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サラリ医マン@泌尿器科

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タマが腫れている!! ~無痛性陰嚢腫大の診察~ 病棟・外来編

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  • 泌尿器科

  • 陰嚢水腫
  • 無痛性陰嚢腫大
  • 精液瘤

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サラリ医マン@泌尿器科

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内容

「先生、○○号室の△△さん、陰部が腫れているんですけど診てください」救急外来では、急性陰嚢症と呼ばれる痛みを伴った陰嚢腫大の相談が比較的多いでしょう。一方、病棟からの相談や「ついで」として無痛性の陰嚢腫大が相談されることもあります。診察時に考えておくべきことを紹介します。

◎目次

・自己紹介

・無痛性陰嚢腫大を呈するおもな疾患

・精巣の解剖と、疾患の発生部位

・診察の流れ

・陰嚢腫大:各論

・仮想症例

・まとめ

本スライドの対象者

研修医/専攻医

テキスト全文

  • 1.

    講師 サラリ医マン

  • 2.

    医師、泌尿器科専門医、性機能専門医、性感染症専門医、医学博士。 都内での初期研修・後期研修ののち、 大学・基幹病院での臨床・研究に従事。 趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・ 福祉住環境コーディネーター3級を取得。 最近、「男性不妊戯画」がちょっと話題。

  • 3.

    「先生、○○号室の△△さん、陰部が 腫れているんですけど診てください」 「はーい(併診状書けばいいかな…)」 救急外来では、急性陰嚢症と呼ばれる痛みを 伴った陰嚢腫大の相談が比較的多いでしょう 一方、病棟からの相談や「ついで」として無痛 性の陰嚢腫大が相談されることも 診察時に考えておくべきことを紹介します

  • 4.

    • 陰嚢水腫 • 精液瘤 • 精巣静脈瘤 • 陰嚢浮腫 • 腫瘍(精巣腫瘍・傍精巣腫瘍) • 鼠径ヘルニア 寝たきり患者さんなどは症状を訴えられないため、炎症を伴う疾患にも注意する

  • 5.

    Outer inguinal ring: 外鼠経輪 Tunica albuginea: 精巣白膜 Epididymis & Vas deferens: 精巣上体&精管 Tunica vaginalis: 精巣鞘膜 Visceral layer: 臓側版 Parietal layer: 精巣鞘膜板 ( 精巣白膜に接する ) Internal spermatic fascia: 内精筋膜 Cremaster muscle 精巣挙筋 Cremasteric fascia : 精巣挙筋膜 Tunica Dartos : Dartos 筋膜 ( 肉様膜 ) External spermatic facia : 外精筋膜 Skin : 陰嚢皮膚 鼠径ヘルニア 精索静脈瘤 精液瘤 精巣腫瘍 陰嚢水腫 陰嚢浮腫

  • 6.

    問診 • 有痛性の急性陰嚢症と異なり、正確な発症日時は分からない • 恥ずかしさなどから受診が遅れることも • 本人だけでなく、介護者が気づいて報告することも へそ~大腿は 「陰部」 と表現される 可能性 • ペニス・陰嚢・会陰すべて「陰部」として表現される • 陰部腫瘤として泌尿器科紹介⇒外痔核、などもあるため問診・触診は重要 • 患者背景も重要(前立腺肥大:鼠径ヘルニア 心不全:陰嚢浮腫 など)

  • 7.

    視診・触診 • 可能であれば立位で診察する(鼠径ヘルニア・精索静脈瘤の診察に有用) • 陰部のどの部分が腫れているのかを確認する 立位 • 片側か、両側か(両側の場合は陰嚢浮腫の可能性が高い) • 痛みがあるかどうか • 陰嚢皮膚を押して、圧痕性浮腫(Pitting Edema)があるかどうか • 陰嚢浮腫がある場合、下腿浮腫も確認する

  • 8.

    画像検査 • エコー: コンベックスではなく、リニアプローベを用いる ベッドサイドでも施行可能 簡易で低侵襲 必ず両側の検査を行い、不安であれば何度でも行う 精巣血流・精巣周囲の液体貯留(低エコー)を確認する 精索静脈瘤も診断可能だが、やや専門的(立位で評価する)

  • 9.

    画像検査 • CT: 鼠径ヘルニアを疑う場合は有用 同時に前立腺肥大も評価できる 尿道・陰嚢が入るように撮影指示を (前立腺部までしか撮影されていないことがある) • MRI: 精巣腫瘍を疑った場合(が、専門医の判断の下でOKだろう)

  • 10.

    陰嚢水腫 • 小児の場合は鼠径部での精巣鞘膜(鞘状突起)の開存によるものが多い • 成人の場合は炎症後など、はっきりとした原因は不明 • リンパ液の過剰分泌が原因と考えられている • 教科書的にはライトを用いて透過性を確認するが、エコーは精巣内の血流・ 腫瘍所見や交通性なども評価できるため望ましい • 小児は自然経過で治癒することが多い • 成人では自然治癒することはまれ

  • 11.

    陰嚢水腫 • 治療は経過観察、穿刺、根治術 • 小児は交通性の水腫が多いため、基本的には穿刺しない • 小児は自然治癒を期待するが、鼠径ヘルニアの合併がある場合は手術を検討 • 成人の非交通性水腫は穿刺しても良いが再発するほか、繰り返す穿刺は炎症を 誘発するため基本的には根治術を提案する • 穿刺の際はエコーで確認しながら、精巣を傷つけないように行う • 緊急性はないので、穿刺を行う際は泌尿器科医の指導下で施行する

  • 12.

    精液瘤 • 精液瘤は精巣上体や精管に生じる嚢胞状の腫瘤で、精巣上体頭部に好発する • 精巣上体管が閉塞などで破れ、漿膜下に精液が貯留する • 陰嚢水腫と同じく無症状であるため、気づいた時に発見される • 穿刺により精液を回収できれば確定診断だが、エコーでもある程度診断可能 • 放置しても問題にはならないが、大きくなる場合には外科治療の適応 • 治療により精管閉塞を起こす可能性もあるので、挙児希望を確認する

  • 13.

    精巣腫瘍 • 清掃腫瘍の発生には遺伝学的原因と環境因子が関わる • 家族歴、停留精巣、対側の精巣腫瘍の存在は危険因子 • 生下時および20〜40歳で多く見つかるが、60歳以上で見つかることも • 腫瘍の多くは精巣内の低エコー領域として検出される • ごく稀だが、傍精巣腫瘍も存在

  • 14.

    精巣腫瘍 • 腫瘍を疑った場合は造影MRI(泌尿器科に紹介ください) • 胸部~骨盤CT、頭部MRIによる転移検索ののち、高位除睾術±化学療法 • 若年発生のため、治療後の妊孕性についても意識する(事前の精子凍結など) • 腫瘍マーカーとしてはAFP、HCG、LDHを用いる • リンパ腫との鑑別としてIL-2を測定することも • 多発転移でも根治を期待できる場合もある、珍しい腫瘍

  • 15.

    精索静脈瘤 • 性腺静脈の逆流によって起こることが多いと考えられている • 性腺静脈が腎静脈に灌流する左側に多く、痛みを伴うことも • 陰嚢腫大という表現が多いが、陰嚢皮膚に怒張血管が隆起しているイメージ • 立位で診察し、怒責による膨隆やエコーで血管拡張・逆流を確認する • 男性不妊にもつながることがあるので、泌尿器科に紹介を • 痛みが強い・本人の希望があれば手術を行う (鼠径部で血管処理を行う顕微鏡下低位結紮術が根治性が高い)

  • 16.

    鼠径ヘルニア • タマが腫れている→鼠径ヘルニア、は意外に多い • 可能なら立位で診察し、必要に応じ怒責させて鼠径部の膨隆を確認 • 陰嚢皮膚から鼠径部に指を入れ、ヘルニアザックを触知する • エコーでは精巣と異なる場所に蠕動を伴った脱出腸管が分かることも • 前立腺肥大や腹部の手術歴なども発生に影響しているため、まとめて評価で きるCT(単純)は有用 • 嘔気や発熱などの緊急性がなければ経過観察可能だが、外科に紹介しよう

  • 17.

    陰嚢浮腫 • タマが腫れている→陰嚢浮腫、の相談も多い • 基本的に両側に生じ、陰嚢皮膚が緊満するまで包皮を含め際限なく腫大する • 背景に心不全や肝不全といった体液貯留をもたらす疾患や、悪性腫瘍などのリ ンパ浮腫を生じる疾患を念頭に精査を進める • 陰嚢を触診し、Pitting Edemaがあるかどうかである程度の診断が可能 • 下腿浮腫がなく、陰嚢浮腫のみが生じるケースも • エコーでは正常な精巣と、肥厚した陰嚢皮膚を認める

  • 18.

    陰嚢浮腫 • 採血・画像検査によるスクリーニングののち、該当する科に紹介を • 浮腫を呈した陰嚢は皮膚が脆弱で、褥瘡や血流不全が生じやすい • ジメチルイソプロピルアズレン(アズノール)軟膏などによる皮膚の保護も有効 • 浮腫が包皮まで及ぶケースは、排尿障害や尿路感染症、嵌頓包茎に注意する • 肉芽の上がりも悪いため、潰瘍などの皮膚処置には注意(泌尿器科に相談) • 体液貯留に対する根本的な問題を解決することが重要だが、ボクサータイプ の下着などで陰嚢を圧迫することで対応可能

  • 19.

    30代男性 独身 入浴時に左陰嚢のしこりを自覚 言われてみると、ここ数ヶ月で徐々に大きくなってきたような気がする その他の症状はない エコー:精巣内部に血流を伴った渦巻き状の低エコー像を認める ⇒精巣腫瘍 泌尿器科に紹介し、精子保存凍結の上で高位除睾術が予定された

  • 20.

    80代男性 長期寝たきり 尿道カテーテルを留置中で、意思疎通は難しい 清拭時に右陰嚢の腫れに気がついたため紹介 発熱なし 触診を行うと痛そうに顔をしかめる様子あり エコー:精巣の近傍に血流豊富なエコー像を認める ⇒精巣上体炎 抗生物質を投与し、陰嚢は適宜冷却のうえ経過観察とした

  • 21.

    50代男性 耐糖能異常フォロー中 両側陰嚢の腫れを主訴に来院 診察では両側の陰嚢腫大を認め、指で押した部分がくぼむ 陰茎・尿道口は浮腫状の陰嚢皮膚・包皮に隠れて見えず、常に失禁している ⇒陰嚢浮腫 精査の過程で、新規発症かつ未治療の心筋梗塞と心不全が見つかる 内科に紹介し、入院加療の方針となった 尿道カテーテルを留置したが、陰嚢浮腫の改善に伴い抜去した

  • 22.

    70代男性 ADL自立 以前より右陰嚢腫大を自覚していたが、最近歩くのにも難渋し来院 エコーでは精巣周囲に血流のない低エコー像を認める 鼠径部との交通性はない ⇒陰嚢水腫 手術を勧めるも入院に気乗りせず 泌尿器科に相談の上、エコー下に18G留置針を精巣を傷つけないように穿刺 再燃する可能性が高く、定期的に穿刺するか根治術が必要だろうと説明した

  • 23.

    無痛性陰嚢腫大は精巣腫瘍の鑑別が重要 泌尿器科以外の疾患でも鼠径部~陰嚢は腫れる エコーはベッドサイドでもおこなえ、簡便 エコーケーブルのねじれを直す泌尿器科医 陰嚢以外に鼠径部や下腿なども診察しよう 【参照】 日本泌尿器科学会 急性陰嚢症診療ガイドライン 精巣腫瘍診療ガイドライン 2014年版 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/09_acute_scrotum_2014_2.pdf 2015年版 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/22_testicular_tumor_2015.pdf

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