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これだけは知っておきたい! 家庭医療学はじめの一歩 (2023.02.24 更新)

投稿者プロフィール
横田雄也

岡山家庭医療センター

133,616

198

概要

「家庭医療学ってなに?」そんな方にむけて、家庭医療学についてまとめてみました。家庭医療の実践で基本となる、生物-心理-社会モデル(Bio-Psycho-Socialモデル:BPSモデル)、患者中心の医療の方法(Patient Centered Clinical Method:PCCM)を特に取り上げ、解説しました。■「総合診療医という選択」 → http://sogoshinryo.jp/ ■ブログ → https://yktyy.hatenablog.com/ ■健康の社会的決定要因について → https://slide.antaa.jp/article/view/5aa79c5a63624eb2

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

家庭医療学の基本概念と重要性

#1.

これだけは知っておきたい! 家庭医療学 はじめの一歩 ・生物-心理-社会モデル ・患者中心の医療の方法 岡山家庭医療センター 横田雄也 mail : yktyy4110@gmail.com 2023年2⽉24⽇更新

#2.

まとめ • 家庭医療は家庭医だけでなく、 どの医師も学び、実践すべき診療。 • 生物-心理-社会モデル 疾患だけでなく、心理・社会的側面にも注目する • 患者中心の医療の方法 患者を全人的に理解し、患者と共通の理解基盤をつくりながら お互いに納得のいくゴール設定をして診療する ・「かきかえ」 ・健康の社会的決定要因(SDH) ・問題確認 → 優先順位設定 → ゴール設定 → 役割確認

#3.

家庭医療は 家庭医療学を背景とした診療のこと 図:「総合診療医という選択」http://sogoshinryo.jp/ より転載

家庭医療が目指す健康の向上

#4.

家庭医療が目指すもの 個々の患者の健康だけでなく その家族や地域、コミュニティの 健康及びQOL・幸福の 効果的・効率的な向上 引⽤:北海道家庭医療学センターHPより https://www.hcfm.jp/fm/fmpaper.html#1-1

#5.

※参考:日本の総合診療医の分類 総合診療医 診療OS 家庭医療学的 家庭医 生物医学的 内科的 病院家庭医 病院 診療所・在宅 • 総合診療医には家庭医、病院家庭医、 ホスピタリストが含まれる • 診療OSと診療セッティングの2軸で 大まかに特徴づけられるが、 明確な線引はできない(グラデーション) ホスピタリスト 診療セッティング ・Yokota Y, Watari T. Various perspectives of "General Medicine" in Japan-Respect for and cooperation with each other as the same "General Medicine Physicians". J Gen Fam Med. 2021 Nov 1;22(6):314-315.

#6.

家庭医(総合診療医)の役割 ・家庭医的外来診療(非選択的外来) ・病棟診療 ・在宅診療 ・地域保健予防活動 + ・医療者教育 ・プライマリ・ケア研究

家庭医療の得意分野と実践方法

#7.

家庭医療(総合診療)の 卓越性(得意分野) ・未分化な健康問題 ・多疾患併存状態 ・複雑困難事例 ・下降期慢性疾患 引⽤:藤沼康樹, 他. 総合診療, 30(6);656-658, 2020.

#8.

家庭医療学を勉強していくと・・・ 診療上手になれます 家庭医療学は ベテラン医師が長年の臨床の中で培ってきた 経験知を言語化したようなもの

#9.

家庭医療の実践の根幹を担うもの 生物-心理-社会モデル 患者中心の医療の方法

#10.

家庭医療の実践の根幹を担うもの 生物-心理-社会モデル 患者中心の医療の方法

生物-心理-社会モデルの理解

#11.

生物-心理-社会モデル ※ (Bio-Psycho-Social model:BPSモデル) ⽣物圏 システム理論に基づいて、 社会・国家 生物学的側面、心理的側面、社会的側面が 相互に関連しあい、全体として(統合的に)、 ⽂化 地域 生物 家族 今の状態が現れていると考えるモデル ⼆者関係 上記説明は 「渡辺俊之, 小森康永. バイオサイコソーシャルアプローチ―生物・心 理・社会的医療とは何か?, 金剛出版, 2014.」 を参考に記載 ※本スライドでは便宜的にベン図で表現しているが、 本来のBPSモデルは、右端図のようなシステム階層のモデルであることに注意。 ※以下の論文でEngelが明確化し、展開されていった。 ・Engel GL. The need for a new medical model: a challenge for biomedicine. Science. 1977 Apr 8;196(4286):129‒36. ・Engel GL. The clinical application of the biopsychosocial model. Am J Psychiatry. 1980 May;137(5):535‒44. 個⼈ 心理 社会 神経系 臓器/器官 細胞 細胞器官 分⼦

#12.

生物 例えば・・・ ・食生活増悪 ・治療費が支払えない 2型糖尿病 ・治療意欲の減退 高血圧症 脂質異常症 ・倦怠感 ・抑うつ ・自責の念 新型コロナウイルス 感染症の拡大 社会 経済的困窮 心理 失職 気分の落ち込み 自己効力感の低下 将来への不安 ストレス ※本スライドでは便宜的にベン図で表現しているが、 本来のBPSモデルはシステム階層のモデルであることに注意。 ※B・P・S、それぞれ明確に分けられないものも多い。 医療費による 家計圧迫 ・孤立感 ・ストレス発散に 飲酒・喫煙 相談相手がいない 認知症の母 喫煙・アルコール使用障害

#13.

家庭医療の実践の根幹を担うもの 生物-心理-社会モデル 患者中心の医療の方法

患者中心の医療の方法と実践

#14.

患者中心の医療の方法 1.健康、疾患、病いの経験を探る 疾患 (Patient Centered Clinical Method) 2.地域・家族を含め全人的に理解する 病い 病い 疾患 健康 個人 近位コンテクスト 健康 遠位コンテクスト 3.共通の理解基盤を見出す 問題・ゴール・役割 相互意思決定 4.医師患者関係を強化していく ※注意! ・患者の言いなりになることを 奨めるものではない ・1〜4のステップを 順番通りやる必要はない ・チェックリストのように 活用するわけではない 一目で分かるPCCM:患者中心の医療の方法 (One Pager) Patient Centered Clinical Method, Stewartら2014(岡田唯男 翻案) https://ja.scribd.com/doc/256423518

#15.

患者中心の医療の方法 1.健康、疾患、病いの経験を探る 疾患 (Patient Centered Clinical Method) 2.地域・家族を含め全人的に理解する 病い 疾患 病い 健康 個人 近位コンテクスト 健康 遠位コンテクスト 3.共通の理解基盤を見出す 問題・ゴール・役割 相互意思決定 4.継続的な医師患者関係による信頼感の増進

#16.

1.健康、疾患、病いの経験を探る 健康 Health 疾患 Disease 病い Illness 意味 目標 生きがい 病歴 診察 検査 か:感情 き:期待 か:解釈 え:影響

#17.

患者の「病い」は「 かきかえ」で把握 ※チェックリストのように きくものではない か 感情:患者はどんな感情を抱いているのか? (不安、恐怖、怒り、悲しみ、など) き 期待:患者は何を期待しているのか? (検査をしてほしい、話をきいてもらいたい、など) か 解釈:疾患にどんな解釈をしているのか? (自分の腹痛に対して、最近親が罹患した大腸癌を想起、など) え 影響:生活にどんな影響があるのか? (仕事を休むと業務に支障が出る、など)

#18.

患者中心の医療の方法 1.健康、疾患、病いの経験を探る 疾患 (Patient Centered Clinical Method) 2.地域・家族を含め全人的に理解する 病い 疾患 病い 健康 個人 近位コンテクスト 健康 遠位コンテクスト 3.共通の理解基盤を見出す 問題・ゴール・役割 相互意思決定 4.継続的な医師患者関係による信頼感の増進

健康の社会的決定要因の重要性

#19.

2.地域・家族を含め全人的に理解する ≒ 健康の社会的決定要因 個人 健康・疾患・病い 発達 スピリチュアリティ ライフサイクル 近位コンテクスト 遠位コンテクスト 家族 経済的安定 教育 雇用 趣味 社会的サポート コミュニティ 文化 経済 医療制度 社会歴史 地理 メディア 自然環境・気象・気候

#20.

健康の社会的決定要因 S D H ocial eterminants of ealth 個人ではコントロールできない、 健康リスクを規定する社会的要因のこと World Health Organization. Social determinants of health: The solid facts. 2nd ed. 2003.

近位コンテクストを把握するツール

#21.

健康を規定する要因のうち 社会的要因(SDH)が占める割合 50%以上 病気になることを 「自己責任」という言葉で 片付けることは到底できない Canadian Medical Association. What Makes Candians Sick? Health Care Transformation 2013 June 25;Available from: URL: http://healthcaretransformation.ca/infographic-social- determinants-of-health/

#22.

近位コンテクストを把握するツール → Social Vital Signs:HEALTH+P 項目 Human network and 内容 人とのつながりと人間関係 relationships Employment and income Activities that make oneʼs 収入、仕事内容、労働環境など 趣味、活動、生きがい life worth living Literacy and Learning environment Taking adequate food, shelter and clothing Health care systems Patient preference/values ヘルスリテラシー(健康観)、 幼少期の教育環境、学歴など 食事・嗜好品、住居、 地域(衛生、商店、交通/連絡手段、公園)など 保健・医療・福祉・介護サービス 本人の意向、価値観、性格など Team SAIL HP:SDH for all clinicians Tool kit https://sites.google.com/view/svstool/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/tool-kit?authuser=0

共通の理解基盤を見出すプロセス

#23.

患者中心の医療の方法 1.健康、疾患、病いの経験を探る 疾患 (Patient Centered Clinical Method) 2.地域・家族を含め全人的に理解する 病い 疾患 病い 健康 個人 近位コンテクスト 健康 遠位コンテクスト 3.共通の理解基盤を見出す 問題・ゴール・役割 相互意思決定 4.継続的な医師患者関係による信頼感の増進

#24.

3.共通の理解基盤を見出す • 現在の問題を確認する • それぞれの問題の優先順位を設定する • 治療のゴールと管理方針を共有する • 医師、患者 それぞれの役割を確認する

#25.

患者中心の医療の方法 1.健康、疾患、病いの経験を探る 疾患 (Patient Centered Clinical Method) 2.地域・家族を含め全人的に理解する 病い 病い 疾患 健康 個人 近位コンテクスト 健康 遠位コンテクスト 3.共通の理解基盤を見出す 問題・ゴール・役割 相互意思決定 4.医師患者関係を強化していく ※注意! ・患者の言いなりになることを 奨めるものではない ・1〜4のステップを 順番通りやる必要はない ・チェックリストのように 活用するわけではない 一目で分かるPCCM:患者中心の医療の方法 (One Pager) Patient Centered Clinical Method, Stewartら2014(岡田唯男 翻案) https://ja.scribd.com/doc/256423518

家庭医療のまとめと今後の展望

#26.

まとめ • 家庭医療は家庭医だけでなく、 どの医師も学び、実践すべき診療。 • 生物-心理-社会モデル 疾患だけでなく、心理・社会的側面にも注目する • 患者中心の医療の方法 患者を全人的に理解し、患者と共通の理解基盤をつくりながら お互いに納得のいくゴール設定をして診療する ・「かきかえ」 ・健康の社会的決定要因(SDH) ・問題確認 → 優先順位設定 → ゴール設定 → 役割確認

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