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在宅看取りの重要性と背景
#1. 在宅看取りに⼤切な3条件 ー看取り率70%の離島よりー 国⺠健康保険⼤和診療所 ⼩川 信
#2. 履歴書 l 福岡市出⾝ 50歳 l 福岡県⽴修猷館⾼校(ラグビー部) l 東京慈恵会医科⼤学(バックパッカー)1999年卒 l 国際医療研究センター外科レジデント l 済⽣会福岡総合病院産婦⼈科レジデント(1年間) l ⿅児島⼤学外科 l 国⺠健康保険⼤和診療所(2015年より現在)
#3. ⼤和村は 奄美⼤島の中央⻄側 ⼈⼝1,414⼈(2022年)減少傾向 ⾼齢化率は約42% 75歳以上⼈⼝は2014年より既に減少傾向
大和村の在宅看取り率の推移
#4. ⼤和村の在宅看取り率 80.0 2014年︓5.2% 70.6 70.0 62.8 60.0 60.5 57.6 51.9 50.0 2021年︓70.6% 48.4 41.4 40.0 (在宅医療に⼒を⼊れる前) 30.0 20.0 在宅看取り率 = 10.0 在宅看取り数 / 全死亡数 5.2 0.0 2014年 2015年 2016年 ⾃宅死の割合(%) 2017年 2018年 ⽼⼈ホーム死の割合(%) 2019年 2020年 全在宅死の割合(%) 2021年
#5. 全1741市町村の在宅看取り率(厚⽣労働省) 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 1位 神津島村 与論町 ⼤和村 利島村 神津島村 三宅村 三島村 渡嘉敷村 2位 海⼠町 新島村 ⽩川村 ⼩笠原村 ⼤和村 3位 ⽩川村 上勝町 伊根町 檜枝岐村 ⼤和村 知夫村 新島村 檜原村 在宅医療に⼒を⼊れ始めた 4位 与論町 鳴沢村 新島村 ⼩笠原村 宇検村 神津島村 檜原村 ⽩川村 5位 泰⾩村 ⼤和村 奈義町 神津島村 ⼤蔵村 ⼤蔵村 ⿊滝村 新島村 2015年以降、⾼い看取り 6位 新島村 新篠津村 ⼭形村 与論町 ⽩川村 ⼤和村 伊根町 三宅村 7位 ⼩笠原村 海⼠町 ⼤蔵村 ⼤蔵村 海⼠町 新島村 ⼤蔵村 神津島村 8位 笠置町 宇検村 ⾶島村 三宅村 ⼤和村 粟国村 9位 曽爾村 ⽩川村 栄村 神津島村 海⼠町 南富良野 町 ⼤蔵村 ⿇績村 知夫村 与那国町 10位 神津島村 神津島村 御蔵島村 多良間村 ⽥野畑村 新篠津村 新篠津村 与那国町 阿智村 新島村 新篠津村 率を維持している。
看取った遺族への満足度調査
#6. 看取った遺族へのアンケート 医療は全般的に満⾜だったか 無記⼊ やや満⾜ 2% • 郵送した68名のうち、44名から回答を得た(64%) 。 7% ⾮常に満⾜ 43% 満⾜ 48% • 91%から「⾮常に満⾜〜満⾜」と回答があったが、回答 がなかった遺族は不満⾜だった可能性も否めない。
#7. 在宅看取りに⼤切な3条件 ① 地域⽀え合い ② 質の⾼い多職種連携 ③ かかりつけ医のアドバンスケアプランニング
地域支え合いの具体例と効果
#8. 地域⽀えあいが盛んである l 60歳代の⽅々を中⼼になり、集落毎に地域 ⽀え合いグループを作っている。 l ボランティアで⾼齢者の⾒守りをしている。 l ⾃治体と⼀緒になって応援することが⼤切。
#9. ⾒守り活動の例「幸せの⻩⾊い旗」 孤独死を出さないため 独居⾼齢者が朝起きると⽞関先に⻩⾊い旗を 掲げ、⽇が暮れると取り込む。旗が⽴ってい なければ、集落の住⺠が訪ねて⾏くシステム。 ⻩⾊い旗は元気に起床したことを周囲に知ら せる「元気の印」。
#10. 「⻩⾊い旗」で助かった事例 独居の86歳⼥性。⾃宅に電話なし。 ⻩⾊い旗が掲げられていなかった。 隣⼈が訪ねたところ、前⽇より台所で転倒し、動け ないでいたところを発⾒。 救急搬送され、脳梗塞による右不全⿇痺、右第11、 12肋⾻⾻折と診断。
地域支え合いによる見守りの事例
#11. 地域⽀え合いによる⾒守りの事例 • 独居の末期⼤腸がん男性。 • 早朝と深夜、地域⽀え合いグループの ⽅々が⾒守ってくれる。 • 結局、ヘルパー、訪問看護師、訪問薬 剤師、ケアマネ、医師などで1⽇8回、 ⼈が出⼊りしていた。
#12. 在宅看取りに⼤切な3条件 ① 地域⽀え合い ② 質の⾼い多職種連携 ③ かかりつけ医のアドバンスケアプランニング
ケアカンファレンスによる多職種連携
#13. ケアカンファレンス l 対応に困っている患者、看取りが近く なってきた患者がいたら、関係者で集ま りカンファレンスを⾏う。 l 苦しんでいる⼈は⾃分の「苦しみ」を分 かってくれる⼈がいるとうれしい。 l 解決できない苦しみがあっても「⽀え」 があれば穏やかでいられる。 l 多職種で患者の「⽀え」を強める。
#14. ケアカンファレンスによる多職種連携の事例 • 90歳男性、独居、末期前⽴腺がん。 • 最後まで在宅希望だが、⾝の回りのことができ なくなってきた。 • カンファレンスで情報共有。隣市在住の元夫⼈ と再婚してもらった。 • 再婚1週間後、永眠。
#15. 多職種連携は勉強が⼤切。 • ⼀緒に勉強会を⾏うと、共通⾔語を持つ。 • 1チームになる。
かかりつけ医の役割とアドバンスケアプランニング
#16. 同職種との連携も⼤切︓医師会との連携 • 医師の不在時、代診医師が往診に来てくれる。 • 安⼼して島を離れられる。
#17. 在宅看取りに⼤切な3条件 ① 地域⽀え合い ② 質の⾼い多職種連携 ③ かかりつけ医のアドバンスケアプランニング
#18. かかりつけ医が責任もってアドバンス•ケア•プランニングを⾏う ACPのタイミング 家族が集まったとき 病気になったとき 再発したとき 退院したとき 話す時間があるとき など、繰り返し⾏うプロセスである。 医師・看護師は普段の外来や訪問診療にて少 ⼤蔵暢: 週間医学界新聞, 医学書院, 東京, 2011 より改編 しずつACP⾏い、繋いでいく。
#19. かかりつけ医が⼊院した患者を回診する かかりつけ医は病院に預けた患者を定 期的に⾒にいく。 在宅療養を希望している患者は、病院 主治医と調整する。 病院医師との顔が⾒える関係が⼤切。
在宅看取りに必要な条件のまとめ
#20. 在宅看取りに⼤切なもの ① 地域⽀え合い l幸せの⻩⾊い旗、地域⽀え合いによる⾒守り ② 質の⾼い多職種連携 lケアカンファレンス、勉強会、医師会との連携 ③ かかりつけ医のアドバンスケアプランニング l病院に預けた患者を定期的に⾒にいく