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もはや血糖を下げることが糖尿病薬の目的じゃない!?医師・薬剤師のHbA1cの先を見据えたチーム医療

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田中慧

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病棟で困らない糖尿病対応

投稿者プロフィール
Dr.Ito

順天堂大学医学部附属静岡病院

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概要

入院患者の血糖が300 mg/dL。とりあえずスライディングスケール?

絶食になったらインスリンは全部中止?

手術前の糖尿病薬はいつから止める?

そして、どこからが「普通の高血糖」ではなくDKAなのでしょうか。

本スライドでは、研修医が病棟で遭遇する糖尿病診療を、具体的な症例から整理します。

スライディングスケール(Correction insulin)の目的と定期インスリンとの違い、Basal・Prandial・Correctionの考え方、欠食・ステロイド投与・糖入り輸液への対応、病態に応じた入院中の血糖管理目標、さらに周術期に経口血糖降下薬やSGLT2阻害薬を休薬する理由とタイミングまで解説します。

また、入院中の血糖をきれいにするだけでは治療は完成しません。**本人はインスリンを打てるのか、内服は誰が管理するのか、自宅の食事量は入院中と同じなのか、転院先でその注射回数に対応できるのか。**治療開始時から退院・転院後の「最終形」を逆算して考えることも取り上げます。実際、病棟では自己注射・自己血糖測定の指導まで含めて退院後の治療を準備する必要があります。

後半はDKA実践編へ。pHだけでDKAを除外しない、血清Kが正常〜高値でも総体内Kは枯渇している、血糖が下がってもケトーシスが残れば治療を終えない――といった、救急・病棟で迷いやすいポイントを症例形式で考えます。

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テキスト全文

病棟における糖尿病対応の基本

#1.

研修医クルズス 01 クルズス|病棟における糖尿病対応 病棟で困らない糖尿病対応 ― 血糖値を見て、次に何をする? ― 研修医のための Insulin・絶食・手術・Steroid・DKA 順天堂大学医学部附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 伊藤 直顕

#2.

夕食前286。追加Insulinで終わり? PART 1 病棟で血糖値を見たら 02 まず食事・直前の投与・病態を確認する CASE 01 肺炎で入院した72歳 2型糖尿病/食事摂取5割 クレアチニン上昇/Steroidなし 夕食前血糖 286 mg/dL とりあえず Sliding Scale?

#3.

高血糖を見たら、5つ確認 PART 1 病棟で血糖値を見たら 03 血糖値ではなく、なぜ上がったかを見る 01 食事は入っている? 摂取量・糖入り輸液 02 基礎Insulinは入っている? 実投与も確認 03 感染・発熱・手術・Steroidは? 04 腎機能は? 昨日から変わった? 05 単発? 同じ時間帯に繰り返す?

#4.

治療開始前に、退院後の“最終形”を考える 「入院中にできる治療」と「退院後に続けられる治療」は同じとは限らない 入院時 ↓ 治療選択 ↓ 退院/転院後 ① Insulinを誰が打つ? 本人/家族 施設職員/訪問看護 ② 内服の管理者は? 自己管理の可否・認知機能 家族管理/一包化の必要性 ③ 退院後の食事は? 病棟は一定/自宅は変動 Prandial量を再評価 ④ 血糖測定は可能? SMBGの可否/現実的な回数 低血糖への気づき ⑤ 転院先で実施可能? Basalのみ/毎食前注射/Correction scale 血糖測定頻度/GLP-1等注射製剤の可否 病棟で最もきれいな治療ではなく、退院後も成立する治療を選ぶ PART 1 病棟で血糖値を見たら 04

Sliding Scaleの考え方と運用

#5.

Sliding Scaleは「今の高血糖」の補正 PART 2 Sliding Scale 05 Sliding Scaleは後追い治療 Correction insulin 現在の高血糖 追加Insulinで一時的に補正 Scheduled insulin Basal + Prandial 次の高血糖を予防する Correction insulin ≠ Scheduled insulin

#6.

毎回Correction。Scaleを強くする? PART 2 Sliding Scale 06 Correctionを何度も使うなら、定期量を見直す 朝 240 +2単位 昼 260 +2単位 夕 280 +4単位 翌朝 250 また高い 繰り返すなら、Basal / Prandialを見直す 血糖 mg/dL。教育用症例であり、当院Scaleの血糖区分ではない

#7.

当院Sliding Scaleの考え方 PART 2 Sliding Scale 07 全国共通のGuidelineではない Insulin非依存性 2単位から開始 2単位刻み Insulin依存性 1単位から開始 1単位刻み 当院運用例 血糖区分・上限・再連絡条件は現行指示を確認

#8.

病棟では、いつ血糖を測る? PART 2 Sliding Scaleと血糖測定 08 NPO中でも血糖測定を止めない 食事あり 毎食直前 +21時 食事なし 0・6・12・18時 妊娠糖尿病 朝食前+各食事 開始2時間後 当院運用例 周術期NPOは2–4時間ごとなど、病態で増やす

定期Insulinの役割と調整方法

#9.

Insulinを3つの役割に分ける PART 3 定期Insulin 09 食事量と血糖推移から、足りない役割を探す Basal 絶食でも必要な 基礎分泌を補う Prandial 食事・栄養に 対応する Correction 予想外の 高血糖を補正 定期量の中心はBasal+Prandial。Correctionを必要時に追加

#10.

退院前日になってから気づくと遅い CASE 84歳/2型糖尿病/独居/軽度認知機能低下 入院中 Basal-Bolus 4回注射で良好 退院前日 「自分では注射できません」 この治療、退院できますか? 入院時から、退院先を想定して治療を選ぶ Basal中心へ簡略化/低血糖リスクの低い内服を組み合わせる 家族支援/訪問看護/施設の対応可否を確認 薬剤選択は腎機能・食事・低血糖リスク・患者背景で個別化 退院調整は治療の一部 PART 3 定期Insulin 10

#11.

1型糖尿病でBasalを止めない PART 3 定期Insulin 11 食べない ≠ Insulin不要 1型糖尿病/Insulin依存状態 Basal中止 → 脂肪分解 → Ketone産生 → DKA 欠食でも基礎Insulinを確保。量と投与方法を個別に調整

#12.

絶食だからInsulinを全部止める? PART 3 定期Insulin 12 減量率は固定処方ではなく、調整の出発点 Basal 原則継続。低血糖リスクに応じて減量 Prandial 食事がなければ食事分は中止 Correction 血糖値・残存作用に応じて使用 当院の欠食目安:約70% / ADA周術期の長時間型:75–80%

特殊な病態におけるInsulin管理

#13.

食べていない。でも糖は入っている PART 4 特殊な病態 13 輸液の中止・減量時はInsulinも再評価 糖入り輸液にもInsulinの検討が必要 輸液・栄養 → 糖質量を確認 → 必要量を調整 末梢輸液と中心静脈栄養では糖負荷量が違う

#14.

Steroidは「いつ上がるか」を見る PART 4 特殊な病態 14 Steroid減量時は、低血糖を先回りする 朝のPrednisolone 昼〜夕方の高血糖 Prandial / NPHなどを調整 Dexamethasone 作用が長く続く Basalまで影響し得る 種類・投与時刻・投与回数・減量予定を確認

#15.

腎機能が悪化。昨日の量を続ける? PART 4 特殊な病態 15 低血糖を治した後に、次の投与を見直す まず確認 摂取低下・腎機能・残存Insulin・夜間血糖 量を再評価 クリアランス低下で作用が長引くことがある 血糖 <70 mg/dL 低血糖対応を直ちに開始し、約15分後に再測定 嚥下可能ならブドウ糖。意識障害・NPOでは院内の静注等の手順へ

周術期における糖尿病薬の取り扱い

#16.

なぜ術前に糖尿病薬を止める? PART 5 周術期 16 薬剤ごとのリスクから、休薬と代替治療を決める 絶食 低血糖を避ける 脱水・腎機能変化 薬剤蓄積や副作用を避ける 手術侵襲 予測しにくい血糖変動に対応 薬剤固有のリスク SGLT2:DKA/GLP-1:残胃内容

#17.

術前中止一覧|2026 PART 5 周術期 17 SGLT2再開:摂取・循環が安定し、ketoacidosisリスク解消後

#18.

GLP-1は「何日前」だけで覚えない PART 5 周術期 18 週1製剤を一律「1週間中止」としない 低リスク 継続可能な場合がある 高リスク 漸増期・強い悪心/嘔吐・腹満・高用量 対応を相談 24時間液体食・胃内容評価・麻酔調整・休薬 GLP-1 / GIP-GLP-1 麻酔科・処方医・施設protocolで個別判断

#19.

周術期は100–180 mg/dL PART 5 周術期 19 厳格管理より、低血糖を避けた安定管理 100–180 mg/dL 手術前・手術中・手術後で共有 予定手術:A1c <8%が一つの目安 NPO中は少なくとも2–4時間ごとに測定。術式・治療で頻度を調整

病態別の血糖目標と治療方針

#20.

全員100 mg/dLを目指さない PART 6 病態別の目標 20 目標血糖は病態で変える 非重症入院 100–180 重症/ICU 140–180 選択された一部 110–140 単位 mg/dL。一部患者の厳格目標は低血糖なく達成できる場合のみ 終末期・進行腎不全・低血糖高リスクなどでは より緩やかに。選択例で~250 mg/dLも許容

#21.

いつ治療を強化する? PART 6 病態別の目標 21 反復する高値を「その都度補正」で放置しない 持続する ≥180 mg/dL 24時間以内に2回確認 Insulinまたは他治療の開始・強化を検討 単発の値と持続高血糖を区別する

#22.

同じ血糖200 mg/dLでも、意味が違う PART 6 病態別の目標 22 値に病態と時間軸を重ねて、次の一手を決める 肺炎/Steroid 感染の推移/昼夕の高血糖を見る NPO/周術期 低血糖回避/100–180を基本に ICU/腎不全 140–180/背景により目標を緩める 妊娠 一般病棟とは別目標で管理

#23.

Ketone+Acidosisなら、話が変わる PART 7 DKA治療 23 DKAを疑った時点で、上級医へ連絡し初期評価 CASE 02 糖尿病+嘔吐・腹痛・頻呼吸 Glucose 220 mg/dL β-OHB 5.2 mmol/L HCO₃⁻ 14 mmol/L/pH 7.25 血糖220でも DKA?

DKA治療の基本と管理方法

#24.

DKA診断はD・K・Aの3条件 PART 7 DKA治療 24 血糖だけでは診断も除外もできない D:糖尿病/血糖 既知の糖尿病 または血糖 ≥200 K:Ketone β-OHB ≥3.0 または尿Ketone ≥2+ A:Acidosis pH <7.3 またはHCO₃⁻ <18 血糖 mg/dL、β-OHB・HCO₃⁻ mmol/L。3条件をすべて満たす

#25.

pH 7.31なら、DKAではない? PART 7 DKA治療 25 混合性酸塩基障害ではpHが隠される Glucose 286/β-OHB 6.2 pH 7.31/HCO₃⁻ 12/AG 25 pHだけで 除外する? HCO₃⁻低下+Ketone上昇を読む Glucose mg/dL、β-OHB・HCO₃⁻・AG mmol/L

#26.

K 5.2。体のKは足りている? PART 7 DKA治療 26 開始値で安心せず、Kの推移と尿量を追う DKA/K 5.2 mmol/L 浸透圧利尿・嘔吐によるK喪失 K補充は不要? 血清Kが高くても、総体内Kは不足 Insulin欠乏でKは細胞外へ。治療開始後は血清Kが低下する

#27.

DKA治療の4本柱 PART 7 DKA治療 27 血糖・Ketone・K・循環を同時に追う 輸液 循環と腎灌流を回復 K管理 低下を先読みして補充 Insulin Ketone産生を止める 誘因治療 感染・投与中断・薬剤などを是正

DKA治療における輸液とInsulin管理

#28.

輸液は、まず循環を戻す PART 7 DKA治療 28 固定速度で流し続けず、患者を見て調整する 等張生食 または 平衡晶質液 心・腎障害のない成人:500–1,000 mL/h 初期2–4時間。その後は循環・出納で調整 高齢・心不全・腎不全では少量ずつ(例:250 mL)投与して再評価

#29.

Kを見てからInsulinを始める PART 7 DKA治療 29 K目標 4–5 mmol/L。腎機能・尿量と合わせて調整 K <3.5 mmol/L K補充を優先 K >3.5までInsulinを待つ Kを確認後、標準静注Insulin 0.1単位/kg/h K <5.0で補充を検討し、4–5 mmol/Lを維持 K測定:Insulin開始2時間後、以後4時間ごと

#30.

血糖230。Insulinを止める? PART 7 DKA治療 30 血糖が下がってもDKAは終わっていない Glucose <250 mg/dL Insulinを減量 通常 0.05単位/kg/h + 5–10% Dextrose を追加 Ketosisが改善するまでInsulinを継続

#31.

DKAの終了はβ-OHBで確認 PART 7 DKA治療 31 AGや尿Ketoneだけで終了を決めない β-OHB <0.6 mmol/L + pH ≥7.3 OR HCO₃⁻ ≥18 mmol/L 血糖は理想的には <200 mg/dL 皮下Basalを静注終了の1–2時間前に重ねる

研修医が覚えるべき重要ポイント

#32.

HCO₃⁻が低いまま。まだDKA? PART 7 DKA治療 32 Clが高いだけで終了とは判断しない β-OHB 0.4/HCO₃⁻ 14 Cl 118/AG 10/pHは未測定 終了条件を 満たしている? 高Cl性Acidosisを考え、pHも確認 電解質・β-OHB mmol/L。pH ≥7.3なら終了条件を満たす

#33.

DKAで迷ったときの確認順序 PART 7 DKA治療 33 数字の動きを病態として読む 診断 D・K・Aを確認。pH単独で除外しない 初期治療 循環を戻す。K <3.5 mmol/LならInsulinを待つ 血糖低下後 Dextroseを足してKetoneを止める 移行 β-OHB+酸塩基で確認し、基礎を重ねる

#34.

研修医が病棟で覚える7つ TAKE HOME 34 01 病態と退院後の生活を見て治療を決める 02 Sliding ScaleはCorrection。定期量の代わりではない 03 1型糖尿病のBasalを止めない 04 絶食ではPrandial中止、Basalは必要に応じ減量し継続 05 周術期目標は100–180 mg/dL 06 SGLT2は術前3日、ertugliflozinは4日前から中止 07 Ketone+AcidosisならDKAとして動く 血糖値を治療するのではなく、 患者の病態を治療する

Backup:糖入り輸液と妊娠時の目標

#35.

Backup|糖入り輸液の当院目安 BACKUP 35 栄養分と基礎分を区別し、中断時の対応も指示 当院運用例:ヒューマリンR混注。固定処方として自動適用しない

#36.

Backup|造影とMetformin BACKUP 36 「造影=前後2日」の固定ルールだけで判断しない 判断に必要 eGFR・AKI・静脈内/動脈内・施設protocol 海外推奨 ACR:AKIなし・eGFR ≥30の静脈内造影は継続可 国内添付文書 原則検査前に中止、投与後48時間は再開しない eGFR単位 mL/min/1.73 m²。国内添付文書・施設運用で再評価

#37.

Backup|妊娠は別の目標 BACKUP 37 一般病棟の100–180を妊娠へ流用しない 空腹時 <95 食後1時間 <140 食後2時間 <120 単位 mg/dL。食後は1時間または2時間の施設採用時点で評価 当院の妊娠糖尿病:朝食前+各食事開始2時間後 産科・糖尿病チームで低血糖を避けて個別化

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