敗血症患者の輸液/考え方〜SSCGと動的指標〜

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荒川 裕貴

荒川 裕貴

東京都立多摩総合医療センター

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敗血症患者を診た時の初期輸液の考え方をqSOFAやSSCG2016の理論を含めて解説しています。敗血症では血管内脱水と血管拡張の要素が混在して血圧低下が起きており、まずは細胞外液による十分な補液が必要である。またCO=SV×HRの理論式を元になぜ敗血症では輸液しなくてはならないか輸液をすると前負荷があがるのか、血圧低下に輸液が有効か、たくさん輸液をするとどうなるのかを説明しています。敗血症治療の触りを学びましょう!

敗血症患者の輸液/考え方〜SSCGと動的指標〜

1. 『敗血症の輸液療法』 東京都立多摩総合医療センター 救急科  荒川 裕貴
2. 症例:68歳 女性 主訴:悪寒 現病歴: 来院前日の夜から倦怠感を自覚。 来院当日の朝に38.5℃の発熱あり。食欲不振、嘔気あり自宅で休んでいたが症状は改善しなかった。 23時頃に悪寒・戦慄が出現、体動困難となったため夫が救急要請。
3. 症例:68歳 女性 既往歴:糖尿病、高脂血症、胆嚢結石症 常用薬:メトグルコ、ジャヌビア、クレストール 来院時Vital: JCS 1,GCS E3V4M6, HR 118, BP 85/48 RR 24, SpO2 96(room), BT 37.5℃
4. 症例:68歳 女性 Q:この症例の輸液、あなたならどうしますか? 身体所見: 身長 165cm、体重60kg 項部硬直なし、咽頭発赤腫脹なし、甲状腺腫大なし、頸静脈怒張なし 両肺呼吸音清、心音整、心雑音なし、腹部平坦・軟・圧痛なし 側背部に叩打痛有り、脊柱叩打痛なし 四肢浮腫なし、末梢冷感あり L/D:WBC 18000,CRP 16,軽度腎機能障害あり,肝胆道系酵素正常 CXR:明らかな浸潤影なし 尿検査:潜血 ++, 尿中白血球 +++ BGA:pH 7.25, Lac 5.2
5. JAMA 2016/2/23 JAMA 2016; 315: 801-10 敗血症の新定義 Sepsis-3 感染に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされた 生命を脅かすほどの臓器障害
6. Sepsis-3 意識変容 GCS<15 頻呼吸 RR≧22回/分 血圧低下 sBP≦100mmHg
7. SSCG 2016 世界の敗血症診療のスタンダート Intensive Care Med (2017) 43:304–377
8. 敗血症の蘇生 SSCG2016 A. INITIAL RESUSCITATION Sepsis and septic shock are medical emergencies, and we recommend that treatment and resuscitation begin immediately (BPS). We recommend that, in the resuscitation from sepsis-induced hypoperfusion, at least 30 mL/kg of IV crystalloid fluid be given within the first 3h (strong recommendation, low quality of evidence).
9. 敗血症の初期輸液 ・敗血症は多くの場合「血管内脱水」と「血管拡張」の要素が混在して血圧低下を引きおこしている。 ・まずは細胞外液による十分な補液を行い循環動態を改善させる
10. 症例つづき:68歳 女性 Q:この症例の輸液、あなたならどうしますか? 乳酸リンゲル液を1時間で1500ml投与した。 各種培養を採取し、尿路感染症としてceftriaxone 2.0gを投与。 やや頻脈は改善したが依然血圧は低めを推移している。 補液後のVital: JCS 1,GCS E3V5M6, HR 102, BP 90/45 RR 22, SpO2 96(O2 2L nasal), BT 38.0℃
11. 敗血症の蘇生 SSCG2016 We recommend that a fluid challenge technique be applied where fluid administration is continued as long as hemodynamic factors continue to improve (BPS). We recommend an initial target mean arterial pressure (MAP) of 65 mm Hg in patients with septic shock requiring vasopressors.
12. なぜ、敗血症では輸液をするのか? ・敗血症は多くの場合「血管内脱水」と「血管拡張」の要素が混在して血圧低下を引きおこしている。 →血圧を上げて組織灌流を維持したい!!
13. 理論式 preload(前負荷)を上げれば、Stroke Volumeが上がる Stroke Volumeが上がると、COが上がり、BPが上がる(かも)
14. なぜ、輸液をすると前負荷があがるのか? Vs:stressed blood volume Vu:unstressed blood volume
15. その血圧低下に、輸液は効果的か?
16. じゃあたくさん輸液すればいい? 高度炎症下では、血管内皮グリコカリックスが崩壊している →血管透過性が亢進(capillary leakage)
17. じゃあたくさん輸液すればいい? 敗血症では血管透過性が亢進し、 水分が血管外へ漏出 過剰な輸液は ・組織浮腫を助長 ・肺水腫の悪化 ・ICU滞在日数の増加 ・etc...
18. じゃあたくさん輸液すればいい? fluid balanceがoverなほど 生存率が低かった。。 Crit Care Med 2011 Vol. 39, No. 2 沢山輸液をしなきゃいけないほど重症だっただけかも??
19. じゃあ輸液はあんまりしない方がいい? CQ7-2:敗血症性ショックにおいて初期蘇生における輸液量はどうするか? A:敗血症性ショックにおいて血管内容量減少のある患者の初期輸液は、 細胞外液補充液を 30 mL/kg 以上投与することを推奨する。 2016 年 12 月 26 日
20. 結局目の前の患者に輸液するの?しないの? 動的指標ってなに?? SSCG2016 We suggest that dynamic over static variables be used to predict fluid responsiveness, where available.
21. 敗血症の治療戦略 CHEST 2014; 145␣(6):1407–1418
22. まとめ ✔ 初期輸液を含めた敗血症蘇生のスタンダードを知ろう ✔ 輸液をすることで血圧が上がるかを考えよう ✔ 過剰な輸液は患者にとって害になり得ることを覚えておこう