#4.
心不全とは 心臓機能障害(器質的・機能的異常)が生じて 心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果, 呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し, 運動耐容能が低下する臨床症候群. 左室収縮能(心エコーでのLVEF) HFrEF (reduced) LVEF <40% HFpEF (preserved) LVEF >50% HFmrEF (mid-range) 40%≦LVEF<50% HFrecEF (recovered) LVEF≧40% 日本心臓財団 HP
#5.
心不全の原因 心筋の異常によるもの • 虚血(狭心症、心筋梗塞) • 心筋症 • 心毒性物質(アルコール、抗がん剤、 放射線障害など) • 感染症 • 免疫疾患(関節リウマチ) • 妊娠 • 浸潤性疾患(アミロイドーシス) • 内分泌疾患(甲状腺機能亢進症) • 代謝性疾患(糖尿病) • 先天性酵素異常(ファブリー病) • 筋疾患(筋ジストロフィ) 血行動態の異常によるもの • 高血圧 • 弁膜症、心臓の構造異常 • 心外膜 • 心内膜 • 高心拍出(貧血、甲状腺機能亢進症、 妊娠) • 体液量増加(腎不全、輸液量過多) 不整脈によるもの • 頻脈性(心房細動、心室頻拍) • 徐脈性(洞不全症候群、房室ブロック)
#6.
JCS/JHFS 急性・慢性心不全診療ガイドライン (2017年改訂版)
#7.
JCS/JHFS 急性・慢性心不全診療ガイドライン (2017年改訂版)
#8.
JCS/JHFS 急性・慢性心不全診療 ガイドライン (2021年 フォーカスアップデート版 )
#9.
サルコペニアの悪循環 筋量↓ 筋力↓ 歩行速度↓ 加齢•習慣・疾病など 筋量•筋力↓ 活動↓ 栄養↓ 食欲↓ 筋量を指標としたサルコペニア(筋量サルコペニア)は、 65歳以上の男性の36.2%、女性の23.3%に認められ、総 計873万人(男性469万人、女性404万人)と統計もある。 幸 篤武 ほか : 医学のあゆみ 248(9), 649-654, 2014 要介護状態へ
#10.
サルコペニア 体水分率低下 細胞外 細胞内 https://inbody.co.jp 高齢者では 細胞内水分量が減少 体水分率 75% 70% 60% 55% 50%
#11.
老年症候群に対して推奨されない新規薬剤がある 2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療 SGLT2阻害薬は 老年症候群(サルコペニア,認知機能低下,ADL低下など) での安全性および有効性についても引き続き今後の課題 であることから,慎重な投与が必要である.
#12.
漢方では未病も治療対象 健康 未病 病気 養生 漢方治療 西洋医学 未病 病気が発症していない予備軍
#13.
漢方医学-伝統的な全人的医療 1.病気になった「人」を診る 2.体調・体質や症状の組合せで処方を決定 3.ひとつの処方で複数の症状に対応 心身一如 個々の症状にアプローチするのではなく、 「一人の人」を心も体も合わせて治療する 同病異治・異病同治 同じ病気でも、違う処方 異なる病気や症状にも、同じ処方
#14.
地球上のすべてに陰と陽:バランス 陽 陰 自 昼 温 左 上 生 日 性 然 夜 度 右 下 物 日 植 陰 地 夜 女 寒 右 下 陰 物 日 動 陽 天 昼 男 熱 左 上 向 物 季 節 医学的概念 陰 血 冬 裏 虚 証 水 陽 夏 表 実 気 証
#15.
五行と五臓:臓器は他の臓器とも関係がある
#16.
五行説 肝 水から木が生まれ 木から火が生まれ 木 (木は水で育まれる) (木は摩擦で燃える) 腎 心 水 火 金から水が生まれ 火から土が生まれ (金属はその表面に水滴ができる) (燃えたものが灰土になる) 肺 脾 金 土 土から金が生まれ (金属は土中から採れる) 相生
#17.
五行説 肝 水は火を消す 金は木を切り倒す 木は根で土を抑える 木 腎 心 水 火 肺 脾 金 土 土は水を堰き止める 火は金を溶かす 相克
#18.
生体を維持する三要素 多すぎる 少なすぎる 流れが悪い 血液以外の体液 リンパ液・唾液・ 尿 体と心に様々な不調
#19.
漢方治療の基本方針 治療 病気=バランスの崩れ 治療=バランスを回復 中庸
#20.
実 健康な状態 中庸 恒常性(ホメオスタシス) 虚
#21.
虚・実の特徴と見分け方 虚 証 実 証 語り方 声が細く、力がない 聞き取りにくい 力があり、声にはりがある 聞き取りやすい 眼光 力、輝きがない 力ありキラキラしてる 姿勢 歩き方 下向き加減、筋骨薄弱 歩く音がしない はりがある。筋骨逞しい メリハリがある、活発 腹力 3/5未満 3/5以上 脈 無力 充実 皮膚 色つやが悪い 色つやがよい 症状 弱いが長く続く 激しい OMPU CV-Surgery Nov 20, 2021
#22.
寒・熱の特徴と見分け方 寒証 熱証 患部に 「寒け」や「冷感」 がある 患部が 「熱っぽく」 感じられる 温かい飲み物 を好む 冷たい飲み物 を好む 下痢の傾向 のどが渇く
#23.
生体を維持する三要素 多すぎる 少なすぎる 流れが悪い 血液以外の体液 リンパ液・唾液・ 尿 体と心に様々な不調
#24.
CS:クリニカル・シナリオ
#25.
高齢心不全患者の特徴 ①慢性腎臓病、脳梗塞、認知症、慢性閉そく性肺疾患などを合併している 場合が多く、病態が複雑 ②嚥下性肺炎や尿路感染症などが引き金になり、急性増悪を繰り返しやす く、生命予後、生活の質に悪影響を及ぼす ③すでに相当量のループ利尿剤が投与されている場合が多く、低Na血症、 血管内脱水を来していて急性増悪時にフロセミドの静脈注射が効きにくい ④ループ利尿薬投与によるworsening renal function:WRFが多く予後を悪 化させる可能性がある ⑤臓器うっ血解除に切り札である利尿薬トルバプタンのノンレスポンダーが 特に中等度以上の腎機能障害者に多い 治療の基本は、血管内脱水を改善させ、かつ臓器組織の過剰な水分を 血管内に引き戻し適切な利尿を行うこと
#26.
トルバプタン カリウムの低下や低血圧を起こしにくく、強力な除水効果を有する。 2010年よりループ利尿剤に併用可能。 バゾプレシンが腎集合管主細胞膜上のバゾプレシンV2受容体に結合 するのを阻害し、水チャンネルであるアクアポリン2を不活化して、尿の 再吸収を抑制することにより強力な利水をもたらす。 高齢者、腎不全患者を中心に一定の頻度(約3割)でノンレスポンダー が存在し、臨床上大きな問題になっている。
#27.
五苓散 病的状態(浮腫)時にアクアポリン(AQP)1, AQP3 , AQP4 , AQP5を阻害 ↓ 臓器組織の水の偏在を正常な状態に戻す (磯濱洋一郎、炎症・水毒・和漢薬によるアクアポリン水チャンネルの機能調整.漢 方と最新治療 2008:17:27‐35)
#28.
アクアポリン 水分子のみを通す https://www.kuba.co.jp/syoseki/PDF/3203.pdf N:アスパラギン P:プロリン A:アラニン
#29.
五苓散 口渇、尿量減少するものの次の諸症: 浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタ ル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、 頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病
#30.
心臓外科での五苓散投与例 症例:60歳台 男性 現症:身長181㎝、体重100㎏、既往歴:糖尿病 現病歴:52歳時に僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁形成術施行。 その際の体重は85㎏。術後、経時的に体重が増加し僧帽弁狭窄、 慢性心房細動を合併。心エコーでは左室収縮力は保たれている (LVEF 60%)。感冒時や体調不良時等に利尿剤効果乏しく体重増 加と全身浮腫を認め、心不全悪化し自宅内の階段昇降で呼吸苦出 現(NYHA 2-3)。 治療:水分制限(1500ml/日)、減量指導、利尿剤(アゾセミド、フロセミ ド、スピロノラクトン、SGLT2阻害剤) 利尿不良で全身浮腫や体重増加時、水毒を目標に五苓散
#31.
1 はじめに 循環器診療で漢方薬 ワーファリンへの影響は少ない(と思われる) 患者さんの体質や体力に合わせて選択・調整 副作用を出す生薬に気を付ける 甘草:偽性アルドステロン症 麻黄:エフェドリン作用(血圧上昇、頻脈など) 地黄:胃部不快感 黄連、黄芩:肝障害 大黄:下痢、しぶり腹 芒硝:ナトリウム過剰 附子:中毒
#32.
六君子湯 胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおち がつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が 冷えやすいもの 胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食 欲不振、胃痛、嘔吐
#33.
#34.
#35.
#36.
#37.
#38.
#39.
清暑益気湯 暑気あたり、暑さによる食欲不振・下痢・ 全身倦怠、夏やせ。 軟便、尿量減少、自然発汗、手足の熱感 髙山 宏世 編著 『腹證圖解 漢方常用處方解説』より
#40.
感冒:体力・胃腸の強さと罹患期間を参考に 麻黄(エフェドリン作用)含有 体力・胃腸 急性期 亜急性期 遷延期 葛根湯 ふつう 弱い(虚) 葛根湯加川芎辛夷※ 柴胡桂枝湯 麻黄附子細辛湯 香蘇散 補中益気湯 極めて弱い 桂枝湯 (陰虚) ※適応症:鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎
#41.
麻黄附子細辛湯 •悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で 頭痛、めまいあり、四肢に疼痛冷 感あるものの次の諸症: •感冒、気管支炎 麻黄を含有 Copyright (c) TSUMURA & CO. All right reserved.
#42.
香蘇散 胃腸虚弱で神経質の人 の風邪の初期 麻黄なし 1)食欲不振や軽度の悪寒、発熱などを伴う場合。 2)葛根湯や麻黄湯などの麻黄剤では食欲不振を起こす場合。
#43.
桂枝湯 比較的体力の低下した人で、 頭痛、発熱、悪寒、身体痛などがあり、 自然に汗の出やすい場合に用いる。 監修:大塚恭男、花輪壽彦 麻黄なし 桂枝湯は、様々な漢方薬のベースとなる処方 例:桂枝湯+麻黄+葛根=葛根湯 Copyright (c) TSUMURA & CO. All right reserved.
#44.
八味地黄丸 疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口 渇し、 手足に交互的に冷感と熱感のあるものの 次の諸症: 腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、 膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧 牛車腎気丸 =八味地黄丸+牛膝+車前子 むくみ、しびれ、腰痛や 排尿障害が著明なものに用いる
#45.
麻子仁丸 便秘 老人や病後の虚弱者に繁用される。 大便は硬く、塊状を呈することが多い。 髙山 宏世 編著 『腹證圖解 漢方常用處方解説』より
#46.
真武湯 新陳代謝が低下して体力虚 弱な人で、全身倦怠感や四 肢の冷感があり、下痢、腹痛 などを訴える場合に用いる。
#47.
#48.
最後に 心不全は、軽症から管理することが大切です。 症状と訴え、体質や生活習慣、病歴等を基に、 心不全の全人的診療に漢方薬をお役立て下さい。