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検便でサルモネラが出た時の初期対応
#1. 1 検便でサルモネラが出ました 除菌しろと言われました と言われたときに、どうしたらよいか イマイチわからない人のために 古賀総合病院 内科 松浦良樹
#2. 2 はじめに 調理業務従事者の 定期検便(※)で… サルモネラが出ました! 除菌しろと言われました 本資料では、この時どう判断・対応したら良いかを解説します。 ※ 腸炎の治療などについては正書などご参照下さい。 ※ 大量調理施設衛生管理マニュアル(厚労省)や学校給食法などが根拠
サルモネラ属菌の背景知識と血清型
#3. 3 この話題がやや難しい理由 サルモネラ属菌は ややこしいわりに ちょっとマイナー 法的な対応が必要な 部分と、グレーな 部 分 が 混 在 す る 背景知識を 整理してみよう! 法的な対応と臨床的 な介入を整理しよう!
#4. 4 背景知識:サルモネラ属菌について ヒトに問題を起こすものの 大半はここに入る サルモネラ属 Salmonella spp. 血清型(O/H)の違いで 固有名が割り振られる。 Salmonella enterica subsp. enterica →次スライドから S. enterica subsp. ※6亜種に分かれる enterica チフス性サルモネラ salamae ・チフス菌 arizonae ・パラチフスA菌 diarizonae S. bongori houtenae indica S. subterranea ※ 議論あり 非チフス性サルモネラ ・エンテリティディス ・鼠チフス菌 チフス性かどうかで 病原性が大きく変わる →スライド7 など
#5. 5 背景知識:血清型と固有名 サルモネラ属菌(特に S. enterica subsp. enterica )は、 O抗原(菌体抗原)とH抗原(鞭毛抗原)の 組み合わせ(血清型)により、固有名(血清型名)が 付けられる。 serovar 当初は疾病名や感染動物名が 振られていたが、最近は地名が 振られる決まりになっている 例: O抗原 H抗原1相 H抗原2相 血清型 固有名 記載 9 d - O9:d:- チフス菌 4 i 1,2 O4:i:1,2 鼠チフス菌 2 a - O2:a:- パラチフスA菌 S. Paratyphi A 9 g,m - O9:g,m:- エンテリティディス S. Enteritidis 何か書き方が変じゃない? S. Typhi S. Typhimurium →次スライド
サルモネラの正式な呼称と病原性の違い
#6. 背景知識:正式な呼称 サルモネラ警察も ニッコリ 6 細菌学的な名称に固有名(血清型名)をつける 例: チフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi) イタリック(斜体) イタリックじゃなく、 大文字ではじめる ※ 略することも可能 ”Salmonella Typhi” “S. Typhi” その他の例: 鼠チフス菌: S. enterica subsp. enterica serovar Typhimurium ( S. Typhimurium) 豚コレラ菌: S. enterica subsp. enterica serovar Choleraesuis ( S. Choleraesuis) パラチフスA菌:S. enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A ( S. Paratyphi A)
#7. 7 マズいサルモネラとそれ以外 同じS. enterica subsp. entericaなのに、血清型の違いで病原性が大きく変わる Salmonella enterica subsp. enterica チフス、パラチフス S. Typhi 一般的に、自動分析 装置や血清型検査、 判定キットなどで 判別する。 S. Paratyphi A ・3類感染症 ・感染力が桁違い それ以外 (非チフス性サルモネラ) ・食中毒の起因菌となることがある
チフスと非チフス性サルモネラの判断基準
#8. 8 サルモネラが出ました! チフス/パラチフスか? Typhi(タイフィ) それ以外か? non-Typhi(ノンタイフィ) それぞれ診断・治療等に関しては正書等参照 基準に従って、 3類感染症の届け出 特に能動的に 行うことはない
#9. 9 調理業務 従事者 除菌しろと言われました チフス/パラチフスか? それ以外か? Typhi(タイフィ) non-Typhi(ノンタイフィ) 積極的に除菌、 ※ 陰性化の確認を行う 職場や自治体の 規定等に応じて、 除菌を検討する ※ 食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針 (ガイドライン) 第3の(4)を根拠として、チフス・ パラチフス無症状保菌者は食品に直接接触する作業に 従事できない。 →次スライド
除菌治療の実際と注意事項
#10. 10 判断が難しい場合、グレーゾーン 「非」チフス性サルモネラ保菌者や、 調理業務「非」従事者のサルモネラ保菌状態 除菌を支持する法的根拠などがない 自治体や職場などの規定があれば、従った方が無難 対応の案 ① 除菌せず、基本的な手指衛生の徹底を指導する ② 除菌せず、便培養検査を再検してみる ③ 除菌治療を行い、便培養陰性化確認までする
#11. 11 除菌治療の実際 例: レボフロキサシン 7日間 アジスロマイシン 500mg、3日間 注意事項: 健康保菌者へ除菌治療を行う場合、原則自費診療です。