない • ⽣後 3か⽉未満 の発熱は基本的に全例⼩児科コール
#22. 参考⽂献 • ⽷永知代ら. 乳児期早期発熱にどう対処するか︖-安曇野クライテリアの提案⼩児感染免疫. 2013, vol.24, No.4, 499-505 • 深沢千絵. 発熱. ⼩児科診療. 2021, 84(suppl):2-6 • Gomez B, et al. Validation of the “Step-by-Step” Approach in the Management of Young Febrile Infants. Pediatrics 2016, Vol.138 (2)