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胃内視鏡検査の観察から診断までのお話〜胃癌リスクを把握しよう/病変をみつけて癌と診断しよう〜     L1.png

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難治性の腸管病変と血管病変を合併したベーチェット病の1例

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尾山秀明@消化器内科

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テキスト全文

  • #1.

    胃内視鏡検査の観察から診断までのお話 〜胃癌リスクを把握しよう/病変をみつけて癌と診断しよう〜 尾⼭秀明@消化器内科

  • #2.

    本スライドの対象者 l 前回は胃内視鏡検査の観察⽅法についてスライドを作成させていただきました。 l 今回の⽬標は「胃癌のリスクを把握できるようになること」と「病変をみつけて癌と診断できる ようになること」です。 l 対象は下記のような先⽣です。臨床で癌と診断できるようになるためのお役に⽴てれば幸いです。 将来消化器内科を専攻し内視鏡医を⽬指している研修医 胃内視鏡検査の⼿技は安定しているけど、どこをどうみたらいいか分からない専攻医 病変はみつけることができるが、⾃信をもって癌と診断できない専攻医 背景粘膜評価や存在診断・質的診断について改めて復習しなおしたい専攻医

  • #3.

    胃内視鏡検査の観察から診断までのお話 ⽬次 1. 胃癌の発症リスク上昇に関与する因⼦ 2. 胃癌とピロリ菌の関係 3. ピロリ菌感染状態毎の胃癌発症率 4. 胃炎の京都分類あれこれ 5. 存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜 6. 質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜

  • #4.

    胃癌の発症リスク上昇に関連する因⼦ 関連度 確実 可能性⼤ ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ)菌感染 加⼯⾁ ⾼塩分⾷ 飲酒 肥満 Epstein-Barr virus(EBV)感染 胃粘膜萎縮 遺伝性疾患 喫煙 胃癌既往歴 https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/factor.html ⼋尾建史, 他. Gastroenterol Endosc. 2019;61(6):1283-1319. 上記から引⽤,⼀部改変 内視鏡検査開始前の段階で対象患者の胃癌リスク因⼦を把握しておく︕ 「ピロリ菌検査・除菌歴」「家族歴」「胃癌既往歴」「喫煙歴」は必須。 余裕があれば「⾼塩分⾷」「飲酒」「肥満」も確認。

  • #5.

    胃癌とピロリ菌の関係 l ピロリ菌の感染状況は「未感染」「現感染」「既感染」の3つに分類される。 ※「既感染」は除菌療法成功症例、他疾患で抗⽣剤服⽤した際にたまたま除菌された症例、 胃粘膜の萎縮がすすみ⾃然にいなくなった症例があるが、正確な分類は難しい。 l 感染状況により胃癌発症リスクが異なるため、症例毎のピロリ菌評価を⾏っておくことは、 観察の際の⼼構えとして⾮常に重要。 胃癌発症リスクは⾼い⽅から、 現感染 > 既感染 > 未感染

  • #6.

    ピロリ菌感染状態毎の胃癌発症率 l 約10年間のコホート研究で、ピロリ菌未感染患者260例からは1⼈も癌が発⽣しなかった が、現感染患者1246例からは2.9%(36例)の胃癌発症を認め、年率0.5%程度の発癌リスク であった。 Uemura N et al. N Engl J Med 2001;345(11):784-789. l 3161例の胃癌症例のうち未感染患者は0.66%(21例)であった。 Matsuo T et al. Helicobacter 2011; 16(6):415-419. l 約20年フォローすると既感染患者の胃癌発⽣率は年率0.35%程度であった。 Take S et al. J Gastroenterol 2020;55(3):281-288. 現感染患者は年率0.5%程度、既感染患者は年率0.35%程度に胃癌が発⽣する。 未感染患者は胃癌を100例発⾒したときに1⼈いるかいないか程度。

  • #7.

    まとめ① l 内視鏡検査前の段階から対象患者の胃癌リスクを把握することを⼼がける。 l 「ピロリ菌検査・除菌歴」「家族歴」「胃癌既往歴」「喫煙歴」について把握 したうえで内視鏡検査を始める。 l ピロリ菌の感染状況に応じて胃癌発症率は異なる。どの程度の発症率があるかを 把握して検査にのぞむ。

  • #8.

    胃炎の京都分類〜ピロリ菌感染状態と内視鏡所⾒〜 局在 内視鏡所⾒ 現感染 未感染 既感染 局在 内視鏡所⾒ 現感染 未感染 既感染 胃粘膜全体 萎縮 ◯ ☓ ◯〜☓ 胃体部 皺壁腫⼤、蛇⾏ ◯ ☓ △〜☓ びまん性発⾚ ◎ ☓ ☓ ⽩濁粘液 ◯ ☓ △〜☓ 腺窩上⽪型過形成性ポリープ ◯ ☓ ◯〜☓ 胃底腺ポリープ ☓ ◯ ◯ 地図上発⾚ ☓ ☓ ◯ ⻩⾊腫 ◯ ☓ ◯ 点状発⾚ ◯ ☓ △〜☓ ヘマチン △ ◯ ◯ 多発性⽩⾊扁平隆起 △ ◯ ◯ 稜線状発⾚ △ ◯ ◯ 胃体下部⼩弯 〜胃⾓⼩弯 RAC(次⾴で説明) ☓ ◎ ☓〜△ 腸上⽪化⽣ ◯ ☓ ◯〜☓ 胃前庭部 ⿃肌 ◯ ☓ △〜☓ 粘膜腫脹 ◯ ☓ ☓ 隆起型びらん △ ◯ ◯ 斑状発⾚ ◯ ◯ ◯ 陥凹型びらん ◯ ◯ ◯ 胃体部 〜穹窿部 ◎︓よく観察される、◯︓観察される、☓︓観察されない、△︓観察されることがある 胃炎の京都分類 春間 賢監修,加藤元嗣,井上和彦,他.胃炎の 京都分類.⽇本メディカルセンター, 東京, 2014 から引⽤,⼀部改変 普段の内視鏡で観察される胃の所⾒が、胃粘膜のどこに、どのようなピロリ菌感染状態で、 どの程度の頻度で観察されるかを表した分類

  • #9.

    胃炎の京都分類〜どの所⾒がより重要か〜 ピロリ菌未感染 l 組織学的に好中球浸潤・萎縮・腸上⽪化⽣のない状態 l 萎縮がないためRACが胃⾓部〜胃体部⼩弯で観察される RAC (regular arrangement of collecting venules) 内視鏡的に胃体部に集合細静脈が規則的に配列する像のこと。判定は胃⾓部〜胃体下部⼩弯で⾏う。 l 未感染粘膜における診断オッズはRAC RACが最も有⽤。 32.2、胃底腺ポリープ 7.7、稜線状発⾚ 4.7で、 Yoshii S et al. Dig Endosc 2020;32(1):74-83.

  • #10.

    胃炎の京都分類〜どの所⾒がより重要か〜 ピロリ菌現感染 l 組織学的に活動性変化によるリンパ球・好中球浸潤があり、粘液層には菌体が確認できる。 慢性的な変化に伴う萎縮・腸上⽪化⽣を認める。 l 慢性活動性胃炎の状態 l 現感染粘膜における診断オッズはびまん性発⾚ びまん性発⾚が⼀番有⽤。 26.8、粘膜腫脹 13.3、⽩濁粘液 10.2で、 Yoshii S et al. Dig Endosc 2020;32(1):74-83.

  • #11.

    胃炎の京都分類〜どの所⾒がより重要か〜 ピロリ菌既感染 l ピロリ菌の消失(除菌治療、偶然の抗⽣剤投与による除菌、⾼度萎縮による⾃然消失)により 好中球浸潤は速やかに消失(活動性胃炎消失)。⼀⽅で単核球浸潤は残存(慢性胃炎残存)。 l 慢性⾮活動性胃炎の状態 l 内視鏡観察では、びまん性発⾚、粘膜腫脹は消失(活動性胃炎消失)、萎縮、腸上⽪化⽣は残存 (慢性胃炎残存)。症例により地図状発⾚が出現。 地図状発⾚ 除菌によりびまん性発⾚が消退した結果、萎縮のない胃底腺領域は⽩⾊調となり萎縮・腸上⽪化⽣粘膜では発⾚が残存 する。この発⾚のこと 。 l 既感染粘膜における診断オッズは地図状発⾚ 12.9。 Yoshii S et al. Dig Endosc 2020;32(1):74-83.

  • #12.

    簡易版ピロリ菌感染状態フローチャート(私⾒) 胃粘膜全体に⾚みが⽬⽴つ (びまん性発⾚) Yes 私が内視鏡をしている際に主に意識している点をフローチャートにしました。 あくまで簡易版ですので該当しない場合もあります。 最終的にはピロリ抗体や尿素呼気試験等もあわせて判断します。 No 胃⾓部〜胃体部⼩弯でRACを確認可能 Yes 粘膜腫脹や⽩濁粘液も参考 表層性胃炎や⾨脈圧亢進症性胃症などの粘膜 の発⾚を伴う疾患を除外 現感染 疑い No 萎縮、腸上⽪化⽣、地図状発⾚の 有無を参考にして判断 未感染 疑い 既感染 疑い

  • #13.

    胃炎の京都分類〜胃癌リスクと関連のある所⾒〜 l 胃癌のリスクと関連のある所⾒は、「萎縮」「腸上⽪化⽣」「⿃肌」「皺壁腫⼤」 「胃⻩⾊腫」がある。観察時にこれらの所⾒を認めた際には、より慎重に観察を⾏う。 ⼋尾建史, 他. Gastroenterol Endosc. 2019;61(6):1283-1319. l 萎縮については萎縮の範囲がひろがればひろがるほど胃癌のリスクが上昇する。そのため、⽊ 村・⽵本分類を⽤いて萎縮の範囲まで評価を⾏う。 Masuyama H et al. Digestion 2015;91(1):30-36.

  • #14.

    萎縮範囲の判定と胃癌リスク 〜⽊村・⽵本分類(1)〜 胃癌リスク(%)(2) type C︓close type 胃体部⼩弯の萎縮が噴⾨部までつながっていない C-1 萎縮境界が胃⾓部⼩弯を超えない C-2 0 (0/4506例) 萎縮境界が胃体部⼩弯を超えるが、 胃体部⼩弯の中央より肛⾨側に存在する 0.25 (9/3660例) C-3 萎縮境界が胃体部⼩弯の中央より⼝側に存在する O︓open type C-3 C-2 0.71 (21/2960例) O-1 胃体部⼩弯の萎縮が噴⾨までつながっている O-1 胃体中下部の⾒下ろしで、萎縮範囲が1/2周未満 1.32 (75/5684例) O-2 胃体中下部の⾒下ろしで、萎縮範囲が1/2〜2/3周 3.70 (140/3780例) O-3 胃体中下部の⾒下ろしで、萎縮範囲が2/3周を超える 5.33 (160/3004例) (1) Kimura K, Takemoto T. Endoscopy 1969;1(3):87-97. (2) Masuyama H et al. Digestion 2015;91(1):30-36. O-2 O-3 おおよその萎縮境界を点線で図⽰した。 ※画像は未感染粘膜(画像は同僚のもので掲載許諾取得済み)

  • #15.

    まとめ② l 胃炎の京都分類で呈⽰されている内視鏡所⾒を確認して検査に望む。 l ピロリ菌感染状態に応じて胃癌のリスクが⼤きく変わる。胃炎の京都分類を参考 にして、ピロリ菌感染状態を評価する。 l 胃癌のリスクと関連のある所⾒は、萎縮、腸上⽪化⽣、⿃肌、皺壁腫⼤、胃⻩⾊ 腫の5つ。萎縮については範囲が広いほど胃癌のリスクが上昇するため、萎縮の 範囲まで評価する。

  • #16.

    存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜 l 存在診断での画像強調内視鏡観察(NBIなど)の有⽤性は明らかではなく、 基本は⽩⾊光通常観察。 l 「形態」「表⾯構造」「⾊調」「⾃然出⾎」の4つの変化に着⽬して観察を⾏う。 具体的には下記のようなものに注意して観察を⾏う。 形態の変化 隆起、陥凹、びらん・潰瘍、瘢痕、ひだ集中 表⾯構造の変化 粘膜粗造 ⾊調の変化 ⾊調変化、⾎管透⾒像消失 ⾃然出⾎ ⾃然出⾎

  • #17.

    存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜 l 形態の変化は⽐較的⾒つけやすい。⼀⽅で、表⾯構造や⾊調の変化は周囲の粘膜次第では みつかりにくいこともある。そのときにはインジゴカルミンを撒布して⾊素観察を⾏う。 撒布することで周囲との差が明瞭となり病変がみつかりやすくなることがある。 l 癌部は⾮癌部に⽐べて脆弱であり、接触していないところに⾃然出⾎を認め、それがきっか けで癌をみつけることがある。出⾎がすべて内視鏡の接触によるものと思いこまないこと。 病変をみつけなければ診断も治療もできない。みつけるためにはたくさんの画像を みなければならない。後述する参考書の画像をみるなどして経験を蓄積していく。

  • #18.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 ⽩⾊光通常観察 l 病変の表⾯の所⾒を詳細に観察する。「領域性をもっている」ことは癌を疑う所⾒の1つ。 その他には下記の所⾒がある。 ※基本的に癌は集塊を形成して増⼤・浸潤していくため、ある程度の⼤きさになると明らかに周囲との境界を有する ⾯として視認できる。この状況を「領域性をもった」と表現する。 ①不整な形態 整・不整にはっきりとした定義があるわけではない。私⾒にはなるが、左右対称か左右⾮対称か どうかを1つの参考にしている。 ②表⾯構造の変化 背景粘膜と⽐較して粘膜表⾯構造の変化があるかどうか。癌の場合には、胃⼩区が不明瞭となり、 粘膜の光沢が消失していることが多い。

  • #19.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 ⽩⾊光通常観察 ③⾊調変化 分化型胃癌では発⾚調を呈することが多い。しかし、背景粘膜の状態によっては⽩⾊調や同⾊調 を呈することもあり注意が必要。 未分化型胃癌であれば背景粘膜は正常の事が多く橙⾚⾊のため、基本的には褪⾊調を呈すること が多い。 ④⾎管透⾒像消失 萎縮がある領域では、粘膜下層の⾎管が透⾒できるようになる。その中に腫瘍が出現すると、 腫瘍⾃体の厚みによりその領域だけ⾎管透⾒が消失することがある。背景に⾎管が透⾒できる 症例では、⾎管透⾒が消失している領域がないかに着⽬して観察する。

  • #20.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 ⽩⾊光通常観察 ⑤⾃然出⾎ 癌は正常粘膜より脆弱なことが多く易出⾎性である。内視鏡挿⼊時から出⾎している場合や送気 や洗浄の刺激で出⾎する場合もある。出⾎がみられる領域では癌がある可能性を考え観察を⾏う。 ⽩⾊光通常観察で癌を疑う所⾒としては、「表⾯の不整な形態」「表⾯構造の変化」 「⾊調変化」「⾎管透⾒像消失」「⾃然出⾎」がある。 これらの所⾒が「領域性をもって」存在するとき、癌の存在を疑って詳細な観察を ⼼がける。

  • #21.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 画像強調併⽤拡⼤内視鏡観察 l 質的診断における画像強調拡⼤内視鏡観察の有⽤性はすでに確⽴されガイドラインでも⾏う ⼋尾建史, 他. Gastroenterol Endosc. 2019;61(6):1283-1319. ことを提案されている。 l 画像強調併⽤拡⼤内視鏡観察で癌・⾮癌を鑑別するための診断体系として VS (vessel and surface) classification systemが提唱、確⽴され、有⽤性について も報告されている。この診断体系を⽤いて質的診断を⾏っていく。 Yao K et al. Endoscopy 2009;41:462-467. Ezoe Y et al. Gastroenterology 2011;141:2017-2025. Yao K et al. Gastric Cancer 2014;17:669-679.

  • #22.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 VS (vessel and surface) classification system l 原則は、解剖学的⽤語を⽤いて、微⼩⾎管構築像(microvascular (MV) pattern)と 表⾯微細構造(microsurface (MS) pattern)を判定すること。 l MV patternとMS patternを regular / irregular / absent の3つのカテゴリーで判定する。判定基準は 次のスライドを参照。 l 早期胃癌に特徴的な拡⼤内視鏡所⾒は、癌と⾮癌粘膜の間に明瞭な境界線(DL︓demarcation line)が存在すること、かつ、DLの内側にirregular MV patternかつ/または、irregular MS patternが存在することである。 Yao K et al. Endoscopy 2009;41:462-467.から引⽤,⼀部改変

  • #23.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 VS (vessel and surface) classification system 微⼩⾎管構築像 表⾯微細構造 (判定には腺窩辺縁上⽪を⽤いることが多い。ほかの指 標が視認できればそれらも判定の指標になる。) regular 個々の上⽪下の⽑細⾎管の形態は、閉鎖性または開放性 ループ状で、形状均⼀、配列規則的、分布対称。 個々の腺窩辺縁上⽪の形態は、弧状または円形で、形状 均⼀、配列規則的、分布対称。 irregular 個々の上⽪下の⽑細⾎管の形態は、閉鎖性または開放性 個々の腺窩辺縁上⽪の形態は、弧状、類円形、絨⽑状を ループ状、蛇⾏状、分枝状で形状不均⼀、配列不規則、 呈し、形状不均⼀、配列不規則、分布⾮対称。 分布⾮対称。 absent 上⽪下の微⼩⾎管が視認できない 腺窩辺縁上⽪を含めて判定の指標となる構造物が視認 できない Yao K et al. Endoscopy 2009;41:462-467.から引⽤,⼀部改変

  • #24.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 MESDA-G 早期胃癌を疑う病変 l VS classification systemを⽤いた拡⼤内視鏡によ る早期胃癌診断の単純化アルゴリズム(右図)。 l magnifying endoscopy simple diagnostic algorithm for early gastric cancerの略。 l ⽩⾊光通常観察で早期胃癌を疑う病変を拾い上 げ(存在診断)、拾い上げた病変に対して拡⼤ 内視鏡観察を⽤いて診断を⾏う(質的診断)。 DL あり なし irregular MV pattern and / or irregular MS pattern あり 癌 なし ⾮癌 Muto M et al. Dig Endosc 2016;28:379-393.から引⽤,⼀部改変

  • #25.

    まとめ③ l 病変をみつけなければ診断も治療もできない。⽩⾊光通常観察で「形態」 「表⾯構造」「⾊調」「⾃然出⾎」に着⽬して病変を拾い上げる。 l ⽩⾊光通常観察で「表⾯の不整な形態」「表⾯構造の変化」「⾊調変化」 「⾎管透⾒像消失」「⾃然出⾎」が「領域性をもって」存在するとき癌を疑う。 l 画像強調併⽤拡⼤観察は癌か⾮癌かを鑑別するために有⽤。 VS classification systemを⽤いた拡⼤内視鏡による早期胃癌診断の単純化アルゴリズムである MESDA-Gを参考に質的診断を⾏う。

  • #26.

    TAKE HOME MESSAGE l 個々の症例で胃癌のリスクは変わる。症例毎の背景因⼦、ピロリ菌感染状態、 得られる内視鏡所⾒を参考に胃癌リスクを想定しながら観察を⾏う。 l 胃炎の京都分類を参考にしてピロリ菌感染状態を診断することが胃癌のリスク 把握につながる。 l 全ては⽩⾊光通常観察で病変をみつけること(存在診断)から始まる。みつけた 病変に対して⽩⾊光通常観察や画像強調併⽤拡⼤観察を⽤いて癌か⾮癌かを診断 する(質的診断)。

  • #27.

    参考資料 胃炎の京都分類で呈⽰されている所⾒の画像については、「胃炎の京都分類」でまとめられていま すのでそちらを参考にしてください。 l 春間 賢監修,加藤元嗣,井上和彦,他.胃炎の京都分類.⽇本メディカルセンター, 東京,2014 存在診断、質的診断の精度を上げるために多くの画像をみることが⼤事だと考えています。実際に 経験する画像だけでは少ないと思いますので、下記の参考書でも勉強してみてください。 l ⽩⾊光通常観察画像なら、 吉永繁⾼.百症例式 早期胃癌・早期⾷道癌 2021 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング.医学書院,東京, l 画像強調併⽤拡⼤観察画像なら、 拡⼤内視鏡✕病理対⽐診断研究会アトラス作成委員会 編集.百症例式 アトラス.医学書院,東京,2021 胃の拡⼤内視鏡✕病理対⽐

胃内視鏡検査の観察から診断までのお話〜胃癌リスクを把握しよう/病変をみつけて癌と診断しよう〜    

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投稿者プロフィール
尾山秀明@消化器内科

総合病院

概要

今回の目標は「胃癌のリスクを把握できるようになること」と「病変をみつけて癌と診断できるようになること」です。臨床で癌と診断できるようになるためのお役に立てれば幸いです。

将来消化器内科を専攻し内視鏡医を目指している研修医、胃内視鏡検査の手技は安定しているけど、どこをどうみたらいいか分からない専攻医、病変はみつけることができるが、自信をもって癌と診断できない専攻医、背景粘膜評価や存在診断・質的診断について改めて復習しなおしたい専攻医の先生を対象としています。

◎目次

・本スライドの対象者

・胃内視鏡検査の観察から診断までのお話

・胃癌の発症リスク上昇に関連する因子

・胃癌とピロリ菌の関係

・ピロリ菌感染状態毎の胃癌発症率

・まとめ①

・胃炎の京都分類〜ピロリ菌感染状態と内視鏡所見〜

・胃炎の京都分類〜どの所見がより重要か〜

・簡易版ピロリ菌感染状態フローチャート(私見)

・胃炎の京都分類〜胃癌リスクと関連のある所見〜

・萎縮範囲の判定と胃癌リスク 〜木村・竹本分類(1)〜

・まとめ②

・存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜

・質的診断〜癌か非癌かを診断する〜

・まとめ③

・TAKE HOME MESSAGE

本スライドの対象者

研修医/専攻医

参考文献

  • 春間 賢監修,加藤元嗣,井上和彦,他.胃炎の京都分類.日本メディカルセンター, 東京,2014

  • 吉永繁高.百症例式 早期胃癌・早期食道癌 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング.医学書院,東京,2021

  • 拡大内視鏡✕病理対比診断研究会アトラス作成委員会 編集.百症例式 胃の拡大内視鏡✕病理対比 アトラス.医学書院,東京,2021

テキスト全文

  • #1.

    胃内視鏡検査の観察から診断までのお話 〜胃癌リスクを把握しよう/病変をみつけて癌と診断しよう〜 尾⼭秀明@消化器内科

  • #2.

    本スライドの対象者 l 前回は胃内視鏡検査の観察⽅法についてスライドを作成させていただきました。 l 今回の⽬標は「胃癌のリスクを把握できるようになること」と「病変をみつけて癌と診断できる ようになること」です。 l 対象は下記のような先⽣です。臨床で癌と診断できるようになるためのお役に⽴てれば幸いです。 将来消化器内科を専攻し内視鏡医を⽬指している研修医 胃内視鏡検査の⼿技は安定しているけど、どこをどうみたらいいか分からない専攻医 病変はみつけることができるが、⾃信をもって癌と診断できない専攻医 背景粘膜評価や存在診断・質的診断について改めて復習しなおしたい専攻医

  • #3.

    胃内視鏡検査の観察から診断までのお話 ⽬次 1. 胃癌の発症リスク上昇に関与する因⼦ 2. 胃癌とピロリ菌の関係 3. ピロリ菌感染状態毎の胃癌発症率 4. 胃炎の京都分類あれこれ 5. 存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜 6. 質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜

  • #4.

    胃癌の発症リスク上昇に関連する因⼦ 関連度 確実 可能性⼤ ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ)菌感染 加⼯⾁ ⾼塩分⾷ 飲酒 肥満 Epstein-Barr virus(EBV)感染 胃粘膜萎縮 遺伝性疾患 喫煙 胃癌既往歴 https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/factor.html ⼋尾建史, 他. Gastroenterol Endosc. 2019;61(6):1283-1319. 上記から引⽤,⼀部改変 内視鏡検査開始前の段階で対象患者の胃癌リスク因⼦を把握しておく︕ 「ピロリ菌検査・除菌歴」「家族歴」「胃癌既往歴」「喫煙歴」は必須。 余裕があれば「⾼塩分⾷」「飲酒」「肥満」も確認。

  • #5.

    胃癌とピロリ菌の関係 l ピロリ菌の感染状況は「未感染」「現感染」「既感染」の3つに分類される。 ※「既感染」は除菌療法成功症例、他疾患で抗⽣剤服⽤した際にたまたま除菌された症例、 胃粘膜の萎縮がすすみ⾃然にいなくなった症例があるが、正確な分類は難しい。 l 感染状況により胃癌発症リスクが異なるため、症例毎のピロリ菌評価を⾏っておくことは、 観察の際の⼼構えとして⾮常に重要。 胃癌発症リスクは⾼い⽅から、 現感染 > 既感染 > 未感染

  • #6.

    ピロリ菌感染状態毎の胃癌発症率 l 約10年間のコホート研究で、ピロリ菌未感染患者260例からは1⼈も癌が発⽣しなかった が、現感染患者1246例からは2.9%(36例)の胃癌発症を認め、年率0.5%程度の発癌リスク であった。 Uemura N et al. N Engl J Med 2001;345(11):784-789. l 3161例の胃癌症例のうち未感染患者は0.66%(21例)であった。 Matsuo T et al. Helicobacter 2011; 16(6):415-419. l 約20年フォローすると既感染患者の胃癌発⽣率は年率0.35%程度であった。 Take S et al. J Gastroenterol 2020;55(3):281-288. 現感染患者は年率0.5%程度、既感染患者は年率0.35%程度に胃癌が発⽣する。 未感染患者は胃癌を100例発⾒したときに1⼈いるかいないか程度。

  • #7.

    まとめ① l 内視鏡検査前の段階から対象患者の胃癌リスクを把握することを⼼がける。 l 「ピロリ菌検査・除菌歴」「家族歴」「胃癌既往歴」「喫煙歴」について把握 したうえで内視鏡検査を始める。 l ピロリ菌の感染状況に応じて胃癌発症率は異なる。どの程度の発症率があるかを 把握して検査にのぞむ。

  • #8.

    胃炎の京都分類〜ピロリ菌感染状態と内視鏡所⾒〜 局在 内視鏡所⾒ 現感染 未感染 既感染 局在 内視鏡所⾒ 現感染 未感染 既感染 胃粘膜全体 萎縮 ◯ ☓ ◯〜☓ 胃体部 皺壁腫⼤、蛇⾏ ◯ ☓ △〜☓ びまん性発⾚ ◎ ☓ ☓ ⽩濁粘液 ◯ ☓ △〜☓ 腺窩上⽪型過形成性ポリープ ◯ ☓ ◯〜☓ 胃底腺ポリープ ☓ ◯ ◯ 地図上発⾚ ☓ ☓ ◯ ⻩⾊腫 ◯ ☓ ◯ 点状発⾚ ◯ ☓ △〜☓ ヘマチン △ ◯ ◯ 多発性⽩⾊扁平隆起 △ ◯ ◯ 稜線状発⾚ △ ◯ ◯ 胃体下部⼩弯 〜胃⾓⼩弯 RAC(次⾴で説明) ☓ ◎ ☓〜△ 腸上⽪化⽣ ◯ ☓ ◯〜☓ 胃前庭部 ⿃肌 ◯ ☓ △〜☓ 粘膜腫脹 ◯ ☓ ☓ 隆起型びらん △ ◯ ◯ 斑状発⾚ ◯ ◯ ◯ 陥凹型びらん ◯ ◯ ◯ 胃体部 〜穹窿部 ◎︓よく観察される、◯︓観察される、☓︓観察されない、△︓観察されることがある 胃炎の京都分類 春間 賢監修,加藤元嗣,井上和彦,他.胃炎の 京都分類.⽇本メディカルセンター, 東京, 2014 から引⽤,⼀部改変 普段の内視鏡で観察される胃の所⾒が、胃粘膜のどこに、どのようなピロリ菌感染状態で、 どの程度の頻度で観察されるかを表した分類

  • #9.

    胃炎の京都分類〜どの所⾒がより重要か〜 ピロリ菌未感染 l 組織学的に好中球浸潤・萎縮・腸上⽪化⽣のない状態 l 萎縮がないためRACが胃⾓部〜胃体部⼩弯で観察される RAC (regular arrangement of collecting venules) 内視鏡的に胃体部に集合細静脈が規則的に配列する像のこと。判定は胃⾓部〜胃体下部⼩弯で⾏う。 l 未感染粘膜における診断オッズはRAC RACが最も有⽤。 32.2、胃底腺ポリープ 7.7、稜線状発⾚ 4.7で、 Yoshii S et al. Dig Endosc 2020;32(1):74-83.

  • #10.

    胃炎の京都分類〜どの所⾒がより重要か〜 ピロリ菌現感染 l 組織学的に活動性変化によるリンパ球・好中球浸潤があり、粘液層には菌体が確認できる。 慢性的な変化に伴う萎縮・腸上⽪化⽣を認める。 l 慢性活動性胃炎の状態 l 現感染粘膜における診断オッズはびまん性発⾚ びまん性発⾚が⼀番有⽤。 26.8、粘膜腫脹 13.3、⽩濁粘液 10.2で、 Yoshii S et al. Dig Endosc 2020;32(1):74-83.

  • #11.

    胃炎の京都分類〜どの所⾒がより重要か〜 ピロリ菌既感染 l ピロリ菌の消失(除菌治療、偶然の抗⽣剤投与による除菌、⾼度萎縮による⾃然消失)により 好中球浸潤は速やかに消失(活動性胃炎消失)。⼀⽅で単核球浸潤は残存(慢性胃炎残存)。 l 慢性⾮活動性胃炎の状態 l 内視鏡観察では、びまん性発⾚、粘膜腫脹は消失(活動性胃炎消失)、萎縮、腸上⽪化⽣は残存 (慢性胃炎残存)。症例により地図状発⾚が出現。 地図状発⾚ 除菌によりびまん性発⾚が消退した結果、萎縮のない胃底腺領域は⽩⾊調となり萎縮・腸上⽪化⽣粘膜では発⾚が残存 する。この発⾚のこと 。 l 既感染粘膜における診断オッズは地図状発⾚ 12.9。 Yoshii S et al. Dig Endosc 2020;32(1):74-83.

  • #12.

    簡易版ピロリ菌感染状態フローチャート(私⾒) 胃粘膜全体に⾚みが⽬⽴つ (びまん性発⾚) Yes 私が内視鏡をしている際に主に意識している点をフローチャートにしました。 あくまで簡易版ですので該当しない場合もあります。 最終的にはピロリ抗体や尿素呼気試験等もあわせて判断します。 No 胃⾓部〜胃体部⼩弯でRACを確認可能 Yes 粘膜腫脹や⽩濁粘液も参考 表層性胃炎や⾨脈圧亢進症性胃症などの粘膜 の発⾚を伴う疾患を除外 現感染 疑い No 萎縮、腸上⽪化⽣、地図状発⾚の 有無を参考にして判断 未感染 疑い 既感染 疑い

  • #13.

    胃炎の京都分類〜胃癌リスクと関連のある所⾒〜 l 胃癌のリスクと関連のある所⾒は、「萎縮」「腸上⽪化⽣」「⿃肌」「皺壁腫⼤」 「胃⻩⾊腫」がある。観察時にこれらの所⾒を認めた際には、より慎重に観察を⾏う。 ⼋尾建史, 他. Gastroenterol Endosc. 2019;61(6):1283-1319. l 萎縮については萎縮の範囲がひろがればひろがるほど胃癌のリスクが上昇する。そのため、⽊ 村・⽵本分類を⽤いて萎縮の範囲まで評価を⾏う。 Masuyama H et al. Digestion 2015;91(1):30-36.

  • #14.

    萎縮範囲の判定と胃癌リスク 〜⽊村・⽵本分類(1)〜 胃癌リスク(%)(2) type C︓close type 胃体部⼩弯の萎縮が噴⾨部までつながっていない C-1 萎縮境界が胃⾓部⼩弯を超えない C-2 0 (0/4506例) 萎縮境界が胃体部⼩弯を超えるが、 胃体部⼩弯の中央より肛⾨側に存在する 0.25 (9/3660例) C-3 萎縮境界が胃体部⼩弯の中央より⼝側に存在する O︓open type C-3 C-2 0.71 (21/2960例) O-1 胃体部⼩弯の萎縮が噴⾨までつながっている O-1 胃体中下部の⾒下ろしで、萎縮範囲が1/2周未満 1.32 (75/5684例) O-2 胃体中下部の⾒下ろしで、萎縮範囲が1/2〜2/3周 3.70 (140/3780例) O-3 胃体中下部の⾒下ろしで、萎縮範囲が2/3周を超える 5.33 (160/3004例) (1) Kimura K, Takemoto T. Endoscopy 1969;1(3):87-97. (2) Masuyama H et al. Digestion 2015;91(1):30-36. O-2 O-3 おおよその萎縮境界を点線で図⽰した。 ※画像は未感染粘膜(画像は同僚のもので掲載許諾取得済み)

  • #15.

    まとめ② l 胃炎の京都分類で呈⽰されている内視鏡所⾒を確認して検査に望む。 l ピロリ菌感染状態に応じて胃癌のリスクが⼤きく変わる。胃炎の京都分類を参考 にして、ピロリ菌感染状態を評価する。 l 胃癌のリスクと関連のある所⾒は、萎縮、腸上⽪化⽣、⿃肌、皺壁腫⼤、胃⻩⾊ 腫の5つ。萎縮については範囲が広いほど胃癌のリスクが上昇するため、萎縮の 範囲まで評価する。

  • #16.

    存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜 l 存在診断での画像強調内視鏡観察(NBIなど)の有⽤性は明らかではなく、 基本は⽩⾊光通常観察。 l 「形態」「表⾯構造」「⾊調」「⾃然出⾎」の4つの変化に着⽬して観察を⾏う。 具体的には下記のようなものに注意して観察を⾏う。 形態の変化 隆起、陥凹、びらん・潰瘍、瘢痕、ひだ集中 表⾯構造の変化 粘膜粗造 ⾊調の変化 ⾊調変化、⾎管透⾒像消失 ⾃然出⾎ ⾃然出⾎

  • #17.

    存在診断〜全ては病変をみつけることから始まる〜 l 形態の変化は⽐較的⾒つけやすい。⼀⽅で、表⾯構造や⾊調の変化は周囲の粘膜次第では みつかりにくいこともある。そのときにはインジゴカルミンを撒布して⾊素観察を⾏う。 撒布することで周囲との差が明瞭となり病変がみつかりやすくなることがある。 l 癌部は⾮癌部に⽐べて脆弱であり、接触していないところに⾃然出⾎を認め、それがきっか けで癌をみつけることがある。出⾎がすべて内視鏡の接触によるものと思いこまないこと。 病変をみつけなければ診断も治療もできない。みつけるためにはたくさんの画像を みなければならない。後述する参考書の画像をみるなどして経験を蓄積していく。

  • #18.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 ⽩⾊光通常観察 l 病変の表⾯の所⾒を詳細に観察する。「領域性をもっている」ことは癌を疑う所⾒の1つ。 その他には下記の所⾒がある。 ※基本的に癌は集塊を形成して増⼤・浸潤していくため、ある程度の⼤きさになると明らかに周囲との境界を有する ⾯として視認できる。この状況を「領域性をもった」と表現する。 ①不整な形態 整・不整にはっきりとした定義があるわけではない。私⾒にはなるが、左右対称か左右⾮対称か どうかを1つの参考にしている。 ②表⾯構造の変化 背景粘膜と⽐較して粘膜表⾯構造の変化があるかどうか。癌の場合には、胃⼩区が不明瞭となり、 粘膜の光沢が消失していることが多い。

  • #19.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 ⽩⾊光通常観察 ③⾊調変化 分化型胃癌では発⾚調を呈することが多い。しかし、背景粘膜の状態によっては⽩⾊調や同⾊調 を呈することもあり注意が必要。 未分化型胃癌であれば背景粘膜は正常の事が多く橙⾚⾊のため、基本的には褪⾊調を呈すること が多い。 ④⾎管透⾒像消失 萎縮がある領域では、粘膜下層の⾎管が透⾒できるようになる。その中に腫瘍が出現すると、 腫瘍⾃体の厚みによりその領域だけ⾎管透⾒が消失することがある。背景に⾎管が透⾒できる 症例では、⾎管透⾒が消失している領域がないかに着⽬して観察する。

  • #20.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 ⽩⾊光通常観察 ⑤⾃然出⾎ 癌は正常粘膜より脆弱なことが多く易出⾎性である。内視鏡挿⼊時から出⾎している場合や送気 や洗浄の刺激で出⾎する場合もある。出⾎がみられる領域では癌がある可能性を考え観察を⾏う。 ⽩⾊光通常観察で癌を疑う所⾒としては、「表⾯の不整な形態」「表⾯構造の変化」 「⾊調変化」「⾎管透⾒像消失」「⾃然出⾎」がある。 これらの所⾒が「領域性をもって」存在するとき、癌の存在を疑って詳細な観察を ⼼がける。

  • #21.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 画像強調併⽤拡⼤内視鏡観察 l 質的診断における画像強調拡⼤内視鏡観察の有⽤性はすでに確⽴されガイドラインでも⾏う ⼋尾建史, 他. Gastroenterol Endosc. 2019;61(6):1283-1319. ことを提案されている。 l 画像強調併⽤拡⼤内視鏡観察で癌・⾮癌を鑑別するための診断体系として VS (vessel and surface) classification systemが提唱、確⽴され、有⽤性について も報告されている。この診断体系を⽤いて質的診断を⾏っていく。 Yao K et al. Endoscopy 2009;41:462-467. Ezoe Y et al. Gastroenterology 2011;141:2017-2025. Yao K et al. Gastric Cancer 2014;17:669-679.

  • #22.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 VS (vessel and surface) classification system l 原則は、解剖学的⽤語を⽤いて、微⼩⾎管構築像(microvascular (MV) pattern)と 表⾯微細構造(microsurface (MS) pattern)を判定すること。 l MV patternとMS patternを regular / irregular / absent の3つのカテゴリーで判定する。判定基準は 次のスライドを参照。 l 早期胃癌に特徴的な拡⼤内視鏡所⾒は、癌と⾮癌粘膜の間に明瞭な境界線(DL︓demarcation line)が存在すること、かつ、DLの内側にirregular MV patternかつ/または、irregular MS patternが存在することである。 Yao K et al. Endoscopy 2009;41:462-467.から引⽤,⼀部改変

  • #23.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 VS (vessel and surface) classification system 微⼩⾎管構築像 表⾯微細構造 (判定には腺窩辺縁上⽪を⽤いることが多い。ほかの指 標が視認できればそれらも判定の指標になる。) regular 個々の上⽪下の⽑細⾎管の形態は、閉鎖性または開放性 ループ状で、形状均⼀、配列規則的、分布対称。 個々の腺窩辺縁上⽪の形態は、弧状または円形で、形状 均⼀、配列規則的、分布対称。 irregular 個々の上⽪下の⽑細⾎管の形態は、閉鎖性または開放性 個々の腺窩辺縁上⽪の形態は、弧状、類円形、絨⽑状を ループ状、蛇⾏状、分枝状で形状不均⼀、配列不規則、 呈し、形状不均⼀、配列不規則、分布⾮対称。 分布⾮対称。 absent 上⽪下の微⼩⾎管が視認できない 腺窩辺縁上⽪を含めて判定の指標となる構造物が視認 できない Yao K et al. Endoscopy 2009;41:462-467.から引⽤,⼀部改変

  • #24.

    質的診断〜癌か⾮癌かを診断する〜 MESDA-G 早期胃癌を疑う病変 l VS classification systemを⽤いた拡⼤内視鏡によ る早期胃癌診断の単純化アルゴリズム(右図)。 l magnifying endoscopy simple diagnostic algorithm for early gastric cancerの略。 l ⽩⾊光通常観察で早期胃癌を疑う病変を拾い上 げ(存在診断)、拾い上げた病変に対して拡⼤ 内視鏡観察を⽤いて診断を⾏う(質的診断)。 DL あり なし irregular MV pattern and / or irregular MS pattern あり 癌 なし ⾮癌 Muto M et al. Dig Endosc 2016;28:379-393.から引⽤,⼀部改変

  • #25.

    まとめ③ l 病変をみつけなければ診断も治療もできない。⽩⾊光通常観察で「形態」 「表⾯構造」「⾊調」「⾃然出⾎」に着⽬して病変を拾い上げる。 l ⽩⾊光通常観察で「表⾯の不整な形態」「表⾯構造の変化」「⾊調変化」 「⾎管透⾒像消失」「⾃然出⾎」が「領域性をもって」存在するとき癌を疑う。 l 画像強調併⽤拡⼤観察は癌か⾮癌かを鑑別するために有⽤。 VS classification systemを⽤いた拡⼤内視鏡による早期胃癌診断の単純化アルゴリズムである MESDA-Gを参考に質的診断を⾏う。

  • #26.

    TAKE HOME MESSAGE l 個々の症例で胃癌のリスクは変わる。症例毎の背景因⼦、ピロリ菌感染状態、 得られる内視鏡所⾒を参考に胃癌リスクを想定しながら観察を⾏う。 l 胃炎の京都分類を参考にしてピロリ菌感染状態を診断することが胃癌のリスク 把握につながる。 l 全ては⽩⾊光通常観察で病変をみつけること(存在診断)から始まる。みつけた 病変に対して⽩⾊光通常観察や画像強調併⽤拡⼤観察を⽤いて癌か⾮癌かを診断 する(質的診断)。

  • #27.

    参考資料 胃炎の京都分類で呈⽰されている所⾒の画像については、「胃炎の京都分類」でまとめられていま すのでそちらを参考にしてください。 l 春間 賢監修,加藤元嗣,井上和彦,他.胃炎の京都分類.⽇本メディカルセンター, 東京,2014 存在診断、質的診断の精度を上げるために多くの画像をみることが⼤事だと考えています。実際に 経験する画像だけでは少ないと思いますので、下記の参考書でも勉強してみてください。 l ⽩⾊光通常観察画像なら、 吉永繁⾼.百症例式 早期胃癌・早期⾷道癌 2021 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング.医学書院,東京, l 画像強調併⽤拡⼤観察画像なら、 拡⼤内視鏡✕病理対⽐診断研究会アトラス作成委員会 編集.百症例式 アトラス.医学書院,東京,2021 胃の拡⼤内視鏡✕病理対⽐

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