下痢症

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近藤 猛

近藤 猛

名古屋大学医学部附属病院

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下痢症の原因と分類、治療。抗生剤を使う時は?

下痢症

1. 下痢症 音羽病院シニア3年次 近藤 猛 2010.7.28
2. 20歳男性 生来健康 当日より頻回の下痢、悪寒、高熱 食欲もなくしんどいために来院
3. 下痢, 発熱で確認べきこと 症状 全身症状の強さ: 発熱, 脱水 嘔吐・嘔気⇔下痢の強さ, 回数, 性状(血便など) しぶり腹があるか 随伴症状: 発熱, 関節痛, 嘔吐, 上気道症状 体重の変化 水分は摂取できている? 基礎疾患 暴露 周囲の流行, 食物, 旅行歴, 性生活歴, ペット 食べ物は遡れるだけ遡る 社会的状況 1人暮らし? 周囲のサポートはある?
4. 「先生、1時間前に食べたから揚げに当たったんじゃないかと思うんですよ? それより前に食べたもの・・・? うーん」 いわゆる「食中毒」、侵襲性の細菌性下痢の潜伏期間は数日以上でありしっかり過去まで食事歴を遡る
5. 20歳男性(2) 生来健康 実は2日前にホルモンを食べた 当日より頻回の下痢、悪寒、高熱 下痢は茶色水様便で、トイレに行ったのにでないこともある 食欲もなくしんどいために来院
6. 感染性腸炎の分類 小腸型 大腸型 先行型
7. 小腸型 非炎症性(毒素によるもの) or 表面的な浸潤 血便はともなわず発熱は軽度 悪心・嘔吐といった上部消化管症状が強い 原因 ウイルス(ノロ, ロタ) 細菌(コレラ, ETEC, 黄ブ, Clostridium perfringens, Bacillus cereus) 原虫(ジアルジア, クリプトスポリジウム)
8. 大腸型 炎症性(侵襲性, 細胞毒性) 便中白血球が出る 血便, 粘液便, 発熱を伴う 抗生剤の適応となることがある 原因 E.Coli(EIEC, EHEC) Salmonella enteritidis Shigella Vibrio parahaemolyticus Campylobactor jejuni
9. 穿孔型 腹部症状より発熱, 敗血症が前面に出る 原因 Salmonella typhi Yersinia enterocolitica Capmpylobacter fetus
10. 便培養はだす? 出すべき 大腸型の症状 旅行歴がある 重症感が強い 出すべきでない あきらかなリスクのない小腸型 入院2日以上たっている エルシニア, キャンピロは症状のみで否定するのは難しく、 特殊な培養がいるため明らかな否定できないときには チェックをする
11. 虫卵? 寄生虫危険因子 長引く下痢 流行地域への旅行後 保育園に通う子供 男性同性愛者 AIDS 水資源由来の集団発生 赤痢 想定するもの ランブル線毛虫, Cryptosporidium, 赤痢アメーバ 間欠的に便中に排泄されるため繰り返しとる
12. 便のGRAM染色は? 細菌が見えたら感染症? 白血球の見える視野がよい? やる意味がない?
13. 便GRAM染色の意義 便中白血球 Campylobactor J Clin Microbiol. 2001 39 266- 11136781[PMID]
14. 便中白血球 外来 白血球≧1/HPF 感度 57% 特異度89% LR5.0 入院(CD腸炎) 白血球≧5/HPF 感度 10% 特異度97% LR3.4 J Clin Microbiol. 2001 39 266- 11136781[PMID]
15. 菌はどこ? (1)
16. 菌はどこ? (2)
17. 治療 まず基本は水分摂取 抗生剤が必要な状況は限られる
18. 経口補水法(Oral Rehydration Therapy) 軽度から中等度の下痢では点滴と効果は同等 飲ませるものは OS-1などの市販の経口補水液 味噌汁, お茶を交互に飲む 重湯に食塩を加える スプーンなどの少量頻回より開始 4時間で500ml程度を目指す
19. O’Shea M.「体液と電解質の管理, 内科療法マニュアル」ワシントン大学, ミズーリ州, セントルイス, 1992(TNT ワークブック第2版より(2010.6.20)) より理解を深める! 体液電解質異常と輸液 改訂2版(2006.6.20)
20. 経口補液の成分
21. 抗生剤を使う状況 大腸型の疾患 重症度が高いもの 起炎菌ごとに判断
22. 最低限おさえる起炎菌 Salmonella Campylobactor 大腸菌 Yersinia
23. Salmonella(non typhi) Typhiは途上国で問題になり渡航歴があれば注意(Shigellaも) 鶏肉・鶏卵をはじめとした様々な食べ物が原因となる 潜伏期間は8hr-2日 大腸型がメインだが軽症では小腸型となる
24. 治療適応は 2-3日で軽快する 抗生剤治療が保菌期間を長引かせる →重症以外は治療しない 幼児(-3歳), 50歳以上の者 細胞免疫性障害(HIV, 臓器移植患者, 悪性疾患) 人工骨頭, 人工関節, 腎臓便疾患, 腎不全 治療例: シプロキサン 200mg 5錠分2 3日間
25. Campylobactor jejuni Jejuni以外は菌血症・全身症状が強い 鶏肉などの腸管内に住み食中毒の原因となる 潜伏期間は2-5日間 基本的に大腸型だが小腸様のこともあり 症状は2-3日から1-2週間 たまに右下腹部のみに強く出て虫垂炎に似る
26. 治療適応は 基本的には抗菌薬は不要 前述のサルモネラと同じRisk Factorのあるものは治療適応 治療例: ジスロマック250mg 2錠内服後、1錠を4日間内服
27. 大腸菌 毒素原性大腸菌 ETEC:ENTEROTOXIGENIC ESCHERICHIA COLI 旅行者下痢症 腸管侵入性大腸菌 EIEC:ENTEROINVASIVE E. COLI 腸管病原性大腸菌 EPEC: Enteropathogenic Escherichia coli 汚染した食物やヒト-ヒト感染 先進国では問題になりにくい 腸管出血性大腸菌 EHEC:ENTEROHEMORRHAGIC E. COLI 腸管内にいる時間は短く下痢後1週間でHUSを起こす頃には培養でも出ないことが多い 腸管集合性大腸菌 EAggEC:Enteroaggregating E. coli 旅行者下痢症の原因の一つ
28. 治療の際には 旅行者下痢症は治療してもよい 治療例: シプロキサン 200mg 5錠分2 3日間 or ジスロマック 500mg/day 3日間 EHECは発熱・腹痛といった大腸侵襲性の症状よりも血便そのものが強い その場合は抗生剤は控える
29. Yersinia Enterocolitica, Y. pseudo… 低温(4℃)で成長可能で冬に多い 生かき、豚腸, 鉄過剰状態はリスク 冷蔵庫の肉も安全でない 水様下痢から大腸型までいろいろ 右下腹部痛のみを来たし虫垂炎をきたすことも
30. 合併症があれば治療 敗血症 腸間膜リンパ節炎 滲出性咽頭炎 治療例: セフトリアキソン 2g 12時間毎 + シプロキサシン 200mg 5錠分2
31. まとめると 大腸型かつ重症度が高い リスクファクターがある 幼児(-3歳), 50歳以上の者 細胞免疫性障害(HIV, 臓器移植患者, 悪性疾患) 人工骨頭, 人工関節, 腎臓便疾患, 腎不全 全身症状が強い 場合には便培養を提出し治療する 血便ばかりが強い場合には要注意!