PPIアップデート〜ストレス潰瘍予防、デメリット、切り方〜

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原田 拓

原田 拓

昭和大学病院

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病棟管理においてPPIの安全神話は崩れてきています。ストレス潰瘍予防の適応、CD腸炎、骨折、認知症、急性間質性腎炎のデメリットがあることをまず知る事が大事です。また実際にPPIが処方されている患者がきた場合の切り方について解説しています。最後にタケキャブについてみていきます。

PPIアップデート〜ストレス潰瘍予防、デメリット、切り方〜

1. 病棟管理とPPIAntaa ミニレクチャー2017年11月24日 昭和大学病院 総合診療科 原田 拓
2. 今日のテーマは・・・
3. 今日のテーマは・・・
4. PPIってどんなイメージですか?
5. 今日のゴール ストレス潰瘍予防の適応を知る PPIのデメリットを知る PPIの切り方を知る
6. ストレス潰瘍予防の適応  凝固異常(血小板5万以下,PT-INR>1.5,APTTが2倍以上) 48時間以上の人工換気 消化性潰瘍か消化管出血の既往 外傷性脳損傷,脊髄損傷,熱傷 minor項目が2個以上:敗血症,1w以上のICU滞在,6d以上の潜在性消化管出血(Occult GIB),HDC 250mg以上のステロイド治療
7. ストレス潰瘍予防の適応 消化管出血のリスクが高いとは考えられない患者の予防はケースバイケース 経腸栄養をしているかどうか,どれくらい経腸栄養できないか,患者の重症度や合併症などで判断する →経腸栄養でGIBのリスクが低下(OR 0.30)(Crit Care Med 1999; 27:2812.) →経腸栄養の患者でストレス潰瘍予防は有害なだけかもしれない(Crit Care Med 2010; 38:2222.)
8. ストレス潰瘍の予防の薬剤選択 ストレス潰瘍予防の最適の薬剤は不明 効果はPPI>H2blocker>スクラルファート PPIとH2blockerはCDIや院内肺炎のリスクが上昇し,スクラルファートはそういったリスクはないが効果が低い リスクがある重症患者では消化管出血の予防のメリットが感染症のリスクを上回ると考えられるのでH2blockerやPPIを使用する
9. PPIの選択は相互作用も考える オメプラゾール(オメプラール)とエソメプラゾール(ネキシウム)はCYP2C19を介して代謝される。特にオメプラゾールは相互作用のリスクはPPIで最大,特にプラビックスとの併用は注意。 ランソプラゾール(タケプロン)はCYP2C19とCYP3A4 ラベプラゾール(パリエット)は主な代謝経路は非酵素的で相互作用のリスクはあまりない 肝不全や腎不全での用量調整は不要 ※CYP2C19は日本人で遺伝子多型があり個人差が大きい※ボノプラザン(タケキャブ)はCYP3A4なので個人差はない。クラリスロマイシンやテオフィリンとの相互作用がある
10. 今日のゴール ストレス潰瘍予防の適応を知る PPIのデメリットを知る PPIの切り方を知る
11. PPIの安全神話は崩れている 肺炎(市中と院内) C.difficile 感染症,感染性腸炎,特発性細菌性腹膜炎 骨粗鬆症や骨折 CKD 低Mg血症 VitB12欠乏 下痢(microscopic colitis含む) 薬剤性ループス 認知症?(文献で意見わかれている) 認知症患者における機能障害 死亡率上昇?(BMJ Open 2017; 7:e015735.) よくある副作用に頭痛,嘔気,下痢,皮疹がある
12. PPIによるデメリット(CMAJ.2016 Jun 14;188(9):657-62.) C.difficile感染症のNNH:1年の使用で3925,14dの使用+病院で抗菌薬投与で50 骨折のNNH:股関節骨折で2672,椎体骨折で337 認知症患者における機能障害のNNH:15 急性間質性腎炎発症のNNH:60歳以上で5000 ※PPIの使用でC.difficile感染症(CDI)のリスクが高まって,(RR 1.69),CDI再発のリスクも上昇する(HR 1.5)。50%近くが不適切な使用にもかかわらずCDIの時にPPIが中止されていることはすくない。
13. PPIのデメリット ただし現時点での長期PPI投与前の骨密度,ピロリスクリーニング,そのほかルーチンの検査は推奨されない(Gastroenterology. 2008 Oct;135(4):1392-1413,) リスクがある重症患者では消化管出血の予防のメリットが感染症のリスクを上回ると考えられるのでH2blockerやPPIを使用する
14. 今日のゴール ストレス潰瘍予防の適応を知る PPIのデメリットを知る PPIの切り方を知る
15. PPIっていきなり切っちゃいけないの?
16. rebound gastric acid hypersecretion PPIを突然中止するとrebound gastric acid hypersecretionと呼ばれる中止後の酸分泌過多が40%で起こるという報告あり(Homeopathy.2011;100(3):148-56) PPIを8w継続の後,中止して4w以内に40%の人が胸焼けや消化不良を感じた(Clin Gastroenterol Hepatol 2007; 5:1418.) 半年以上PPIが継続投与された人は漸減する ストレス潰瘍予防で短期投与後なら中止してOK 出血性消化管潰瘍の既往やバレット食道,重度の食道炎がある人は漸減しない
17.
18. 入院は「ポリファーマシー介入」のいい機会 ■PPI内服の理由が不明→減量 or「on-demand」 or 中止 ■PPI内服の理由が明確 中等症までの食道炎かGERD→4-8wで減量か中止 消化性潰瘍→2-12wで減量か中止 上部消化管症状→3d無症状だったら減量か中止 ICUなどでストレス潰瘍予防→減量か中止 ピロリ除菌→2wで減量か中止 バレット食道,NSAIDs継続使用,重度の食道炎,消化管出血の既往→PPI継続
19. PPIを切った後は… モニタリングする項目(Can Fam Physician. 2017 May; 63(5): 354–364.) →胸焼け,逆流,消化不良,心窩部痛 →食欲低下,興奮,体重減少 →非薬物療法として「就寝2-3h前の食事を避ける」「Head upする」「トリガーとなる食事を避ける」 →薬物療法としてOTCの製剤やH2RAを使用 →上記でも3-7d症状が持続するならPPI再投与 →症状によってはピロリの検査を考慮する
20. PPIの減らし方  決まった方法はない 中〜高用量のPPIの場合は毎週50%減量する。1w最低用量になったら中止する方法もある。 オメプラゾール 20mg/dを1w,10mg/dを1w,10mg/隔日を1wという研究あり(Aliment Pharmacol Ther 2006; 24:945.) 連日から隔日や用量を減らす...etc 必要時使用する「on demand」の方法も有効(Clin Gastroenterol Hepatol 2005; 3:553) ★患者さんが受け入れやすい形態をとる
21. おまけ タケキャブに関して
22. タケキャブはPPIの上位互換? ●PPIの問題点 ・酸による活性化が必要なため効果発現に数日間の服用が必要・肝薬物代謝酵素CYP2C19による代謝の影響があり、個人差がある ・夜間の酸逆流抑制には作用時間が不十分
23. タケキャブはPPIの上位互換? カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)という新しい機序 PPIより迅速に効果がでる(Pharmacol Ther. 2005 Dec;108(3):294-307) 24時間のPhの制御もPPIより有用(Pharmacol Ther. 2005 Dec;108(3):294-307) 代謝はCYP3A4なので個人差は生じにくい? ピロリ除菌にPPIより有用かも(Gut. 2016 Sep;65(9):1439-46)
24. タケキャブはPPIの上位互換? アジアでしか使えないのでDataは不明 高ガストリン血症による胃カルチノイド腫瘍や各種腺増加のリスク(?) 服用中止後のリバウンドのリスクも高い(?) ※個人的な感想:効果効力はPPIの上位互換の印象はあるが,その分デメリットもありそう。本当に必要なのかどうかをまず考えて必要な人だけに必要な期間だけ投与するのがよい!?
25. 今日のゴール ストレス潰瘍予防の適応を知る PPIのデメリットを知る PPIの切り方を知る
26. ストレス潰瘍予防の適応  凝固異常(血小板5万以下,PT-INR>1.5,APTTが2倍以上) 48時間以上の人工換気 消化性潰瘍か消化管出血の既往 外傷性脳損傷,脊髄損傷,熱傷 minor項目が2個以上:敗血症,1w以上のICU滞在,6d以上の潜在性消化管出血(Occult GIB),HDC 250mg以上のステロイド治療 これに加えて経腸栄養の有無も含めて個別に判断する
27. PPIのデメリット ■感染症:院内肺炎,C.difficile 感染症,市中肺炎,感染性腸炎,特発性細菌性腹膜炎 ■吸収や代謝:骨粗鬆症,骨折,VitB12欠乏,低Mg血症 ■老年関係:認知症発症,認知症患者における機能障害,死亡率上昇 ■その他:CKD,下痢(microscopic colitis含む) ■薬物相互作用には注意する(特にオメプラゾールやエソメプラゾール)
28. PPIの切り方 そもそもなぜPPIを飲んでいるか確認する →バレット食道,NSAIDs継続使用,重度の食道炎,消化管出血の既往であれば継続とする →それ以外であれば漸減か中止を検討する 半年以上であれば中止ではなく漸減を考慮する 減らし方に決まった方法はないが、徐々に減らしたり、隔日にしたり、必要時使用する「on demand」の方法も有効 患者さんと相談し受け入れやすい形態をとる