#4.
⾎糖を下げられる唯⼀のホルモン=インスリン ⾎糖値はインスリン拮抗ホルモン(⾎糖上昇)とインスリン(⾎糖降下)のバランスで決まる ⾎糖を上げるホルモン ⾎糖を下げるホルモン • インスリン(膵β細胞) • グルカゴン(膵α細胞) • カテコラミン(交感神経 副腎髄質) • コルチゾール (副腎⽪質) • 成⻑ホルモン(下垂体前葉) ⾎糖を上げるホルモンが増すと⾎糖は上昇します ⾎糖下げるホルモンが増すと⾎糖は低下します ⾎糖を上げるホルモンは「インスリン拮抗ホルモン」ともいわれます
#5.
基礎分泌と追加分泌がある 何も⾷べていなくても、インスリンは分泌し、⾷事に反応してさらに分泌される 基礎分泌 追加分泌 150 血糖値(mg/dL) 50 50 50 0 0 hour 0 インスリン拮抗ホルモンと 4 8 12 16 20 インスリンのバランスが取れている状態 150 100 100 100 血糖値(mg/dL) 100 血糖値(mg/dL) 100 100 150 50 50 50 0 0 hour 0 ⾷事を摂ると分泌されるインスリン 4 8 12 16 20 hour インスリン(µU/ml) 150 インスリン(µU/ml) 150 血糖値(mg/dL) 150
#6.
基礎分泌の低下と追加分泌の低下で起こること 基礎分泌の低下は空腹時⾎糖から上昇し、追加分泌の低下は⾷後⾼⾎糖となる 基礎分泌の低下 追加分泌の低下 300 血糖値(mg/dL) 血糖値(mg/dL) 200 150 100 200 100 50 0 0 4 8 12 16 20 hour ⾎糖値は全体的に底上げ 4 8 12 16 20 hour ⾷後の⾎糖が上がっていく
#7.
2 どういう⼈にインスリンを⼊れる︖
#8.
インスリンの導⼊基準 インスリン分泌ができていない⼈から、絶⾷、⼿術、妊娠など幅広く導⼊可能 絶対的適応 相対的適応 • インスリン依存状態 (1型糖尿病・2型糖尿病) • ⾷べられない時 • 重症感染症時 • 周術期 • 妊娠時 • 著明な⾼⾎糖 (空腹時⾎糖250mg/dL以上、随時⾎糖350mg/dL以上) • 経⼝薬療法で改善できない • 栄養状態が低下した痩せ型 • ステロイドによる⾼⾎糖 • ※糖毒性が強い時 ※糖毒性 ⾎糖が⾼すぎてコントロールが 難しい状態のこと
#9.
追加分泌に代わるインスリン=超速効型インスリン 各⾷前⾎糖および⾷後⾎糖を⾒ることで、追加分泌が⾜りてるか確認できる。 作⽤発現 最⼤作⽤ 作⽤持続 血糖値(mg/dL) 300 2分〜20分 15分〜3時間 2時間〜5時間 商品名(超速攻型インスリン) ヒューマログ®注(インスリンリスプロ) アピドラ®注(インスリングルリジン) ノボラピッド®注(インスリンアスパルト) インスリンリスプロBS注(インスリンリスプロ) ※ヒューマログ®のバイオシミラー 200 100 0 4 8 12 hour 16 20 ※2020年2⽉ より添加物を加えるこ とで吸収を早めた薬剤が発売された フィアスプ®注 ルムジェブ®注 各 ⾷ 前 投 与 だ が 、 フ ィ ア ス プ ®、 ル ム ジ ェ ブ ® は ⾷事前2分〜⾷後20分以内でも投与可能
#10.
基礎分泌に代わるインスリン=持効型インスリン 空腹時⾎糖を⾒ることで、基礎分泌が⾜りているか確認できる。 作⽤発現 最⼤作⽤ 作⽤持続 血糖値(mg/dL) 200 150 1〜2時間 ピークがないものが多い 24時間〜42時間 商品名 ランタス®注(インスリングラルギン) ランタス® XR注(インスリングラルギン) トレシーバ®注(インスリンデグルデグ) レベミル®注(インスリンデテミル) 100 50 0 4 8 12 hour 16 20 ※ランタスXR注は、既存のランタス製剤と同⼀の成分だが、 濃度を3倍(100単位→300単位/mL)にした製剤 注射時刻は⼣⾷前⼜は就寝前のいずれでもよいが、毎⽇⼀定とする
#11.
責任インスリンについて理解しよう その⾎糖値に最も影響を及ぼすインスリン=責任インスリン NG 血糖値(mg/dL) 300 「⼣飯前の⾎糖値が⾼かったので、 ⼣飯前のインスリンを増やします︕」 OK 200 「⼣飯前の⾎糖値が⾼かったので、 明⽇の昼⾷前のインスリンを増やします︕」 100 「昼⾷前の⾎糖値が⾼い」=朝⾷前のインスリン⾜りない 0 4 8 12 hour 16 20 「⼣⾷前の⾎糖値が⾼い」=昼⾷前のインスリン⾜りない 「朝⾷前の⾎糖値が⾼い」=基礎分泌が⾜りない そのタイミングの⾷前⾎糖を下げたければ、1つ前の⾷前注射で調整 朝⾷前の⾎糖値が⾼いのは基礎分泌が⾜りていないことを理解する
#12.
3 具体的な導⼊⽅法
#13.
外来でのインスリン導⼊ Step5 ・Step1 インスリン分泌能・合併症を確認 ・Step2 ⽣活習慣、注射タイミングの希望を把握 ・Step3 開始時は体重(kg)で投与量を決定 ・Step4 針と⾎糖測定器を選択する ・Step5 インスリンの注射⼿技を指導する
#14.
Step1 耐糖能・糖尿病合併症を把握 空腹時の⾎糖・Cペプチド・インスリンで、分泌能を把握することが可能 耐糖能異常 糖尿病合併症 ・空腹時⾎糖とCペプチドを評価 C-peptide Index (⾎糖×100) /Cpeptide く0.8 →インスリン治療が必要 C-peptide <0.5ng/mL→インスリン依存状態 ・インスリン抵抗性 HOMA-R 空腹時インスリン×空腹時⾎糖/405 →2.5以上 ・肥満度 はインスリン抵抗性あり • 糖尿病性腎症 • 糖尿病性神経障害 • 糖尿病性網膜症 急な⾎糖コントロールは合併症を増悪 させることが知られているため、予め確認が必要
#15.
Step2⽣活習慣、注射タイミングの希望を把握 ⽣活リズムを考慮した上で、どのタイミングで注射ができるかを確認 ⽣活習慣 注射タイミング ・起床、就寝時間 ・⾷事を摂る時間、回数 ・外⾷が多いか ・運動習慣があるか ・仕事内容/経済状況 ・ADL • どのタイミングが打てるか • ⽇中打つことができるか • 外出時打てるか これらの情報から、インスリン製剤・デバイスを決めていく
#16.
インスリン製剤の剤形いろいろ プレフィルド製剤(使い捨てのペン型) 「ミリオペン」 「フレックスタッチ」 「フレックスペン」 「ソロスター」 インスリンと⾔えばこのイメージ イノレット 握⼒が弱い・⽬が⾒えない⼈向け (割と⾼齢者⽤) カートリッジ型 「カート」 専⽤のペンとの組み合わせで インスリンのコスト削減が可能 0.5単位から打てるものもある バイアル型 インスリンポンプや ⼊院中の持続点滴で使⽤
#17.
プレフィルド製剤(使い捨てペン)の違い 注⼊ボタンのせり出しの有無 あり 「フレックスペン」 「ミリオペン」 「ソロスター」 単位数が多い⼈・指が伸ばせない⼈はせり出しなしが良かったりする なし 「フレックスタッチ」 注⼊完了時に「カチッと⾳がなる」 なし 「フレックスペン」 「ミリオペン」 「ソロスター」 なし 「ミリオペン」 「ソロスター」 あり 「フレックスタッチ」 押した感が欲しい⼈は⾳あり カートリッジホルダーの有無 あり 「フレックスタッチ」 「フレックスペン」 カートリッジがよく⾒えるならホルダーなし、識別しやすいのはホルダーあり
#18.
よく使う使い捨てインスリンの価格⽐較 超速効型インスリン 薬価 ヒューマログ®注 1283円/キット ⽇本イーライリリー アピドラ®注 1792円/キット サノフィ インスリンリスプロBS注 1128円/キット サノフィ ノボラピッド®注 1693円/キット ノボ フィアスプ®注 1826円/キット ノボ ルムジェブ®注 1400円/キット ⽇本イーライリリー インスリンアスパルトBS注 1380/キット サノフィ ランタス®注 1514円/キット サノフィ インスリングラルギンBS注 1241円/キット ⽇本イーライリリー ランタス®XR注 2445円/キット サノフィ トレシーバ®注 2227円/キット ノボ レベミル®注 2194円/キット ノボ 持効型インスリン 経済的に困難な患者さんにはコストも考えて処⽅しましょう
#19.
Step3 開始時は体重で投与量を決定 体重90kgの場合 インスリン必要量︓90kgx0.3=27単位 持効型インスリン 9単位 1 / 3 超速効型インスリン 18単位 2/3 各⾷前6単位 外来で少なめに開始したいなら 8割程度の量で導⼊すると安⼼です
#20.
Step4 針と⾎糖測定器を選択する 針は1袋14本⼊り BD マイクロファインプラス® (31G-32G 4~8mm) テルモ ナノパスニードル® (34G 3~4mm) ニプロ ペンニードルプラス® (32G 4mm) ⾃⼰⾎糖測定器(たくさんあるので画像だけ掲載)
#21.
Step5 インスリンの注射⼿技を指導する 各社動画・イラストによる説明あり 打てる場所はお腹だけじゃない ⽇本イーライリリー ミリオペンの使い⽅ サノフィ ノボ インスリンの使い⽅ フレックスタッチの使い⽅ 打つ場所は2〜3cm間隔をあけてローテーションしましょう
#22.
Case study 2型糖尿病患者へのインスリン導⼊ 55歳、男性、会社員、⾝⻑172cm、体重90kg、BMI 30 糖尿病罹患歴10年で、メトホルミンやSUなど複数内服の2型糖尿病患者。 HbA1c8.9%と⾎糖コントロール不良。仕事が接客業であり、⾷事は不規則。 朝と夜は⾷べているが外⾷が多く晩酌もする。最近体重が減ってきた。 腎症2期、網膜症あり、神経障害あり。 空腹時⾎糖248mg /dL,空腹時Cペプチド1.2ng /mL ・Step1 インスリン分泌能・合併症を確認 →C-peptide index 0.4<0.8 合併症あり ・Step2 ⽣活習慣、注射タイミング →夜は飲むことが多そう、朝1回なら打てるか ・Step3 投与量の決定 →まず持効型なら9単位で ・Step4 針と⾎糖測定器を選択 →病院で採⽤している針・測定器を確認、1ヶ⽉分処⽅ ・Step5 インスリンの注射⼿技を指導→看護師さんにも協⼒いただき、ビデオを⾒るなどで指導 この患者さんはインスリン分泌能が低く、内服薬は分泌促進系は中⽌ 持効型インスリン+内服(Basal Oral therapy)を開始した
#23.
Tips ・「分泌低下」疾患や⼿術などの「急性期」「著名な⾼⾎糖時」 ではインスリンを導⼊しよう ・「責任インスリン」を意識して、インスリンの量を調節しよう ・インスリン投与量は体重から換算しよう ・デバイスや剤形、コストを考え、患者さんに合うインスリンを選ぼう
#24.
参考⽂献 糖尿病専⾨医研修 ガイドブック改訂第8版 糖尿病治療ガイド 2020-2021 レジデント#132 インスリンの使い⽅を マスターする