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アルコール問題患者との出会いと医療現場 #1.
アルコールの問題を抱える 患者さんにであったら 精神科医 Keico #2.
「お酒が原因なんて自業自得だよ・・・」 と、思っていませんか? #3.
先生方が アルコールの問題を抱える方に であうのは・・・ 救急外来 急性アルコール中毒、酔っぱらいの外傷etc. 一般内科 健康診断で肝機能異常や高尿酸血症を指摘されて… がん臨床 患者さん「入院前日まで毎日飲んでました」 etc. 陰性感情の認識とその影響 #4.
まず、 自分の“陰性感情”に 気づこう 陰性感情を抱えたまま診察に向かうと ・見落とし ・患者-医師関係の悪化 ・訴訟リスクにつながることも 無理に共感することはない ただ、陰性感情が湧いてきたときに、 それに気づこう 気づいていることが、 陰性感情に振り回されない、第一歩 #6.
そこで、 ハームリダクション (Harm Reduction) 違法であるか合法であるかに関係なく 物質使用や特定の行動を「ただち」にやめること を求めないこと。 その上で、 それらの物質や行動が引き起こす、 さまざまな健康上のあるいは 社会的なリスクを優先づけし、 そのリスクからの影響を減らすための 介入であること 徐淑子; 池田光穂. ハームリダクション: 概念成立の背景と日本における語の定着について Co* Design, 2019, 6: 51-62. アルコール依存症の治療アプローチとSBIRT #7.
「断酒至上主義」から “原則として断酒”だが、 断酒ができず治療から 「節酒・飲酒量低減」へ ドロップアウトするよりは “飲酒量低減”を目標とする 飲酒量低減治療のフローチャート アルコール依存症 の診断 断酒を選択すべき 患者 断酒 飲酒量低減 専門医療機関に 紹介 @reallygreatsite 成功! 不成功 専門医療機関に 紹介 飲酒による問題を できるだけ少なくするのが目標 ※断酒を選択すべき患者: • 入院による治療が必要な患者 • 飲酒に伴って生じる問題が重篤で社会・ 家庭生活が困難な患者 • 臓器障害が重篤で飲酒により生命に危機 がある患者 • 現在、緊急の治療を要するアルコール離 脱症状のある患者 • 断酒を希望する患者 飲酒量低減治療マニュアル 第1版 飲酒量低減治療のフローチャート より改変 201911_inshuryouteigen_chiryou_poket.pdf (j-arukanren.com) #8.
反省、叱責、罰では解決しない SBIRTで対応しよう! #9.
SBIRT S: Screening(スクリーニング) 危険な飲酒やアルコール依存症の スクリーニングを行う 地域によってハードルが高いことも どの医療機関、 どの医師に紹介するかも大事 精神保健福祉センターを通じて、 アルコール医療に取り組んでいる 先生を見つけよう BI: Brief Intervention (ブリーフ・インターベンション) アルコール依存症でなければ RT: Referral to Treatment 飲酒量低減に向けてアドバイス (専門医への紹介) 依存症の疑い 問題が大きい場合は専門医へ の紹介を 吉本尚. 知っておきたいアルコール問題への対応方法~SBIRT. JIM.23 (11): 943-945, 2013. #10. スクリーニング CAGE:2項目以上でアルコール使用障害の可能性 自分や周りの人の お酒の飲み方、 チェックしてみよう 飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか (Cut Down) 周囲の人間があなたの飲酒を非難するので困ったことがありますか (Annoyed by criticism) 自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じたことがありますか (Guilty feeling) 迎え酒(朝酒)をしたことがありますか (Eye-opener) 1ドリンク=純アルコール10g ビール 250ml 日本酒 0.5合 ワイン 100ml AUDIT-C:男性5点 女性4点でアルコール使用障害の可能性 程度 計算が難しければSNAPPY-CAT (https://snappy.udb.jp/) あなたはアルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲みますか? 0. 飲まない 1.1カ月に1度以下 2. 1カ月に2~4度 3. 1週に2~3度 4. 1週に4度以上 飲酒するときには通常どのくらいの量を飲みますか? 0. 1~2ドリンク 1. 3~4ドリンク 2. 5~6ドリンク 3. 7~9ドリンク 4. 10ドリンク以上 1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか? 0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日あるいはほとんど毎日 ブリーフ・インターベンションと精神科へのつなげ方 #11. ブリーフ・インターベンション ① feedback:スクリーニングテストで客観的評価、情報提供 ② advice:減酒や断酒のメリットとそのための具体的な方法 ③ goal setting:本人が7~8割達成できそうな飲酒量を自ら設定してもらう ※飲酒日記もおススメ! 久里浜医療センター 飲酒日記 (https://kurihama.hosp.go.jp/research/p df/al_4_4_3.pdf) #12.
精神科へのつなげ方 アルコールの有害な使用のベースに、 •気分障害 •不安障害 •統合失調症 など、治療可能な精神科疾患が潜んでいることも 「アルコールの問題だから精神科」ではなく“不眠”“体がだるい”など、 患者さんの困りごとを切り口に、精神科医との連携を提案 精神科受診に抵抗が強い場合は、無理強いせず、まずフォローしよう ご家族が困っている場合、精神保健福祉センターへの相談、専門医療機の家族外来、 家族会について、情報提供しよう! 社会資源の活用と学びのリソース #13.
精神保健福祉センター、自助グループ(患者会、断酒会)等 の社会資源について情報提供 つらさをお酒で紛らわせないよう、他の対処法を身につける 支援とつながる 患者さんがお酒をやめる/減らす準備ができていないときは、 ご家族の相談からでもOK #14.
Take-Home Messages ① ハームリダクションの視点で、治療からのドロップアウトを防ごう (断酒が難しければ飲酒量低減から!) ② 精神科に依頼する場合、精神保健福祉センターで情報収集しよう (ご家族がまず相談、から始めてもOK) ③ 飲酒日記などのツールや自助グループなどの社会資源を紹介しよう #15. おまけ:さらに学びたい人へ 飲酒量低減マニュアルポケット版 201911_inshuryouteigen_chiryou_poket.pdf (j-arukanren.com) アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修 アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修 (gakken-meds.jp) アルコール診療に取り組みたいときのはじめの1冊といえば 伴信太朗, 樋口進 監修. ぼくらのアルコール診療. 南山堂,2015. http://www.nanzando.com/books/20331.php