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寺脇博之

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CKDの合併症抑制におけるXOR(キサンチン酸化還元酵素)阻害の可能性

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寺脇博之

帝京大学ちば総合医療センター

内容

XOR阻害薬(e.g.アロプリノール)の投与は、おそらくは活性酸素産生の抑制ーすなわちXOの阻害ーを介して、臓器障害のリスクを低減することが期待されます。

ただしこのような予後改善効果は、数値変化を伴わない「目に見えない」ものであるので、今後RCTなどを通じて検証される必要があります。

①Framingham研究

②腎機能低下と総死亡・CVD

③CKD患者へのXOR阻害薬投与とCVD発症:RCT

④キサンチン酸化還元酵素(XOR:xanthine oxidoreductase)

⑤Gonryo study(イベント発症)

⑥Gonryo study(イベント抑制)

⑦透析患者におけるXOR阻害薬の影響

⑧XORの活性変換:XDHとXO

⑨腎機能低下(CKD)と酸化ストレス

⑩血漿XO/XOR比と酸化ストレス

⑪「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」より

⑫まとめ

本スライドは、2020年10月14日配信のAntaa News「Short Lecture」で使用したスライドです。

▼配信アーカイブはこちらよりご覧いただけます。

https://www.facebook.com/antaa/videos/394742321544494

本スライドの対象者

専門医

テキスト全文

  • 1.

    帝京大学ちば総合医療センター 第三内科(腎臓内科) 寺脇博之 Lecture on ANTAA 帝京大学ちば総合医療センターを空から望む CKDの合併症抑制における XOR(キサンチン酸化還元酵素)阻害の可能性

  • 2.

    Framingham研究 米国公衆衛生局が主導、 1948年、マサチューセッツ州フラミンガム市(人口28,000人)で開始 研究目的:心血管合併症に先行する因子の同定 主たる解析法として、多変量解析が導入された (Truett J et al. J Chronic Dis 1967) 同定された6つの危険因子 (risk factors) ①高血圧 ②脂質異常症 ③肥満 ④糖尿病 ⑤喫煙 ⑥ストレス 新しい危険因子「慢性腎臓病=CKD」

  • 3.

    0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 60< 45-60 30-45 15-30 <15 総死亡 ref. Go AS, et al.   New Engl J Med 2004 HR eGFR (ml/min) 5.9 1.2 1.8 3.2 サンフランシスコ在住 一般地域住民(約112万人) 腎機能低下と総死亡・CVD 東北地方(岩手県大迫町)在住 一般地域住民(約1万人) Nakayama, Metoki, Terawaki, et al. Nephrol Dial Transplant 2007

  • 4.

    CKD患者へのXOR阻害薬投与とCVD発症:RCT Goicoechea M, et al. Clin J Am Soc Nephrol 5: 1388, 2010 ・CKD患者に対してXOR阻害薬であるアロプリノールを投与した場合の効果を、プラセボを対象として検討した。 ・アロプリノール投与群で、プラセボ投与群と比較して心血管系疾患の発症が有意に抑制された。

  • 5.

     XDH(脱水素酵素), XO(酸化酵素)の総称  XOは哺乳類のみが有している。  細菌よりヒトまで存在し、遺伝子の相同性は高い ヒポキサンチン キサンチン 尿酸 O2 XDH XO O2 高尿酸血症と痛風 2011 vol 19 No2 161(69) より改変 Ichida K et al, Int. J. Mol. Sci. 2012, 13, 15475-15495. + + キサンチン酸化還元酵素(XOR : xanthine oxidoreductase)

  • 6.

    Gonryo study(イベント発症) Time Day Event - free survival Alloprinol (+) Alloprinol (-) Chi-Square=2.2958 P = 0.1297 (Log-rank test) Alloprinol (+) Alloprinol (-) -log (Event - free survival) Chi-Square=2.4936 P = 0.1143 (-2Log(LR) test) 統計学的な有意差はなかったものの、アロプリノール内服群におけるイベント発症は、非内服群よりも少なかった。 Terawaki H, et al: Clin Exp Nephrol 2013;17(4):549-553.

  • 7.

    ・アロプリノール内服のイベント発症に関するハザード比は、0.342~0.392であった。 ・アロプリノールのCVD発症への抑制効果が示唆された。 ・尿酸値自体のイベント発症への有意な寄与は確認されなかった。 Terawaki H, et al: Clin Exp Nephrol 2013;17(4):549-553. Gonryo study(イベント抑制)

  • 8.

    透析患者におけるXOR阻害薬の影響 Ishii T, et al. : Sci Rep. 7(1) : 14004, 2017 ベースラインにおける患者背景と全死亡の関係(Coxハザード解析)

  • 9.

    なお、周辺構造モデルを用いた推定では、全死亡に関するリスクは 点推定HR 0.24 (95%CI; 0.15-0.38)となる。 Ishii T, et al. : Sci Rep. 7(1) : 14004, 2017 透析患者におけるXOR阻害薬の影響 ベースラインにおける患者背景と全死亡の関係(Coxハザード解析)

  • 10.

    XORの活性変換:XDHとXO XDHが触媒する反応: ①ヒポキサンチン+H2O+NAD+↔キサンチン+NADH+H+ ②キサンチン+H2O+NAD+ ↔尿酸+NADH+H+ XOが触媒する反応 : ①ヒポキサンチン+O2↔キサンチン+H2O2+O2 ・- ②キサンチン+O2 ↔尿酸+H2O2 +O2 ・- ・哺乳類以外の生物では、キサンチンデヒドロゲナーゼ (XDH) としての活性しか有しない。 ・ところが、唯一哺乳類においては、XDHのチオール(-SH)基が分子内酸化を受けて可逆的に(一部はタンパク分解などの翻訳後修飾により不可逆的に)、XO(キサンチンオキシダーゼ)へ変換する。 Nishino T: J Biochem 1994;116:1-6. Sakuma S, et al: Biol Pharm Bull 2008;31:1013-6.

  • 11.

    腎機能低下(CKD)と酸化ストレス Terawaki H, et al. Kidney Int 2004: 66;1988 透析導入前CKDにおける検討。 腎機能低下と比例して、 酸化ストレスは亢進する。 維持血液透析中CKDにおける検討。 酸化ストレスが亢進している症例で、 2年後のCVD死亡リスクは高かった。 Odds ratio Post-HD ƒ(HMA) 25.6 (2.5-262.8) 1 (ref.) Terawaki H, et al. Ther Apher Dial 2010;14:465 酸化ストレスの指標として「アルブミン酸化還元比」を用いた検討。

  • 12.

    血漿XO/XOR比と酸化ストレス R=0.703 P=0.0058 血漿XO/XOR比と酸化型アルブミンf(HNA-1) との間に、有意な正の相関が確認された。 Terawaki H, et al. Oxidative Med Cell Longev 2018 Terawaki H, et al. J Clin Exp Nephrol 2017 血漿XO/XOR比は、腎機能が低くなるほど 高値を示した。

  • 13.

    日本痛風核酸代謝学会より、これまでに第1版が2002年に、第2版が2010年に上梓されており、2018年末に第3版が上梓された。 今回の第3版では以下の7つのクリニカルクエスチョン(CQ)が取り上げられ、それぞれの益と害に関するアウトカムが提示された。 CQ1. 急性痛風性関節炎の発作を起こしている患者において、ステロイド・NSAIDs・コルヒチンは無投薬に比して推奨できるか? CQ2. 腎障害を有する高尿酸血症の患者において尿酸降下薬は無投薬に比して推奨できるか? CQ3. 高尿酸血症合併高血圧患者において、尿酸コントロール薬は無投薬に比して推奨されるか? CQ4. 高尿酸血症合併高血圧患者において、薬物療法により血清尿酸値6 mg/dL以下にすることは血清尿酸値に目標値を設けない場合に比して推奨できるか? CQ5. 高尿酸血症合併心不全患者において尿酸降下薬は無投薬に比して推奨できるか? CQ6. 痛風発作が頻発する患者において、コルヒチンカバー(後述)を長期間使用することは短期間使用することに比して推奨できるか? CQ7. 無症候性高尿酸血症の患者において、食事指導は食事指導をしない場合に比して推奨できるか? 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」より

  • 14.

    日本痛風核酸代謝学会より、これまでに第1版が2002年に、第2版が2010年に上梓されており、2018年末に第3版が上梓された。 今回の第3版では以下の7つのクリニカルクエスチョン(CQ)が取り上げられ、それぞれの益と害に関するアウトカムが提示された。 CQ1. 急性痛風性関節炎の発作を起こしている患者において、ステロイド・NSAIDs・コルヒチンは無投薬に比して推奨できるか? CQ2. 腎障害を有する高尿酸血症の患者において尿酸降下薬は無投薬に比して推奨できるか? CQ3. 高尿酸血症合併高血圧患者において、尿酸コントロール薬は無投薬に比して推奨されるか? CQ4. 高尿酸血症合併高血圧患者において、薬物療法により血清尿酸値6 mg/dL以下にすることは血清尿酸値に目標値を設けない場合に比して推奨できるか? CQ5. 高尿酸血症合併心不全患者において尿酸降下薬は無投薬に比して推奨できるか? CQ6. 痛風発作が頻発する患者において、コルヒチンカバー(後述)を長期間使用することは短期間使用することに比して推奨できるか? CQ7. 無症候性高尿酸血症の患者において、食事指導は食事指導をしない場合に比して推奨できるか? 腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して、腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることを条件つきで推奨する。 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」より

  • 15.

    XOR阻害薬の投与は、おそらくは活性酸素産生の抑制ーすなわちXOの阻害ーを介して、臓器障害のリスクを低減することが期待される。 ただしこのような予後改善効果は、数値変化を伴わない「目に見えない」ものであるので、今後RCTなどを通じて検証される必要がある。 まとめ:CKDの合併症抑制における XOR(キサンチン酸化還元酵素)阻害の可能性

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