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看取りにおける体の変化とコミュニケーション
#1. 看取りについて考える亡くなる前の変化とコミュニケーション
#2. 89歳男性。肺がん、お看取り目的で入院中。
徐々に意識障害が進み、JCSⅢ-300となった。
入院後にずっと付き添っている長女・次女から
「あとどれくらいもちますか?
シャワーを浴びに一度家に帰っても良いですか?」
と質問があった。
→あなたならどう答えますか?
#3. 本日のお話 人が亡くなるときの体の変化
人が亡くなるときの本人・家族とのコミュニケーション
死亡直前の身体的変化とその兆候
#4. 死亡直前の体の変化 死前喘鳴
下顎呼吸
チアノーゼ
橈骨動脈触知不能
#5. 死亡直前の体の変化 死前喘鳴
下顎呼吸
チアノーゼ
橈骨動脈触知不能 唾液や痰がうまく飲み込めない
呼吸とともに「ゴロゴロ」
#6. 死亡直前の体の変化 死前喘鳴
下顎呼吸
チアノーゼ
橈骨動脈触知不能 呼吸が荒くなり
顎を上下に大きく
揺らすような呼吸
#7. 死亡直前の体の変化 死前喘鳴
下顎呼吸
チアノーゼ
橈骨動脈触知不能 皮膚が紫色に変化する
手足の先に出やすい
触ると冷たく感じることも
#8. 死亡直前の体の変化 死前喘鳴
下顎呼吸
チアノーゼ
橈骨動脈触知不能 血圧が下がる
各兆候の頻度と出現から死亡までの期間
#9. 各兆候の頻度 死前喘鳴 40%
下顎呼吸 95%
チアノーゼ 80%
橈骨動脈触知不能 100% Am J Hosp Palliat Care. 1998;15(4):217-222. 症状が
でない人もいる
#10. 各兆候の出現から死亡までの期間 死前喘鳴 下顎呼吸 チアノーゼ 橈骨動脈
触知不可 ~2時間 2~6時間 6~12時間 12~24時間 24時間~ 15% 30% 50% 40% 70% 85% 95% 50% 80% 90% 95% 60% 85% 95% Am J Hosp Palliat Care. 1998;15(4):217-222.
#11. 下顎呼吸が出てから心停止までの時間 14.8% 14.3% 34.4% 17.5% 8.9% 10.4% 30分
以内 30~
60分 1~4
時間 4~12
時間 12~24
時間 24時間
以上 24時間以上
続く場合もある J Palliat Med. 2022;25(3):461-464.
#12. ここまでのまとめ 人が亡くなるなる直前の症状は
死前喘鳴
下顎呼吸
チアノーゼ
橈骨動脈触知不能
これら兆候があれば数時間以内に亡くなる可能性が高い
これら兆候が出現せずに亡くなる人もいる
疾患ごとのtrajectory curveとその影響
#13. 亡くなる直前のことはなんとなくわかったけどそれより前はどんな感じ?
#14. 各疾患のtrajectory curveを知っておく がん 慢性疾患
(心不全、COPDなど) 認知症
老衰 突然死
(交通事故など) JAMA. 2001 Feb 21;285(7):925-32.
#15. 各疾患のtrajectory curveを知っておく 突然死
(交通事故など) がん 慢性疾患
(心不全、COPDなど) 認知症
老衰 身体機能 時間 死 直前まで
普通の生活を
している JAMA. 2001 Feb 21;285(7):925-32.
#16. 各疾患のtrajectory curveを知っておく がん 慢性疾患
(心不全、COPDなど) 認知症
老衰 突然死
(交通事故など) 身体機能 時間 死 1~2ヶ月前から
徐々に弱っていく
倦怠感、食欲低下
体動困難…etc JAMA. 2001 Feb 21;285(7):925-32.
#17. 各疾患のtrajectory curveを知っておく がん 慢性疾患
(心不全、COPDなど) 認知症
老衰 突然死
(交通事故など) 身体機能 時間 入院・治療で
一度は改善する
でも、少しずつ
弱っていく JAMA. 2001 Feb 21;285(7):925-32.
#18. 各疾患のtrajectory curveを知っておく がん 慢性疾患
(心不全、COPDなど) 認知症
老衰 突然死
(交通事故など) 身体機能 時間 ゆっくり
じわじわ
弱っていく JAMA. 2001 Feb 21;285(7):925-32.
医師の予測とACP(Advance Care Planning)について
#19. 医師の予測は当たらない (日) 生存率 予後 患者に伝えた予後
医師が予測した予後
実際の予後 Ann Intern Med. 2001;134(12):1096-1105.
#20. ACP ; Advance Care Planning とは 人生の最終段階の医療・ケアについて
本人が家族等や医療・ケアチームと
事前に繰り返し話し合うプロセス
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 ①本人の気がかりや意向 ②価値観や目標
③予後や病状の理解 ④治療や療養に関する意向や選択
#21. サプライズクエスチョン 「目の前の患者が1年以内に亡くなったら、驚きますか?」 ⇒ 自問自答して「Yes」なら、
ACP(=人生会議)の
対象患者として意識するべし。
#22. ACP ; Advance Care Planning とは 人生の最終段階の医療・ケアについて
本人が家族等や医療・ケアチームと
事前に繰り返し話し合うプロセス
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 この「プロセス」って何なの?
事前指示書の重要性とコミュニケーションの必要性
#23. JAMA. 1995 Nov 22-29;274(20):1591-8. 1989年~米国4000人対象の介入研究
法律によって以下の2点を設定 ①事前指示書の作成の有無の確認 ②作成についての情報提供 ①蘇生処置に関する話し合いの頻度
②DNAR希望の確認の時期
③医師の認知率
④ICU滞在日数
⑤疼痛レベル で介入群と非介入群で有意な差なし
#24. 事前指示書(AD ; Advance Directives)を作成しても
医師と患者のコミュニケーションを増やさなかった
蘇生に関する意思決定を促すことはできなかった
Teno J, et al. J Am Geriatr Soc. 1997;45(4):500-507.
具体的なケアに繋がる詳細はほとんど書かれていなかった
具体的な指示があっても、一貫性のないケースが多かった
Teno J, et al. J Am Geriatr Soc. 1997;45(4):508-512. 「書類を作ること」が目的ではない!
#25. 本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針についての話し合いは繰り返すことが重要であることを強調すること。
本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、その場合に本人の意思を推定しうる者となる家族等の信頼できる者も含めて、事前に繰り返し話し合っておくことが重要であること
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
「繰り返し」コミュニケーションを
とっていく「プロセス」が大事!
#26. 本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針についての話し合いは繰り返すことが重要であることを強調すること。
本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、その場合に本人の意思を推定しうる者となる家族等の信頼できる者も含めて、事前に繰り返し話し合っておくことが重要であること
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
看護師や介護士なども含まれる!
最期の場における立ち会いとその意義
#27. ここまでのまとめ 医師の予測は当たらない
=予後の予測は難しい
各疾患の亡くなる前の特徴を知っておく
サプライズクエスチョン「目の前の患者が1年以内に亡くなったら、驚きますか?」⇒YESなら、先々のことを考え始めてもよいかも
#28. 本日のお話 人が亡くなるときの体の変化
人が亡くなるときの本人・家族とのコミュニケーション
#29. 89歳男性。肺がん、お看取り目的で入院中。
徐々に意識障害が進み、JCSⅢ-300となった。
死前喘鳴、下顎呼吸が出現。予後は時間単位と思われた。
入院後にずっと付き添っている長女・次女から
「一緒にいるのがつらいです。
私達はなにもできないのでしょうか?」
と質問があった。
→あなたならどう答えますか?
#30. 最期の場に立ち会いを希望するか 必ず立ち会いたい 立ち会いたい 立ち会わなくて良い 実際に立ち会った 立ち会わなかった 243人 38人 151人 66人 17人 29人 日本人の92%が患者の最期に立ち会いたい J Pain Symptom Manage. 2017;54(3):273-279.
亡くなる場面での注意点と家族への配慮
#31. 立ち会いよりも、大事なこと 抑うつの頻度 (%) 立ち会えた 立ち会え
なかった いろいろなことが
話せた 話せな
かった 立ち会えたか
どうかより、
お別れが
言えたかどうか
の方が大事 J Pain Symptom Manage. 2017;54(3):273-279.
#32. 亡くなる直前のコミュニケーション 80% 60% 40% 20% 0% 亡くなるまでの日数 7日 6日 5日 4日 3日 2日 1日 半日前に
会話ができたのは
およそ4割 J Pain Symptom Manage. 2015;50(4):488-494.
#33. 亡くなる場面で気をつけること どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する J Clin Oncol. 2010;28(1):142-148. / BMJ Support Palliat Care. 2018;8(2):221-228.
#34. 亡くなる場面で気をつけること どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する 『いつどうなるかわかりません』
とは言わない。
亡くなる前の変化について説明する。
(例:眠る時間が増えてくる、会話は難しくなることが多い、下顎呼吸や死前喘鳴、チアノーゼが出てくることなど) J Clin Oncol. 2010;28(1):142-148. / BMJ Support Palliat Care. 2018;8(2):221-228.
#35. 亡くなる場面で気をつけること どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する J Clin Oncol. 2010;28(1):142-148. / BMJ Support Palliat Care. 2018;8(2):221-228. 下顎呼吸、死前喘鳴は
苦しそうに見える。
自然な経過であること、
患者は苦痛に感じていないこと
を伝える。
「苦しそうに見えるってよく
ご家族から言われますが、
うとうとしながら過ごしているので
苦痛はほとんど感じていないと
言われています」
#36. 亡くなる場面で気をつけること どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する 「何もしてあげられない」
「患者のために何かしてあげたいけれど、
どうしたらよいかわからない」
という苦痛を感じている。
患者の好きだった音楽を流す
手を握る、体をさする
簡単な口腔ケアを家族と一緒にする
「そばに居るだけ、声が聞こえているだけでも、なんとなくご家族の存在を感じていて、安心されていると思いますよ」
J Clin Oncol. 2010;28(1):142-148. / BMJ Support Palliat Care. 2018;8(2):221-228.
死亡確認と家族の時間の確保
#37. 亡くなる場面で気をつけること どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する もし亡くなる直前にスタッフの
笑い声が聞こえてきたら…? J Clin Oncol. 2010;28(1):142-148. / BMJ Support Palliat Care. 2018;8(2):221-228. 「患者に意識があったとしたら
すべき話か?」という視点で接する
「亡くなった後に着せる服は…」
などの話は部屋を出て廊下でお話する。
#38. 亡くなる場面で気をつけること どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する 死亡確認は家族が全員そろうのを待つ
⇒向かっている別の家族が
いるかどうかを確認する J Clin Oncol. 2010;28(1):142-148. / BMJ Support Palliat Care. 2018;8(2):221-228. 医師の死亡診断のあと、
患者と家族だけでお別れする時間を作る ご遺体のケアを医療者と一緒に行う
看取りのパンフレットの有用性と活用法
#44. パンフレットの有用性は? Palliative Care Research 2012; 7(2): 192-201 とても役に立った
31% 役に立った
50% 少し役に立った
35% 役に立たなかった
3%
#45. パンフレットの意義は? メリット
この先どんな変化があるのかわかる
気持ちの準備をすることに役立つ
自分たちがどんなときに医療者に相談したらよいかわかる
他の家族に状況を伝えるために使用できる
デメリット
帰って不安になる
あまり知りたくない内容だと思う
#46. 看取りのパンフレットを渡すタイミングは? 亡くなる
一週間以内 一週間~
一ヶ月以内 一ヶ月
以上前 ちょうど良かった 遅かった 76% 24% 29% 71% 9% 91% 亡くなる1ヶ月前~がパンフレットを渡す目安
#47. まとめ ほとんどの家族は患者の最期に立ち会うことを希望している
死亡時の立ち会いも大事だけど、「色々話しておく」ことも大事
亡くなる前の対応のポイント
どんな変化がでてくるかを伝える
患者の苦痛を気にかける
患者への接し方を伝える
医療者の配慮のない会話
家族が悲嘆できる時間を確保する
看取りのパンフレットをうまく活用しよう