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関節リウマチの基本と診断
#1. 関節痛いんですが、関節リウマチですか? MajorTY@膠原病内科 日本リウマチ学会専門医・指導医
#2. Take Home Message ✓ 関節リウマチ(RA)で関節痛は起きても、逆は成り立たない → 関節炎がなければ免疫抑制薬の必要な RA はない。 ✓ RA の診断には関節炎の確認が必須! → 関節内で炎症があるのかのチェック! 触ってわからなければ、関節エコーやMRIを使おう
関節痛の評価とアプローチ
#3. 関節痛からの RA へのアプローチ 関節痛あり 除外 ⇦ 関節外 関節内 わからない 左記のように示します。 関節炎はあるか︖ 除外 ⇦ いいえ はい ✓ 関節痛から RA へのアプローチを わからない 超⾳波検査 造影MRI →次からひとつずつ説明します。 ✓ 大きな問いは2つ。 炎症性滑膜炎あり 炎症性関節炎あり 関節リウマチ分類基準 6点以上 関節リウマチ以外の疾患の除外 関節リウマチ ・痛みは関節内? 関節外? ・関節内なら炎症性? 非炎症性?
#4. その痛みは関節内? 関節外? 訴えの関節痛の場所を右下の図を参考にみてみよう! ✓ 関節リウマチは関節内で関節痛が起こります。 ✓ やや専門的な部分もあるので評価できなければスキップ可 関節内 vs 関節外 関節痛あり 除外 ⇦ 関節外 関節内 関節炎はあるか︖ 除外 ⇦ いいえ はい わからない 超⾳波検査 造影MRI 炎症性滑膜炎あり 炎症性関節炎あり 関節リウマチ分類基準 6点以上 関節内 関節周囲・関節外 疼痛の部位 関節裂隙直上が多い 関節裂隙からすれでいることも 関節腫脹 あり/なし なし 関節可動域(ROM) 全方向で制限 特定の方向が制限 運動時の疼痛誘発 全方向でみられることが多い 特定の方向でみられることが多い 自動/他動時ROM 自動時ROM=他動時ROM 自動時ROM<他動時ROM 自動/他動時痛 自動時痛(+) 他動時痛(+) 自動時痛(+) 他動時痛(-) わからない 関節リウマチ以外の疾患の除外 関節リウマチ [宇都宮雅子. 総合臨床. 2015;25:318. 引用改変]
炎症性と非炎症性の鑑別
#5. 関節内だったら、次は? 炎症性? 非炎症性? ✓ 炎症物質が溜まってくるとこわばりが出やすいので 寝起きはこわばりが出やすい。 ✓ 炎症性では基本的にこわばる時間は長い(30分以上) 非炎症性と炎症性を見分けるポイント 関節痛あり 除外 ⇦ 関節外 関節内 炎症性(RA、SLEなど) 非炎症性(OA、AVNなど) 朝のこわばり かなり長時間(>30分) 局所的、短時間(<30分) わからない 全身症状 多くがあり なし 超⾳波検査 造影MRI 症状のピーク 長時間休んだあと 長時間使ったあと 炎症性滑膜炎あり ロッキングあるいは不安定性 稀 遊離体、関節内障、あるいは筋力低下 炎症(関節液, 圧痛, 熱感, 発赤, 滑膜炎) 多い 普通はなし わからない 関節炎はあるか︖ 除外 ⇦ いいえ はい 炎症性関節炎あり 関節リウマチ分類基準 6点以上 関節リウマチ以外の疾患の除外 関節リウマチ OA: 変形性関節症、AVN: 無腐性壊死、RA: 関節リウマチ、SLE: 全身性エリテマトーデス [岸本暢将. Medicina 2016;53:371. 引用改変]
#6. 関節痛からの RA へのアプローチ(後半) 関節痛あり 除外 ⇦ 関節外 関節内 わからない ・関節内なら炎症性? 非炎症性? 関節炎はあるか︖ 除外 ⇦ いいえ はい ・痛みは関節内? 関節外? わからない 超⾳波検査 造影MRI 炎症性滑膜炎あり 炎症性関節炎あり 関節リウマチ分類基準 6点以上 関節リウマチ以外の疾患の除外 関節リウマチ ・多関節にわたるか︖ ・炎症が生じている関節の分布は︖
炎症性関節痛のケーススタディ
#7. Case1:炎症性っぽくない… 多関節にわたるかどうか? ✓ 炎症によるものでなければ、図のように RA の可能性はない ✓ 本当に炎症がないかは確定できない場合は、関節エコーや造影MRI などの モダリティでも確認しよう。 ✓ 関節炎を同定できたら、炎症性の項目へ移行 炎症以外による関節痛の可能性 単関節、寡関節 (1〜3 関節) 急性 慢性(6週間以上持続) 半月板断裂 変形性関節症 変形性関節症 骨壊死 神経障害性関節症 ヘモクロマトーシス 色素性絨毛結節性滑膜炎 多関節 異常ヘモグロビン症 (4 関節以上) アミロイド関節症 変形性関節症 [野口善令. 総合診療. 2015;25:334. 引用改変]
#8. Case2:炎症性があった!(1/2) 多関節にわたるかどうか? ✓ 炎症性であれば下記の図のように RA の可能性あり! ✓ でも単関節・急性なら、化膿性関節炎は鑑別を! 炎症による関節痛の可能性 単関節、寡関節 (1〜3 関節) 急性 慢性(6週間以上持続) 化膿性関節炎 乾癬性関節炎 痛風 末梢性脊椎関節炎 偽痛風 少関節型若年性特発性関節炎 反応性関節炎 多関節 ウイルス性関節炎 関節リウマチ (4 関節以上) 薬剤性関節炎 MCTD 膠原病 SLE リウマチ熱 全身性強皮症 回帰性リウマチ 成人スティル病 RS3PE症候群 [野口善令. 総合診療. 2015;25:334. 引用改変]
慢性関節炎の分布と鑑別
#9. :炎症性があった!(2/2) 慢性の多関節炎 関節の分布は? ✓ 関節リウマチでは、DIP 関節は基本的に侵されない ✓ 膠原病の関節炎、乾癬性関節炎は区別できないことはある 慢性の関節炎の分布による鑑別疾患 手指DIP関節 PIP/MCP/手関節 MTP関節 左右対称性 乾癬性関節炎、MRH 関節リウマチ(90%以上が発症時PIP/MCP関節で発症)、SLE、乾癬性関節炎 結晶性関節炎、脊椎関節炎、関節リウマチ 関節リウマチ、SLE、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、リウマチ性多発筋痛症 DIP: 遠位指節間関節(第一関節) PIP: 近位指節間関節(第二関節) MCP:中手指節関節 (指の付け根の関節) MTP: 母趾中足趾節関節 (足の付け根の関節) MRH: 多中心性細網組織球症 [岸本暢将. Medicina 2016;53:371. 引用改変]
#10. ここで。関節リウマチって? 罹患関節 大関節 1ヶ所 大関節 2-10ヶ所 小関節 1-3ヶ所 小関節 4-10ヶ所 11ヶ所以上 (1ヶ所以上の小関節) 血清学的検査 RF陰性かつ抗CCP抗体陰性 いずれかが低値陽性 いずれかが高値陽性 急性期反応物質 CRP正常かつ赤沈正常 CRP、赤沈のいずれかが異 常 症状の持続 6週間未満 6週間以上 スコア 0 1 2 3 5 0 2 3 0 1 0 1 前提 1 関節以上で臨床的に 関節の腫れ(滑膜炎)がある ※関節リウマチの関節炎は滑膜で炎症が起こる 除外 滑膜炎の原因が他の疾患では説明できない 改訂リウマチ分類基準 2010 前提・除外疾患後、スコアが 6 点以上ならば 関節リウマチと考える。 [Aletaha D et al. Arthritis Rheum. 2010;62:2569-81.]
関節リウマチの診断基準
#11. Take Home Message ✓ 関節リウマチ(RA)で関節痛は起きても、逆は成り立たない → 関節炎がなければ免疫抑制薬の必要な RA はない。 ✓ RA の診断には関節炎の確認が必須! → 関節内で炎症があるのかのチェック! 触ってわからなければ、関節エコーやMRIを使おう