#4.
精神科診察とは? • 医師患者関係の中、介入や治療のため、機序がよく分から ない「概念としての心」とある程度分かる「臓器としての脳」か らなる「こころ」の問題に、自然科学や人文・社会科学的視点 に基づき、診断基準など限界のある仮説に基づき、限界のあ る診察医の心と技能の元、診断やアセスメントなど分析や解 釈(これも仮説)をして、診察医が了解可能な理解をしていく 過程の始まり。診察医の患者理解そのものが「治療」となる。 • 診察における主観と客観、限界をわきまえ、思慮深くおこな われてはじめて、「診断」という約束事は患者を助けるのに役 立つ。それでなければ、「診断」は、妥当性も客観性も信頼性 もない都合のいいただの道具に成り下がることになる
#5.
精神医学・精神科診療と面接 • 精神科医療では、精神医学や心理学の基準に基づき、患者 の症状を確かめて、診断や定式化など精神医学的評価をし て、評価に基づいて治療方針を立てる。つまり、全ての精神 科診療行為は、「症状の確認(面接)」に始まる。当然ながら 、症状の確認は、できるだけ正確に慎重に行う必要があり、 ある程度標準化された面接手順で患者とやりとりをして、症 状の確認、診断や治療の難易度の評価(アセスメント)を行う 必要がある(診察時間、患者の性質などにもよる) • また、面接は、病歴聴取や精神症状の確認・把握、診断だけ でなく、患者医師関係の確立、治療、社会参加の支援など様 々な役割をもつ。また、全ての医療に共通するが、面接は患 者医師関係の形成のうえで、最も重要な機会と場である
#6.
精神科面接 • 新患、再来、入院治療など全ての基本の場であり、 患者医師関係の確立、病歴聴取、精神症状・社会 適応・家族関係・社会習慣の把握、診断、治療、社 会参加の支援、社会機能の評価など様々な役割を 持つ。 • 患者・家族から直接的に情報を得る一方、患者への 説明や指導を行う双方向の交流を行う場である。 • 患者の持つ全ての背景を知りたいと言う健全な好 奇心が大切。
#7.
面接の様々な役割 • 面接は、病歴聴取、面接場面での精神症状の評価、状態像 の把握だけではなく、社会機能、社会適応、家族関係、生活 習慣、身体状況など様々な情報を言語的・非言語的に得る ことができ、双方向的にリアルタイムで確認できる貴重な機 会である。「患者の持つ全ての背景を知りたい」という健全な 好奇心が大切である • 面接は、患者から直接的に情報を得ることができる場である が、一方、医療者から患者への説明や指導を行う双方向的 なコミュニケーションの場でもある。 • 治療者の態度や面接環境など面接自体が、治療的な意味 合いを含む。
#8.
面接とは? • 「精神科的診察においては、面接を通して病歴の聴取も診察 も治療も行われる」(土居健郎) • 「生物学的精神医学を専攻するにしろ、心理・社会的アプロ ーチの方により多くの関心を抱くにしろ、精神科医である以 上、そのアイデンティティのかなり中核部分に『面接術』とで もいったものがあるだろう。面接をしない精神科医というのは 丁度、手術をしない外科医のようなものだろうから」(笠原嘉) • 精神科臨床において、面接という「場」で、精神科的能力(知 識・態度・技能など)をいかに発揮するかが、精神科医の面 目で有り、腕前と言える。
#9.
面接の目的と技法 • • • • • • • • • • • できるだけ早くラポール(意思の疎通)を形成すること 患者の主訴を特定する 主訴から暫定的な鑑別診断を作り上げる さらに焦点を絞った詳細な質問により、複雑多岐にわたる可能性から,除外でき る疾患は除外し,検討すべき疾患は検討する 質問に対する正確な回答を得るために、曖昧な返事を根強く追求する 患者の思考の連合に問題があるかどうか観察するために、患者になるべく自由 に話をさせる オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを組み合わせることの重要性 患者と診察者にとって困難で困惑する質問内容も,恐れず質問する 自殺念慮を聞き漏らさない インタビューの終盤、患者側に質問する機会を与える 初回インタビューを,信頼感と,可能であれば希望とを与えることで締めくくる DSM-5を使いこなすための臨床精神医学テキスト Donald W, Black他
#10.
面接の技法① • 可能であれば、面接はプライバシーの保たれる場所で行う。 Ex)自殺企図直後の患者に、その現場や救急室ではなく、静 かな場所で面接 • 面接者と患者の椅子の高さは同じにして、患者と面接者が 真正面で相対しない角度にする • ラポール確立を最優先し、面接者は、患者に対して、誠意、 共感、思いやりを示すようにする。 • 面接しながらのカルテ記載をあらかじめ患者に話しておく。カ ルテ記載しながらも、患者とのアイコンタクトを忘れない。 • 面接者も患者も出口のそばにいるようにする。面接者はいざ と言うとき逃げやすくなり、患者もイライラしたときに退席しや すくなる(場面による)
#11.
面接の技法② • 面接者は患者に自己紹介し、面接にどのくらいの時間がか かるのかを説明する。時間の制約での途中での面接中断が あり得ることをあらかじめ説明しておく。 • 面接の進み具合や時間配分の気を配る • 面接は柔軟な姿勢で行う。Ex)不安の強い患者にいきなり主 訴を聴くのではなく、まず、患者の背景から聴いていくように して、患者をリラックスさせる • 開かれた質問(open question)と閉じた質問(close question) を場合によって使い分ける
#12.
面接の手順 • 定期的通院、危機介入的状況など通常の社交会話、診断的 面接、治療的面接は区別される必要がある ①目標と手順がある ②通常、患者の「気持ちの処理」を優先させる ③引き続き、あるいは併行して、「問題の処理」も適切に行う ④面接を通じて、面接者の気持ちの統御を行う ⇒「精神科医は、不快な感情を我慢することでお金を頂く商売 である」 精神科診療のヒント 先輩が後輩に語る 太田敏男
#13.
健全な人の自分と他者への認知と振る舞い 1. 2. 3. 4. 5. 自分を少しだけ自分に有利に歪曲して認識している ただし、相手もそうであることを認識している 自分の中に相手に侵襲されたくないコアな部分がある 相手にもそういう部分があることを認識している 付き合いの中では、できれば少々相手に我慢してもらって でも自分を発揮したいと思っている 6. ただし、相手もそうしたいと思っている事を認識している 7. 実際は、周囲の状況や自分の状態や相手の反応に応じて 、少しでも多く自分を発揮しつつ、適切なところで手を打つ 8. 相手のコアな部分は侵襲しないように配慮する 精神科診療のヒント 先輩が後輩に語る 太田敏男
#14.
14
#15.
精神医学と精神科診療 • 精神医学では、患者の症状を確かめて、診断基準 に照らして診断をつけ、診断に基づいて治療方針を 立てる。つまり、すべての精神科診療行為は、「症 状の確認(面接)」に始まる。当然、症状の確認は、 できるだけ正確に行う必要がある。 • そのために、ある程度標準化された面接手順で患 者とやりとりをして、症状の確認、診断や治療の難 易度の評価を行う必要がある(診察時間、患者の性 質なども勘案の上で)
#16.
面接スキルは精神科医の基本スキル • そもそも、予診・本診の陪席は、精神科の研修施設 の医療体制や研修方針によっても異なるも、外来研 修(外来と入院に二分)において、歴史的に重要視 されてきました。 • いわゆる「予診取り」が精神科フレッシュマンの必須 の経験であり、スキルであり、デューティでした。 • ならない人達(臨床研修医など)が何故やらないと いけないのかと問われるとあれですが・・・、是非、 その中で、何か学びを見つけてほしいと思います
#17.
基本的考え方 • 「精神」という非物質を扱う精神科臨床で、定量的検 査での直接的定義は難しく、症状ベースの操作的 診断づけだけならともかく、縦断的な経過なしに、臨 床上、有用な診断・治療はできない。 • 不正確な情報は、診断・状況を混乱させるので、情 報源(本人・家族、警察関係者)、情報の根拠(陳述 、伝聞など)、情報の時期を明確にした「確実な情報 の把握と適切な記載」が大切。情報と判断、主観と 客観を混同せず、表情や態度、本人や家族の陳述 を所見として、ありのまま記述・記載する。
#18.
情報収集 • 目的 患者の現状把握、精神科診療での観察と面接、検査、治療などの項目を 選択・決定すること • 情報収集先 患者、家族、前医、他科医師、看護師、行政関係者など対象者に関わる全 ての関係者と場所 • 情報収集の素材 関係者からの聞き取りや観察(面接)の他に、紹介状、診療録、看護記録、 検査結果などから行う。記録など収集できる物を先に収集し、整理・理解し た上で不明な点を明確にして、診察・面接や記録見直しなど情報収集を心 掛けるべきである • 情報収集時の注意 得られた情報はそのままでは情報に過ぎない。情報は治療に有効に活用 してこそ意味がある。情報の有効活用には、その情報が何を意味するのか 、どのような意義があるのかを考えなければならない
#19.
情報の処理の手順 選別 分類 ・情報のな かで必要と 思われるも のを抜き出 す作業 ・選別した 資料をそ の後の分 類・作成に 便利なよう に区分して 整理する こと 評価 ・インテリジ ェンスとして の価値を決 定するため に、生材料で ある情報の 良し悪しを 検討するこ と 保管 ・分類された 情報を一定 の基準に従 って保管する こと
#20.
情報の評価 ~情報源と情報自体の評価~ • 情報の評価は、情報源と収集・伝達機関の信頼性( Reliability)の評価、情報自体の正確性(Viability)の評価に分 けられる。これらは互いに関係しているが、直性的な関連性 はない。 • 一般的には情報源の信頼性が高ければ、情報の信頼性は 高いが、情報源は意図的に情報に操作を加えることもあるし 、信頼性の高い情報源であっても中間段階におけるバイア スの介在により誤った情報に転嫁することも珍しくない • 安易に、情報源と情報とを関連づけることを回避して、情報 源の信頼性の評価と情報の正確性の評価は別々に行うこと が原則となっている 戦略的インテリジェンス入門 分析手法の手引き 上田篤盛
#21.
情報の評価基準 情報源の信頼性 A:信頼できる B:おおむね信頼できる C:かなり信頼できる D:必ずしも信頼できない E:信頼できない F:信頼性を判定できない 情報自体の正確性 1:真実である 2:多分真実である 3.おそらく真実である 4.真実か疑わしい 5.ありそうにない 6.誤報である 7.欺瞞である 8.真実かどうか判断できない ※情報を発信した情報源が信頼でき ※妥当性、一貫性、具体性、関連性 るかどうか、複数の情報源から裏付 という四つの尺度で評価 けが取れるかどうか 武器になる情報分析力 インテリジェンス実技マニュアル 上田篤盛
#22.
情報の正確性の評価基準 基準 意味 要領・留意事項 妥当性 そのようなこ とがありえる か? ・当初の報告受けにおいて「妥当性がない」ということで、その 報告を無視してはならない ・過去データを背景として審査するが、それのみに頼る偏見を 持って評価してはならない(新たな事象でも、だとうせいのある ものあり) 一貫性 情報の内容 ・「一貫性」は正確性の中で極めて重要な判断基準であること が首尾一貫し を認識する ているか? ・内容が矛盾する情報は「疑わしい」と判断。逆に「巧妙なうそ」 は真実よりも「一貫性」があるため注意を要する 具体性 必要な細大 漏れなくのべ られている か? ・具体的であればあるほど、正確性を高く評価する ・既知の情報、インテリジェンスと照合することにより正確性の 評価を向上させる 関連性 内容が肯定 的か、または 否定的か? ・他の情報源や収集期間による情報、インテリジェンスと比較し、 重要な部分が一致するかなどを判断する ・他の情報と相違した場合には、いずれが正解かを判断する 戦略的インテリジェンス入門 分析手法の手引き 上田篤盛
#23.
情報における信頼性のレベル カテゴリー 性格 得意分野 事実 疑う余地のない内容を持つが、1事1回限りのもの。積み重 ねによって、再現性を高める性質を持つ あらゆる分野・診断 の基礎となる情報 法則 実験・追試や、法則・理論の組み合わせにより、再現性が保 証された確定情報 自然科学 経験則 法則などの理論的裏付けは十分でないが、経験からして「こ 応用工学 うすればこうなる」ことがある程度の確度で推定される情報 推定 経験的な裏付けも十分ではないが、全体的なものの考え方 (事実・法則・経験則・その他)を総合的に考えて、妥当と思 われる情報 社会科学 意見 裏づけは十分でなくても、直観や意見を含む個人の思考の 結果として、他人に対して主張されうる情報 政治/思想 想像 事実の裏づけや論理の根拠がなくとも、個人の好みや発想 の自由により生まれうる情報 物語・ロマン 意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法 後正武 23
#24.
処理の流れ YES 緊急性 YES 情報 収集 選別 有用性 報告 NO 分類 評価 保管 NO 一時保管 YES 有用性 NO 排除 戦略的インテリジェンス入門 分析手法の手引き 上田篤盛
#25.
情報の分析・作成とその手順 ①問題を定義する ②問題の概観(イメージ) 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって) ③情報の収集・評価(証拠の分類・整理) ④分析(仮説の立案と証明) 仮説:現時点では実際に直接観察することのできない事件や情報について述べるもの 証拠:仮説を検討する際の情報(データ) 論証:情報の妥当性(Validaity)や信頼性(Reliability)に配慮して、情報を体系的に組み立て、 その情報と関連のある既得の情報またはインテリジェンスと照合しながら、その事実の内的・ 外的関連を明らかにしていくこと ⑤統合:分析された事実を組み合わせて、より大きな意義のあるインテリジ ェンスを作成すること ⑥解釈:統合されたインテリジェンスに関して、何が重要なのかと言うことを 解釈すること 戦略的インテリジェンス入門 分析手法の手引き 上田篤盛
#26.
分析(仮説の立案と証明) 証拠の仮説に対する妥当性・信頼性・重要性の証 証拠 証拠 論証 仮説 証拠 仮説を検討する際の情 報(データ)のこと 妥当な仮説の案出に不 可欠 論理的思考 の鎖 分析を経て結論 になり得るもの (診断・アセスメン ト) 戦略的インテリジェンス入門 分析手法の手引き 上田篤盛
#27.
インテリジェンスの存立3要件 当該要件が失われれば、もはやそれはインテ リジェンスとは言えないと言う要件 • 有用性(役に立つ):濃度 どんなに体系的で整理されている情報も使用者の意志決定に有用でなければ無価値 • 適時性(タイムリー):鮮度 使用者(国家、企業、個人など)の判断や行動の期限に間に合わないとどんな 優れた内容の情報も無価値なし。適時性の欠如は有用性の要件を喪失させる。 • 正確性(事実と合致、誤りなし):精度 基本的に 競合関係 誤った情報に基づく判断は、当然ながら誤った意志決定を招く ※収集・処理での時間と労力で適時性が失われ、適時性重視で時間厳守 を気にすると幅広い収集と突っ込んだ分析は出来ない。 「一方を重視すれば、一方が欠ける。状況に応じた折り合いが重要」 武器になる情報分析力 インテリジェンス実技マニュアル 上田篤盛
#28.
客観か主観か • 「教室に入ると一斉にみんなが馬鹿にしてきます」との本人 の陳述が、幻聴か被害妄想か、本当のいじめかは、客観的 情報がなければ判断不能である。 • 「小学校時代、いじめにあっていた」との記載は、親や教師の 客観的事実認識(別名:親や教師の主観的事実認識)、「小 学校時代、いじめにあっていたと(本人は)言う」との記載は、 患者の主観的事実(陳述)であり、実際は被害妄想かも知れ ないというニュアンスが表現できる。完全な客観はないが・・
#29.
「不安」を訴える時 「先日、飛行機に乗っていたら不安に襲われました」 ①フライト中にエンジントラブル時に不安になった場合 ②順調なフライトであったが不安を生じた場合 ①は多数の乗客が体験しただろう「想定内」の現象 ②「想定外」の反応 クライアントの主観的現実(不安)が客観的事実(発生 状況)で変化する=現実理解に事実の認識を要する。 →「どういう状況で不安になったか、もう少し詳しく話し て頂けますか?」と明確化を図る。頻度・症状・発生場 所など探索。
#30.
事実と事象の切り分け • 「客観的事実(事象)」と「主観的事実」の切り分けを意識 • 「事象」「憶測」「意見」の取り違え、主語(診察医、他スタッフ 、患者、家族、関係者など)に注意 EX)「(ギャンブルで使ったが)お金はまだ半分も残っている。(生活費には) 十分足りるので、まだ生活習慣を変えたくない」「お金が半分しか残ってない 。(足りないので)生活できないのでどうすればいいのでしょうか?」 • (空気を読みながら)深掘りする質問で主観的なものをそぎ 落とす Ex)「何故そう思ったのか?」「誰がそう言ったのか?」「そのときに起きていた 事象は何か?」 • 診察や診療録、家族・施設からの情報提供を読むときは、「 事象か?憶測か?意見か?」を判断しながら、聞いたり、読 む癖をつける。自分が記録を書くときも同様に。 入社1年目のビジネススキル大全 木部智之
#31.
メタモデル 話し手 聞き手 自分の記憶にある経験 を他人に話すとき、すべ てを言葉にしては会話が 成立せず、必ず、情報を 「省略」する。 話し手の言葉に、聞き手 の持っている記憶が反応 して、省略された部分を自 動的に補完している。 「昨日、歌舞伎町 で友人とお酒を飲 んだ」 記 憶 記 憶
#32.
精神科診察(面接) • 当事者は医療側(医師・看護師・PSWなど)と患者サイド(家 族、ケアマネ・介護者、保健師・行政関係者など含) • 患者から直接情報を得て、説明・指導・治療を行う場 • 患者医師関係の確立、精神症状・患者背景(社会適応、家 族関係、生活習慣など)の把握、診断、治療、社会参加の支 援など様々な役割を持つ。患者の持つ全ての背景を知りた いと思う健全な好奇心が必要(あくまで患者の同意の元)。 • 観察能力とコミュニケーション能力が必要(自分と相手の表 情、態度、姿勢、転移感情を意識) • 収集すべき情報:主訴、現病歴、既往歴、患者背景(家族歴 、家族問題、生育歴、生活習憤、生活行動)
#33.
初回面接 • 患者が非自発受診の際も、患者の話を聞く態度が大切。面 接拒否時は患者自身に家族や付添者からの聞き取りの許 可を得る(沈黙による拒否は無視か、肯定的に返す)。 • 精神科治療の必要が明確な時は、遵法しつつ、躊躇なく法 的手順に従う(強制入院や強制治療を含め)。 • 初回面接は、患者が最も苦しみ困惑している時間の共有で あり、力量を示し、患者や家族からの信頼や協力を得る好機 (うまくいった場合)でもある。 • 面接時間が限定される時は事前には時間・限界を提示する( 再面接を予約)。
#34.
初回面接の目的・目標 1. 治療関係(治療同盟)の構築 2. 患者についての精神科基礎資料(既往歴)の作成 3. 診断のための問診 4. 患者との治療計画の取り決め
#35.
予診実務 ①主訴 ②既往歴 ③生活歴 ④現症・症状 ⑤現病歴 ⑥家族歴 ⑦嗜好歴 ⑧その他
#36.
予診実務 ①主訴・・・一番困っていることは(真の受診理由は)? ②既往歴・・・身体疾患と内服薬 ③生活歴・・・生い立ちや学歴、職歴 ④現症・症状・・・どのような症状があるのか? ⑤現病歴・・・病気の時系列での流れ ⑥家族歴・・・家族構成や家族の病気 ⑦嗜好歴・・・煙草、酒、趣味など ⑧その他・・・性格
#37.
予診実務 ①主訴・・・(真の受診理由は)? 診断(検査)、治療(薬物療法、精神療法 、その他)、入院、福祉施設・サービス利用、他の医師、職場の勧め ②既往歴・・・通院・治療疾患、手術歴、現在処方、アレルギー(薬物・食品) ③生活歴・・・周産期、生育歴、定期健診のの状況、教育歴、職業歴、結婚・ 出産・離婚、子の独立、各種施設の利用 介護度 ④現症・症状・・・意識、認知(見当識、記憶)、表情、発話、思考(形式・内容 )、感情、態度・整容・服装・化粧、病識、病患 睡眠・食欲・便通・月経 ⑤現病歴・・・発症時期、発症様式、日内変動、随伴症状、増強減弱因子、 時系列 ⑥家族歴・・・遺伝負因の有無 家系図作成(生物学的要因・家族内力動) ⑦嗜好歴・・・煙草、酒、カフェイン含有飲料、違法薬物などの使用歴、趣味 ・部活動(職業以外の活動)、 ⑧その他・・・性格(本人談、家族談、性格変化の有無と時期)、信仰・宗教 など、受診の主体性(不本意な受診)
#38.
予診実務 ~相互関係と時系列~ 時系列 既往歴 生活歴 ①主訴 病前性格 現病歴 嗜好歴 その他 家族歴 現症 相 互 に 関 連 ・ 作 用 す る
#39.
⓪診察開始前 • 精神科診察は、採血や画像検査のような客観的な 物が乏しく、診断と治療の方向づけには、患者・家 族から様々な情報を、限られた時間の中で集める 必要がある。 • 万感の思いと不安の中、受診する患者・家族の話を 、一定の時間の中、過去の外傷体験など語れない ことがたくさんあるだろうことを心の片隅において、 診察する必要がある。
#40.
来院経路 家族に相談 何となくい つもと違う と思う 自分でな んとかバ ランスを 取り戻そう と努力す る。勉強、 体操、規 律ある生 活など 急性失調 失望と絶望 友人に相談 家庭のなか で看護しよ うとがんば る かかりつけ の医師と知 り合いの医 師に相談 民間治療師 や祈祷師に いく 精神科医 精神保健 相談員 さまざまな ヘルス・パ ーソネル 引きこもり 何かをきっかけにしてなんらかの外部介入 看護のための精神医学 第2版 中井久夫+山口直彦
#41.
初診診察(外来) 新患診察(面接)は精神科エッセンスの凝縮 ⚫ 精神疾患(広くは人のこころ)は、基本的に相手(患者・クライ アント)の言葉や態度を通じてしか病態を把握・理解できない ⇒問診がとにかく命!様々な知識と見方と発想の転換要 ⚫ 採血、画像・心理検査は基本的に除外診断・状況把握目的 で、診断を直接決定するものではない ⚫ 診断基準が変遷し、同時代に複数存在する(ICD、DSMなど) 精神科に来る(本人または家族の)決意に配慮 ⚫ 精神科に来ることはそれなりに覚悟が必要なこと ⇒患者・家族の訴えを真剣に聴く。
#42.
初診はとても忙しい • ①挨拶・自己紹介から始まり、②主訴・現病歴の聴取、③既 往歴・生活歴・家族歴・病前性格の把握、④現症評価、⑤( 確定・暫定)診断、⑥身体の診察をして、⑦(当面の)治療法 ・対応の検討・伝達、⑧処方の決定、⑨薬物に関する情報提 供(作用機序の解説、副作用の説明)は欠かせないが、⑩以 上を気持ちを汲む姿勢(共感)を保ちながら行う必要がある。 • 上記のようにてんこ盛りになることを避けがたいのが、初診 だが、これらを、限られた時間の中で、いかに気ぜわしくなら ないように勧めるか、どのようにすれば、尋問調で一方向性 の問診となるのを避けて、「安心や意欲、整理と発見」を生み 出せるか、時に脚本(事前情報)なしの出たとこ勝負を通して 、実のある診察と診断・見たてを実践しうるか、そこに治療者 各人の精神科医療への視座、実践のセンスや工夫が表れる
#43.
「臨床実践という動的構造」の私の認識論的図式 情報 価値観 家庭・職業状況 経済状況 (私には当初不明) 外部知識情報 能力・価値観 臨床判断 行動・治療計画 (理論・エビデンスなど) 他者 (患者/クライエント) ※実際は家族他複数 語り(信頼) 支援者 (援助者としての私) 観察 情報 交流(面接) 援助者としての私やクライエントや、 その周囲の状況の全てを観察する 「視点」「視るものであった視られる 対象とはならないもの」 現象が生起する場所 としての意識 理解 支援者 (視点としての私) 総合臨床心理学原論●サイエンスとアートの融合のために 斎藤清二 改変
#44.
受診の勧めを拒否する理由 • • • • • • • • • • 人前に出たくない。見知らぬ人と会うことに抵抗感がある 干渉されること、矯正されることがとにかく嫌で反発している 精神科受診という初めての体験に抵抗を感じている 精神科病院を怖いところのように思っている 精神病・精神疾患であると診断されるのが嫌(烙印を押されるという) 入院させられるのが嫌(診察を受けると入院となりそうなのが見えている ) (病気であると自覚していても)治るはずがないから、医療は無意味と考 えている 精神科病院へ出入りしているのを人に知られるのが嫌 病気でないと確信しているので、診療の必要を感じていない 精神疾患と診断されることで、軽蔑される、見下される、のけ者にされる、 主張が通らなくなるなど不利になるかも知れないと考える さすらいの統合失調症 対応・支援 北山大奈
#45.
⓪診察開始前 • 場所と時間の確保: 治療者・受診者の位置関係、部屋のレイアウトに配慮(理想は視線を変更 せず、時計を確認できる座席を確保)。患者と二人になる時は、原則はドア 開放を推奨(特に若い異性や易怒患者)。患者の興奮や危険の予想時(挙 動に注意)、単独面接を避け、男性看護師などの同席を要請。大部屋のベッ ドサイド面接は、他患に聞かれて良い内容に留める(深い話はできない)。 患者より早く到着(なるべく)。面接の中断を防ぐ。過度な予約を避ける。記 録と事務処理の時間も確保。 • 診療録・紹介状での確認: 診療録から得られる情報(氏名、年齢、住所など)、紹介状から得られる情 報(大まかな経過、診断、現症など)、コメディカルスタッフから得られる情報 (患者の態度、表情、自発性など、特に入院中)は重要。一方で先入観を持 ちすぎず、あくまで自分自身の確認・判断が大切(他人も自分も信じすぎず)
#46.
精神科面接 • 新患、再来、入院治療など全ての基本の場であり、 患者医師関係の確立、病歴聴取、精神症状・社会 適応・家族関係・社会習慣の把握、診断、治療、社 会参加の支援、社会機能の評価など様々な役割を 持つ。 • 患者・家族から直接的に情報を得る一方、患者への 説明や指導を行う双方向の交流を行う場である。 • 患者の持つ全ての背景を知りたいと言う健全な好 奇心が大切。
#47.
新患診察と診立て・診断 病状・経過の把握 ⚫ 「主訴」から鑑別診断を考え、聞くべきポイントを押さえて、情 報収集する(望診、問診、時に聞診や切診) ⚫ 「主訴」の次は、面接という場の中で、問診と患者の観察を 通じ、「病状」を把握し、状態像を考え、診断を考える ⚫ 操作的診断基準(DSM-5かICD-10)は「症状」の数で診断が 決まる:古典的診断でも操作的診断でも「病名」は症候群に すぎない(こういう症状・状態像なら何病という申し合わせ) ⚫ 横断面(現症)、縦断面(時間)で問診を進めていくと情報が まとまる。診断名ではなく、診断に至る情報やプロセスが大 切(何故そう診断したのか?を語れなければならない)
#48.
⓪診察開始前(視診・触診) • ドアを開けて椅子に座るまでの歩容で、脚の運びの左右差 から下肢の筋トーヌス、各関節のROMの状態が推定できる • 体幹の傾きや危うい感覚などの有無からバランス機能の状 態が推定できる。 • 下肢の筋の状態と比較すると、中枢系か筋力そのものの障 害から来るバランスの支障なのかは凡そ推定出来る。 • 上肢の状態で、弛緩性、麻痺が強いのかが推定できる。 • 手荷物の持ち方で、手指の巧緻性の維持など推定できる • 椅子の座り方を見れば、動的バランス制御力や腸腰筋~下 肢全般の抗重力性と推尺機能のおおよそが見て取れる。 • ドアの開け方~診察室内での移動~座り方で、運動状態、 認知機能、反応などを色々予測、推測することができる
#49.
⓪診察開始時 「今の症状やこれまでの経過、病気と直接関係がな いかもしれませんが、○△さんの経歴や、どの患者さ んにもお尋ねしていることをなどについて、お聞きしま す」「話しづらいことは話さなくても結構です」 ※最初に前置きがあると、学歴や幻聴の有無など聞 きづらい事の抵抗感を減らし、聞きやすくなる。ルーチ ンで当たり前の事として聞いているという態度が重要。 ※自発的に来たか、連れられた来たのか、で態度は 異なる
#50.
面接の態度・言葉遣い • 温かく、礼儀正しく、冷静で、忍耐強く、感受性を鋭く保つ ラポール形成の技法として、共感的な言葉、感情を直接尋ねる質問、患者 の気持ちを反映するような言葉が大切。 • 臨床場面へのなじみにくさを積極的に軽減する 飾らない患者への挨拶や世間話(医師の個人的な話題は避ける)。患者 がどのような人かを知ることから質問を始める。面接評価とはどのようなも のかを患者に説明することも大切。患者の投影を言葉にして表す。 • 患者に口火を切らせる • 力量を示すことによって患者の信頼を得る 自信を持ち、自分は患者に有用な存在で、役に立てる専門家であるという 態度(たとえそう思えなくてもそう見せるのは技術であり、責任である)
#51.
相手を理解するためのポイント 個人情報 その人がどんな人間なのかに興味を持つ 1)何をしてきたのか、しているのか、これからしたいのか(過去・現在・未 来) 2)出身地や住んでいた場所(過去・現在・未来) 3)家族・友人・知人・仕事仲間など、あらゆる場面における人間関係や、 その中でのその人の立ち位置など その人の専門分野・得意分野・趣味などについて知る その人の今後の方向性(興味・目標・進路)をとらえる 思考・ 感情・ 行動特性 その人のものの考え方を理解する その人のものの感じ方を理解する その人の、その時々の感情を理解する その人の行動を理解する その人に生じる可能性のあるバイアスを推測する (職業で培われたもののみかたによる偏りや、性格などから予測される ものなど) PT・OT・STのためのこれで安心コミュニケーション実践ガイド 第3版 山口美和
#52.
予診にからむ種々の問題 • • • • 病人自身に先にあうか、付き添い者に先にあうか? 付き添い者と一緒に面接するか、個別に面接するか? 予診であることを相手に確認する(時間をかけ過ぎない) 家人はえてして心因論者であることが多い(客観的事実の確 定が困難)。 • 予診は陳述者との共同作品である、 • 簡潔な主訴(具体的に!診断名や症状名はダメ!)
#53.
精神科診療における7つの心得 • • • • • • • 診察は待合室から始まる 患者の椅子を定位置に戻せ ポケットには聴診器と打腱器を 傾聴はゼロポジションで 主観的体験への配慮を心掛ける 「生きていても仕方ない」にどう答えるか 常に親切な医師であれ 精神科レジデントマニュアル 第2版 編集 三村将
#54.
①主訴 本人ないし家族がどのような理由で受診したか、どこが具合が悪いか(精 神科受診の一番の理由や問題)を最初に尋ねる(時に本人と家族で認識・ 描写が異なる) ※本人は不眠とイライラ、家族は飲酒と暴力行為、もしくは、本人は治療の 必要性そのものを否定・拒否(幻覚妄想状態や認知症状態など) 「今日病院へきた理由は何ですか?」「どんなことに困っていますか?」「今 一番辛いことは何ですか」 ※主訴の主語を記載(本人か家族か、教師か、行政関係者か) Ex)「いつも気分が不安なんです。何とかして下さい」と本人が言っている。 ※治療希望か(薬物?カウンセリング?)、診断書希望か、何らかの病気の 検査希望か?日常生活における困り事は? ※家族の勧めか、家族自身が自ら進んで受診したかを確認
#55.
問うこと • 精神科医療上、必須事項の筆頭は来院理由=主訴 「今日こちらに来られるようになったわけを、まず聞かせて下さい」 • 持参時は紹介状を導入に利用するのが滑らか • 戸惑っている患者の場合、陳述の意欲と能力を「引き出す」サポート • Open-ended questions 患者の答えに制限がない 患者の視点、意見、考え、感情などを誘導する 患者の視覚世界を広げる 患者と治療者の関係を広め、深める • Close-ended questions 答えとして要求するものは終結した事実のみ 患者の視覚世界を縮める傾向がある 患者と治療者の世界を限定したり、患者に恐れの気持ちを起こさせる傾向 がある
#56.
相互関係と時系列 時系列 既往歴 生活歴 ①主訴 病前性格 現病歴 嗜好歴 その他 家族歴 現症 相 互 に 関 連 ・ 作 用 す る
#57.
真っ先に確認すべき受診理由の6項目 受診理由 問い方 注釈 ①主訴 「一番お困りの症状は?」 「はじめにいくつか確認させて 頂きたいのですが・・・」と前置 きして ②その他の全て の自覚症状 「他の症状・困りごとは?} 患者が考え込んで「もうないで す」というまで、繰り返し訊く ③生活への支障 「生活にはどういう支障が?」 (家庭・職場・学校などで) 生活機能の低下、重症度がわ かる ④来院のきっか け 意外なエピソードが聞き出せ たりする 「受診を決意したきっかけは?」 ⑤患者自身の解 「こうなったのは何のせいだ 釈モデル と?」 SDMに有用な情報が聞き出せ る ⑥医療への期 待・希望 満足度の高い対応へのヒント が得られる 「どうなりたいですか?」 「ここでして欲しいことは?」 臨床精神医学 第45巻増刊号(2016) 精神科・私の診療手順 9-11 全ての精神科患者に共通な「わたしの診療手順」 豊嶋良一
#58.
6つの質問で、患者が最も語りたいだろうことを引き出す • 患者自身、自分が治療者に真っ先に語りたいことが何かを 自覚していない場合は少なくない。 • 受診理由6項目の質問を患者に投げかけることで、患者は自 らが最も語りたかった事の大半を語ることができる • 主訴の内容は医学的に正しい表現で書く必要はなく、患者 の言葉でなるべく具体的症状を記載する Ex)患者に家庭・職場でのストレス・不満があれば、患者はそれ を、質問⑤「こうなったのは何のせいだと?」(解釈モデルを訊 ねる)の段階で吐露することができる 臨床精神医学 第45巻増刊号(2016) 精神科・私の診療手順 9-11 全ての精神科患者に共通な「わたしの診療手順」 豊嶋良一
#59.
②既往歴 • 現在の通院中の他科疾患名、通院病院、服薬内容(内容も) • 手術歴、大病、既往疾患、入院歴など 胎生期、幼少期、思春期、成人期に分けて • 内服薬、かかりつけ医 • 過去のアレルギー歴、内服の副作用 • 精神科・心療内科受診歴、病名も忘れずに
#60.
③生活歴(一部は現病歴に?) • 出身地、生育地(両親の職業や経済状態など)、同胞数・位置、最 終学歴(高校、専門学校、大学など学校名も確認、学業成績、所 属部活、友人関係)、転居や転校の有無、資格取得(教職など)、 卒業後の就労歴(職業の種類や役職、従事期間、転職の有無)、 現在の就労状況、婚姻歴、同居家族、年金受給、介護保険の状 況、趣味/関心、飲酒・喫煙状況など。 • 就学時や職場、家庭での様子を、過去の経験による現在の性格 や考え方、人生への影響を考えつつ具体的に聞き、まとめる 発育上の大きな出来事、初期の医療歴、学校の適応と学業成績、 問題行動の存在、友人関係、交際(恋愛)歴、民族/宗教的背景 •
#61.
• • • • • • • • どこで生まれてどこで育ったのか →地域で気質や価値観の違いがある 兄弟・姉妹は何人いて、そのうち何番目か →同胞とは幼少期から一番多く時間を共に過ごす。家族での立ち位置など 産まれた時に異常はなかったか →出産に何らかの異常(早産、新生児仮死、未熟児、帝王切開など) 発達の遅れなどを指摘されていないか →健診での異常の指摘、資料(母子手帳、通知表、幼少期の絵)など 家庭環境は円満だったか →家庭の円満、両親からの愛情は、人に対する基本的な信頼感を築き上げるために 必要不可欠。家庭内暴力や両親の不和、離婚、育児放棄、厳格すぎる育て方なども 性格や考え方の形成、現在の精神症状に影響する 学校でのトラブルや不登校などはなかったか →子供の社会生活の場である学校、いじめ、不登校、仲間との関わり方も、性格や考 え方に大きく影響する 学歴・職歴 →卒業した学校、職歴などで、その人の知的水準や社会生活水準は推定可能。学校 中退歴、仕事の現実的な悩み、など 結婚歴 →結婚、家族をもつということは、人生の大きな転機になる。離婚歴やその理由も患 者を理解する一助になる(無理のない範囲で聞く)
#62.
④現症 • 現在の精神症状、疾患名(患者の主観的病名と客観的病名 は違う時あり) • 現在の就労の有無、現在の職業・職位/学業上の身分 • 家事(炊事、洗濯、金銭・服薬管理など)の有無 • 現在の交際関係/家族構成(同居者) • 現在の住状況 • いわゆるADL(AADL、IADL、BADL)の状況・支援者
#63.
精神症状 ヒトの精神機能には、意識、知覚、感情、意欲、思考、記憶、知能、その他、幾種類 もの側面がある。実際の精神障害ではこれらのうち1つまたは多種類が障害され、 多彩な症状を呈する。 • 表情、外見、態度、応対の障害 • 気分および感情の障害(質量) • 思考の障害(思路、思考内容、思考体験) • 感覚および知覚の障害(幻覚、錯覚) • 意欲(欲動+意思)・行動の障害 (亢進・低下、拒絶、緊張、強迫) • 意識の障害(意識混濁、意識変容、意識狭窄、せん妄) • 知能の障害(精神遅滞、失語、失行、失認、実行機能障害) • 記憶障害(記憶障害、失見当識、健忘、既視感、未視感) • 自我の障害(能動性、単一性、同一性、境界性) • 睡眠の障害(入眠障害、早朝・中途覚醒、熟眠感不全) • 洞察(病識)と判断の障害 • 所見の総合 状態像 中枢神経症状
#64.
現症(精神状態・精神的現症など) • • • • • 外見(服装など身だしなみや清潔の程度)、行動、表情や態度、話しぶり 気分・感情:主観的、客観的 疎通性、理解力、自己洞察 思考と信条:恐怖症、強迫、自殺念慮、妄想、誤った解釈 体験と知覚 環境について:幻覚、錯覚、非現実感 身体について:心気症、体性幻覚 自己について:離人症、させられ体験 • 意識レベルや認知状態:見当識(時、場所、人物、状況)、注意、集中力、 記憶、知能 • 睡眠・摂食・排便の状態、体重変化など • 身体的現症:脈拍、血圧、体温など一般的所見、神経学的所見
#65.
心理現象 (精神現象) = 内的体験(個人の主観)+行動(外部表出、外部から観察可) ≒ 行動ないし行動から観察(推測)できる内的体験(感情と情動、症状と徴 候) • 心理現象を科学の対象とするため、評価する現象への概念規定と名称 を付与して、測定する操作的手続きを作成する必要がある。内的体験を 容易に行動として表出できるように誘導できる技術が必須である。従来 の記述的、経験的分類に変わり、ICD-10(世界基準)、DSM-Ⅳ(アメリカ 精神医学会基準)国際基準に基づく診断基準作成が進んでいる。 • 正常の3軸(変数):価値的正常、統計的正常、個体的正常の使い分け、 正常と異常の区分点や症状、症状群、病名の違いに注意(しばし、混同 されるが)
#66.
精神疾患の主観的症状 • • • • • • • • • • • □寝つきが悪い □途中で目が覚める □早く目が覚める □昼夜逆転している □食欲がない □食べ過ぎてしまう □吐いてしまう □動悸・胸痛 □呼吸困難感 □腹痛・下痢・便秘 □頭痛 □めまい・ふらつき □肩がこる □身体が痛い・しびれる □疲れやすい □だるい □憂うつで塞ぎこむ □物事が楽しめない □やる気が出ない □人に会いたくない □消えてしまいたい □死にたいと思う □情緒不安定 □怒りっぽい □おしゃべりがとまらない □興奮しやすい □漠然と不安 □決まった場所や状況( )が苦手 □物事を必要以上に確認してしまう □意味のないことを繰り返し考える □誰かに悪口を言われているような気がする □うわさされている □見張られているような気がする □いないはずの人の声や物音が聞こえる □お酒がやめられない □無駄な買い物ばかりしてしまう □薬がやめられない □物忘れが困る □人間関係で悩んでいる(家族・職場) □仕事が合わない □その他( )
#67.
症状の社会生活への影響度 • 症状は全体的にどの程度でしょうか? □家事・仕事・勉強が手につかない (いつごろから: ) □家事・仕事・勉強ができない □引きこもっている (いつご ろから: )
#68.
⑤現病歴 • 疾患や症状が始まったきっかけ(引き金/人生での出来事: 患者や家族が自身で考える誘因) • 疾患や症状の始まりの時期と時間的経過・順序や変化、エ ピソードの頻度、付加的な問題 • 症状の強度と持続時間、症状の増悪・改善の状況 • 症状への対処法・症状の変化 • 過去の治療歴(病院名、期間、病名、治療薬名など) ※全ての記載で、陳述者(本人、家族、同伴者)、時系列と日付 は重要。数年前、などの曖昧な記載でなく、具体的な記載を!「 ○ 年頃」。発症の誘因が不明瞭で仮説に過ぎない時はその 旨記載
#69.
時系列を意識 • 「始めて不良を感じたのは大学2年頃。そのときは ○××な症状があった。その後は、暫く落ち着いて いたが、就職して2年目になった今年の春に、△△ なことがきっかけで、再び、△××な症状が出てき た。だんだん増悪してきて、本日受診した」 過去から現在の時間の流れを意識して問診・記録
#70.
病歴:発症起点 • 主訴がいつごろどのような契機で始まったのか? 質問 「この1~2週間に何が起って、あなたは受診しようと思われたのですか?」 「その問題の原因となったことに何か心当たりがありますか?」 「この問題について何らかの治療を受けようと思いましたか?」 「あなたが最初に症状を経験したのは何歳の時でしたか?」 「今まで何回くらいその症状を経験しましたか?」 「最後にその症状を経験したのはいつでしたか?」 「現在あなたは誰の治療を受けていましたか?」 「精神科に入院したことがありますか?」 「症状のために薬物を服用していますか?」 など
#71.
発症契機 友人や身内との口論 拒絶や見捨てられ 愛する人の死や病気 回忌や離婚などよくない出来事の記念日 重病や加齢による諸機能の低下 職場や学校におけるストレスに満ちた出来事 かかりつけ医の休暇 薬物コンプライアンス不良 物質乱用など
#72.
生活史(生活歴か現病歴か?) • 患者の語る内的生活は必ずしも外的現実ではないことに注 意(確認しすぎは抵抗につながる) • 成育の背景:養育者や発達の問題の確認 出産時の様子、母親の産後の精神状態、幼児期になんらかの理由での母 親からの長期間の離別はないか? • 生活背景:学歴・職業などの状況の確認(学校名まで確認) 学校、学歴、成績、出席状況など。学校名で、地域における成績、経済状 況、家族の教育への姿勢などの確認が可能。中学頃の成績でおおよその 知的レベルの推定可。 • 職業生活 • 結婚生活 • これまでの社会的機能は?
#73.
その他 • 病前および現在の性格 内向的・外向的、エネルギーがあるか、仕事好きか、几帳面 か?、同調性・開放性 • 家族に関する事項 血縁者の精神科受診歴、身体疾患や神経疾患 • 同居家族の有無、親兄弟の生活場所(後日の支援の時必要 )
#74.
⑥家族歴・家族背景 ほとんどの患者で、家族は何よりも重要な人間関係 • 両親・同胞の年齢(誕生年)や性別、職業など • 家族・血縁者の医学的・精神医学的病歴や入院歴(患者との 関係、診断名)や自殺歴(時に言葉を濁される) • 同居している家族の有無やキーパーソン • 育ち方と家族の関係 • 親の婚姻歴、職業、社会経済的地位
#75.
#76.
⑦嗜好歴 • • • • 煙草、酒 覚醒剤、大麻、シンナーの使用歴の有無 趣味 所属団体、宗教、信条
#77.
全体的に • ①初診時主訴~⑤現病歴まで内容を聞きながら、患者や家 族の様子を観察しつつ、病因や状態像、診断名、治療法な どを類推・仮説しつつ、必要な情報の追加・追求(質問)、あ るいはあえて質問を避ける必要がある。患者や家族がそれ ぞれ、言わないこと、言いたくないこと、言えないこと、につい て思いを致し、気づき、配慮する必要がある(時に、配慮をあ えてせず、踏み込むことが必要だが、そこまで危険を冒して 、厳密な確認をする必要は予診では必要ない)。 • 本診察がメインとすれば、情報収集という側面を前面に出す ならば、ラポール形成などは気にせず、話が長いと思えば、 積極的に話を切る必要がある(難しいが)。
#78.
初回面接時の問診事項① 主訴 ・本人によるもの ・家族や他の関係者によるもの 既往歴 ・身体疾患(過去に経験したもの、現在有しているもの、その治 療と経過、現在服用している薬品) ・アレルギー(食物、薬品、環境) 家族歴 ・家族構成(幼少時から現在に至る) ・家族のパーソナリティ(家族間の関係を含む) ・家族・親族の精神医学的情報 病前生活 ・自分自身はどのように想っているか、他人からはどのように言 われるか、家族やパートナーからみてどうか その他の 情報 ・嗜好品(アルコール、煙草、カフェイン、乱用薬物など) ・犯罪歴 ・宗教 ・価値観・願望(病気が治ったら何をしたいのか) 公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療 三村将・幸田るみ子・成本迅
#79.
初回面接時の問診事項② 生活歴 ・胎生期、周産期(医学的問題の有無、望まれた妊娠か否か) ・乳幼児期(発達の問題の有無をマイルストーンに沿って確認) ・幼少時の家庭環境(養育者の機能、虐待の有無) ・幼少時の行動特性(好きな遊び、交友関係、人見知り、迷子、固 執傾向、分離不安、印象的エピソード) ・学童期の問題(交友関係、集団適応、忘れ物) ・思春期の問題(同性・異性との関係、集団適応、学業成績、部活 動、趣味、アルバイト) ・教育歴(最終学歴) ・職歴(職場適応、職業上の達成、転職の理由) ・婚姻歴(相手との出会い方、離別の理由) ・出産歴(産後の精神医学的問題) ・現在の生活環境(家庭内および家庭外での重要な支援者の有無、 所属団体、経済的状態) ・趣味(余暇の過ごし方、関連する対人交流や経済的負担) 公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療 三村将・幸田るみ子・成本迅
#80.
初回面接時の問診事項③ 現病歴 ・現在の症状 ・発症の時期 ・発症の誘因(誘因と症状の内容的(了解的)関連、時間的関 連) ・過去のエピソード(類似の症状、あるいは別の症状について、 精神疾患の既往歴を含む、その際に受けた治療とその効果) ・症状の長期的な経過(過去の治療歴、入院歴を含む) ・症状が身体的機能に与える影響(睡眠、食欲、排泄、月経、意 欲、活動性などの変化) ・症状が社会的機能に与える影響(学校、職場、家庭において、 交友関係の変化も含む) ・関連する症候群の症状(併存の有無について) 公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療 三村将・幸田るみ子・成本迅
#81.
流れ的には • 正味および記載の時間など予診には制限がある。流れ的には、 情報収集とラポール形成のバランスを意識しつつ、まず、①主 訴を聞くと、流れ的に②既往歴や⑤現病歴も言われるので、そ れを一通り聞いた後、②既往歴や③生活歴を付け足して聞く形 になると思われる。⑤現病歴が、精神科診察・診断のキモだが、 適切な現病歴記載は、「疾患名や予想される症状を大まかに特 定して、予測を立てて、問診する」必要があり、これが一番難しく 、余裕がないときは、①~➃までの記載に重点を置き、⑤は簡 単で構わないという方針でよい。 Ex)統合失調症の幻聴や妄想が、薬物治療中もあるのか、薬物治 療中断ないし強いストレス後に出るのか、などなど、精神症状を時 系列で記載するのは難しく、曖昧な知識・情報は混乱の元となる
#82.
⑧総括(まとめ) • • • • • • 患者の問題点(つまり主訴) 診断と鑑別診断 診断の根拠 病因的要素 予後 管理・治療方針
#83.
総括・まとめ • 得られた情報から暫定的な診断を記載。症状が一 定時間持続していて、障害と診断されるのに十分な 重篤性があること確認しておくことが必要である • 精神的・身体的症状、対人関係、職場や学校など社 会的状況・適応など問題点を把握する • 得られた情報を元に、薬物療法、精神療法、環境調 節など具体的な治療目標や計画を立てる • さらに、診断や見立てを患者や家族にもしっかりと 説明して、理解を共有し、効果的な治療に役立てい る必要がある
#84.
治療計画 面接⇒生活・病歴聴取⇒症状評価・状態像把握 ⇒暫定診断⇒治療計画立案⇒効果判定⇒診断 ・診立て変更 • 暫定診断を確定診断に近づける • 診断に基づく標準的治療法の確認・検討 • 時間軸・多面的アプローチを考慮した治療計画の組 み立て 治療の必要性・有益性・適切性の検討。精神療法の 選択、環境調節の段取りや必要な社会資源の検討、 薬物治療
#85.
「疾病性」と「事例性」の考慮 • 疾病性 精神疾患の症状と程度によってある程度、一定のコンセンサスを元に示せ る概念(身体医学において、症状やその重症度によって、病態の重さを判断 するのと同様) • 事例性 疾病性の結果として、どの程度の社会的影響、不利益が生じているか、生 じる可能性があるかを示すもの。本人の振る舞いのみでなく、本人を取り巻 く環境や対人関係の中で、誰が、どのようなことを“問題”とみなし、どのよう な気持ちや行動に至っているかを踏まえて捉える ※疾病性が軽症なのに、本人の生活状況や環境などの修飾で、主な事例 性を帯びることもある。逆に疾病性は重篤でも、事例性がほとんど目立たな いケースもある 85
#86.
疾病性と事例性 • 事例性(caseness): 遅刻、急な成績低下、家庭内暴力、借金、知人間トラブル等、 生活上のイベントのことで、個人の社会適応の程度を判断する ために必要。特にその程度の評価が大切 本人の言動のみでなく、本人を取り巻く環境や対人関係の中 で、誰がどのようなことを問題と見なし、どのような気持ちから 行動に至っている化、それがいつからどのような流れで生じて いるのかを理解する必要はある • 環境の修飾により、軽い疾病性でも、重い事例性を帯びるケ ースもある(その逆に、疾病性は重篤でも事例性はほとんど ないことを)。
#87.
境界線の4つの基準 ✓ 適応的基準 ✓ 価値的基準 ✓ 統計的基準 ✓ 病理的基準 適応ー不適応 規範ー逸脱 平均ー偏り 健康ー疾病 正常の4軸(変数): 正常・異常概念の使い分け、正 常と異常の区分点に注意。
#88.
心理的異常の多元性 • 適応的基準:適応-不適応 所属する社会での生活が円滑にできない場合。 • 価値的(理念的)基準:規範-逸脱 判断のための理念体系に基く規範から逸脱した場合。 • 統計的(標準的)基準:平均-偏り(心理テスト) 集団の中で平均からの偏奇の度合いが強い場合。 • 病理的基準:健康-疾病(DSM診断) 精神病理学に基く医学的判断で疾病と診断された場合。
#89.
ヤスパースの現象学的了解 (理解・わかるということ) • 患者の主観的事実は患者によって直接体験されるものであ るが、診察者は、患者の自己描写や診察者の観察を通じて 間接的に知るよりほかない。 • 他者の心的な物を身体的なもののように直接知覚して知る ことは絶対にできないのだから、その人の述べたことを自分 たちの心の中に描き出し、感情移入してわかるしかない。 • 精神の現象、すなわちある人の体験を調べ、類縁の現象と 比較して考察し、できるだけ厳密に言語化する学問が現象 学であり、その際他者の体験内容を自分達が自分達の経験 、知識、感情と照合して理解する(わかること)を了解する (verstehen)と言った。
#90.
記述精神病理学における精神現象の理解 了解 説明 静的 精神現象をそのまま理 目・耳などによる観 解し記述 察 発生 的 発生した事柄から成立 科学的手法による因 した経過を感情移入し 果関係の解明 て理解 • 平たくいうと、「了解」とは、相手の思考や性格パターンや状 況などを加味して、百歩譲った時に相手の言い分が理解で きる」ということになる。 心理のための精神医学概論 沼 初枝
#91.
「現象学的了解」のその後 • ヤスパースの記述現象学(体験内容を了解し、記述する)は 、精神症状の抽出、概念化に一定の貢献をした。 • 平たくいうと、「了解」とは、相手の思考や性格パターンや状 況などを加味して、百歩譲った時に相手の言い分が理解で きる」ということになる。 • 当然、ヤスパースへの批判や限界の指摘が当然有り(特に 了解可能性・不能性の考え方が強く批判された)、さらに、記 述現象学を超えるべく、多くの精神病理学的研究(現存在分 析、人間学的精神病理学、力動精神医学)がなされた。 • その後、現在の生物学的精神医学隆盛の中、それらも忘れ 去られていきつつあるが・・・。
#92.
「了解」が難しい時の症状の確かめ方 ~「何」を聴くかも「どのように」聴くかも大事~ • 相手が言ったことをそのまま繰り返す(認識の表明と症状の確認) 「医師の推測・予断による影響」の排除、話題が続かない場合、転導性の亢進など 他の症状を考慮 • 「もう少し説明してください」と促す(中立的な表現での説明の促し) 患者の病識不明時は、相手に与える印象に注意 「症状」⇒「感じ」など 拒否的な場合は感情への共感、患者の発言の繰り返し、 • 「どういうところで、○×△□と思ったのですか?」(判断根拠の確認) 知的能力、疾病理解や受容など患者により異なるので、より柔らかい相手を傷つ けにくい表現で質問 「Why(何故?)」⇒「How(どういうところで)」 • 「何々というふうに考えられませんか?」と確認する (思考の自由性の確認) 症状の支配力、現実検討力、日常生活への影響などの評価や吟味 • 「この状態のために、生活にどんな支障が生じていますか?」(ADLの評価) 治療についての話し合いに繋げるために、患者に「生活上の支障」を表現してもら う(不眠、不安、集中力低下) 事例性⇒疾病性⇒緊急性の評価
#93.
「あとをつけられている」と言われた時 • 「統合失調症の追跡妄想がある」と仮説推論できることは大 切だが、確認せずに、即断してはいけない • 患者が言ったとおりに、「あとをつけられているのですね?」 と繰り返す。 • 「あとをつけられている感じについて、もう少し説明してくださ い」と促す • 「何々とも感じるが、違うようにと思う」「絶対にあとをつけら れているのです」などの返答で、症状への確信度、思考の自 由性、現実検討性などを評価する • 「生活上の支障がない」かは本人だけでなく、家族や関係者 の意見を聞く必要がある 精神神経疾患ビジュアルブック 落合慈之、秋山剛、音羽健司
#94.
診療録記載における原則と考え方 • • • • 未来に読む読み手の立場になって書く 過不足のない客観的な事実を記載する 事実と意見を分ける 使用者の理解と納得を得るために、そもそも複雑な内容であ るものとあまりにも簡略化し、文意を変えてしまうのは問題が ある • 長い文章にならざるをえない場合は、使用者の忙しい実情を 考慮し、冒頭に全文の要旨を記載するなど、相手の立場に立 った措置が必要になる • 「短いのを書いている時間がないから長いのを書いている」 ⇒くどくどいつも書く筆者には耳が痛く・・・・
#95.
BATH法 • Background(背景)、Affect(気持ち)、Trouble(一番困ってい ること)。Handling(対処法)、Empathy(共感)からなる日常臨 床上、効率的かつ効果的な治療的対話術 • 患者の心理社会的な問題のスクリーニング、感情への対処 、患者の満足度向上、時間効率、身体化症状固定化の早期 予防など、短時間で効率的に達成できるとされる • 「Trouble」を患者自身に語らせることで問題や主訴に焦点化 して、患者自身のHandling(対処法)を、担当医が、共感、支 持、承認することで、患者の満足感、安心感につながる。 • 初診時や問題の新規発生時、精神的、心理社会的な問題が ある時などに、効果的である
#96.
初診時診療錄の記載法 ①【初診時主訴】患者・家族などの一番困りごと・求め・希望など(なるべく本人達の 言葉で) ②【既往歴】身体疾患(精神に影響する可能性のある物を中心に) 死亡家族・死亡理由・享年(年齢でなく、なるべく年で) ③【生活歴】 出身地。同胞。学歴(特に最終学歴)・資格、職歴、現在の職業 婚姻歴(結婚・離婚)、子どもの数・性別 現在の同居家族 喫煙・飲酒歴(有り無し、現在の状態・量) 趣味 資格 年金・介護保険など ④【現病歴】 精神症状、内服薬、ライフイベントなどできれば因果関係が分かる様に時系列で 自 殺企図、重要なライフイベントなどに注意 ⑤【現症】 現在の症状、危機や希死念慮の有無生活状況(BADLとIADL、AADLを区別して)、 就労の有無、内服薬(身体科薬含め、特に精神に影響する可能性のある薬を中心に )
#97.
予診例① 28歳女性 ①【初診時主訴】 本人曰く、「気分が落ち込んで、不安で、職場に行きたくない」 家族曰く、「職場でミスをしたらしく、元気がなく、悲観的な事を言っている」 ②【既往歴】既往歴 虫垂炎手術(17歳) 月経は重め 同居の母方祖母が乳がんで死亡(X-2年) ③【生活歴】 ○△市出身。姉1人。△ 高校、○ 専門学校(経理)卒。上京・○■商事で事務( 4年)後のX-5年に帰郷。実家で両親と3人暮らし。X-4年より◎○市役所(4年目)。X 年より部署変更(事務⇒窓口業務) 飲酒歴:機会飲酒 喫煙歴(+):タバコ数本/日 趣味:旅行
#98.
⑤現病歴 元々おとなしい性格。小学校高学年頃より人前での発表での緊張感、発 汗などを自覚していた。X年4月の部署異動後、同居の両親に不安を訴えて いた。X年7月上旬、職場で大きなミスをしてしまい、上司に叱責された。それ を契機に夜になると考えてしまい寝つきが悪くなった。同年8月上旬、寝てい ると途中で目が覚めるようになった。同時に不安感、やる気が出ないなどの 症状が出現。同年9月 △日、母と共に当科初診。 ⑤【現症】 夜の眠りが浅い、食欲がない、気分の落ち込み テレビなどは見ている。8月に旅行にはいけ、楽しかった ※予診者の基本的態度・思考としては、状態像はうつ状態、うつ病か適応障 害かと思いつつ、これが初めてのエピソードか、就労や生活などのレベル低 下がないか、出来事そのもののストレスか、症状によるストレスへの脆弱化 なのかなどを確認していく流れになる。
#99.
まだ答えのない問い • なぜ人は精神疾患になるのか? • どうすれば、治療できるのか? 近代精神医学の二大潮流(答えを出すかもしれない概念) • 生物学的精神医学(Biological Psychiatry) 自然科学の方法論に従って脳科学の方面から精神異常を研究 するというもの。 • 精神病理学(psychopathlogy) 精神病はこころの病気だとして、哲学(特にフッサールなどの 現象学)をよりどころにして、主観的、直観的な見方や疾患の「 全人間的な把握」を重視する。記述・力動・現象学など細分化
#100.
傾聴と共感は一心同体 • 傾聴で大切なことは、患者の話のストーリーを読み、相手が 一番訴えたことを聞き取り、それを明確な言葉や態度で返し 、必要があれば、理解を補うために的確な質問を返すこと • 共感で大切なことは、相手のストーリーを読み、「相手の立 場に立って考えるとそう言いたくなるのも無理はない」と言語 化すること(相手の感覚や認知や主張は様々で、同じ感覚で 受け止められない事はある意味当然)。同感ではない • どちらも、言葉でのフィードバックが不可欠で、はまった時に は相手にそのような認識が生じて、共同作業が完結する →もちろん、「言うは易し行うは難し」でストーリーの把握と的確 な言葉でのフィードバックはひたすら修行(自分の返答時の相 手の反応や表情で大体わかる)
#101.
傾聴の深さ 傾 聴 の 深 さ • 積極的傾聴(active listening) 相手が気づいていないことを聴く • 反射的傾聴 相手が言っていないことまで聞く • 受動的傾聴 相手が言わんとしていることを聴く • 日常会話 相手が言っている事を聞く
#102.
笠原の小精神療法 (1)病人が言語的非言語的に自分を表現できるように配慮する (2)基本的には非指示的(non-directive)な態度で接し、病人の心境や苦悩を 『そのまま』受容し了解することに努力を惜しまない (3)病人と協力して繰り返し間題点を整理し、内的世界の再構成をうながす (4)治療者の人生観や価値観を押し付けない範囲で、必要に応じて目常生 活上での指示、激励、医学的啓蒙を行う (5)治療者への病人の感情転移現象につねに留意する (6)深層への介入をできるだけ少なくする (7)症状の陽性面のうしろにかくされている陰性面(例えば心的疲労)に留意 し、その面での悪条件をできるだけ少なくする (8)必要とあらば、神経症に対しても薬物の使用を跨跨しない (9)短期の奏功を期待せず、変化に必要な時間を十分にとる
#103.
カーンバーグの言う逆転移 (1)病人の攻撃に対するマゾヒスティックな服従 (2)自分の治療家としての能力への不当なまでの自身 喪失 (3)第三者による非難を予想しての大袈裟な恐怖心
#104.
防衛機制の分類 • 成熱した機制 抑制、愛他主義、昇華、ユーモア • 神経症的機制 否認、抑圧、反動形成、置き換え、合理化 • 未熟な機制 受動攻撃性、行動化、解離、投影、分裂(理想化/価 値の引き下げ) • 精神病的機制 外的現実の否認、外的現実の曲解
#105.
精神的命綱としてのコミュニケーション (西園、2008) • • • • あたたかい態度での視線の接触と「姓」を呼んでの挨拶 人、場所、時間が分かる配慮 共感的理解のもとでの診断アセスメント 身体状態への配慮、衣類などにあらわれた生活内容ー生活 への関心 • 治療の場、方法の選択には可能なかぎり「インフォームドコン セント」 • 患者が自らを統制できない時はその旨を告げて行動制限ー 閉鎖空間の選び方と治療要因 • 家族との良い環境作り
#106.
理想? 至為は為す無く、 至言は言を去り、 至診は診ることなし。
#107.
よい予診とは 限られた時間の中で • 「診断に必要な情報が正しく聞き取られていること」 • 「ストーリーとして情報が整理されていること」 の二つの条件を満たす必要がある 患者の言うことをただそのまま書き取るだけでは、上 記の二つを満たす予診にはならない。専門知識と想像 力を働かせて、患者の話を適切に導いていくことが、 よりよい予診の作成には必要である。
#108.
予診・初診であえて言えば • 全部、聞こうとしなくていい、大切なことは次回の診察につな げること(再来以降のために基本的な仮説診断と方針程度は 初診時に明確化しないと後が大変) • 患者・家族の表情・目線・仕草など非言語的態度(言語化で きない気持ちや感情を忖度)、感情への配慮や気づき、寄り 添いが大切(問診の項目の細部を埋める事だけにとらわれ てはいけない) • 診断と治療のバランスを取り、患者に応じて、ごく簡単な面接 技法を使うだけで、人との対話や情報収集がとても円滑に行 く(こともある)を実感してもらえると嬉しいのですが・・・。
#109.
予診後の本診陪席での観察のコツ • 時間があれば、予診した患者の全体像を数分でプレゼンで きればいい。症状⇒診断名⇒できれば今後の対応・治療方 針など。 • もちろん診察時間も経験も違うが、本診で、精神科医の診察 を見て、自分との違いや、聞ききれなかったものなどを思い つつ、観察された精神症状の根拠、診断根拠などを積極的 に質問してほしい。 • 他人の人生をしっかり聞く機会を持つことはめったにない。 患者のすべてを知りたいというのぞき趣味でない、健全な好 奇心を持って、是非、積極的に研修してほしい。
#110.
artとしての精神科面接 • 患者を適切に診断、支援するには、患者の精神症 状や心理社会的状態など適切な質量(精度が高く、 鮮度がよく、ほどほどの量)の情報が欠かせない • 一方で、混乱した患者・家族からの情報収集は容易 ではなく、時に侵襲的であり、面接の中、患者の感 情への傷付けを最小限に抑えながら、最終的には 治療に必要なすべての質問をし、意見や指示をあ たえることは、精神科医の重要なartである
#111.
診断・見立てと治療・支援の密接な関係 面接法 観察法 主訴 悩み・困難・ 課題 情報の 整理・ 統合 心理検査 解釈 治療・支援効 果の検証 クライエント(患者)の 全体的理解 治療・援助方針の立 案・修正 治療・援助 の実施 図解でわかる臨床心理学 井上嘉孝
#112.
インテリジェンス・サイクル 鶏と卵の ジレンマ 情報要求 個人情報保護 1 計画・指示 第一次情報 第二次情報 百聞は一見 に如かず 5 2 会議や電カル 配布 収集 事実と分析は区別 選別・分類・評価・保管 →データベースとして 蓄積(カルテ・書類) 適宜アップデート 情報は劣化する 3 4 処理 分析・作成 分析:事象分類・特徴把握 作成:統合と解釈 統合:分析事実の組み合 わせ 解釈:「何?」+「だから何 ?」(メッセージ性)
#113.
経験学習支援としてのコーチング・OJT 先輩・上司による指導 (コーチング・OJT) 経験学習支援 振り返りの壁 経験する 応用する 応用の壁 内省する 教訓を 引き出す 教訓の壁 看護師・医師を育てる経験学習支援 認知的徒弟制による6ステップアプローチ 松尾睦・築部卓郎 113
#114.
おわりに • • • 以前は、このスライドを元に、時間があるときは、毎月回ってくる臨床研 修医に講義もどきをしていました。ほぼ精神科になることはない臨床研修 医の人々が、興味を持ち、将来の自分の専攻科に生かせ、かつ、プレイ ングマネージャーの地方有床総合病院精神科医が無理なく続けられる 持続可能な精神科研修を模索しておりました。意外と、アウトプットが、自 分の知識や思考の整理にも役立ちました。 しかし、今は、有床総合病院精神科医(複数同僚あり)から無床総合病 院精神科1人部長になってしまい、精神科後期研修医も臨床研修医もほ ぼ回ってこなくなり、苦手な指導医業務もなくなり、ある意味平和です。 とりあえず、また転勤しない限り、このスライドも無用となってしまいました が、せっかく作ったので、アップしてみます。本来、色々くどくど喋りながら 話すための元ネタなので(研修医の人の目が泳ぐことも多々あり)、行間 に言葉を補う必要があり、分かりづらくてすみません。ご意見・ご訂正あ れば、バージョンを訂正して、再アップしていきたいとおもっております。
#115.
参考文献 • 精神科における予診・初診・初期治療 笠原嘉 (精神病理 学の大御所による定番書。精神科の若手の必読書) • 一般臨床医のためのメンタルな患者の診かた・手堅い初期 診療 児玉知之 (「内科レジデントの鉄則」の著者による一 般臨床医の視点による書物) • 精神科研修ハンドブック 岸本年史 • 精神科面接マニュアル 張憲徳 (翻訳書。OSCEのような感 じ) • 精神科レジデントマニュアル 三村将(精神科医療で定評の ある慶応大学精神科のマニュアル)