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高寺 侑

2021/04/06
(2021/04/11 更新)

高寺 侑

総合病院国保旭中央病院

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乳幼児の転落は、小児科の救急疾患として目にすることが多い事例です。本スライドは受診or経過観察の臨床判断から、お母さんへの病状説明、念頭に置くべき患児の背景や合併症などを、最新のガイドラインに沿って解説します。

〈目次〉
1. 転落のトリアージ
2. PECARNガイドライン
3. 経過観察時間を有効に
4. 考えるべき可能性
5. 説明と ‘shared decision making’
6. 救急外来からはじまる予防医療

※本スライドは、Antaaウェブサイト上に掲載されたバックナンバー記事を再編集して作成されました。

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乳幼児の転落 重症頭部外傷のリスク

1. 乳幼児の転落重症頭部外傷のリスク 高寺侑・総合病院国保旭中央病院 1
2. 目次 転落のトリアージ PECARNガイドライン 経過観察時間を有効に 考えるべき可能性 説明と ‘shared decision making’ 救急外来からはじまる予防医療 2
3. プロフィール 高寺 侑(たかでら たすく) 総合病院国保旭中央病院小児科 2011-2015 総合病院国保旭中央病院 2015-2016 長野県立こども病院(集中治療・小児外科・麻酔科ローテーション) 2016-2018 兵庫県立こども病院小児集中治療科 2018-2019 サノフィ株式会社(ワクチン担当) 2020-現在 総合病院国保旭中央病院小児科 2018-2021 エディンバラ大学大学院修士課程(小児救急) 3
4. 小児の転落のトリアージについてです。 転落や墜落があった場合に医療機関を受診する目安などありますか? 4 お答えします!! 他科の先生
5. 経過観察を勧める時  まず、しばらく様子を見ます。 5 そして、PECARNの研究では、数回嘔吐がみられるだけであっても、意識がしっかりしていれば重症頭部外傷のリスクが低いことがわかっています。 頭部にぶよぶよしたような血腫を触れない 機嫌もよいままである であれば、経過観察でよいと思います。
6. 受診を勧める時 元気がないとき 泣き止まないとき(小児では意識障害の可能性があります) 6 また、年齢・転落した高さも目安の1つです。 には受診をすすめるほうが安全だと思います。
7. 7 年齢は乳児かどうかで概ね判断します 1歳未満、とりわけ生後半年未満では1m以下の転落でも頭蓋骨骨折や頭蓋内出血を経験しますので受診をすすめています。(いずれも手術適応にならない程度がほとんどです)
8. 8 しかし、これもあまり問診では正確でないことも多いため、患児の現在の症状を1番参考に受診を決めています。 高さは1m以上かを概ね目安にはしています
9. また、その場で受診を決めなくてもよいので、「しばらく(数時間)家で様子を見て、もし〇〇な状態になったら受診してください」など自宅での経過観察タイムを設けるのも有用です。 9
10. PECARNガイドライン 10 〜頭部CTを施行するかについて〜
11. 11 PECARN(Pediatric Emergency Care Applied Research Network)が発表したガイドラインは、現時点で最も妥当性が証明されているものです。 このガイドラインの大事なポイントは、「ガイドラインは医師の臨床判断をサポートするために存在する」ということです。 Lancet. 2009 Oct 3;374(9696):1160-70  PMID: 19758692
12. 12 ・GCS=14 ・意識変容 ・頭蓋骨骨折の触知 ・前頭部以外の皮下血腫 ・5秒以上の意識消失 ・激しい受傷機転 ・親から見て「普通」ではない CTは推奨されない (重症頭部外傷のリスク<0.02%) CTを推奨 (重症頭部外傷のリスク4.4%) CTもしくは経過観察 (重症頭部外傷のリスク0.9%) 以下を考慮して方針を決める ・医師の経験 ・所見が複数あるかどうか ・ERの経過観察で症状や所見の悪化があるか ・年齢が3ヶ月未満 ・親との協議 1つでもYES 1つでもYES すべてNO すべてNO 2歳未満 <PECARNガイドラインから引用・改変>
13. 13 GCS 13点以下の意識障害はこのガイドラインの対象ではありません。 また、基準にあてはめてCTが推奨されていなくても、現場で臨床的にCTが必要と考えた場合には検査を行ってもかまいません。 小児では「泣いている」という所見が意識障害を表していることもありますので注意が必要です
14. ガイドラインなんて覚えてないし、 調べている時間がないです、、、 おすすめのウェブサイトがあります! 項目を選択していくと、重症頭部外傷の確率、そして CT撮影の推奨が表示されます。 14 https://www.mdcalc.com/pecarn-pediatric-head-injury-trauma-algorithm また、Decision Aidという用紙を元に、家族に説明することもできます。
15. 経過観察時間を有効に 15
16. CT撮影は、最初の段階ですぐに結論を出さず、経過観察してから方針を決めることもできます。 2011年のPediatricsには、経過観察を有効に使えば不要なCT撮影を減らせることが報告されています。 外来で数時間、状態の変化がないか観察することで、保護者にも安心してもらえることが多いです。 16 Pediatrics. 2011 Jun;127(6):1067-73 PMID: 21555498
17. 時間を決めて先のマネージメントプランまで説明すると、保護者も安心して救急外来で過ごすことができます。 「2時間様子をみて今と変わらなければお家に帰ってもらおうと思います」 「1時間様子をみて嘔吐を繰り返すようになったらCTを撮影しようと思います」 17 医療者側も症状の推移を把握できます。
18. 考えるべき可能性 18
19. 19 ① 頸椎損傷の可能性 ② 虐待の可能性
20. ① 頸椎損傷の可能性 転落した場合、頚椎損傷の可能性も考える必要があります。 小児の場合は、骨に脆弱性きたすような先天性疾患の有無を確認しておくとよいです。 例えば、21トリソミーでは頚椎損傷をきたすリスクが高いため、必ず頚部の診察もしましょう。 20
21. ② 虐待の可能性 受傷機転のはっきりしない頭部外傷では必ずAHT(abusive head trauma)の可能性も考えましょう。 21
22. ② 虐待の可能性 病歴では、保護者が述べた言葉通りにカルテ記載をすることがポイントで、推測での記載は避けるべきです。 また、家族構成や周産期歴、健診やワクチンを受けているかが一目でわかりますので、母子手帳も見せてもらうとよいです。 22
23. 説明と“Shared Decision Making” 23
24. 24 帰宅指示を紙に記載して保護者に渡すことが、検査の有無に関わらず大切です。 具体的に説明し、受診の閾値は低くした方が、症状に変化があったときにすぐに連れてきてもらえます。 ・翌朝までに何度も吐くようになった時、・歩き方が変な時、不機嫌が続く時、・とても頭を痛がる時、・様子がいつもと違う時、にはもう一度受診してください
25. 25
26. 26 ここで”Shared Decision Making”という考え方を紹介します。 これは、PECARNガイドラインをはじめとするエビデンス、診察の結果、医師としての考え、方針のメリット・デメリットを患者と共有したうえで、患者と一緒に方針を決定することをいいます。
27. 27 嘔吐以外に症状がなく元気そうなので、現在までの研究では重症頭部外傷の確率は100分の1以下だと考えられます。 CTを撮影した場合、頭蓋内出血を見逃しにくくなりますが、被爆のリスクがあります。 CTを撮影しない場合、頭蓋内出血があると見逃してしまうリスクがあります 例えば、このように説明した上で保護者と協議することで、自己決定を尊重した医療につながります。
28. 救急外来からはじまる予防医療 28
29. 29 外来を受診する患者の多くは軽症ですが、次に起こるかもしれない重症外傷や事故を防ぐチャンスでもあります。 ちょっとした転落であっても、家庭内の家具の配置など、改善できる点があるかもしれません。 筆者は家庭内の誤飲事故予防(薬剤・洗剤)についても説明するようにしています。
30. 30 日本小児科学会では、Injury Alertを公開しています。 これは遊具や器具などで起こった事故情報を集めたものです。 このような情報を普段から集めることで、事故を防ぐように救急外来で指導することができます。
31. Take Home Message 31
32. Take Home Message ガイドラインを臨床判断の味方にしよう 救急外来での経過観察時間を有効に使おう 帰宅時の指示は必ず紙に記載して渡そう 救急外来受診を予防のチャンスにしよう 32
33. 参考文献 Lancet. 2009 Oct 3;374(9696):1160-70  PMID: 19758692 Pediatrics. 2011 Jun;127(6):1067-73 PMID: 21555498 33