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東北大学病院
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最終更新:2022年12月22日
腎臓内科の 紹介基準と教育入院 〜このコツを覚えられるとグッと楽に〜 長澤@腎臓内科 1
腎内へ紹介基準と教育入院 紹介の勘どころは尿タンパク、eGFRの傾き 教育入院は尿による減塩のチェック、血圧のコントロール → これを実感するだけで大分違う 低タンパク食はオプション →するとしても入院期間中に効果は出せないので、「お試し」ならばいいかも 2
腎臓学会の紹介基準でいい? 「かかりつけ医から腎臓専門医・専門機関への紹介基準」が基本 「腎臓学会 紹介基準」で出てくる 緑黄赤の表です そうなるとeGFR<60で全員紹介? 70歳以上だと半分以上、80歳超えればほとんどが60未満となる 実際は尿タンパクが多い症例を紹介するメリットが大きい (0.5g/gCre以上) さらにeGFRの傾きを意識する 3
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尿タンパクで紹介する理由 若者→IgA腎症などの存在 →尿タンパク>0.5g/gCre のIgA腎症は治療対象になりやすい 高齢者→膜性腎症などの確定診断 →コントロールできる腎臓病の拾い上げ 糖尿病性腎症、腎硬化症であっても尿タンパクが多いと腎機 能低下スピードが早い →尿タンパク(-)と尿タンパク(+)では末期腎不全のリスクが5-10倍違うKidney Int. 2011 Jul;80(1):17-28. 4
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eGFRの傾きも重要 尿タンパク多いとeGFRの傾きが大きいが、尿タンパク(-) でもeGFRの傾きが大きい症例がある 例えば72歳のeGFR=30でも数年横ばいなら心配ない事が多い 実際の低下速度は「検尿のススメ」をみて欲しいが、 1年で-5ml/min/1.73m2はおかしい だからといって、1ヶ月で-0.5ml/min/1.73m2が問題といっているわけではない、eGFR値が揺ら ぎつつ下降トレンドに入っていることを問題と捉える ただし、GFR=60-100 ml/min/1.73m2の場合には変動が大 きいので、ここは60を切ってからで良い 5
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紹介は75歳でeGFR=35が1つの目安 「検尿のススメ」の14枚目も参照→ 75歳未満でeGFR<35は腎代替療法の可能性がある 意外と知られていないが、eGFR=45から腎代替療法まで、腎硬化症で約8年、糖尿病性腎症で約6年と いう報告がある。 将来的には80歳でeGFR=35を維持することが目標になりそう 悪性腫瘍や心血管イベントの予後改善が著しいために寿命が延びているため 6
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腎内紹介に必要な項目 これは必須! Crと尿タンパクの推移(尿タンパク陰性も大事な情報) 内服薬がわかるもの(薬手帳でOK) 腎後性は否定しておいて欲しい(これは泌尿器科の案件) 下はオプション(普段から下記を心がけておく) 眼底所見(高血圧性変化、糖尿病性変化) 体重の推移 7
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腎内紹介に不必要な項目 免疫グロブリン、補体など ANCA(抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA) 抗GBM抗体(glomerular basement membrane:GBM) 抗核抗体(antinuclear antibody: ANA) →いずれも「腎炎の原疾患」を推定するために必要な要素 非専門医で無理に腎炎の原疾患に近付く必要はない(私見) →急性腎障害(AKI: Acute Kidney Injury)、急速進行生糸球体腎炎(RPGN:Rapidly Progressive Glomerulonephritis)、あるいはCKD(Chronic Kidney Disease)で紹介することが必要 8
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尿タンパク定量する必要ありますか? 2020年台の診療レベルとしては「必須」と捉えている 尿タンパク(+)でも定量すると正常の場合はいくらでもある ただし、糖尿病ならばしっかりアルブミン尿をチェックする(下記や「検尿のススメ」も参照) 試験紙 微量アルブミン(%) 顕性アルブミン(%) ー 0.2 10.1 +/ー 1.2 59.3 1+ 28.8 51.0 試験紙で尿タンパク(-)や(+/-)に アルブミン尿がこんなに隠れている! Clin Exp Nephrol. 2007 ;11(1):51-5 尿沈渣は無理しなくても良い(私見。検体のクオリティや技師のレ ベルの管理の問題から) 9
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ところで紹介後腎臓内科で何しているの? まずは原疾患の推定 特にIgA腎症か否かはかなり大事!常染色体優性多発嚢胞腎(ADPKD:Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease)の場合もあるがこれはこれで治療方針が異なる 並行して血圧のコントロール、キードラッグの確認 降圧薬と高K血症も参考に 必要に応じて腎代替療法の選択の提案 血液透析、腹膜透析、腎移植 10
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IgA腎症アップデート 早期発見、早期治療だと治る疾患 検尿異常から3年以内だと扁桃摘出+パルスで90%以上寛解(Contrib Nephrol. 2007;157:104-8) 比較的軽症でも10年で10%は末期腎不全になる eGFR<60、sBP>130mmHg、尿症所見が残存しているだけで末期腎不全のリスクがあがる(Nephrol Dial Transplant. 2009 Oct;24(10):3068-74.)有名な20年で40%が末期腎不全は海外のデータ 扁桃摘出+ステロイドパルスは、尿タンパク残存、若干のeGFR低 下例でも効果がありそうだという報告が増えている 専門医がするレベルだが、治る腎炎かも?という発想で専門医に繋ぐと助かる患者多い 11
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IgA腎症アップデート02 典型的には顕微鏡的血尿だけ→尿タンパクを伴う、となる 「腎硬化症」の臨床診断の中に沢山混ざっている可能性が高い すぐに腎硬化症と決めつけない! 「腎炎」が治まると尿タンパクだけが残存する場合がある 日本は高齢化、腎移植が相対的少ないことから、eGFRが維持できる かは大きな問題 そのために、検尿して治せる腎炎を見つける! そして専門医に送る 12
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他のメリット IgA腎症であれば生命予後は良い その分高齢になってから腎代替療法になるという問題はある 心血管イベントは腎硬化症で約3倍、糖尿病性腎症で約12倍 Clin Exp Nephrol 2010;14:333-339 心血管イベントを意識するためにも原疾患の推定は有用 最近ではSGLT2阻害薬などでさらに腎予後を伸ばせる可能性が高 い(IgA腎症、糖尿病性腎症) 13
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腎内へ紹介基準と教育入院 紹介の勘どころは尿タンパク、eGFRの傾き 教育入院は尿による減塩のチェック、血圧のコントロール → これを実感するだけで大分違う 低タンパク食はオプション →するとしても入院期間中に効果は出せないので、「お試し」ならばいいかも 14
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そもそも、教育入院って効くの? 集学的治療でeGFRの傾きが有意に改善した報告がある。 PLoS One. 2016 Mar 21;11(3):e0151422. 日腎会誌 2013;55:956-965 eGFRの傾きが-3 → -2ml/min/1.73m2/年になっただけで大違い eGFR=30 ml/min/1.73m2がベースラインだとすると、 eGFR=10 ml/min/1.73m2までの期間(単純に計算すると) -3 ml/min/1.73m2/年・・・約7年 この差はかなり大きいと考える -2 ml/min/1.73m2/年・・・約15年 15
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一週間の教育入院で何ができる? 「このくらい食べていいんだ」ということはよくある 自己流で偏った食事している場合がしばしばある。患者は病院食には野菜や果物がでることに驚く 私見になるが「薄味になれてもらう」ことは有用 塩に対する味覚が改善する人もいる(Kidney Int. 2009;76:638-43) 病院食で尿中Na/Crが減ることを実感してもらえる 「病院食は理想的ですが、家だと30%くらい塩分摂取増える人多いですよ」と外来につ なげる 大体は1週間の入院で血圧が5-10mmHg程度はさがる 16
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さらに攻めるならば 血圧が下がれば降圧薬を整理する 薬剤総合評価調整加算(退院時1回) などを狙っていく 栄養指導を入れる 入院時栄養指導料を取れるようにする 腎代替療法の選択の動画などを閲覧 知識を増やすことは良い治療に繋がる。「透析にはなりたくない!」というモチベーションアップ する人もいる→外来で「腎代替療法指導管理料」をとれるとベスト(施設要件あり) 糖尿病ならば外来で糖尿病透析予防指導管理料を狙う 高度腎機能障害患者加算もとれるとさらに良い(施設要件あり) 17
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栄養指導は繰り返しがおすすめ 1回だけではもったいない 日本は四季があるためか、時期によって食事が違う 定期的な栄養指導を3-4年続けると、10年後には心血管事故 を24人あたり1人減らせる(コストは15万円弱) J Ren Nutr. 2021 Sep;31(5):484-493 オンラインでも算定ができる可能性がある! 2020年の外来栄養指導料の改定からできるようになった、初回から算定できる。(算定要件あり) 18
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腎内へ紹介基準と教育入院 紹介の勘どころは尿タンパク、eGFRの傾き 教育入院は尿による減塩のチェック、血圧のコントロール → これを実感するだけで大分違う 低タンパク食はオプション →するとしても入院期間中に効果は出せないので、「お試し」ならばいいかも「CKD の食事指導」と話はかぶる 19
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低タンパク食の前に十分なカロリーを ● まず基本となるカロリーが不足している人が結構多い ● サルコペニア、フレイルは大きな問題 ● 肥満などではカロリー制限が必要だが、活動量に合わせて25−35kcal/kgは必 要 ● 肺炎や心不全などでもカロリーをとるのが最近の主流 20
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現在は低タンパク食は1st Lineではない ● ガイドラインでも軒並みに「栄養状態を勘案して・・」というニュアンス CKD診療ガイド2018、CKDステージG3b〜5診療ガイドライン2017(2015追補版)など ● そもそものコンセプトが降圧薬などがなかった時代に高カロリー、低たんぱく、 低塩分の食事指導であった ● 最近では、タンパク質不足のフレイルやサルコペニアが問題になっている 21
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入院患者に低タンパク食必要?→原則不要 ● 腎予後を改善する研究でも3−4年かかる ● 入院している原因は?最近は重症患者の急性期には高タンパク食が推奨されて いる文献などもある(ただし、CKDには過剰な高タンパクは推奨していない) JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2015 ;39:401-9. Crit Care Med. 2018 Aug;46:1293-1301. ● 酸負荷を避けることがメリットな可能性がある 窒素を含むアミノ酸は代謝されてアンモニアになる。これを避けるために低タンパク食をとり、栄養を補うために窒素を含まないアミノ酸 (αケト酸)のサプリなどで補助することがある。ただし、日本で保険適応はない 22
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どんな人に低タンパク食をすすめる?(私見) ● 原疾患が「IgA腎症」 (糖尿病性腎症や多発嚢胞腎では効果がよくわからない) ●血圧→OK ●体重(肥満、痩せの是正)→OK ●ADL→OK ●コンプライアンス→OK ●本人がしっかりしている、周囲のサポート→OK という前提で ● 3年以上継続できるか? (大規模研究でも差がある研究はこれ以上の観察期間、ただし、低タンパク食遵守率は低い。) ● 上記ができるのであれば0.6-0.8g/kg/dayで腎予後延長の可能性がある そうなると、患者に愛があり、栄養士と二人三脚できる専門医以外は不要 23
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それでも低タンパク食したい人に ● 血圧なども十分にコントロールできた上で導入する ● 2,3回目の教育入院で導入(そのためのお試し入院はありだと思う) ご飯を低タンパク米に変えるだけでは、今の日本の食事では低タンパク食にはなり得ない(タンパク源として は魚、肉、卵、豆、乳製品がメイン) ● タンパク摂取量は、尿中UNから推定できる 1 日のたんぱく質摂取量(g/日)=[1 日尿中尿素窒素排泄量(g)+0.031 (g/kg)×体重(kg)] ×6.25 +尿蛋白量(g/日) 24
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外来での低タンパク食のチェックポイント ● BUNが下がってくるので(上手くいくと20未満)、BUN/Crが10以下となる ● 痩せてきていないか?などは外来毎にチェックする 体組成計などを活用すると良い(客観的にデータに残す) ● カロリーが十分に取れていることが前提なことを忘れない 25
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長澤先生は低タンパク食どう思っていますか? ⚫ 大半のCKD患者が高齢者であるため、栄養不足の懸念が大きい ⚫ 血圧と異なり、家でモニタリングするのが困難 やった気になって低栄養が怖い ⚫ 急性期病院なので、病態的に低タンパク食を勧めることが少ない ⚫ 他の科で「CKDという病名」反応して出される「必要のない低タンパク食」を みて「あーあ」と思っています(減塩食で十分) 26