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病院家庭医によるマルモと誤嚥性肺炎へのアプローチ

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大浦 誠

2020/08/23
(2021/06/07 更新)

大浦 誠

南砺市民病院

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マルモーMultimorbidityとは、「多疾患併存」のことで、2つ以上の慢性疾患が併存している状態のことです。日本では高齢者の半数以上が「マルモ」と言われています。「症例」「Multimorbidity(マルモ)とは?」「マルモの扱い方(理論編)」「マルモの扱い方(実践編)」についてまとめています。(2020年8月22日Antaa配信講演資料)

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https://qa.antaa.jp/stream/contents/49

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病院家庭医によるマルモと誤嚥性肺炎へのアプローチ

1. 南砺市民病院 総合診療科 大浦 誠 日時:2020年8月22日(土)20:00〜20:45
2. 利益相反(COI)開示 医学書院 週刊医学界新聞 「ケースで学ぶマルチモビディティー」連載中
3. 自己紹介 2009年 福井大学医学部 卒 2011年  南砺市民病院 初期研修修了 2014年  南砺市民病院 とやまNANTO家庭医養成PG修了 2015年 家庭医療専門医 取得 2016年 臨床倫理認定士 取得 2018年 総合内科専門医 取得 現在    南砺市民病院 総合診療医養成プログラム 申請中
4. たまにアウトプットしています
5. [宣伝]南砺市民病院総合診療×臓器別専門医在宅×救急×ドクターカー臨床倫理×家庭医療
6.
7. 今回は摂食嚥下のレクチャーではありません… 勉強したい方は… 2020年9月 「誤嚥性肺炎,ただいま回診中!」2020年12月 「終末期の肺炎」
8. 本日の内容
9. 誤嚥性肺炎で入院 妻と2人ぐらし。過去に誤嚥性肺炎で入院歴あり。 食事はお粥を自力摂取できている。 転倒しながらもトイレは自宅のトイレを使用している 長男は隣県に在住し、ご近所にサポーター(友人)がいる 80歳男性
10. 質問1 一番気になるのはどこですか?
11. 誤嚥性肺炎は包括的に介入しましょう 森川暢.誤嚥性肺炎のABCDEアプローチ.治療.2018;100(11):1246-51.
12. ポリファーマシー,アンダーユーズのチェックも大事 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015.を元に筆者作成
13. Socail Vital SignはHEALTH + P Team SAIL HP: SDH for all clinicians Tool kit
14. Multimorbidity: what is it and how to deal with it? Prof. Rafael Perera Salazar マルモのバイオマーカーはまだ確立されていない うまく疾患管理できているか分かりにくい
15. 診療科が多いのが気になります。その原因こそマルモなのです。 の順で気になるものの 家庭医×摂食嚥下×薬剤師の興味としては
16. マルモとは(理論編)
17. Multimorbidity:多疾患併存 2つ以上の慢性疾患が併存 Akker M vd, Eur J Gen Pract. 1996;2:65–70. 本邦では18歳以上の患者全体の29.9%、65歳以上の62.8%がマルモ  Aoki T et al. Sci Rep. 2018 Feb 28;8(1):3806 [PMID29491441] メインの診療科が分かりにくく総合的に診る必要がある 関わる診療科も複数になり、ポリファーマシーになりやすい 精神科疾患のような心理的問題や、老々介護や貧困のような社会的問題が加わると、プロブレム全部に関わるのが難しい 定義も介入すべき患者も介入方法もアウトカム指標も確立されていない 髙橋亮太 岡田唯男, 日本プライマリ・ケア連合学会誌 2019, vol. 42, no. 4, p. 213-219
18.
19. 質問2マルモに非常に関係ある人物の名前は? テセウス バッカス アリアドネ ミノタウロス
20. アリアドネの原則 ①相互作用の評価 ②嗜好と優先順位 ③個別化された管理 Christiane Muth. The Ariadne principles: how to handle multimorbidity in primary care consultations.BMC Medicine 2014, 12:223 本人の嗜好を考慮に入れた 健康問題の優先順位付け 患者の状態、治療、性格、 背景の相互作用評価 診断、治療、予防におけるケアの最善の選択肢を実現するための個別化されたマネジメント
21. マルモの情報収集モデル 患者(あるいは家族や友人の)の主な関心事を訪ねます Multimorbidityの完全なケアプランをレビューします もしくは、患者の特定の側面に焦点を当てます。 現在の病状は?介入内容は? 治療計画は快適に遵守できそうですか? 患者の好みを考慮しましょう 重要な結果に関連するエビデンスは入手可能ですか? 予後を考慮しましょう 治療間の相互作用を考慮しましょう 治療計画の利点と害を比較検討しましょう 介入・治療の実施・継続に反対するかを対話し決定する 利益、実現可能性、アドヒアランス、好みとの整合性を 定期的に評価します Comorbidity の高齢者の評価と管理のアプローチ(UpToDateを大浦翻訳) Heather E Whitson: Managing multiple comorbidities. Post TW, ed. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. https://www.uptodate.com (Accessed on January 30, 2020.)
22. 誤嚥性肺炎の高齢者には使いづらい 患者(あるいは家族や友人の)の主な関心事を訪ねます Multimorbidityの完全なケアプランをレビューします もしくは、患者の特定の側面に焦点を当てます。 現在の病状は?介入内容は? 治療計画は快適に遵守できそうですか? 患者の好みを考慮しましょう 重要な結果に関連するエビデンスは入手可能ですか? 予後を考慮しましょう 治療間の相互作用を考慮しましょう 治療計画の利点と害を比較検討しましょう 介入・治療の実施・継続に反対するかを対話し決定する 利益、実現可能性、アドヒアランス、好みとの整合性を 定期的に評価します 本人の好みが不明 ケアプランが複雑 エビデンスがない 予後が不透明
23. 誤嚥性肺炎の背景にある生物医学的問題が何でもあり 悪性腫瘍,心血管疾患,感染症,慢性臓器障害,老年症候群   →1つ1つが大変 脳梗塞,糖尿病,高血圧→ 栄養をどうするか レビー小体型認知症,パーキンソニズム →薬の止め方や治療のやめ時,生命予後やQOL視点での優先順位 ポリファーマシー,ポリドクター →誰が主治医機能を果たす? COPDや心不全との合併 →ガイドラインは役に立たない 大腿骨手術の4.23%に誤嚥性肺炎を合併(PMID:32049822) 腰椎圧迫骨折治療のコルセットが却って誤嚥性肺炎治療の妨げに 誤嚥性肺炎を例にしたマルモ診療の難しさ
24. 誤嚥性肺炎のマルモ診療の難しさ 生物医学的な介入も多いが、心理社会的な問題も多い 高齢者はプロブレム数が多い.関わる家族への介入も必要 認知症が進行すると本人の意思推定が難しい 本人の意向がわからず、家族や医療職によるACPや治療の意思決定を余儀なくされると家族への精神的負担,本人の自尊心を損ねる 原因疾患の治療や嚥下障害への介入をするとポリファーマシーになってしまう パーキンソン病にL-DOPAをどこまで続けるか 半夏厚朴湯、ペリンドプリル、シンメトレル、プレタールをいつまで投薬するか 多職種介入が有効だが,職種が足りない場合のジレンマ 十分な介入ができない環境では不全感が残る.複雑症例は特に大変 過剰な生活指導が本人のモチベーションを下げる 食形態の指導,食事の姿勢の指導,栄養の指導,リハビリなどが負担
25. プロブレムリストが縦に長すぎ #A 誤嚥性肺炎 #1 慢性心不全 #2 慢性心房細動 #3 陳旧性性心筋梗塞 #4 慢性腎臓病 #5 2型糖尿病 #6 腎性貧血 #7 高血圧 #8 肺気腫 #9 レビー小体型認知症(神経内科に通院) #10 姿勢反射障害・座位保持困難(神経内科に通院) #11 自律神経障害(神経内科に通院) #12 骨粗鬆症・腰椎圧迫骨折(整形外科に通院) #13 変形性股関節症(整形外科に通院) #14 前立腺癌(泌尿器科に通院) #15 神経因性膀胱(泌尿器科に通院) #16 老々介護,子は遠方に在住 #17 今後の生活についての代理決定困難 #18 年金暮らし #19 ポリファーマシー
26. Multimorbidity pattern Takuya Aoki. Sci Rep. 2018 Feb 28;8(1):3806. [PMID: 29491441] 誤嚥性肺炎の原因は 上記のどのパターンでもあり得る
27. マルモのプロブレムリスト(私案)
28. 治療の目的は? どんな治療内容か? 介護サービスは? 家族に協力者は? 近所づきあいは? 変化や逆境に強い? 成功体験はあるか? ポリファーマシーになっていないか? 主治医機能を果たす 診療科はあるのか?「ポリドクター」に なっていないか? 医師の生活指導が 厳格になってるか? 増やしたい 減らしたい Mercer S, et al: ABC of Multimorbidity. John Wiley & Sons, UK, 2014.図8.2を一部改変 Multimorbidityのバランスモデル バランスを取ることでPatient experienceの重視 つまり患者中心のアウトカム設定を共同で行う
29. QOLの向上 良い最期を過ごす 介護サービスは? 家族に協力者は? 変化や逆境に強い? ポリファーマシーになっていないか? 主治医機能を果たす 診療科はあるのか?「ポリドクター」に なっていないか? 医師の生活指導が 厳格になってるか? 増やしたい 減らしたい Mercer S, et al: ABC of Multimorbidity. John Wiley & Sons, UK, 2014.図8.2を一部改変 Multimorbidityのバランスモデル バランスを取ることでPatient experienceの重視 つまり患者中心のアウトカム設定を共同で行う
30. マルモの四則演算
31. 誤嚥性肺炎に多職種による包括的介入 ①介入群で死亡率低下 (4.9% vs.17.6%, P=0.061) ②治療後1年後の無再発生存率も高い(48.5% vs. 24.3%, P=0.040) 荒幡 昌久:高齢者嚥下性肺炎に対する包括的診療チーム介入試験. 日本老年医学会雑誌, Vol. 48: (63-70), 2011. マルモの足し算
32. マルモの引き算 介入し過ぎであれば あえてやらないことを決める ・現実的にできることか ・スタッフや介護者の負担など ・やめるときには根拠を持とう
33. マルモの掛け算 介入の選択肢の中で レバレッジポイントを見つける ・小さい労力で大きな効果を生むもの ・見つけるためには,医学的視点ではなく患者・家族・地域を見る必要あり
34. マルモの割り算 多いプロブレムの整理 ・マルモパターンに当てはめると,ガイドラインの視点でアプローチできる可能性。 ・ポリファーマシーの理由は処方カスケードにあるのではないか。 ・複雑な家族事情は家族カンファレンスで問題整理。
35. 実際にアプローチしてみましょう(実践編)
36. ①マルモのプロブレムリスト 80歳男性 プロブレムが縦に並ばない場合,マルモパターンを一つの概念に統合すると見やすい 佐藤 健太,Multimorbidity時代のプロブレムリストの作り方.日内会誌 106:2535~2544,2017
37. 優先順位は肺炎治療 DLB以外に嚥下障害の原因はないか 介護サービスは? 妻は限界? 近所づきあいは? リハビリには意欲的? もともとの性格は? 薬は減らせそう ほとんど不要な薬 主治医機能を統合化 外来通院は困難? 食事の準備は? 排泄はどうしている? 増やしたい 減らしたい Mercer S, et al: ABC of Multimorbidity. John Wiley & Sons, UK, 2014.図8.2を一部改変 ②マルモのバランスモデル バランスを取ることでPatient experienceの重視 つまり患者中心のアウトカム設定を共同で行う 患者が被る治療負担を減らし,患者も含めた社会全体の費用負担を減らす
38. ③マルモの四則演算 足し算:ABCDEアプローチ。慢性心不全に対してβ遮断薬。 引き算:ミルセラ中止。転倒リスクの高いエブランチル中止。痰が多くコリン作動薬のベサコリン中止。 掛け算:介護申請を行うことで無理なく自宅療養を継続する。  割り算:金銭的困難・通院困難・座位保持困難・老老介護の負担は単一診療科まとめる。
39. マルモのアプローチまとめ マルモのプロブレムリストを作る バランスモデルで問題点を俯瞰的にみる 四則演算のアプローチ 困った時には家庭医療の技術介入(詳しくは連載へ…)
40. マルモ診療は家庭医療で扱いやすい マルチモビディティは主にプライマリケア診療で扱う健康問題である。 包括性、患者中心のアプローチ、患者との長期的な関係性、そしてケアの継続性と協調性が試される。 マルモの診療こそ,家庭医療のスキルが必要になるのではないか。(私見)
41. 全体のまとめ 誤嚥性肺炎がからむMultimorbidity(マルモ)は多疾患だけでなく心理社会的にも問題が多い マルモパターンとプロブレムリストを組み合わせると 問題点が見えてくる マルモのバランスモデルは複雑症例を俯瞰的にみることができる マルモの四則演算で適切で無駄のない介入が見えてくる マルモ診療には家庭医療の考え方が重要である
42. https://moura.hateblo.jp/ ご視聴いただき ありがとうございました!