#4.
全てはホスピスから始まった ホスピス
中世ヨーロッパで、旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会に附属した施設
十字軍の遠征で傷ついた兵士
治療手段は限られており、自然治癒が基本
旅人が健康不調で旅立つことが出来なければ、そこでケアや看病をしたことから、看護収容施設全般をホスピスと呼ぶようになった 対象は傷ついた巡礼者、旅人、兵士
#5.
ホスピス緩和ケアの歴史(1) 中世のホスピス
542年:フランスのリヨンにオテル・デュー(神の在所)設立
近代のホスピス
1879年:アイルランド:メアリー・エイケンヘッドによる、Our Lady’s Hospice 設立(ホスピスの原型)
1884年 オーストラリア:世界2番目のホスピス、Sacred Heart Hospice
1905年 イングランド:セント・ジョゼフ・ホスピス
1958年 シシリー・ソンダースが、セント・ジョゼフ・ホスピスに勤務。末期患者の症状コントロールの研究を始める
#6.
近代のホスピスマザーエイケンヘッドとその時代 当時アイルランドは英国の植民地
主食であるジャガイモに疫病→飢饉
人口の少なくとも20%が餓死および病死、10%から20%が国外へ
結核の蔓延
亡くなっていく貧しい路上生活者に安らぎの時を 対象は飢えと結核にさらされた人々
#7.
Mother Teresa of Calcutta死を待つ人の家
#8.
1948年、MSWとして働いていたシシリー・ソンダースは、家族がナチのホロコーストで虐殺された末期がん患者のポーランド人と出会う
当時疼痛の緩和方法は確立されていなかった
彼は500ポンド(約200万円)を彼女に遺した『これをあなたの家の窓にしてください』
がんなどの死期が迫った患者のつらさに対する医療
つらい状況にあっても生きる意味を感じられること
彼と話し合ったことを実現すべく、ソンダース女史は医師となり、近代ホスピスの礎を築いた 現代のホスピスシシリー・ソンダースとその時代 対象:「がん」など不治の病を持つ人々へ
#9.
ホスピス緩和ケアの歴史(2) 現代のホスピス
1967年 ロンドンにセント・クリストファー・ホスピス設立
1975年 カナダの2病院で“緩和ケア病棟”が開設
1981年 日本、浜松の聖隷三方原病院に最初のホスピス誕生
緩和ケアへの発展
1980年 米国に国際ホスピス緩和ケア協会(IAHPC) 設置
1986年 WHO緩和ケアを定義
1989年 WHO「がんの痛みからの解放と緩和ケア」発行
1995年 アジア太平洋ホスピスネットワーク設立(APHN)
1998年 ヨーロッパ緩和ケア協会設立(EAPC)
#10.
わが国のホスピス緩和ケアの歴史 1 揺籃期
1972年:淀川キリスト教病院におけるOCDP (Organized Care of Dying Patients)の活動開始
1977年:「日本死の臨床研究会」設立
英国のセントクリストファー・ホスピスが紹介
創成期
1981年:わが国初の施設、聖隷ホスピス設立
1987年:WHO 編集『がんの痛みからの解放』出版
1989年:「末期医療に関するケアのあり方検討会」報告書
#11.
わが国のホスピス緩和ケアの歴史 2 成長期
1990年:診療報酬制度に緩和ケア病棟入院料新設
1991年:全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会設立
1996年:日本緩和医療学会設立
1997年:シシリー・ソンダース博士が来日
1998年:ホスピスケア認定看護師制度*が発足
2002年:緩和ケアチームの診療報酬「緩和ケア診療加算」
発展期
2006年:がん対策基本法成立⇒2007年4月施行
2007年:がん対策推進基本計画 公表
2018年:緩和ケア研修会修了医師が10万人を突破
#12.
再び緩和ケアとは? 病気により生命の危機にあるSuffering(苦難)を持って生きる人を支える
生を支え、
生きがいを支える
時代と場所に応じてその形態が変化
その時に困難を持って生活し、支援が行き届かない死に瀕した人に提供されてきた
今は、COVID-19なのかもしれない
#13.
緩和ケアの定義(WHO 2002年) 緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。 http://www.who.int/cancer/palliative/definition/en/
#14.
緩和ケアは… 痛みやその他のつらい症状を和らげる
生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える
死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない
心理的およびスピリチュアルなケアを含む
患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する
http://www.who.int/cancer/palliative/definition/en/
#15.
…緩和ケアは 患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する
患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用し、必要に応じて死別後のカウンセリングも行う
QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある
病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、つらい合併症をよりよく理解し対処するための精査も含む
http://www.who.int/cancer/palliative/definition/en/
#16.
わが国の専門緩和ケアサービスの概況 在宅ケア
・10,000か所以上の
在宅療養支援診療所
・がん在宅死数34,849/y
(全がん死の9.6%,2013)
緩和ケアチーム
・施設数: 約1000
・すべてのがん診療拠点病院に設置
・新規コンサルテーション数
約10万件/y(全がん死の約27%) 緩和ケア病棟
・施設数 : 403 施設,8196床(June.2018)
・入院数 : 67.068 /y(2018)
・死亡数 : 52.579 /y (全がん死の約14% )
・平均在院日数:29,7日
#17.
#18.
#19.
In 2018 PC asUniversal Health Coverage
#20.
#21.
緩和ケアの捉え方の変化… すべての人が基本的に受けることができる医療の一つとして捉える
Universal Health Coverage
Serious Illness
1年以内に死亡する可能性が極めて高いが、適切な治療によって治癒する可能性がある病状を含む
例)急性肝不全で肝移植の対象となる患者、重篤な交通外傷の患者、エボラ出血熱に罹患した患者など、そしておそらくCOVID-19でICUに入室した人も
#22.
…緩和ケアの捉え方の変化 最善を期待し、最悪に備える姿勢
Hope for the best, Prepare for the worst
絶望を患者に強制しないこと
『できることはなにもない』という状態は存在しない
つらい症状を始めとする苦悩の緩和、解決
病気を持ちながら生活を続けられるようなケアマネジメント、地域社会の構築
#23.
エンド・オブ・ライフケア(EOLC)と緩和ケア 予後予測
包括的評価
ACP
意思決定支援
症状緩和
家族ケア
チームアプローチ EOLC 緩和ケア 死が不可避かどうかわからない状態の患者へのケアを含む
(例:救急・集中治療、感染症)
#24.
これからの課題
非がん疾患への対応
救急・集中治療領域の緩和ケア
緩和ケアの質の評価とベンチマーキング
#25.
これからの課題
非がん疾患への対応
救急・集中治療領域の緩和ケア
緩和ケアの質の評価とベンチマーキング
#26.
#27.
がん以外に対する緩和ケアの必要性 年間130万人が死亡
70%が75歳以上
死亡原因は、頻度の高い順に、がん (21%)、心疾患(15%)、肺炎(9%)、脳血管疾患(9%)
8割が不適切な死の可能性?
8割の患者・家族のQOL、QODを無視していいのか
#28.
非がん緩和ケア:具体的には アドバンス・ケア・プランニング
患者・代理決定者とこれからの人生や生活・治療や療養をどのようにしていくかについて話し合う
症状評価とマネジメント
がん患者に対する症状緩和の知識と技術が応用可能
心理社会的サポート:支持的精神療法が基本
抑うつや不安の頻度が高い、適切な薬物療法
レスパイト・ケアの提供
要介護者を在宅でケアしている家族の身体・精神的疲労を軽減するため、一時的にケアの代替を行う
主たる提供者は総合医/プライマリ・ケア医
#29.
これからの課題
非がん疾患への対応
救急・集中治療領域の緩和ケア
緩和ケアの質の評価とベンチマーキング
#30.
ICUにおける緩和ケアの課題 苦痛症状の頻度が高い
家族とのコミュニケーションが遅く、十分でない
医師と家族がケアの目標について話せておらず、家族が疑問や不安などを話す場がない
家族は代理決定に必要な情報の整理ができていない
ICUにいる必要がない患者がICUで管理され死亡する
患者に十分なケア(例:症状緩和)が行われていない
ICUに勤めるスタッフのバーンアウト、抑うつ
The Changing Role of Palliative Care in ICU
Aslakson RA, Critical Care Medicine:42(14):2418−2428,2014
#31.
ICUにおける緩和ケアの役割 身体的、心理的、スピリチュアルな苦痛の緩和(亡くなる患者だけが対象ではない)
家族ケア
代理意思決定のサポート
患者の価値観と状態に合わせたケアの目標・予後・の話し合い
治療・ケアの場の移行・退院調整
ICUスタッフのケア The Changing Role of Palliative Care in ICU
Aslakson RA, Critical Care Medicine:42(14):2418−2428,2014
#32.
スクリーニング結果による予後の違い Zalenski R, et al. BMJ Supportive & Palliative Care 2014
#33.
スクリーニング結果による入院日数の違い Zalenski R, et al. BMJ Supportive & Palliative Care 2014
#34.
神戸大学でのスクリーニング導入 入院患者全てに実施していたがICUだけできず
2019年6月にスタート
ICU看護師と緩和ケアセンターで全病棟で行われている緩和ケアスクリーニングの一環として実施
米国のICU-PALのスクリーニング作成の手順で独自のツールを作成
会議→ドラフト作成→第一次トライアル→修正→第2次トライアル→会議→完成
#35.
#36.
スクリーニングの目的は すべての患者のエンド・オブ・ライフケアをより良いものにしたい
できれば避けたいけれど、そうしなければならないのであればできるだけ快適に過ごしたい
必要な人すべてが緩和ケアを受けられるように!
#37.
これからの課題
非がん疾患への対応
救急・集中治療領域の緩和ケア
緩和ケアの質の評価とベンチマーキング
#38.
緩和ケアは患者アウトカムを改善するか? 人々の役にたっているのかを検証する必要がある
役に立たないのならやめたほうがよい
#39.
オーストラリア PCOC
#40.
オーストラリア PCOC 国の資金で運営、SPCは自主的に参加
患者アウトカムをベンチマーク
予測される死亡の25%、SPC紹介の80%をカバー
入院、在宅、コンサルティングサービス
Phaseが変わるごとにデータを記録
施設へのフィードバックと教育
項目
Palliative Care Problem Severity Score
Symptom Assessment Scale (SAS)
Phase of illness
AKPS
#41.
オーストラリア PCOC 毎日測定
#42.
IPOS日本版(患者版とスタッフ版がある) Sakurai 2019 JJCO
#43.
PCOCのサイクルによる質向上 毎日のデータ収集 データ提出 集計、ベンチマーキング 施設への評価、
要改善点などの
フィードバック
#44.
オーストラリアPCOC参加施設数の推移
#45.
緊急のニーズに3日以内に対応した割合
#46.
緊急のニーズに3日以内に対応した割合
ベンチマーキング
#47.
痛み(重度、中程度が軽度以下になった割合)
#48.
痛み ベンチマーキング
#49.
2008年のオーストラリアの平均より症状が良い人の割合
#50.
2008年のオーストラリアの平均より症状が良い人の割合
#51.
日本版PCOC パイロットスタディ ある1カ月間に緩和ケアチームが新規依頼を受けたすべての患者について以下のデータを収集する(非がんも含める)
エピソード開始日
患者背景:性、年齢、紹介経路、治療状況(治療中・フォローなど)
エピソード開始日の患者報告データ:症状(ESAS)
エピソード開始日の医療者報告データ:緩和ケア病期(Phase of illness: PoI)、AKPS、ADL
医療者報告の症状
エピソード開始後1週間±2日程度
患者報告データ:症状(ESAS)
医療者報告データ:症状(IPOS)、PoI、AKPS
Views on Care 「PCT介入前の3日間のQOLは?1-7」「最近3日間主な問題や気がかりはどれくらい改善した1-5」「PCTはどれくらい役に立った?1-5」「今日のQOLは?1-7」
エピソード終了時に記録するもの(退院、死亡、介入終了、調査期間終了)
専門緩和ケアの介入内容
転帰
#52.
Take Home Message すべての患者のエンド・オブ・ライフケアをより良いものにしたい(疾患や場所を問わない)
死にゆくことはできれば避けたいけれど、そうしなければならないのであればできるだけ快適に過ごしたい
必要な人すべてが緩和ケアを受けられるように!
緩和ケアの質を評価し向上させることが課題
困難にある人を支えてともに生きる→総合医・プライマリ・ケア医のライフワークにできる仕事です