喘息患者へのアプローチ

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近藤 猛

近藤 猛

名古屋大学医学部附属病院

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ERでの喘息患者へのアプローチ、その治療。一般症例から重症例まで。

喘息患者へのアプローチ

1. 31歳男性 「うつ病」にてDAIG○病院かかりつけ ここ数年秋に長引く咳に悩まされることが多かったが医者にはかかっていなかった 今年の秋は夜に時々息苦しいこともあったが座るとましになるため様子を見ていた 本日より呼吸苦が出現、様子をみていたががまんできなくなり深夜2時に救急車をコール
2. ERでの喘息 2009 6/27音羽病院 ERレクチャー 音羽病院シニアレジデント2年次 近藤 猛
3. 31歳男性 本日より呼吸苦が出現、様子をみていたががまんできなくなり深夜2時に救急車をコール SpO2 96% Wheezeはなし, 息を苦しそうにしておりしゃべることもできない あれあれまたいつもの過換気? 「ほ~らゆっくり息をしてね」
4. なにがあったら喘息? 夜間に増悪する咳 季節性の増悪 小児ぜんそくの既往(75%が7歳以下で診断) Wheeze 呼吸困難 起座呼吸
5. そもそも喘息とは? 慢性の炎症による可逆性の気道閉塞
6. Wheezeが聞こえないから安心?Wheezeがひどいから重症? Wheezeは喘息の重要な徴候 でもWheezeがなくても重症な喘息はあり 軽症な喘息でもWheezeはある Wheezeのみでは重症度は判定できない では他に喘息の重症度に重要なものは? UpToDate 17.1 Diagnosis of asthma in adolescents and adults
7. 喘息が重症≒気道閉塞が高度 起座呼吸 会話ができない(単語>文章) 頻呼吸 頻脈 I:E比の低下 胸鎖乳突筋の使用 奇脈 UpToDate 17.1 Diagnosis of asthma in adolescents and adults
8. 胸鎖乳突筋? やってみましょう 口ふさいで・・・ 鼻もつまんで・・・ すったりはいたり・・・ 首をさわってみてください
9. I:E比? となりの人の呼吸を見てみましょう 吸うのと吐くのとどっちが長い? I:E=吸気:呼気は1:2が基本 呼気が延長!? → 呼気の障害(wheeze=喘鳴 ) 末梢気道の閉塞(心不全・喘息) 重症になると聴診器ではわからないことも 吸気努力→吸気の障害(ストライダー) 上気道の閉塞(異物・痰・気道浮腫)
10. 気道閉塞を検査で評価 客観的には測るにはスパイロメトリー もっと手軽で 持ち運びも可能 重症度もすぐに評価できるもの・・・・  ピークフローメーター!
11. ピークフローメーター(PEFR測定) 価格は3000-4000円とお手頃 (パルスオキシメーターは2-3万円より) 普段より記録しておくのが理想的 普段の記録がなければ年齢・性別・身長ごとにある標準値の何%かで判断 標準値は製品ごとに異なっており添付の表を参考にする http://www.yume-shop.com/banana.shop/peak-flo.htm→
12. 31歳男性 本日より呼吸苦が出現し救急車で来院 SpO2 96%, wheeze著明 ピークフローは45% さあどうやって治療しよう?
13. 喘息急性増悪の治療は? 酸素投与 Β2刺激薬吸入 メプチン, アイロミール, 成人A, 小児1-3 ステロイド投与 経口 or 点滴 or 吸入 抗コリン薬吸入 アトロベント その他 マグネシウム点滴, テオフィリン, ロイコトリエン拮抗薬
14. 喘息治療の意外なポイント ネブライザーとMDI(リザーバー使用)は同程度の効果がある (MDIは短時間で吸入が済む点はやや有利) 急性期のステロイド投与も経口摂取でよい 急性期にも吸入ステロイドが使える 重症喘息では抗コリン薬吸入も効果的 Chest 1988;94;723-726
15. マネジメント (Chest 2004 Mar 125(3) 1081-102)
16. 当院吸入メニュー 成人 A: 生食8.7ml+べネトリン0.3ml+ビソルボン 1ml B: 生食8.8ml+べネトリン0.2ml+ビソルボン 1ml C: 生食9.0ml+ビソルボン 1ml 小児 1: 生食4.9ml+べネトリン0.1ml 2: 生食4.8ml+べネトリン0.2ml 3: 生食4.7ml+べネトリン0.3ml 4: 生食4.0ml+ビソルボン 1ml
17. Chest. 2004 Mar;125(3):1081-102 大野先生吸入メニュー
18. 帰れる? 帰れない? 2-3時間の治療後or状態改善後上記にて判定
19. 87歳女性 ADL full基礎疾患は高血圧 近医に喘息でかかりつけ 数日前より起座呼吸あり 数時間前よりの呼吸困難の増悪で来院 Β2刺激薬の吸入をするがまったくよくなる気配がない・・・ なんで~? どうして~?
20. ほんとに喘息? 喘息だけ? 心不全 高血圧など含む心疾患, 以前の心不全, JVD 肺炎合併 発熱, レントゲンで異常陰影, WBC,CRP↑ COPD 喫煙歴, 普段よりの呼吸困難
21. 53歳男性 以前より副鼻腔炎を指摘されている53歳男性。 ピリン禁とのこと 喘鳴・呼吸困難を主訴にER受診 SpO2 90, 喘鳴も高度 成人Aとともにソルメルコート®125mg点滴を開始したところみるみる呼吸状態悪化 なんで~? どうして~?
22. アスピリン喘息(1) 喘息患者の5-20%を占める 以下で疑う 副鼻腔炎 鼻ポリープ(嗅覚低下) 解熱剤での呼吸困難の歴 鼻症状は喘息症状と関連する J Gen Intern Med. 2006 Feb;21(2):C11-3 Chest 2000;118;1470-1476 UpToDate17.1 Aspirin exacerbated respiratory disease
23. アラキドン酸カスケード
24. アスピリン喘息(2) NSAIDs(ロキソニン®,レクトス®など)に加え 静注ステロイド(特にコハク酸)でも症状増悪することがある 経口・吸入ステロイドはOK ボスミンへの反応も良く早めの投与を考慮 痛み止めに困ったらCOX-2(セレコックス®など) はOK J Gen Intern Med. 2006 Feb;21(2):C11-3 Chest 2000;118;1470-1476 UpToDate17.1 Aspirin exacerbated respiratory disease
25. 34歳男性 以前より喘息を指摘されているが仕事が忙しく昼間はかかれないとのことでかかりつけ医なし 最近喘息発作でERを頻回受診 本日は発作はないがいつも使っているメプチンエアーが切れたので処方希望で受診 いつもどおり処方しときましょ?
26. 発作が繰り返す場合は? 喘息は炎症疾患 発作を繰り返すほど病態は悪化する 繰り返す場合は長期管理薬が必要 かかりつけを作ること 症状の自己管理ができるようになること を必ず伝える
27. 喘息の長期管理 JGL2001より
28. 34歳男性 以前より喘息を指摘されておりERにて毎回メプチンの請薬あるも定期受診は一切なし 入浴中,急に不隠となり家族が救急車コール SpO2 76(RA) 呼気の延長著明, wheeze著明
29. Crashing Asthmatics !! 5-10%に初期治療に反応しない重症群あり 喘息死の85%では最後の発作は12時間以上 早急に重症喘息を認識して治療することが必要 超重症喘息 !! Am Fam Physician 2003;67:997-1004. 
30. 喘息死のリスクファクター 以前の喘息発作で呼吸不全,けいれん,意識消失,挿管 以前の喘息発作で高炭酸血症, 代謝性アシドーシス, 気胸 経口ステロイド内服下での重症発作 精神的社会的要因 精神疾患, 病気・呼吸困難に対する認識の低下,コンプライアンス不良, 薬物中毒, 都市在住 Am Fam Physician 2003;67:997-1004
31. 重症喘息の徴候 Am Fam Physician 2003;67:997-1004
32. 人工換気を考慮 重症喘息で初期数分の治療で反応なし 気道が不安定(→挿管) 意識レベルの低下 酸素投与にも関わらずSpO2<90 血液ガスCo2が正常, もしくは上昇 血圧・脈拍が不安定 呼吸苦による疲弊 人工換気を開始するのなら早めに!
33. NIPPV(BiPAP)開始前チェック 本人は協力できる? 気道は安定している? 誤嚥は? 異物は? ストライダーは? 循環は安定している? NIPPVに乗らないときは挿管するorしない?
34. NIPPV(BiPAP) ICUよりBiPAP Vision®をかりる 呼吸器と同調が重要 FiO2 1.0 IPAP 6-8 EPAP 4から開始 マスクは手で合わせ本人がしっかり同調している(胸の動き)ことを確認し固定 PS(IPAP-EPAP)はVT 400程度を目標に少しずつアップ FiO2は酸素化が保たれていれば徐々に下げる
35. 挿管への切り替え Co2の進行的な悪化 意識レベルの悪化・不隠 循環動態不安定 コントロールできない去痰不全 酸素化不良 タイミングを逸さず挿管へ
36. 挿管もしたしもう吸入はいいね? 人工換気の目標は病状の改善まで全身状態を保つこと 人工換気を続けながら吸入・点滴 まず大切なのは酸素化の改善 気道内圧の上昇は避ける High Flow(80-100L/min) Low Tidal(6-8ml/kg) LowRR(10-14/min) 場合によっては高炭酸血症も許容する UpToDate 17.1 Treatment of acute exacerbations of asthma in adults
37. 今日のまとめ WheezeやSpO2は重要だけどそれだけで評価できない 呼吸パターンやPEFRが大事 急性期治療は吸入と酸素 重症時にはステロイド,抗コリン アスピリン喘息に注意 発作でERに来た場合は昼の外来につなぐ 重症喘息を早めに認識する