#4.
努⼒呼吸を放置すると ⻲⾕ 航平. ⽇本感染症学会HP. 2020年5 ⽉12⽇公開 肺炎が悪化!! ⾃発呼吸関連肺傷害(P-SILI) という概念が注⽬されています︕
#5.
⽬次 ・P-SILIの機序 ・P-SILIの評価 ・P-SILIへの対応
#6.
P-SILIの機序① ⾼い経肺圧 経肺圧 = 気道内圧 ー 胸膜圧 筋弛緩中は胸郭の縮む⼒で経肺圧低下 ⾃発呼吸では⾃発呼吸の陰圧により経肺圧上昇︕ 胸膜圧 10cmH2O 胸膜圧 ー10cmH2O 気道内圧 30cmH2O 気道内圧 30cmH2O 経肺圧 20cmH2O 経肺圧 40cmH2O 筋弛緩中 努⼒呼吸時
#7.
P-SILIの機序②陰圧性肺⽔腫 筋弛緩中 胸腔内が陰圧になると 努⼒呼吸時 Yoshida T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2017 Apr 15;195(8):985-992. ⾎管から間質へ⽔が滲み出す 間質に滲み出した⽔が肺胞に⼊る(肺⽔腫)
#8.
P-SILIの機序③Pendelluft現象 上図は⾃発呼吸時の肺への空気の⼊り⽅を 胸部CT画像にトレースし経時変化を表したもの Yoshida T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2013 Dec 15;188(12):1420-7. 肺には均⼀に空気が⼊るべきだが ⾃発呼吸時に空気のほとんどがまず背側に⼊り 背側肺の過伸展を引き起こす 1回換気量6ml/kgだとしても過伸展を起こす︕
#9.
⽬次 ・P-SILIの機序 ・P-SILIの評価 ・P-SILIへの対応
#10.
P-SILIの評価 ① 胸腔の強い陰圧 ⇨ Pendelluftと陰圧性肺⽔腫 ② 横隔膜への過度な負担 ⇨ 横隔膜疲労と傷害 ③ ⾼い経肺圧 ⇨ 肺胞の⾼いストレインとストレス
#11.
①胸腔内圧の推定 ⾷道内圧が測れるならΔPesを計測して管理 ⾷道内圧が測れないなら P0.1(ピーポイントワン)を計測するか ΔPocc, PMIでΔPesを近似もしくは推定
#12.
ΔPes ΔPes>-10cmH2Oで管理 Bertoni M, et al. Crit Care. 2020 Mar 24;24(1):106. ⾃発呼吸(吸気)による⾷道内圧の変化 ≒ ⾃発呼吸によって発⽣する胸腔の陰圧
#13.
P0.1 P0.1>-5cmH2Oで管理 Bertoni M, et al. Crit Care. 2020 Mar 24;24(1):106. ⾃発の吸気開始0.1秒間の気道内圧変化 強い吸気では絶対値が⼤きくなる
#14.
ΔPocc ΔPocc>-15cmH2Oで管理 ΔPocc Bertoni M, et al. Crit Care. 2019 Nov 6;23(1):346. 呼気ポーズをした時に発⽣した⾃発吸気による気道内圧変化 ΔPesと同様に吸気努⼒で変化する ΔPes = ΔPocc*0.66 ※呼気ポーズとは呼気終末時に気道を閉塞状態にすること ΔPOCCは1呼吸通して気道を閉塞して計測する
#15.
PMI(Pmus index) Ppeak Pplat driving pressure Kyogoku M, et al. Crit Care Med. 2021 Mar 1;49(3):517-526. ⾃発呼吸下(PSV)で吸気ポーズをかけた時に ぽこっと気道内圧が上がった場合のその圧格差。 ⾒えなかった胸腔内陰圧が顕在化する。 PMI< 6cmH2Oで管理 ※吸気ポーズとは吸気終末時に気道を閉塞状態にすること
#16.
P-SILIの評価 ① 胸腔の強い陰圧 ⇨ Pendelluftと陰圧性肺⽔腫 ② 横隔膜への過度な負担 ⇨ 横隔膜疲労と傷害 ③ ⾼い経肺圧 ⇨ 肺胞の⾼いストレインとストレス
#17.
Pmus (呼吸筋による圧⼒) Pmus Pmus = Pcw(胸壁の弾性による胸腔内圧) + ΔPesの絶対値 Pcw = 1回換気量/Ccw(胸郭コンプライアンス) Ccw = 1回換気量/⾷道内圧変化(筋弛緩中に測定) Pmus = -0.74*ΔPoccで近似できる
#18.
ΔPes と Pmus 普通はΔPes ≒ Pmus 肥満による腹圧上昇や胸部熱傷で 胸郭コンプライアンスが低下すると ΔPes << Pmus Pmus<10~15cmH2Oで管理 ΔPocc>-17cmH2Oで管理
#19.
ΔPesが低くてもPmusが⾼いと 横隔膜の仕事量が増えすぎて横隔膜機能障害を来す 横隔膜機能障害は重⼤な有害事象につながる 不適切な ⼈⼯呼吸器管理 横隔膜障害 異常な吸気努⼒ 横隔膜衰弱 ⻑期の ⼈⼯呼吸器管理 死亡や ⻑期⾝体障害 ・遷延する呼吸筋衰弱 ・せん妄や認知機能低下 主な流れ(仮説) 相関が報告されているもの Goligher EC, et al. Lancet Respir Med. 2019 Jan;7(1):90-98.
#20.
P-SILIの評価 ① 胸腔の強い陰圧 ⇨ Pendelluftと陰圧性肺⽔腫 ② 横隔膜への過度な負担 ⇨ 横隔膜疲労と傷害 ③ ⾼い経肺圧 ⇨ 肺胞の⾼いストレインとストレス
#21.
静的肺胞経肺圧の測定︓エラスタンス法 PSVで吸気ポーズをする。 ①吸気終末時の気道内圧からΔPを計算 ②吸気終末時の⾷道内圧からΔPを計算 ΔPL(Δ経肺圧)=①-② Plt-L(経肺圧のプラトー圧)=気道内圧のプラトー圧*ΔPL/① 「⽬標値」 ΔPL<12cmH2O Plt-L<20cmH2O
#22.
P-SILIの圧管理における⽬標値まとめ ①胸腔の強い陰圧 ⇨ ΔPes>-10cmH2O, P0.1>-5cmH2O, ΔPocc>-15cmH2O, PMI<6cmH2O ②横隔膜への過度な負担 ⇨ Pmus<13cmH2O, ΔPocc>-17cmH2O ③⾼い経肺圧 ⇨ エラスタンス法のΔPL<12cmH2O Plt-L<20cmH2O
#23.
⽬次 ・P-SILIの機序 ・P-SILIの評価 ・P-SILIへの対応
#24.
P-SILIへの対応 ①PEEPを⾼める ⇨ 吸気努⼒が減る ②筋弛緩をかける ③部分的筋弛緩(症例報告レベル)
#25.
PEEP(呼気終末陽圧)と吸気努⼒ Laghi F, et al. J Appl Physiol (1985). 1996 May;80(5):1731-42. 肺容量が⼤きくなるほど、ΔPesが直線的に減少 PEEPを付加することで呼気終末肺容量が増えて 呼吸努⼒は減少する
#26.
COVID-19の治療はARDSに準ずる 呼吸器設定を調整 改善なし 鎮静を深める 改善なし PaO2/FiO2 >150 肺保護管理 可能 筋弛緩薬不要 ≦150 腹臥位療法 不可 ⽅針の推奨なし 筋弛緩はリスク・ベネフィットを踏まえ 個別に判断する 肺保護管理が維持できない and/or ⾼い呼吸器圧設定 はい 筋弛緩薬使⽤を 推奨 いいえ はい PaO2/FiO2 ≦120 いいえ ※肺保護管理とは以下の満たす⼈⼯呼吸器設定を指す ⽅針の推奨なし ① 1回換気量 6ml/kg/理想体重 筋弛緩はリスク・ベネフィットを踏まえ ② ⾼いPEEP 個別に判断する ③ 気道内圧のプラトー圧が30cmH2O以下の管理 Hraiech S, et al. Intensive Care Med. 2020 Dec;46(12):2357-2372.
#27.
COVID-19の肺保護管理の私⾒ 最近のCOVID-19の症例経験より ① 前⾴のフローに則り 筋弛緩の使⽤を検討 (挿管から48時間はルーチンでも良いかも) ② 48時間前後で⼀旦筋弛緩中⽌ 前⾴のフローに則り 筋弛緩の再開検討 鎮静・鎮痛剤の増量のみで吸気努⼒を抑えられないケース が多いため筋弛緩再開の閾値は低くても良い ③ 筋弛緩再開後の終了時期は P/F⽐>150 and CO2の吐けが良くなった or 症状固定が予想される
#28.
ICU-acquired weakness 筋弛緩薬は神経筋障害のリスク増加と関連なし • ⾼⽤量コルチコステロイドの併⽤を制限する • ⾼⾎糖を避ける • 正常なpHと電解質を維持する Intensive Care Med (2020) 46:2357–2372 加えて、筋弛緩薬使⽤はVAP発⽣とも関連なし むしろ、 ステロイドが上記副作⽤を引き起こしている可能性あり ステロイドは最低量・最低期間投与するべき
#29.
Take Home Message ・COVID-19は死腔換気が増加し 分時換気量上昇 吸気努⼒増加 P-SILI出現 ・吸気努⼒の評価にはP0.1の他に 呼気ポーズで測定するΔPocc 吸気ポーズで測定するPMIなどがある ・COVID-19は吸気努⼒の抑制が困難なことがある 筋弛緩薬の⻑期投与も考慮 筋弛緩薬使⽤以上にステロイド使⽤の弊害は⼤きい