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ばりすた@脳神経内科医

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ニガテな高次脳機能評価を克服しよう!失語編①

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ばりすた@脳神経内科医

総合病院

内容

失語の評価を学ぶことで緊急疾患から変性疾患まで的確に病態を捉え、適切なケアに繋げることができます。失語の評価・分類を学びたい、知識を整理したい医学生、研修医、内科専攻医の先生のお役に立ちましたら幸いです。

◎目次

・このスライドを作った人

・このスライドの対象

・このスライドで伝えたいこと

・失語については今も議論が多い

・なぜ失語の評価が大切なのか

・救急で役立つ意識障害と失語の区別

・まずは自発的に話をさせる

・自発話では何を評価すれば良い?

・失構音と構音障害の区別は一貫性に注目

・語性錯語と音韻性錯語

・喚語障害では指示語が増える

・失文法は喚語困難と見分けがつきにくい

・物品呼称は低頻度語も評価を

・復唱は単語レベルから文レベルまで

・聴理解も、単語レベルから文レベルまで評価しよう

・まずは流暢性か非流暢性か

・疾患によって失語の経過が違う

・Broca失語の落とし穴

・Wernicke失語の落とし穴

・まとめ

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

参考文献

  • 高次脳機能障害の理解と診察 平山和美 中外医学社 2017

  • 失語症臨床の基本的諸問題 本村暁 認知神経科学 22:68-77, 2021

  • 失語症の診療-最近の進歩 大槻美佳 臨床神経 48:853-856, 2008

  • 失構音/発語失行 高倉祐樹ら 神経心理学 34:38-44, 2018

  • 日本語における失文法-統語処理から見た障害特徴 菅野倫子 高次脳機能研究 33:212-220, 2013

  • Broca 野・Wernicke 野・弓状束の真実? 河内十郎 高次脳機能研究 37:201~204, 2017

テキスト全文

  • 1.

    ニガテな高次脳機能評価を 克服しよう!失語編① ばりすた☕脳神経内科医

  • 2.

    このスライドを作った人 ばりすた☕脳神経内科医 脳神経内科専門医 総合病院勤務 Twitter:@bar1star 分かりやすい医療情報発信 フォロワー3万7000人↑ コーヒーインストラクター検定2級 (そんなに凄くない)

  • 3.

    このスライドの対象 1 2 3 医学生 試験に出るから勉強したいけど、教科書よく分からん… そんな学生に。 研修医 脳神経内科ローテでプレゼンしなきゃいけないけど、 上級医からネチネチつっこみをくらってしんどい研修医に。 内科専攻医 患者さんの言語障害を適切に評価したいけど、評価方法 も記載方法も自信がない内科専攻医に。

  • 4.

    このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 なぜ失語の評価が大切なのか そしてややこしいのか? 評価 患者さんの何をどう見れば 失語を評価できるのか? 分類 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?

  • 5.

    このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 なぜ失語の評価が大切なのか そしてややこしいのか? 評価 患者さんの何をどう見れば 失語を評価できるのか? 分類 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?

  • 6.

    失語については今も議論が多い • 実は今もなお失語の症候・病巣・病因について 議論は多く、統一された結論はない • 「失語は言語の能力が脳の障害によって 低下した状態」とひとまず捉えておこう • 運動性・感覚性・復唱の可否で分類するのが 臨床的にはラク(後述) • 脳疾患を詳しく診る上では、+αの理解が必要

  • 7.

    なぜ失語の評価が大切なのか 失語の評価が適切にできると、 • 病巣の特定や疾患の診断に役立つ • 言語コミュニケーションの障害のメカニズムが 理解できる • 代替手段でのコミュニケーションやケアに役立つ 運動性失語では、分かっているのに言葉が出せないという ストレスは非常につらいものです。 このような知識の引出しを増やすと診療の幅も広がります。

  • 8.

    救急で役立つ意識障害と失語の区別① • 意識障害の鑑別はAIUEOTIPS → 時間がかかる • 脳卒中の場合、脳血栓回収など超緊急治療の Golden Timeを逃さないことが重要 • 麻痺がはっきりせず失語のみの脳卒中もある • 手っ取り早く意識障害か失語かを区別したい

  • 9.

    救急で役立つ意識障害と失語の区別② • 意識障害: 脳機能全般の障害のため、代替の コミュニケーション手段も無効なことが多い • 失語: バンザイの模倣など、代替の コミュニケーションは保たれることがある 自分が宇宙人に攫われたと想像してみましょう。 意味分からないことを言われながらしつこく手を上げてきたら、言葉が まるで通じなくても、ひとまずバンザイを真似したくなりますよね? それができるなら、意識障害ではなく失語の可能性があります。 麻痺や半側空間無視なども見つつ、脳卒中を鑑別の上位にしましょう。 このように、失語の理解は救急の咄嗟の判断にも役立ちます。

  • 10.

    このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 なぜ失語の評価が大切なのか そしてややこしいのか? 評価 患者さんの何をどう見れば 失語を評価できるのか? 分類 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?

  • 11.

    まずは自発的に話をさせる 失語を評価する際の流れは、 ①患者に話をさせてそれを聞く(自発話) ②ものの名前を答えさせる(物品呼称) ③検者の言葉を真似させる(復唱) ④検者の言葉の理解度を確認する(聴理解) とすると良い。さらに ⑤文字を読む(読字) ⑥文字を書く(書字) も評価できるとなお良い

  • 12.

    自発話では何を評価すれば良い? 自発話の評価時は、 • 失構音 • 錯語 • 喚語困難 • 文法の誤り など に注目しよう! 病歴聴取をしながら評価をすると、 効率が良いです。 「いつからどんな症状でお困りですか?」 「何か持病はありますか?」 などの質問をして病歴を確認しつつ、失語 の要素がないかにも注意を払いましょう。

  • 13.

    失構音と構音障害の区別は一貫性に注目 • 失構音は、構音の歪みや音の途切れを伴う • 「道路」と言いたいときに、 「おぅ……ど、どぅ……おも」のようになる → 歪みや途切れに一貫性がない! • 構音障害は(主に運動野の障害による) 舌や口の麻痺による発声の障害 → 「タ」は良いけど「パ」はダメ、などの一貫性!

  • 14.

    語性錯語と音韻性錯語 • 「カエル」→「カメ」など、 別の言葉と間違えてしまうのは語性錯語 • 「カエル」→「タエル」など、 別の音と間違えてしまうのは音韻性錯語 • 音韻性錯語がある場合、病巣には 右図の赤丸の領域が含まれる 縁状回

  • 15.

    喚語障害では指示語が増える • 喚語障害 → 単語が思い出せない • 「あれ」「これ」などの指示語が増える • 「カエル」と言いたいときに 「トカゲ…ヘビ…じゃなくて……」 と、近い言葉を言ったり 「あの、緑で……」 と、遠回しな表現になる • 病巣は赤丸の領域が含まれる

  • 16.

    失文法は喚語困難と見分けがつきにくい • 「風で…キャップを…いました。棒を…頭を…」 のような発話 • 文の構造処理の障害のため、助詞を付与でき なかったり、誤った助詞になったりする • 動詞が思い出せないことにより失文法のように 見えてしまうことがあるので注意 • 能動態と受動態の切り替え課題が評価しやすい • 言語が違うので、日本の失文法と、英語の agrammatismでは中身が違うため文献を読むときは注意

  • 17.

    物品呼称は低頻度語も評価を • 物品や、物品の絵を見せて名前を答えてもらう • ベッドサイドにあるものでも良い 例:コップ、歯ブラシ、眼鏡、時計 など • 軽度の障害を検出するためには、低頻度語の評価 例:聴診器、音叉 など • 物品の絵のカードを用意しておくと便利 (タブレットで画像を見せるのも良い)

  • 18.

    復唱は単語レベルから文レベルまで • 「私の言った言葉を繰り返してください」 と指示して、復唱してもらう • まずは単語→徐々に語数を増やした文章 例:「遠足に行きました」 「みんなで力を合わせて綱を引きます」 「新しい甘酒を5本の瓢箪に入れなさい」 • 赤丸の領域が障害部位に含まれる など

  • 19.

    聴理解も、単語レベルから 文レベルまで評価しよう • ここまでの診察がスムーズにできていれば、 基本的に聴理解は問題ない • 単語レベルの評価は物品を並べ、 「〇〇はどれですか?」と聞く • 文の理解を評価するには 「立ってください」 「目をつぶってください」 「鉛筆でハサミを触ってください」 「ハサミで鉛筆を触ってください」などと聞く

  • 20.

    このスライドで伝えたいこと 1 2 3 背景 なぜ失語の評価が大切なのか そしてややこしいのか? 評価 患者さんの何をどう見れば 失語を評価できるのか? 分類 とった所見をどうまとめて 分類すればよいのか?

  • 21.

    まずは流暢性か非流暢性か • まず失構音の有無などで非流暢性か流暢性かを分ける • 非流暢性失語≒運動性失語、流暢性失語≒感覚性失語 とてもざっくりした失語の古典的な分類 失構音 聴理解 復唱 運動性失語 ある 良い できない 超皮質性運動性失語 ある 良い できる 感覚性失語 ない 悪い できない 超皮質性感覚性失語 ない 悪い できる 伝導失語 ない 割と良い できない • 伝導失語は音韻性錯語が必発 • 会話で復唱ができてしまうと失語が過小評価されがち

  • 22.

    疾患によって失語の経過が違う • 脳卒中は、脳の障害で強い症状が出た後、 徐々に代償され得る → 喚語困難や失構音が改善したりする • 脳変性疾患では、初期は軽い要素から始まり、 徐々に進行したり、別の要素が障害される • 具体的な疾患やモデルケースは次回!

  • 23.

    Broca失語の落とし穴 • Broca失語は、赤丸の領域の損傷で起こる • 失構音と喚語障害が必ずあり、 音韻性錯語や単語の聴理解障害も起こり得る → つまりBroca失語は感覚性の要素がゼロとは限らない • Broca野(Broadmann44,45野)は青丸の下前頭回後部 • Broca野の障害では喚語障害と意味理解障害だけが起きる → つまりBroca野の障害=Broca失語ではない!

  • 24.

    Wernicke失語の落とし穴 • Wernicke失語は、赤丸の領域で起こる • 失構音が無く、音韻性錯語、喚語障害、 著しい聴理解障害が特徴 • Wernicke野(Broadmann22野)は、 青丸の上側頭回後部 • 近年の研究では、Wernicke野の障害では、 単語の理解障害は起きないのでは? とも言われている

  • 25.

    まとめ • 失語の評価を学ぶことで、 緊急疾患から変性疾患まで的確に病態を捉え、 適切なケアに繋げられる • 自発話から評価を始め、失構音、錯語、 喚語困難、失文法、復唱、聴理解をチェック • 流暢性か非流暢性かで大きく分け、 古典的な5つの型に分類するのが良い

  • 26.

    参考文献 • 高次脳機能障害の理解と診察 平山和美 • 失語症臨床の基本的諸問題 本村暁 • 失語症の診療-最近の進歩 大槻美佳 • 失構音/発語失行 高倉祐樹ら 中外医学社 認知神経科学 22:68-77, 2021 臨床神経 48:853-856, 2008 神経心理学 34:38-44, 2018 • 日本語における失文法-統語処理から見た障害特徴 菅野倫子 高次脳機能研究 33:212-220, 2013 • Broca 野・Wernicke 野・弓状束の真実? 河内十郎 2017 高次脳機能研究 37:201~204, 2017

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