#4.
⼩児の⾷物アレルギー 何を知るべき︖ 1.原因と対策 2.注意する⾷べ物の種類 3.検査について 今回は情報の整理を主としましたので、 アナフィラキシー対応などは割愛します。 4.⾷物経⼝負荷試験とは 5.実際の対応(必要最⼩限の除去)
#5.
part.1 原因と対策 - ポイント - アレルギーは湿疹から作られ、腸から治る。 経⽪感作と経⼝免疫寛容を理解する。 • ⾷物アレルギーの原因は、腸が未熟な状態でアレルゲンを摂取することだ と考えられていましたが、近年の研究で常識は180度変わりました。 2003年 ピーナッツオイルをスキンケアとして塗ると、ピーナッツアレルギーが増える。 2008年 ピーナッツを早くから⾷べている地域に、ピーナッツアレルギーが少ない。 2015年 乳児期の早期摂取によりピーナッツアレルギーを予防できる。 2017年 肌をきれいにして卵を早期に摂取すると卵アレルギーを予防できる。 こういった経緯で ⽪膚(湿疹) と ⾷べること の重要性が認識されてきています。
#6.
経⽪感作=アレルギーのアクセル そもそもアレルギーは・・・ 本来は安全なもの(⾷物や花粉)を、 危険な異物 と免疫が誤解し、侵⼊時に 追い出す反応(かゆみや咳、嘔吐)を、 正常な⽪膚 湿疹・肌荒れ ⾓質などで防御 バリア機能が破綻 (バリア機能) 免疫細胞が活性化 異物は侵⼊しない 異物が⽪膚に侵⼊ 過敏に起こしてしまう状態。 免疫の誤解がつくられる主な部位が 湿疹・肌荒れ と考えられています。 *そのため周囲の環境に存在するものに抗体が 作られることが多いです。 例① そば屋の⼦どものソバアレルギー 例② クルミを⾷べる家の⼦のクルミアレルギー 異物にIgE抗体を作る
#7.
全ては湿疹から始まる︖ アレルギーマーチという考え⽅ 乳児湿疹 + アトピー性⽪膚炎 ⾷物アレルギー + 気管⽀喘息 + アレルギー性⿐炎 アレルギー性結膜炎 アレルギー素因のある児は、しばしば成⻑に伴い様々なアレルギー疾患を発症します。 その様⼦を⾳楽隊のマーチ(⾏進)になぞらえて、アレルギーマーチと呼びます。 その中で最も重要な病態が 湿疹 (アトピー性⽪膚炎) だと考えられています。
#8.
経⼝免疫寛容=アレルギーのブレーキ そもそも腸管は 異物 である⾷物を消化・吸収し、栄養 を得ています。 そのため 経⼝免疫寛容 といって、⾝体にとって必要なものが摂取された場合は、 異物であっても、過敏反応を起こさないように覚えておこうという機能があります。 → アレルギー疾患のブレーキ的な機能です。 すぐに治らなくとも脱感作(反応しにくい段階)を作ることも期待できます。 重症度にもよりますが、最近はむやみに完全除去はせず、 誘発歴があっても、安全な量はなるべく⾷べていくこと 栄養だから 受け⼊れよう が勧められます。治る可能性を⾼めるだけでなく、脱感 作によって誤⾷時の安全性を⾼めることにも繋がります。
#9.
原因から考える対策 経⽪感作 経⼝免疫寛容 発症の原因 予防・治癒の要 アクセルになる ブレーキの役割 アレルギーのアクセルとブレーキから考える対策は︖ 肌をきれいにする(湿疹の治療) ⾷べ始めを遅くしない 環境中の抗原を減らす むやみに完全除去にしない どちらも⼤切です︕
#10.
part.2 注意する⾷べ物の種類 - ポイント - 基本は三⼤アレルゲン(鶏卵・⽜乳・⼩⻨) 近年急激に増加している ナッツ類 にも注意が必要です。 • ⾷物アレルギーは原因を理解した上で、注意が必要な⾷べ物を把握すること が予防・対策に重要です。三⼤アレルゲンといわれる 鶏卵・⽜乳・⼩⻨ で ⾷物アレルギーのほぼ 3/4 を占めることを知っておきましょう。 • 他に、⾃宅で摂取する家庭が急激に増えているピーナッツやクルミなどの ナッツ類、回転寿司で空間中に⾶び交う(らしい)イクラ も散⾒されます。 • ⽣活環境に存在し、本⼈が⾷べていないものにリスクがあるイメージです。
#11.
原因⾷物の内訳 (平成29年度 即時型⾷物アレルギー全国モニタリング調査結果参照) カシューナッツ 1.7% ⼤⾖ 1.6% ソバ 1.8% エビ 2.5% 年代別 ① その他 3.0% イクラ 3.8% ピーナッツ 5.1% 鶏卵 クルミ 5.2% 34.7% ⼩⻨ 10.6% ⽜乳 22.0% 新規アレルゲン ② ③ 鶏卵 ⽜乳 ⼩⻨ 鶏卵 ⿂卵 ナッツ ⿂卵 落花⽣ ナッツ 果物 甲殻類 (イクラ) (イクラ) 甲殻類 ナッツ ⼩⻨ ⿂類
#12.
偽物アレルギーにご注意を ⾷物アレルギーは体につくられた抗体による免疫反応です。 抗体の関与しない反応が、誤ってアレルギーとされていることが多々あります。 医療者⽬線でも、患者⽬線でも注意しておきましょう。 パターン① ⾷中毒に準ずるもの ・サバを⾷べて30分後に全⾝にじんましんが︕→ ヒスタミン中毒 ・⽣卵を⾷べた後に発熱と下痢が︕→ ⾷中毒(アレルギーは通常発熱を伴わない) パターン② ⾷物に含まれる仮性アレルゲンなどによる反応(⾷物不耐症) ・ヤマイモが⼝についたら痒くなった。 → アセチルコリンなど ・⽜乳を飲むと下痢をします。 → 乳糖不耐症 ・おしゃれなゼリーを⾷べたら顔が⾚くなった。 → アルコールかも
#13.
part.3 検査について - ポイント - 安易な検査は不必要な除去の元、重要なのは 問診 です。 ⾎液/⽪膚検査は参考程度、確定診断には 負荷試験 を⾏います。 • ⾷物アレルギーの診断において、最も重要なものは 問診 です。 check! 症状が出たときの様⼦・⾷べたもの・時間経過・アレルギー素因・基礎疾患など • ⾎液/⽪膚検査が陽性でも、実際には⾷べられることも少なくありません。 なんとなく検査して、なんとなく除去はむしろリスクが⾼くなります。 • 明らかな症状誘発歴がなければ、検査で陽性でも診断には 負荷試験 が必要です。 検査結果に応じて、どう進めていくかをイメージしてから検査を⾏いましょう。
#14.
⾷べ物毎の参考にしやすい検査項⽬ 粗抗原+(検査可能な)コンポーネント *コンポーネント︓抗原の中でより反応しやすい部分 ⾷物アレルギーでは、数⼗種類を同時測定する検査(MAST・Viewなど)は不適です。 粗抗原 (卵⽩) コンポーネント (オボムコイド) ⾼め 感度 低め 低め 特異度 ⾼め 卵⽩(+) オボムコイド(+) → かなりそれらしい 卵⽩(+) オボムコイド(ー) → 偽陽性も考慮する 粗抗原 コンポーネント 鶏卵(卵⽩) オボムコイド ⽜乳 カゼイン ⼩⻨ ω-5 グリアジン ピーナッツ Ara h 2 クルミ Jug r 1 カシューナッツ Ana o 3
#15.
part.4 ⾷物経⼝負荷試験とは - ポイント - ⽬的は主に2つ ① 確定診断 ② ⾷べられる量の評価 安全性を確保するため、慣れている施設で⾏うことが必要です。 • ⾷物経⼝負荷試験はアレルギーがある、もしくは疑われる⾷べ物を安全性を 確保して、病院で実際に⾷べてみる検査です。 • 原因⾷物がわからない場合の確定診断や、原因⾷物がわかっている場合でも 閾値(安全に⾷べられる量)や耐性獲得を評価するために⾏います。 • 現在推奨される 必要最⼩限の除去 を⽬指すために最も重要な検査ですが、 アナフィラキシーを誘発する可能性もあり、適切な評価・対応が可能な施設 で⾏う必要があります(⾷物アレルギー研究会のHPで負荷試験実施施設の確認が可能です)。
#16.
part.5 実際の対応(必要最⼩限の除去) - ポイント - ⾷物の除去は、種類も量も必要最⼩限 を⼼がける。 その上で 安全性確保・栄養の担保 のために患者教育が重要。 • 完全除去は、⼀部の重症例や誤⾷リスクの低い⾷物で現在も⾏われますが、 特に⼩児は 相対的に治りにくくなること、誤⾷時に重い症状を起こす リスクが⾼まる ことから、なるべく避けたいと考えられています。 • また、特に複数の⾷物を除去している場合、実はアレルギーのない⾷物 や すでに治っている⾷物 を除去していることも珍しくありません。 • 負荷試験で確認できた閾値の範囲内で、摂取していくことが望ましいです。
#17.
専⾨家による栄養指導の必要性 栄養を補う 誤⾷を防ぐ QOLの向上 適正な成⻑ 誤⾷例の提⽰ 加⼯品の提⽰ 代替⾷の提⽰ 周囲への説明 お店の紹介 ⾷物アレルギーと診断された場合 ほとんどの⽅が今後の⽣活・将来に⼤きな不安を抱えます。 正確な情報を調べることは思っているより⼤変です。 軽症例でも、⼀度は専⾨的な指導を受けることをお勧めします。
#18.
実際の指導(例︓1歳⼥児 ⽜乳アレルギー) ヨーグルトの初回摂取でじんましんが出現し、特異的IgEも陽性のため⽜乳アレルギー疑いで専⾨施設に紹介。 ⽜乳の負荷試験を⾏い、3ml は摂取できたが、10ml でじんましんが複数個出現し、陽性と判断された。 今回の負荷試験は 10ml 陽性でした。やはり⽜乳アレルギーをお持ちのよう です。⾷物アレルギーはアナフィラキシーなど命に関わる症状を起こす可能性 があり、今後乳製品の摂取に注意が必要です。 ⽜乳アレルギーは乳に含まれるタンパク質、主にカゼインが原因です。乳製 品でもタンパク質の量は幅があり、例えばバターよりチーズの⽅が反応を起こ しやすいです。⼀般的な乳製品のタンパク質含有量の⼀覧をお渡ししますね。 乳製品を除去するとカルシウム不⾜に注意が必要です。⾖腐や⾖乳、しらす などで補うか、アレルギー⽤ミルクの使⽤も可能です。 以前はアレルギーのある⾷べ物は完全に避けることが基本でしたが、現在は 摂取が可能な量は摂取していた⽅がよいと考えられています。これから実際の 摂取⽅法やアレルギー症状が出現したときの対応について説明します。…
#19.
補⾜︓合併するアレルギー疾患の対策 ⾷物アレルギーの管理では、必要最⼩限の除去・患者指導と同等に 合併するアレルギー疾患の管理 が⾮常に重要です。 アレルギーマーチを意識して Total Management を⽬指します。 ⾷物アレルギー アトピー性⽪膚炎 ・感作の悪化・進⾏を防ぐ。 ・アレルギーマーチの進展を防ぐ。 気管⽀喘息 ・誤⾷時の重⼤な発作を防ぐ。 アレルギー性⿐炎 ・⼝腔周囲症状を防ぐ。 ・QOLを⾼める。
#20.
Take Home Message • アレルギーは肌で作られ、腸から治る。 経⽪感作 と 経⼝免疫寛容 を理解しよう。 • ⾷物の除去は、種類も量も 必要最⼩限 。 • 今後の⾷⽣活や栄養についての相談も重要。 軽症でも⼩児アレルギー専⾨外来に相談しよう。
#21.
参考⽂献 • ⾷物アレルギー診療ガイドライン 2016 • ⾷物アレルギー診療の⼿引き 2020 • 海⽼澤元宏ら 症例を通して学ぶ年代別⾷物アレルギーのすべて 改定第2版 南⼭堂 • Lack G, et al. N Engl J Med 2003; 348(11):977-85 • Do Toit G, at al. J Allergy Clin Immun 2008; 122:984-91 • Du Toit G, at al. N Engl J Med 2015; 372:802-13