#4.
大脳基底核石灰化をきたす要因 (Basal Ganglia Calcification;BGC) 脳内石灰化症 生理的基底核石灰化 (無症候) 本邦 :2.1~3.1%(65歳以上) (山田ら 2012) 海外 :2.4~4.1% 二次性BGC 特発性(IBGC) 家族性(FBGC) Fahr病 副甲状腺機能低下症・コケイ ン症候群・ミトコンドリア脳筋症 ・エカルディ・グティエール症候 群・Down症候群、膠原病血管 炎・感染(HIV脳症、EBウイル ス)・中毒・外傷・放射線治療 (65~85歳) (Daghighi 2007) ✔ 生理的レベル(石灰化の程度に関する明確な定義はない)のBGCは65 歳以上では比較的よくみられる。 ✔ 病的レベルのBGCでは、基礎疾患によるが多彩な神経・精神症状 がみられる(大脳基底核の多彩な機能を反映)
#5.
特発性大脳基底核石灰化症(IBGC) ✔ 両側の大脳基底核をはじめ、小脳歯状核、視床、大脳皮質脳 回谷部、大脳白質深部などの脳内に、両側対称性に異所性石 灰化をきたす疾患(指定難病27) ✔ ファール病やPFBC(primary familial brain calcification)と呼称 されることもある。 ✔ 臨床症候はパーキンソニズム、認知機能低下、精神症状など 多岐にわたる(著明な石灰化にも関わらず無症候の人もいる)。 特発性基底核石灰化症の病態解明の進歩 保住 功 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 71巻1号 (2019年1月)
#6.
特発性大脳基底核石灰化症(IBGC) ✔ 二次的な脳内石灰化をきたしうる疾患の除外により診断され る。 ✔ 2012年に原因遺伝子として、無機リン(Pi)を細胞内に取り込 むトランスポーターPiT-2をコードする遺伝子である SLC20A2 が発見された。以降、PDGFRB・PDGFB・XPR1 の常染色体優性遺伝子、常染色体劣性遺伝子である MYORGの合計5つの原因遺伝子が報告されている。 特発性基底核石灰化症の病態解明の進歩 保住 功 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 71巻1号 (2019年1月)
#7.
IBGC画像所見 MRI (a)T1-w hyperintensity (b)Severe T2*-GRE hypointensities Brain CT diffuse symmetric calcifications (c)basal ganglia (d)dentate nucleus 石灰化が軽度の場合は頭部MRIでは見逃される可能性も!? ➡逆に頭部CTが主体の単科精神科病院では見つかりやすい
#8.
IBGC発症機序 ① ② IBGCの主病態は“細胞内外における無機リン酸の輸送障害” →①器質的異常(石灰化)+②機能的異常(細胞内Pi↓)により臨 床症状の有無、程度などが決まる 特発性基底核石灰化症の病態解明の進歩 保住 功 BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 71巻1号 (2019年1月)
#9.
PiT-2活性レベルが石灰化の程度に関係 SLC20A2-associated IBGC (c,d,e,f): PiT-2活性なし SLC20A2変異(+);c680C>T (Ⅰ-2,Ⅱ-1, Ⅱ-2) :PiT-2活性低下(約30%保持) 細胞内へのPi取り込み能を改善す る創薬開発が進められている!
#10.
IBGC診断基準(日本神経学会) 1. 2. 3. 4. 5. 頭部CT上、両側基底核(直径1㎝以上)を含む病的な石灰化を認め る 脳内石灰化を2次的に来す疾患が除外できる。 何らかの緩徐進行性の精神・神経症状を呈する。 遺伝子診断: SLC20A2、PDGFRB、PDGFB、XPR1、MYORG 病理学的所見 (*123+4または5:definite,123:probable 1 2:possible) 特発性脳内石灰化症の遺伝子診断に基づいた分類と診 断ガイドラインの確立に関する研究(平成27年) 精神症状の記述が限定的である
#11.
IBGCの臨床症状(海外のレビュ-より) 精神症状 せん妄 錯乱 認知機能低下 幻覚妄想 カタトニア 抑うつ 躁状態 不安/焦燥 パニック発作 強迫行動 過敏性 易怒性 人格変化 神経症状 パーキンソニズム 振戦 構音障害 失調症状 運動障害(PKC, ジスキネジア) 頭痛 眩暈 起立性低血圧 けいれん発作 失神 マヒ ✔ 石灰化の部位・程度と臨床症状の関連性は不明。 ✔ 臨床表現型は多彩で複数の症状が重複することもある。 ✔ 精神症状→気分障害、認知機能障害、精神病などあらゆる カテゴリーの症状が出現しうると記述されている。
#12.
IBGCではなぜ多彩な臨床症状を呈するのか? -大脳基底核の機能からみた出現機序の推察皮質-基底核ループ 前頭前野ループ 運動ループ 辺縁ループ 眼球運動ループ 全身の運動・眼球運動・情動・ 高次脳機能などの制御 「大脳皮質—大脳基底核ループと大脳基底核疾患」 南部 篤 他の脳領域による代償機能↓ 皮質-基底核ループ + 他疾患の合併・増悪(代謝性異常、精神 の機能低下 疾患など) 頭部外傷 etc 多彩な神経・運動症状(一過性も含む)
#13.
目次 1. IBGC【総論】 2. IBGCに伴う精神症状【各論】 3. まとめ
#14.
対象:計179名のIBGC患者【内162名は家族性IBGC(25家系)】 →SLC20A2変異(116)、PDGFRB変異 (16) 、PDGFB変異 (32) 臨床症状(有:61% 無:39%) 皮質-基底核ループの機能低下が 代償機能を上回った場合にのみ臨 床症状出現
#15.
平均発症年齢は 27.9±22.3歳 臨床症状 有(61%) 無(39%) 30-50%で精神症状 を認めている
#16.
精神症状としては、認知症・気分障害が主体 →この調査研究では、臨床像が明記されていない…
#17.
6348例のCT画像から69例の大脳基底核石灰化症例を抽出 ↓ 初発症状の内訳は… (神経症状;50%、精神症状40%) 精神症状では気分障害(21.0%)が最多 単極うつ病:躁病:双極性障害≒37%:11%:20%
#18.
IBGCを有する双極性障害患者の臨床的特徴 1. 病相に一致した可逆性の認知・運動障害が出現する可能性がある。(う つ状態、躁状態の時だけ認知機能、運動機能が低下し、気分障害に対 する治療で改善する例もあった)。 2. 器質的異常を反映して、向精神薬に対する副作用は出現しやすい。 →IBGCがもたらす脆弱性を意識した治療が必要である。 3. 気分症状以外に運動症状や認知機能障害も伴うなど、非定型的な臨床 像をとることが多く、加齢とともに状態像が変遷する可能性を考慮する必 要がある。→精神症状・運動機能・認知機能を包括的に繰り返し評価す る必要性が高い。
#19.
石灰沈着を伴うびまん性神経 原線維変化病(小坂・柴山病) -Diffuse neurofibrillary tangles with calcification(DNTC)- 臨床病理学的特徴 ✔ アルツハイマー型認知症とピック病の特徴を併せ持った進行 性の認知症 ✔ IBGCと類似した顕著な脳内石灰沈着 ✔ 側頭葉の著明な萎縮とグリオーシス ✔ 多数の神経原繊維変化 ✔ 老人班の欠如 DNTCを“認知症を主症状とするIBGC”とする考え方もあ るが、現時点ではDNTCとIBGCとの関係は明確になって いない。
#20.
Take Home Message ✔ IBGCの主たる診療科は脳神経内科であるが、精神科受診患者 の中にも時々みかける。 ✔ “生理的石灰化が起きやすい部位である”という刷り込みにより IBGCは過少診断されている可能性がある。 ✔ IBGCでは精神症状・運動症状・認知機能障害と様々なベクトル の症候が重複することがある。 ✔ IBGCの初発症状の約4割が“精神症状”と報告されており、脳神 経内科・精神科での共同研究がさらに必要な指定難病である。
#21.
Take Home Message ✔ 精神症状が主体のIBGC では、石灰化病変が精神症状の主たる 原因となっている以外に、元々有している精神疾患の状態像や予 後を変容させる要因となっている可能性もある。 →軽微な 石灰化病変であっても無視できない可能性 ✔ 自験例や文献検索からの推察ですが、精神症状が主体のIBGC (重度認知症を除く)では、対症療法に反応する例もある一方、高 度の認知機能障害や運動症状の合併例になると治療反応性が 乏しいケースの比率が多くなる →進行抑制が可 能なうちに根本治療ができればよいかもしれない(そのためには 関わる可能性のある科の医師がIBGCについて知る必要がありま す)
#22.
IBGCを疑った時の連絡先 担当責任者:保住 功(客員教授・岐阜薬科大学特命教授) http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/hospital/fahr.html
#23.
まとめ ✔ 特発性大脳基底核石灰化症(IBGC)はファール病と も言われ、両側の大脳基底核や小脳歯状核に両側 対称性に異所性石灰化をきたす疾患であり、脳内石 灰化をきたしうる二次的な疾患の除外により診断さ れる。 ✔ 臨床症状はパーキンソニズム、認知機能低下、精神 症状など多岐にわたり、脳神経内科や精神科が対 応していることが多い。 ✔ 大脳基底核が生理的石灰化の起きやすい部位であ ることから、IBGCは過少診断されている可能性があ る。