#4.
目次 • Ca代謝のおさらい • 高Ca血症で出てくる症状 • 高Ca血症の鑑別・検査 • 高Caを急いで治療しないといけないとき、そうでないとき • 遺伝する副甲状腺機能亢進症の存在
#5.
Ca代謝のおさらい
#6.
生理活性があるのはiCa クエン酸.リン酸、 炭酸と結合した複合体 (10%) iCa (50%) 蛋白結合Ca (40%) 低アルブミン血症では補正を payneの補正式 Ca mg/dL+(4-Alb)g/dL ※iCaを直接測れるのは血液ガス Caの正常値 8.5~10.5mg/dl 4.3~5.3mEq/l 2.0~2.5mmol/l iCaの正常値(大体Caの半分) 4.0~5.6 mg/dL 2.0~2.8mEq/L 1.0~1.4 mmol/L mg/dL=2 mEq/L=4 mmol/L (施設によって異なるので要チェック)
#7.
血中CaはPTH,ビタミンDで調整します PTH ②腎でCa再吸収 ①骨からCa遊離 活性化 ビタミンD ③腸でCa吸収 血中Ca上昇 P排泄
#8.
ビタミンDは食事・日光から作られる ビタミンD2, D3 25(OH)VitD 1,25(OH)2VitD 肝臓や腎臓で活性化される (活性化ビタミンD:1,25(0H)2vitD) 生体内でホルモンとして作用するのは 活性型ビタミンD:1,25(OH)2vitD
#9.
Caで出てくる症状
#10.
高Caで起こる症状(だ・い・じ) stones, bones, abdominal moans, psychic groans Stones 腎 腎濃縮⼒障害(腎性尿崩症)⇨ ⼝渇多飲・多尿 脱⽔(だ) 腎不全(じ) Bones ⾻ Abdominal moans 消化器 便秘、⾷思不振、悪⼼、嘔吐、腹痛、 消化性潰瘍、膵炎 Psychic groans Other 神経 意識障害(い)、思考低下、筋⼒低下 ⼼⾎管 QT短縮、動脈⽯灰化、⾼⾎圧、不整脈 その他 そう痒、⾓膜炎、結膜炎 ⾻痛、関節炎、⾻粗鬆症(subclinicalに進⾏) 線維性⾻炎
#11.
高Caの代表的症状の機序 • 脱水(だ) ⇨尿細管のCaセンサーシグナルによるNaCl再吸収低下 ⇨ADH作用抑制して、尿濃縮力を低下させる⇨多尿 • 意識障害(い) ⇨細胞外液のCa濃度が上がると、神経細胞膜が安定化して 脱分極が起こりにくくなる • 腎機能障害(じ) ⇨Caによって細動脈収縮⇨糸球体濾過量低下⇨腎機能障害 一方で、症状が全然出ないこともあるので 症状がないからとOKというわけではありません
#12.
高Ca血症の鑑別・検査
#13.
高カルシウム血症治療の鑑別 家族歴 MEN,PHPT,FHH FeCa = 100 ( UCa PCre ) / (PCa UCre) 内服薬 問診 int-PTH > 20 pg/mL YES No 悪性腫瘍あり FECa > 1.0 % YES YES PHPT 異所性PTH 産生腫瘍 リチウム,アミノフィリン系, VitA,VitD,サイアザイド No No MAH 血中Mg高値 CaSR,GNA, AP2S1 YES 遺伝子診断 YES 家族性低Ca尿性 高Ca血症 1,25(OH)2vitD > 55 pg/mL (malignancy-associated hypercalcemia) PTHrP > 1 mol/L YES HHM (humoral hypercalcemia of malignancy) 扁平上皮癌 腺癌 膀胱癌 成人T細胞リンパ腫 活性型VitD製剤 No サルコイドーシス LOH (local osteolytic hypercalcemia) 多発性骨髄腫 リンパ腫, 乳癌骨転移 悪性リンパ腫 No 甲状腺機能 亢進症 副腎皮質機能 低下症 内分泌代謝専門医研修ガイドブック から一部改変
#14.
悪性腫瘍関連の高Ca血症 MMH 入院でよくみます (malignancy-associated hypercalcemia) 悪性腫瘍患者の20〜30%は経過のどこかで高Ca血症を呈する 原発性副甲状腺機能亢進症とは異なり、Ca値は高い値をとることが多く、 13 mg/dL以上では悪性腫瘍を疑いましょう
#15.
薬剤性の高Ca血症 外来でよくみます 薬剤性 の原因としては活性型ビタミンD製剤 が有名(高齢者によく処方) 特にエルデカルシトリオール(エディロール®)が半減期も長く注意が必要 サプリなどで補う(天然型ビタミンD)で過剰になる人は極めて稀
#16.
副甲状腺機能亢進症疑いの時の検査 血液検査 l 補正Ca,P,尿中Cr, 尿中Ca, iPTH,PTHrP,wholePTH, %TRP l 骨形成マーカー(BAP,P1NP,OC) l 骨吸収マーカー(DPD,NTX,CTX,TRACP-5b) 骨密度測定 l PTH持続過剰状態は皮質骨優位の骨量減少をきたすため、橈骨遠位1/3や大腿骨頸部骨密度 の低下を認める。(症状なくてもsubclinicalに骨粗鬆症を認めることも多い) 局在診断 l 侵襲が少ないのは甲状腺エコー.カラードプラを用いる. l 99mTc-MIBIシンチグラフィが有用.5-10%は胸腔内など異所性に副甲状腺が存在する. l 造影CTやMRIも有用.
#17.
ビタミンD充足度の評価は「25(OH)ビタミンD」 血中半減期は約2週間と非常に安定 ⇨1.25(OH)ビタミンDはなぜだめなのか:代償性のPTH上昇 で低値〜高値までさまざまな数値となる。半減期が1日未満 • 血清25(OH)D濃度 30 ng/ml以上 充足 • 20ng/ml<血清25(OH)D濃度<30 ng/ml未満 • 血清25(OH)D濃度 20 ng/ml未満 欠乏 非充足 生体内で作用するのは活性型ビタミンD 1,25(OH)2vitDではないので注意
#18.
高Ca血症の治療 症状ある時とない時
#19.
高カルシウム血症の対応(症状ある時@入院) 48歳女性, 末期卵巣癌で入院中. 今朝より傾眠傾向あり, 産婦人科より コンサルを受けた. 現症:身長161cm, 体重45kg, 体温37.5℃, 血圧112/47mmHg, 脈拍76/min, 意識レベルJCSⅠ-3, 血液検査でCa 15.3mg/dL (アルブミン補正値)を認めた. ・悪性腫瘍の高Ca?腎機能悪くないかな、PTHrP見てみようかな ・症状あるし、なんかしなきゃ!
#20.
高カルシウム血症の対応(症状ある時) 血清Ca値 YES 12 mg/dL 以上 高Ca血症による腎前性腎不全,意識障害 クリーゼ状態 No YES No 血液透析 • 経過観察 (水分摂取励行) • ゆっくり原因検索 破骨細胞の受容体に結合し, 骨吸収を抑制.投与後2-6時間 • 生理食塩水 で効果が出るが,2-4日で による補液 200-300 ml/hr ----- 2-6 L/日 1週間以上 あけて 再投与可 • エルカトニン 効果が減弱する. 静注 エルカトニン® 40単位ずつ • ビスホスホネート 朝夕,1-2時間かけて 静注 ゾメタ® ----- 4 mg iv 15分以上かけて パミドロン酸® ----- 30〜45 mg 4時間以上かけて
#21.
高カルシウム血症の対応(症状ない時@外来) 78歳女性. 整形外科通院中、骨粗鬆症に対してエルデカルシドール 0.75μg/dayを内服していた. 自覚症状は特に認めなかったが, 健診で高Ca血症を指摘され近医内科を受診. 精査目的で内分泌内科へ 紹介受診となった. 現症:身長153cm, 体重44kg. Alb4.2g/dL, TP 7.6g/dL, Ca 12.0mg/dL, P 3.7mg/dL, BUN 10.5mg/dL, Cr 0.56mg/dL, eGFR 77.7mL/min/1.73m2, iPTH 76pg.mL ・症状がないし、経過観察でオケ!→NG ・エルデカルシトールのせいかもしれない、やめてみよう! ・こ!これは、副甲状腺機能亢進症だ!耳鼻科で手術じゃ!→NG
#22.
高カルシウム血症の対応(症状ない時@外来)続き エルデカルシドール中止後、補正Ca値は10.9mg/dLと軽度高値で あった. また薬剤中止後も高Ca血症は持続し, iPTH 79pg/mLと上昇 を認めた. FECa 1.0%であり原発性副甲状腺機能亢進症と 考えられた. 家族性低Ca尿性 高Ca血症 ではなさそう l甲状腺エコーで副甲状腺が腫れてないかチェック l99mTc-MIBIシンチグラフィ(できる病院へ紹介) l造影CTやMRI で局在診断へ!
#23.
原発性副甲状腺機能亢進症の治療 手術療法 耳鼻科へ紹介! l 病的副甲状腺の摘出が根治の唯一の方法. NIHガイドライン2013 いずれかを満たせば手術適応となる. l 骨病変 or 尿路結石 or 自覚症状がある場合, 項目 局在診断がつくならば手術適応となる. 血中Ca高値 正常上限より1.0 mg/dL以上上昇 腎機能低下 Ccr < 60 mL/分の低下 l 無症候性の場合,右のいずれかの項目を満たせば 骨量減少 手術適応となる. l 手術により骨密度増加,骨折抑制効果,尿路結石 の防止効果が期待できるため,手術が優先. 内科的治療 尿中Ca排泄 年齢 基準 Tスコア<-2.5SD未満の骨密度低下 かつ / または脆弱性骨折の既往 尿中Ca排泄 > 400 mg/日 50歳未満 落ち着いたら紹介! l 無症候性や軽症例,手術困難例,再発例において内科的治療を行う.高Ca血症治療+骨粗鬆症治療の2本柱. l 高Ca血症に対する治療;CaSR作動薬のシナカルセト(レグパラ®),エボカルセト(オルケディア®) 骨粗鬆症に対する治療;ビスホスホネート.
#24.
手術しない原発性副甲状腺機能亢進症の患者管理 フォローアップの指標と注意点 l血清Ca濃度(1年ごと) l血清Cr濃度(1年ごと) l骨密度(1〜2年ごと)のフォローが必要 l栄養面:カルシウム摂取600mg/day 程度 lサイアザイド系利尿薬の使用はさけて ※無症候性原発性副甲状腺機能亢進症の2/3は治療しなくても病状の悪化しませんが、のこりは症状が進展するも、 その違いを予測する指標がありません。⼿術で⾻密度の改善が認められるので積極的に⼿術したほうがよいとの 報告もあるのでしっかりフォローしましょう。 診断と治療社:副甲状腺・骨代謝疾患診療マニュアル
#25.
遺伝する副甲状腺機能亢進症の存在
#26.
MENって覚えてますか? 【 101G51 】 37歳の女性.高カルシウム血症を指摘され来院した.5年前に下垂体腺腫摘 出術を受けた.1ヵ月前から尿路結石で治療中である.母と姉にも尿路結石 の既往がある.血清生化学所見:Ca 12.8mg/dL,P 2.1mg/dL,PTH 133pg/mL(基準10〜60). この疾患でみられるのはどれか. •a •b •c •d •e ガストリノーマ 甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 粘膜神経腫 多発性骨髄腫 <国試で使った語呂合わせ> MEN1型「すいすいふこう」 膵内分泌腫瘍 下垂体腺腫 副甲状腺腺腫 MEN2A型「ずいずいふこう」 甲状腺髄様癌 副腎髄質褐色細胞腫 副甲状腺腺腫 第101回医師国家試験より引用
#27.
多発性内分泌腺腫症(MEN)の病態 • 全身の内分泌臓器に腫瘤やホルモン亢進症状を来たします • 定期的にフォローしないといつの間にか合併したりするので注意 1/3万⼈ 1/3.5万⼈ (90%) 多発性内分泌腫瘍症研究コンソーシアム ホームページ
#28.
MENと原発性副甲状腺機能亢進症の関係 • MEN1ではほぼ100%が50歳までに発症。浸透率95%以上。 • 副甲状腺機能亢進症の1%程度と考えられている。 • 血中カルシウムやPTHが正常上限程度の軽症も多い。 • 病理学的には過形成を呈するが、若年例では1腺のみの 腫大のこともある。 • 浸透率が高いので、家族歴を聞くことが大切。若年発症に注意 家族にもわざわざ受診いただき、検査を促すこともあります
#29.
理解できましたか? • PTHとビタミンDとCaやPはどう動くか ⇨PTH上昇で、ビタミンD活性化、腸管・腎臓・骨からCa,P吸収(でも腎臓でP排泄されるので)Ca↑P↓ • 高Ca血症で出てくる症状 ⇨だ(脱水)、い(意識障害)、じ(腎機能障害) • 高Ca血症を起こす疾患 ⇨悪性腫瘍とPHPTで9割 • 高Ca血症の鑑別・検査 ⇨iPTH、FECa、PTHrP、 1,25(OH)2VitDで仕分け • 高Caを急いで治療しないといけないとき、そうでないとき ⇨クリーゼなら生食・ビスホス・カルシトニン、急がなければゆっくり鑑別 • 遺伝する副甲状腺機能亢進症の存在 ⇨MENなどの合併に注意!症例をみつけたら疑ってみましょう。
#30.
Take home message ・高Caの原因の9割は原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)と悪性腫瘍 →入院で見るのが多いのは悪性腫瘍、外来ではPHPT ・Caに影響する薬について知っておこう ・多発性内分泌腫瘍にもアンテナを張っておこう