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腹診で読む漢方フィジカル:胸脇苦満から振水音までの実践ガイド

投稿者プロフィール
中田佳延

聖マリアンナ医科大学病院

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19

投稿した先生からのメッセージ

腹診は証を把握するうえで欠かせない診察ですが、それに加えて、

患者さんとのコミュニケーションを通じて信頼関係を築くきっかけにもなります。

このスライドでは、細かい理論は脇に置き、まずは基本的に診察すべき部位を整理しました。

手順さえ覚えてしまえば、あとは実践あるのみです。

私自身は、四診をバランスよく考察して漢方薬を選ぶことを理想としています。

しかし、患者さんの症状が多岐にわたり、どこから手をつけてよいか迷う場面では、

ときに寒熱の判断と腹診所見に頼ってしまうこともあります。

それでも意外とうまくいくことがあり、腹診の力を実感する瞬間でもあります。

腹診は、覚えておいて決して損のない診察技術だと思います。

概要

本スライドは、私が日常診療で行っている腹診の手順と、漢方フィジカルとしての所見の読み方をまとめたものです。

腹診は、四診の中でも“切診”の中心であり、

胸脇苦満・心下痞鞕・臍上悸/臍下悸・瘀血点・心下振水音など、

漢方診療に特有の身体所見を得るための重要な技術です。

本資料では、

腹診の順番・触り方のコツ・所見の判定基準・所見から想起すべき生薬・処方・若手がつまずきやすいポイント

を、現場での経験をもとに整理しました。

「腹診しながら、生薬が思い浮かぶ」その状態を目指すための実践的ガイドとして、臨床の参考にしていただければ幸いです。

※本スライドは私個人の診察手順と考え方に基づくものであり、標準化された唯一の方法ではありません。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

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テキスト全文

腹診で読む漢方フィジカルの概要と四診の重要性

#1.

腹診で読む漢方フィジカル: 胸脇苦満から振水音までの実践ガイド 聖マリアンナ医科大学 総合診療内科 中田佳延

#2.

漢方フィジカル • 漢方の診察方法 【四診】 望診・問診・聞診・切診 (漢方用語) ↓ (いわゆる西洋医学的に) • 望診:視診 体格、顔色、歩き方、舌診を含む • 問診:問診 東西問わず、最も大切!! • 聞診:聴診など 患者の発する声や音を聞く 臭いをかぐ (現代では、臭いをかぐ行為は微妙です・・・私はやりません。) • 切診:触診 脈診と腹診。その他、下腿浮腫など 四診で虚実・寒熱・表裏・気血水などを把握する 2

腹診の手順と心得について

#3.

腹診の順番 何回か挑戦して、自分の診察パターンを習得する。 1. 腹の真ん中に手を置き、次にざっと腹の全体を触れ、 腹力、冷えている部位、発汗を確認 2. 上腹部:胸脇苦満・心下痞(鞕)・心下悸 3. 臍の高さ:腹直筋・臍上悸・臍下悸 4. 下腹部:臍下不仁・瘀血点・鼠径の圧痛点 5. 再び上腹部:心下振水音 1~4は足を伸ばして診察 5は足を曲げて診察

#4.

腹診心得 1. 始める前に、腹を広範囲に触ることを説明しておく。 2. 下腹部や鼠径部を触診するときには、「おなかの下の方を触 ります」、「足の付け根を触ります」といって、相手の反応を 確かめる。拒否の場合には、診察を行わない。 3. ぐいぐい押さずに、体表面を確かめるつもりで。 →所見を作らないこと。 4. 振水音を診るときは、スナップを効かせて、いわゆる“打診” のたたき方で、直接に上腹部を広範囲にわたってたたく。 5. 腹診は大事だが、問診がもっとも大事。問診で絞込み、腹診で 確かめる。(西洋医学の検査のようなもの?)

上腹部の診察:胸脇苦満と心下痞鞕

#5.

腹力 AIに描いてもらったら ちょっとゴッツすぎた!! 腹力5 腹力3 腹力 5段階評価でカルテに記載しています 腹力1

#6.

上腹部:胸脇苦満 触診時に、患者の違和感の訴えや、 手に抵抗を感じたら陽性 ✓ 柴胡が入った漢方薬を想起 腹直筋が張っている場合は、心窩部に近いところは 影響を受けてわかりにくくなるので、肋弓下を広範 囲に触る。 肋弓下と、少し中腹に近い部分を触り比べて、 抵抗の有無を比較してみてもよい。

#7.

柴胡を含むエキス剤の例 乙字湯 十味敗毒湯 大柴胡湯 小柴胡湯 柴胡桂枝湯 柴胡桂枝乾姜湯 柴胡加竜骨牡蛎湯 加味逍遥散 四逆散 補中益気湯 荊芥連翹湯 抑肝散 柴陥湯 柴胡清肝湯 抑肝散加陳皮半夏 神秘湯 竹茹温胆湯 滋陰至宝湯 柴朴湯 小柴胡湯加桔梗石膏 柴苓湯 加味帰脾湯 柴胡と名前の付く漢方薬だけではないことに注意

#8.

上腹部:心下痞鞕 違和感は痞 抵抗は鞕 患者が自発的な違和感や、 触診時の違和感を感じた場合。 また、触診時に手に抵抗を感じたら陽性 ✓ (虚)人参が入った漢方薬を想起 人参湯・六君子湯・補中益気湯など ✓ (実)黄連・黄芩が入った漢方薬を想起 半夏瀉心湯・三黄瀉心湯・黄連解毒湯など おまけ・・・ ↓エキスで出すなら 心下満微痛:桂枝去桂加茯苓朮湯(真武湯や桂枝加苓朮附湯が近いか?) 心下堅:桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯(桂枝湯+麻黄附子細辛湯) 心下痞堅(肝うっ血か?):木防已湯

臍上下の診察:臍上悸・臍下悸と腹直筋の攣急

#9.

臍上下:臍上悸・臍下悸 腹部大動脈の拍動を蝕知 臍上悸 ✓ 水毒なら→茯苓 ✓ 気逆なら→桂枝(および甘草) ✓ 交感神経緊張状態なら→竜骨牡蛎 いうまでもないが、AAAが疑われたら即検査

#10.

臍上下:腹直筋の攣急 腹直筋の両側のヘリを感じること ✓ 芍薬が入った漢方薬を想起 桂枝加芍薬湯・小建中湯・当帰芍薬散など すごく張っている人は、触った瞬間板のようになっている。 診察に慣れてくると、顔と体格を見た瞬間に、 張っていそうだと予想できる。

下腹部の診察:臍下不仁・瘀血点・鼠径の圧痛点

#11.

下腹部:臍下不仁 臍上よりフニャフニャか、皮膚の知覚低下 ✓ 補腎剤を想起 六味丸・八味(地黄)丸・牛車腎気丸など もともとは、下腹の知覚低下を臍下不仁としていた。 別名、少腹不仁とも言う。

#12.

下腹部:瘀血点 多くは臍下 触診時に患者の違和感や痛みの訴えや、 手に抵抗を感じたら陽性 ✓ 駆瘀血薬を想起 当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・桃核承気湯など 簡易式では、盲腸の圧痛点のような感じで、4か所診る。

#13.

下腹部:瘀血点 触診時に患者の違和感や痛みの訴えや、 手に抵抗を感じたら陽性 ✓ 駆瘀血薬を想起 桂枝茯苓丸・桃核承気湯など このように、馬蹄状に瘀血点がみられることもある。 瘀血点は、治療によって消失しやすい。

#14.

下腹部:鼠径の圧痛点 鼠径靱帯の上を押してみる。苦痛を訴えれば陽性。 両側やる。 ウウッといって、膝を曲げる人もいる。 ✓ 当帰四逆加呉茱萸生姜湯を想起 外気での冷えによって、腹痛や頭痛、その他のトラブル が生じるようであれば、上記処方。

心下振水音の診察と腹診の目標

#15.

上腹部:心下振水音 たたく前に「軽くたたきますよ」と声をかける。 スナップを効かせて、 いわゆる“打診”のたたき方で、 直接に(押さえる手は不要) 上腹部を広範囲にわたってたたく。 空気と水が混ざる音がしたら陽性。 ✓ 半夏・茯苓・朮・生姜などが入った 利水剤を想起 真武湯・五苓散・小半夏加茯苓湯・当帰芍薬散など 普段、おなかから水の音がしますかと聞いてもよい。 診察は、膝を曲げてもらう。 振水音を出せるようになったら、上達した証拠!!

#16.

目標:腹診しながら、生薬を思い浮かべられる。 朗報:腹診は、マスターしやすい。 本スライドは私個人の診察手順と考え方に基づくものであり、 標準化された唯一の方法ではありません。 臨床の参考としてご活用ください。

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