#4.
本スライドの対象 Target • 先天性・遺伝病疑いの子どもの診療 で、検査の選択や結果の解釈など に悩むことがある先生
#5.
目次 1. 遺伝 2. 小児と遺伝医療 3. 診断・遺伝学的検査 4. 遺伝カウンセリング
#6.
1.遺伝 【総論】
#7.
遺伝 【総論】 7 遺伝とは 精子・卵子の生殖によって、親からこどもへ形質を伝える現象。 ヒトでは、遺伝子を介して遺伝情報が伝えられる。 基本 遺伝子は染色体上にある(一部、ミトコン ドリアに存在 遺伝情報を調べることを遺伝子解析・検 査とよぶ 遺伝学情報を医療に活用するのがゲノム 医療
#8.
遺伝 【総論】 8 染色体と遺伝子の構造 基本 46,XY ヒト細胞数 37兆個 染色体数 46本(46,XY 46,XX) 染色体 DNA2重らせん構造 DNA 31億塩基対 4種類の塩基で構成・配列 A(アデニン) T(チミン) G(グアニン) C(シトシン) 遺伝子数 20,000~25,000 疾患の原因遺伝子数 約4,500
#9.
遺伝 【総論】 主な遺伝様式 9
#10.
遺伝 【総論】 遺伝要因と環境要因 単一遺伝子病と 多因子遺伝病 10
#11.
臨床における遺伝子関連検査 11 遺伝子検査の種類を理解する 検査 対象 ➀ 病原体遺伝子検査 ウイルス、細菌 ➁ ヒト体細胞遺伝子検査 がん細胞 ③ ヒト遺伝学的検査 ヒト遺伝学的検査 日本医学会ガイドライン 特徴 ヒトそのものを対象としていない • 変化しうる • 次世代へ遺伝しない • 単一遺伝子疾患、薬理遺伝 • 生涯変化しない、次世代へ伝達
#12.
遺伝学的検査と対象領域 12 検査方法により、検出できる範囲が異なる。 目的(対象疾患)により、検査を選択する。 染色体検査(G-band):保険収載 FISH法 マイクロアレイ染色体検査:保険収載 次世代シーケンサー その検査は 臨床検査(保険収載・自費)? 研究検査(研究費・自費)? 検査実施前に確認を!
#13.
2.小児と遺伝医療
#14.
遺伝 【総論】 稀少疾患 日本:5万人に1人以下 14
#15.
遺伝 【総論】 15 先天異常は出生100人に3~5%生じる。 その原因は、染色体不均衡、コピー数異常、単一遺伝子病、多因子遺伝、環境催奇形因子による 先天異常の頻度 先天異常 3~5% 先天異常の原因
#16.
難病疾患スペクトラムの特徴 16 発症頻度の低い疾患は、多数存在し、全体的総数は少なくない 多くが、稀少疾患であり、診断が困難である。 ポイント • 発症頻度の高い疾患:感冒、感染症など • 発症頻度の低い疾患:遺伝性疾患・先天性 疾患が多数存在 注意点 稀少疾患 (Rare) 未診断疾患(Undiagnosed) 診断が困難 →遺伝学的検査の有用性 (保険償還・自費・研究)
#17.
小児の遺伝性疾患 17 小児医療 各分野の代表的な遺伝性疾患 領域 疾患 染色体異常 ダウン症、18トリソミー、 13トリソミー、 22q11.2欠失症候群 先天異常症候群 ヌーナン症候群、歌舞伎メーキャップ症候群、 CHARGE症候群 神経・筋 筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、ミトコンドリア病 内分泌・代謝 副腎皮質過形成、性分化異常症、低フォスファターゼ症、尿素回路異常症、ライソ ゾーム病、アミノ酸代謝異常 血液・腫瘍 免疫 血友病、家族性腫瘍、多発性内分泌腫瘍 慢性肉芽腫症、重症複合免疫不全症、ウイスコット・オールドリッチ症候群 腎・泌尿器 多発性のう胞腎、アルポート症候群、ネフロンろう 皮膚 骨・結合織疾患 神経線維腫症、エーラス・ダンロス症候群、軟骨無形症、骨形成不全、 マルファン症候群
#18.
3.診断・遺伝学的検査
#19.
診断フロー 19 小児特有の問診ならびに理学所見の診察を行う。 1 問診 2 理学所見 3 遺伝学的検査 4 確定診断 現病歴に加え、出生歴、発達歴、既往歴、家族歴を聴取 全身を診察し、外表奇形等を評価 疾患特異的検査・網羅的検査を選択(検査前 遺伝カウンセリング) 検査結果、今後の方針、次子再発率の推定等について、患者・家族へ説明。 (検査後 遺伝カウンセリング)
#20.
診断の補助 臨床所見から、成書・オンラインDBなど参考に診断・鑑別診断を行う 1. Smith’s recognizable patterns of human malformation 2. OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man) 3. 希少・遺伝性疾患検索システム PubCaseFinderGene 4. Gene Reviews/日本語版 5. PubMed 6. 医中誌Web,メディカルオンライン 20
#21.
遺伝学的検査 21 遺伝学的検査の意義を考える。 質問 遺伝子学的検査は必要ですか? 臨床所見と併せて、確定診断が可能 疾患の情報提供 予後予測 合併症管理 日本医学会 「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」 家系内再発率推定 心理・社会福祉支援
#22.
遺伝学的検査フロー Powered by
#23.
遺伝学的検査 23 遺伝学的検査の選択する。 遺伝学的検査の選択 ポイント 診察、臨床検査・画像検査などか ら、特定な疾患を疑い、適切な遺伝 学的検査を選択する。
#24.
遺伝学的検査の特殊性 Powered by
#25.
ポイント 25 遺伝情報の特殊性を理解して検査を実施する。 生涯変化しない 血縁者間で一部共有 発症する前に将来の可能性について予測 不適切に扱われた場合に社会的不利 益 出生前・着床前遺伝的検査 非発症保因者の診断 あいまい性が内在していること 遺伝学的検査の特殊性
#26.
遺伝子検査前にすること 26 検査の目的や意義を子どもと家族と共有する。 意思決定を支援しながら、遺伝学的検査を実施する。 質問 検査前のインフォームド・コンセントは? 小学生 中学生 同意能力ない 中学生以上 同意能力あり インフォームド・アセント インフォームド・アセント インフォームド・コンセント 本人理解できるよう、 本人理解できるよう、 保護者からも わかりやすい説明 わかりやすい説明 インフォームド・コンセント 日本小児科学会 Q&A
#27.
網羅的遺伝子解析 NGS: Next Generation Sequence 27 検査前に伝えておくべきこと。 メリット デメリット 診断がつく 診断がつかない 予想外の遺伝子変異が同定 診断の変更 治療法がみつかる 治療法がない、 予後不良などが判明 二次的所見 結果の解釈の変更
#28.
網羅的遺伝子解析:結果の解釈 バリアント(variant ):遺伝子の変化 参照配列と異なる塩基配列。すべての呼称 次世代シーケンサーで検出されたバリアント(遺伝子変異)の解釈のステップ 1. 患者の表現型(phenotype)が説明できるか? 2. 疾患関連DBに登録されているか? 3. 健常者DBに登録はないか? 4. 両親に同じバリアントはないか 5. 機能予測ソフト(in silico解析)では? 次世代シークエンサーを用いた生殖細胞系列網羅的遺伝学的検査における具体的方針【改訂第2版】 https://www.amed.go.jp/content/000087775.pdf 28
#29.
網羅的遺伝子解析:結果の解釈ACMG/AMP ガイドライン ACMG/AMP ガイドライン 病的変異(病態の原因)となりうるか? 総合的に評価する。 臨床的影響の評価 1. Pathogenic variant 2. Likely pathogenic variant 3. Uncertain significance variant (VUS) 4. Likely benign variant 5. Benign variant 疾患の原因となることもある・意義不明・原因とならないこともある ACMG/AMP ガイドライン Genet Med.2015 May;17(5):405-424 29
#30.
網羅的解析 :開示すべき二次的所見 生命への重篤性や治療・予防の可能性などから、開示を推奨する遺伝子 あり(ACMG) ただし、日本の医療状況に応じ、検討する。 1. 臨床的に確立した治療法や予防法 2. 公的データベースに登録されている病的バリアント 3. 有用性が明らか 4. 開示推奨 ACMG recommendations 59遺伝子が参考 5. 非発症保因者は原則開示対象としない 次世代シークエンサーを用いた生殖細胞系列網羅的遺伝学的検査における具体的方針【改訂第2版】 https://www.amed.go.jp/content/000087775.pdf 30
#31.
4.遺伝カウンセリング
#32.
遺伝カウンセリング: 32 遺伝性疾患に関する悩みを抱える当事者の医学的・心理・家族問題への理解と適応を支援するための医療行為 クライアントは 誰? 何を 伝える? 医療者ができる ことは? 遺伝に関わる悩みや不安、 疑問などを持たれている方 科学的根拠に基づく正確な 医学的情報 クライアント自らが、医療技 術や医学情報を利用して問 題を解決するよう、 心理・社会的支援 日本遺伝カウンセリング学会HP から改変
#33.
小児の遺伝カウンセリング 33 子どもだけではなく、両親への精神的配慮が必要 先天異常を持つ子どもの誕生に 対する正常な親の反応の 継起を示す仮説的な図 * ポイント 1. 2. 3. 4. ショック 否認悲しみと怒り 適応 再起 個々により、時間の経過や反応の 強さは異なる。 深い悲しみや再起が難しいこともあ り。すべて受容の過程 *Droter, D., et.al,1975 障害受容過程の段階的受容 改変
#34.
子どもの成長発達 34 遺伝カウンセリング(検査実施、結果開示含む)において、時期・理解度・社会環境など、子どもの成長過程・ライフイ ベントを考慮する。 胎児期 こども (罹患者) 親 医療者 新生児 期 出生 乳幼児期 入園 思春期 学童期 就学 受験・就職 ショック・悲嘆 将来への不安・同胞への影響 親への診断開示 同胞など家族計画 本人への診断開示 成人 結婚 出産 成人診療科への移行 家族計画
#35.
参考症例
#36.
症例1 36 ハッチンソン・ギルフォード症候群 HGPS:Hutchinson-Gilford progeria syndrome 遺伝性早老症の中でも特に症状が重い疾患 分類 • 超稀少疾患 発症頻度2000万人に1人 • 遺伝子検査 LMNA 遺伝子異常 点突然変異 c.1824C>T (p.Gly608Gly)によりプロジェリン(異常タンパク)が産生。 • 加齢とともにプロジェリンが全身の細胞にたまり、老化を引き起こす。平均寿命 14.5才 治療 症状 乳児期早期から、皮膚が硬く光沢を帯びた感 じに変化。少ない皮下脂肪。 著しい成長障害 動脈硬化性疾患による重篤な脳血管障害や 心血管疾患は加齢とともに顕在化。 https://square.umin.ac.jp/hgps/index.html ゾキンヴィ (ファルネシル転移酵素阻害薬) 2024年5月発売 新規治療薬 対症療法
#37.
遺伝カウンセリング: 37 ハッチンソン・ギルフォード症候群 HGPS: LMNA遺伝子異常、常染色体顕性(優性)遺伝 クライアントは 誰? 何を 伝える? (児) ご両親 診断:HGPS 自然歴等の医学情報提供 * 新規治療薬 循環器・CNS合併症 定期的フォローの必要性 * 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 「早老症の医療水準やQOL向上を目指す集学的研究」研究班 https://square.umin.ac.jp/hgps/index.html 医療者ができる ことは? ほぼ突然変異 次子再発率 低い 医療・療育・教育機関との連携 小児慢性特定疾患 超稀少疾患に対する心理支援
#38.
症例2 38 ダウン症候群 Down syndrome 染色体異常症の中で、最も頻度が高い疾患 分類 • 染色体異常症 発症頻度 700~1,000人に1人 • 染色体検査 21 番染色体 3本 配偶子の不分離による 分類:標準型(トリソミー型)・転座型・モザイク型 平均寿命 50才~ 治療 症状 筋緊張低下・精神運動発達遅滞 先天性心疾患、先天性甲状腺機能低下、消 化管異常、けいれん、白血病、難聴、白内 障、頸椎不安定 対症療法 合併症の早期発見、健康管理 早期療育 染色体検査(G-band)
#39.
遺伝カウンセリング: 39 ダウン症候群 21トリソミー 配偶子 染色体不分離 クライアントは 誰? 何を 伝える? (児) ご両親 診断:ダウン症 自然歴等の医学情報提供 合併症 定期的フォローの必要性 医療者ができる ことは? 標準型:次子再発率 低い 転座型:両親検査等の家族計画 家族会・心理支援 医療・療育・教育福祉機関との連 携
#40.
遺伝子治療 40 小児遺伝性疾患を対象とした承認された遺伝子治療薬 (保険収載) No. 疾患名 治療薬 1 デュシェンヌ型筋ジストロフィー •ビルトラルセン 2 脊髄性筋萎縮症(SMA) •ゾルゲンスマ 3 遺伝性網膜ジストロフィー •ボレチゲンネパルベグ 国内外でゲノム編集等の開発、遺伝子治療の実用化が進んでい る。 希少疾患だけでなく、今後、様々な疾患へと発展 する可能性
#41.
子どもの権利条約 41 子どもの権利条約は、世界中すべての子どもたちがもつ権利を定めた条約。 4つの原則 • 生命、生存および発達に対する権利 (命を守られ成長できること) • 子どもの意見の尊重 (意見を表明し参加できること) • 子どもの最善の利益 (子どもにとって最もよいこと) • 差別の禁止 ユニセフ 「子どもの権利条約」 (差別のないこと)
#42.
遺伝診療は小児診療に有用! こどもの最善の利益!
#43.
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