#4.
「O-26が陽性だった」って無症状の人が来たけど、 調べたら「病原性大腸菌」って書いていました。 どのような対応をしたら良いのでしょうか? 「O-ナントカ」は大腸菌の表面のO抗原で分類される血清型の ことじゃ。大腸菌が人に病原性をもたらす因子の代表格である 「ベロ毒素」を産生する頻度が血清型によって違うんじゃが、 特に頻度の高い血清型のいくつかは食中毒患者の便培養や調理 業務従事者の定期検便検査でスクリーニングされているんじゃ。 O-26は、O-157と同じでベロ毒素を産生する頻度が高い血清型 の一つじゃが、絶対ベロ毒素を出すというわけでもないから、 毒素産生の検査を行わないといけないゾ。ちなみにH抗原と言
#5.
背景知識:病原性大腸菌とは • 健常な方でも大腸菌は腸管内に常在している。 • 大腸菌の中に腸管粘膜へ付着・侵入したり毒素を出す能力を持ち、下痢などの 症状を引き起こす(病原性がある)株がある。この場合のようにヒトに病原性を 示す能力のある大腸菌を病原性大腸菌(広義)と呼ぶ。 • 病原性によって表現型は様々であり、以下の様に分類されている。 病原因子の例 判定方法の例 腸管病原性大腸菌 EPEC 線毛(BFP)形成、接着性 eae遺伝子、EAFプラスミド 腸管組織侵入性大腸菌 EIEC 細胞侵入性、病原性プラスミド IpaH遺伝子、invE遺伝子 毒素原生大腸菌 ETEC エンテロトキシン(LT/ST) LT、ST、CFA 腸管出血性大腸菌 EHEC ベロ毒素(VT1、VT2) VT1/2の検出、VT1/2遺伝子 腸管凝集付着性大腸菌 EAggEC EAST1、aggR aggR遺伝子、astA遺伝子
#6.
イメージ 「病原性大腸菌」 ■感染している大腸菌 腸管感染を起こす能力を持つ (広い意味では病原性大腸菌) (何らかの病原因子がある) 骨軟部 組織感染 ・O抗原でスクリーニングされる ・病原因子によって病態の表現型 が異なり、分類がある 尿路感染 腸管感染 食中毒 の病歴 ベロ毒素+ ベロ毒素を産生する大腸菌 (VTEC) 腸管出血性大腸菌(EHEC) 感染症 患者(確定例)として、 感染症法3類届け出が必要 腸管出血性大腸菌(EHEC) 感染症 無症状保菌者として、 無症状保菌者 ■常在している大腸菌 感染症法3類届け出が必要 食中毒として、食品衛生法上の 届け出が必要
#7.
実際の対応の概要 特定の血清型の大腸菌を検出 例:特定の血清型の 大腸菌が発色して 発育する選択培地 例:O-157、O-26、O-111、O-121... 病原因子の確認検査を行う 例:ベロ毒素の免疫学的 な検出キット 例:VT1/2(ベロ毒素)、eae遺伝子、aggR遺伝子 LT(易熱性エンテロトキシン)/ ST(耐熱性~) 例:PCRで、病原因子 産生遺伝子を検出 など ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)と判定 例:毒素確認検査、毒素産生遺伝子検出 保健所へ届け出( 感染症法) ※腸管出血性大腸菌感染症(3類)、 患者(確定例)または無症状病原体保有者として
#8.
※ ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)と判定された場合 腸管出血性大腸菌感染症として届け出した場合 ① 都道府県知事等が飲食物の製造、販売、調整または取り扱いの 際に飲食物に直接接触する業務への就業を制限する(感染症法) ② 感染の恐れがないと認められるまで出席停止(学校保健法) ③ 集団食中毒が疑われる案件なら業務停止など(食品衛生法) ■ 医療機関へ求められる可能性のあること ・治療介入の必要性の判断(臨床判断)★ ① 就業制限解除のための陰性化確認のための検査(感染症法)★ ② 感染の恐れがないと認める判断(学校保健法) ③ 食中毒の例なら、届け出の追加(食品衛生法)
#9.
※ ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)と判定された場合 ★ 治療介入の必要性の判断 治療介入の判断は、現場に任せられる。 有症状者 ・一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き https://www.mhlw.go.jp/www1/o-157/manual.html ・溶血性尿毒症症候群(HUS)の診断・治療ガイドライン https://jsn.or.jp/academicinfo/hus2013.php 治療介入(除菌)の判断は、現場に任せられる。 専門家でも意見は分かれるが、考え方の例として; ・無症状だが、抗菌薬治療で陰性化が早くなり早期に就業制限を 無症状保菌者 解除することを期待する ・抗菌薬治療は行わず、手洗いの励行を行う ・保健所などと相談し、陰性化確認まで直接食品に触れない業務へ 一時的に配置転換してもらう
#10.
※ ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)と判定された場合 ★ 陰性化確認の検査 • 調理業務従事者などでは「病原体を保有しなくなるまで」就業制限 を科される場合があるため、陰性化確認を依頼されることがある。 • 基本的には保健所等からの指示に従うと良い。 参考:一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌感染症治療の手引き(改訂版) 有症状者 24時間あけた、連続2回の検便検査で陰性 ※抗菌薬治療をした場合、以下の連続2回 ①服薬中、②服薬中止後48時間以上経過した時点 無症状保菌者 直近1回の検便検査で病原体が検出されない ※ 陰性化確認のための検査方法は専門的であり、各地域の検査機関に委ねた方が良い。 ※ 陰性化確認の便検査の実施者、費用負担等については保健所との擦り合わせを推奨
#11.
追加検査で、ベロ毒素産生遺伝子は陰性だったけど、 他のナントカ遺伝子が陽性っていわれて、EPEC だって判定されました。どうしたら良いですか? ベロ毒素を産生していなければ、特に届け出をしたり、 除菌治療をしたり、就業に制限をかけたりするなどの 特別な対応は必要ないんじゃ。 調理業務従事者なら「他の職員と区別をする必要は全く ないが」と前置きしつつ、例えば「就業時にはこまめで、 正しい方法での手洗いを徹底すると良い」など常識的な 範囲の指導をしてあげると安心するかもしれないゾ。ちな
#12.
参考症例①:52歳女性 ・関節リウマチで生物学的製剤を使用している ・バーベキューで生に近い肉を食べた後に激しい下痢、血便、嘔吐がある ・一緒に喫食した友人も、軽微だが同様な症状がある ・便培養検査で大腸菌O-121が検出され、PCR検査でVT1陽性だった。 ■体内・体表に常在する大腸菌 ■人に感染している状態の大腸菌 結論 腸管出血性大腸菌(EHEC) の患者確定例、食中毒疑い 腸管感染 食中毒 ベロ毒素+ 対応 ・3類感染症法として届け出 ・食中毒疑いで保健所へ相談 ・治療介入を検討 無症状保菌者
#13.
参考症例②:39歳男性 病院栄養科の職員(調理師) ・定期的な検便検査でO-111が陽性と判定されたが、無症状である。 ・追加検査でVT1/2は陰性、ST/LT陰性、eae遺伝子陽性 ・総合的に同菌は腸管病原性大腸菌(EPEC)と判定された。 ■体内・体表に常在する大腸菌 ■人に感染している状態の大腸菌 結論 腸管病原性大腸菌(EPEC) 対応 届け出など必要ない。 の無症状保菌者 腸管感染 食中毒 ベロ毒素+ 無症状保菌者 手洗い励行を指導する。 差別的な対応が 行われないように配慮を!