褥瘡の評価と実践 リハビリ編

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太田 幸將

太田 幸將

亀田メディカルセンター

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褥瘡の評価と実践 リハビリ編

1. 病棟チーム スキルチェック勉強会 褥瘡の評価と実践 Assessment and Practice of Pressure Ulcers 2018.11.06 亀田総合病院 PT 太田幸將
2. もくじ ・到達目標 ・褥瘡のガイドライン ・褥瘡領域の職域 ・褥瘡の有病率,発症率 ・褥瘡の重症度,深達度 ・リスクアセスメント ・褥瘡のリハビリテーション ・当院の運用 スキルチェック
3. 到達目標 ・褥瘡のリスク因子が分かる   発生理由の推測が可能となります。 ・関連項目のエビデンスが分かる   特にリハビリ関連+福祉用具に関して。 ・当院採用のマットレスの理解   各マットレスの特性を知りましょう。
4. Guideline
5. ガイドライン        ①日本褥瘡学会         褥瘡予防・管理ガイドライン (第4版)        ②EPUAP、NPUAP、PPPIA         Prevention and Treatment of Pressure Ulcers:                        Quick Reference Guide        ③日本皮膚科学会          褥瘡診療ガイドライン(第2版)
6. 褥瘡と褥創 瘡 ・『褥そう』は切りキズのよう単純なものではなく、奥が深く、  トータルケアが必要な潰瘍である。 ・したがって、日本褥瘡学会では、ヤマイダレの瘡が適切であると  理事会において判断した。(2001年 日本褥瘡学会)
7. リハビリに求められる役割 ◆日本褥瘡学会による認定師制度 ・医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養師が対象。  多職種で同一の資格を目指す訳でなく、それぞれの資格に対応する領域の  知識や経験を問うもので、症例報告や学会発表をする必要がある。 ・認定師制度に定められた事柄が、各職種に求められていると言い換えられる。 ◆理学療法士/作業療法士 ・褥瘡の予防計画 (危険因子の抽出、予防策の立案・実施・評価) ・褥瘡発生状況の推測とその対応 →リハビリのみ記載 ・物理療法を専門とする場合は物理療法 (PT)
8. 各職種の役割 ◆看護師 ・褥瘡の予防計画(危険因子の抽出、予防策の立案・実施・評価) ・褥瘡を有する患者の治療過程(創環境の整備、教育指導) ◆薬剤師 ・褥瘡治療薬、創傷被覆材の選定 ・薬効などの評価、副作用の抽出、薬剤管理指導など ◆管理栄養士 ・栄養管理(いわゆる栄養ケアマネジメント) ◆医師 ・褥瘡治癒過程 (保存的治療、外科的治療、その他) ◆理学療法士/作業療法士 ・褥瘡の予防計画(危険因子の抽出、予防策の立案・実施・評価) ・褥瘡発生状況の推測とその対応  ・物理療法を専門とする場合は物理療法 (PT)
9. 褥瘡の定義 褥瘡の定義 日本褥瘡学会 2005年 「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」 褥瘡の国際的定義 NPUAP-EPUAP 2009年 A pressure ulcer is localized injury to the skin and/or underlying tissue usually over a bony prominence, as a result of pressure, or pressure in combination with shear. A number of contributing or confounding factors are also associated with pressure ulcers; the significance of these factors is yet to be elucidated.
10. 施設区分ごとの保有率、発生率 日本褥瘡学会 療養場所別褥瘡有病率, 褥瘡の部位・重症度(深さ) 2015 *療養型病床を有する一般病院
11. 院内発生褥瘡の保有部位 日本褥瘡学会 療養場所別褥瘡有病率, 褥瘡の部位・重症度(深さ) 2015 を改変(『その他』の扱い) 一般病院 :188施設 褥瘡保有者:1,386人
12. key pressure point
13. 褥瘡の重症度分類
14. 褥瘡の重症度 深達度 ・深達度による分類は、1975年のShea分類に始まり、Campbell分類、  IAET分類などさまざまな方法が発表されている。 ・日本では1998年の「褥瘡の予防・治療ガイドライン」において、  深達度をI度からIV度の4段階に分類する方法が考案された。 ・その後、2008年改訂版 DESIGN-Rでは7段階評価となっている。 ・国際的には米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel:  NPUAP)のステージ分類、ヨーロッパ褥瘡諮問委員会(European Pressure  Ulcer Advisory Panel: EPUAP)のグレード分類が一般的に使用される。 ・NPUAPが他の分類と異なるのは、2007年の改訂時に追加された「DTI疑い」 ・DTI(Deep Tissue Injury)は、皮膚に発赤がない、あるいは軽度の褥瘡に  見えても既に深部で損傷が起こっている状態。
15. 褥瘡の重症度 深達度
16. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP 分類 褥瘡の深達度を表す分類。 米国褥瘡諮問委員会 (National Pressure Ulcer Advisory Panel;NPUAP)が1989年に提唱。 従来はステージI~IV に分類。 皮膚表面の損傷がなくとも、 深部で既に損傷が起っていることがある という考え方から、 2007年のNPUAP 新分類を発表。 unstageable、suspectedが追加され、 6病期となった。
17. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP-stage 1 DESIGN d1 【Category/stage I:消退しない紅斑】  通常、骨突出部に限局した領域の、消退しない発赤で無傷の皮膚。  暗い色素の肌では明らかな消退はないが、周囲の領域と色が違うことがある。  この領域は、周囲の組織と比較して疼痛、堅い/柔らかい、温かい/冷たいことがある。  カテゴリー1では、暗い色調の皮膚では検出が困難なことがある。 褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版) 推奨度C1 [行うことを考慮してもいいが十分な根拠がない]
18. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP-suspected Deep Tissue Injury 深部組織損傷疑い – 深度不明 限局的な紫や栗色への変色や血疱は、圧や剪断による下層軟部組織の損傷による。 隣接組織と比較して、疼痛、硬結、脆弱、浸潤性で、熱感もしくは冷感が先行することがある。 深部組織損傷は、暗い肌の色調では検出が困難なことがある。 進行すると、暗い潰瘍部に薄い水疱ができることがある。潰瘍がさらに進行すると、薄いエスカーで覆われる。進行は早く、適切な治療をしても組織の層はさらに露出することもある
19. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP-stage 2 DESIGN d2 【Category/stage II:部分欠損】  黄色壊死組織(スラフ)でない創底が、赤ピンクの浅い開放潰瘍のある、真皮の部分欠損。無傷、または開放/破裂した血清もしくは漿液で満たされた水疱を呈することもある。 スラフまたは、皮下出血*を伴わず、光沢や、乾燥した浅い潰瘍を呈する。 このカテゴリを、スキンテア、テープによる皮膚炎、失禁性皮膚炎、浸軟、表皮剥離の表現に用いるべきではない。 *皮下出血は深部損傷褥瘡疑いを示す。
20. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP-stage 3 DESIGN D3 【Category/stage III:全層皮膚欠損】  全層組織欠損。皮下脂肪が確認できる場合があるが、骨、腱、筋は露出していない。 組織欠損の深度が分からなくなることはないが、スラフ(黄色壊死組織)を呈す。瘻孔とポケットが存在することがある。Category/Stage III褥瘡の深度は解剖学的な位置によってさまざまである。鼻梁、耳、後頭、踝部は皮下組織(脂肪)を有さず、Category/Stage III褥瘡は浅い可能性がある。対照的に、著しく脂肪のある領域では、Category/Stage III褥瘡は非常に深い可能性がある。骨や腱が視認、もしくは直接に触知することはない。
21. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP-stage 4 DESIGN D4-5 【Category/stage IV:全層組織欠損】  骨、腱や筋が露出した全層組織欠損。スラフ(黄色壊死組織)やエスカー(黒色壊死組織)を呈する場合がある。しばしば瘻孔やポケットを呈する。Category/stage IV褥瘡の深度は解剖学的な位置によりさまざまである。鼻梁、耳、後頭、踝部といった皮下組織(脂肪)を有さない部位の褥瘡は浅いことがある。 Category/stage IV褥瘡は、筋や支持組織(筋膜、腱、関節包)まで及ぶことがあり、骨髄炎や骨炎を引き起こす。骨や筋は視認でき、直接触知できる。
22. 褥瘡の重症度 深達度 NPUAP-unstageable DESIGN U Unstageable:全層皮膚または組織欠損 – 深度不明  全層組織欠損褥瘡の実際の深度は、潰瘍の底がスラフ(黄色、黄褐色、灰色、緑、茶色)やエスカー(黄褐色、茶色、黒)により完全に不明瞭である。十分にスラフやエスカーが除去され、潰瘍の底が露出するまで、正確な深度を特定することはできない。 しかし、Category/stageIIIか、IVのどちらかだろう。  踵に付着した安定した(発赤や組織の波動がなく、乾燥し固着した損傷が無い)エスカーは生体の自然な(生物学的な)カバーの役割を果たすので除去すべきでない。
23. 褥瘡の重症度 深達度の意義 【深達度と治癒期間】  毛包が残存する浅い褥瘡( I~II度)と、残存しない深い褥瘡( III~IV度)で治癒過程が異なる。  毛根の立毛筋付着部近傍には、表皮細胞に分化できる細胞集団が存在する。 【浅い褥瘡】  表皮細胞が残存毛包と創周囲から遊走して創面全体から表皮化が起こり、1~2週間で治癒する。 【深い褥瘡】  毛包が失われるため、創周囲からしか表皮化が起こらず、治癒するまで数か月を要する。細菌感染が起これば、さらに治癒は遅れる。
24. 褥瘡の重症度 深達度の意義 EPUAP/NPUAP  Category/stage2 DESIGN-R   Depth:d2 EPUAP/NPUAP   Category/stage3 DESIGN-R   Depth:D3 ・真皮残存の有無がkey ・壊死に陥った深部組織 (皮下組織や筋組織など)が再生することはなく、  壊死組織が取り除かれた創面に肉芽組織が形成され、さらにそれが瘢痕組織  に変化することで治癒に至る (→褥瘡痕) 深 浅
25. risk assessment
26. Risk assessment tool ・Braden scale  一般的に用いる評価として推奨 推奨度B (褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)  6-23点で採点。点数が低いほど  施設、在宅で17点以下、一般病院で14点以下がリスク ・OHスケール (大浦・堀田スケール)  寝たきり高齢者に使用しても良い 推奨度C1(褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)  1998年から3年間の厚労省長寿科学総合研究班による調査を基に  作成。0-10点で採点。 ・K式スケール (金沢大学式褥瘡発生予測スケール)  寝たきり入院高齢者に使用しても良い 推奨度C1(褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)  braden scaleほどの経験や熟練を必要としない。  前段階要因、引き金要因で評価するため発生時期を予測できる ・SCIPUS (SCIPUS-A) ・NSCS ・NSARS
27. Braden scale
28. Braden scale ・点数は6~23点の範囲となり、点数が低いほど褥瘡発生のリスクが高くなる ・採点は活動性ないし可動性が2点、すなわち寝たきり状態になった時に始める ・急性期で48時間ごと、慢性期で1週間ごと、高齢者では入院後1カ月は1週間  ごと、状態に変化なければ3カ月に1回が適当とされる。 ・カットオフ値は14~20点で幅がある。  一般に施設、在宅では17点以下、病院では14点以下が用いられる。
29. OHスケール(大浦・堀田スケール) ・0点での発症は偶発性褥瘡 ・1-10点は起因性褥瘡とされる。
30. K式スケール (金沢大学式褥瘡発生予測スケール)
31. ・1998年、真田らによって初版発表。項目を精選し現在に至る。 ・判定の基準が記載されているため熟練を要さず,2段階評価のため状態変化を  捉えやすいとされる。 ・対象は日中のほとんどを床上で過ごす患者。 ・前段階要因のない患者に褥瘡は発生していなかった。発生者には必ず前段階  要因がある。 ・前段階要因では,危険点2点以上で感度78.9%,特異度29.0% ・引き金要因では,危険点2点以上で感度73.7%,特異度74.2% ・変化後1週間以内で発生に至った割合は,K式スケールで73%,ブレーデン  スケールで15%,K式スケールは短期の予測として有用 K式スケール (金沢大学式褥瘡発生予測スケール) K式スケール(金沢大学式褥瘡発生予測スケール)の信頼性と妥当性の検討‐高齢者を対象にして‐ 日本褥瘡学会誌 3(1): 7-13, 2001.
32. 厚生労働省「褥瘡対策に関する診療計画書」 ・日常生活自立度がBまたはCの対象者に、危険因子評価票を用いた評価を実施。 ・1つでも「あり」あるいは「できない」項目があれば看護計画を立案。 ・危険因子のうち「浮腫(局所以外)」は、平成30年度診療報酬改定により、 「皮膚の脆弱性(浮腫)」「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)」へ  変更された。褥瘡の危険因子に「スキン-テア」が組み込まれた。
33. リスクファクターまとめ ↳ リスクファクターを知ることは,発生要因を推測することであり   対策を講じる第一段階 ・年齢 ・臨床的判断 (Clinical Judgement) ・知覚の認知 ・皮膚の湿潤 (体温,多汗,失禁)、皮膚脆弱性 (浮腫,スキン-テア) ・活動性 (活動量,ADL)、介護力 ・体位変換 (寝返り,座位除圧,疼痛,安静指示,抑制) ・栄養状態 (Alb3.0g/dL↓,TP6.0g/dL↓,食事摂取,体重減少,貧血) ・摩擦とずれ (頭部挙上) ・病的骨突出 (特に仙骨,円背) ・関節拘縮 (四肢拘縮,円背) ・マットレス ・基礎疾患(感染症,心不全,骨盤骨折,糖尿病,脊髄損傷,脳卒中,COPD)
34. 褥瘡発生のリスク ガイドライン ・危険因子の基礎疾患として、うっ血性心不全、骨盤骨折、脊髄損傷、糖  尿病、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患などを考慮してもよい                     推奨度C1(褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)  上記疾患は、複数の研究で有意差があった。 ・低栄養の確認に、血清アルブミン値(炎症・脱水がなければ)、体重減少  率、食事摂取量、MNA-SF(高齢者)を用いてもよい                     推奨度C1(褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)  アルブミン3.5g/dL以下で褥瘡発生のリスクが増加する。  食事摂取率50%以下でリスクが上昇する
35. rehabilitation
36. 褥瘡のリハビリテーション関連 ガイドライン
37. 褥瘡のリハビリテーション関連 ガイドライン
38. 褥瘡予防の体位変換 ガイドライン
39. 褥瘡予防のマットレス ガイドライン
40. 褥瘡予防のポジショニング ◆30°ルール ①30°側臥位とする  背臥位では肩甲骨や仙骨部の圧が強くなってしまい、 側臥位では肩や大転子の圧が強くなってしまうため、 30°程度の側臥位が推奨されている。 ②30°頭部、下肢挙上位 (ファウラー位)  身体のずり落ちや、仙骨部の圧を最小限にするため、 頭部挙上を30°以下に制限する。同時に、 頭部を挙上する前に大腿を30°程度挙上する。 *やせ型の者は個別に検討を要する。 **背抜きもする。
41. 褥瘡予防のポジショニング ◆90°ルール 座位 ①座位姿勢の際、耐圧分散と、ずれ予防のため、股・膝・足関節のいずれも  90°程度となるようクッションなどで調整する。 ・同時に患者に合わせて、座位時間の制限、アライメントの調整を行う。 ・患者に合わせて、ティルトリクライニングできる車いすも考慮。 【背抜き】 ・ベッドや車いすなどから一時的に離すことによって,ずれを解放する手技
42. 物理療法 (専門である場合)
43. 当院での運用
44. 体圧分散寝具 選択フローチャート ※褥瘡領域における用語の特殊性 「活動性制限」  寝たきりまたは車いす生活であること 「可動性制限」  患者の運動頻度や移動能力の低下  byクイックリファレンス
45. 確認テスト ・褥瘡発生のリスク因子は?   →これが発生理由の推測につながります。    ・ポジショニングの方法は?   →さらに体位交換の頻度は?