#4.
はじめに • 精神科医療では、ある程度の精神医学の知識とハンドブック かスマホを片手に、患者を診ることになる。そのためには、 患者と相対し、言葉を交わし、その対話から、あるいはその 表情や行動の観察の中から、患者の心を描き出すという日 常診療の地道な作業をする必要がある。 • 患者の見せる幅広い症状や異常な主観的現象を系統立て て、把握して、記載する方法論を改めて習う機会はなかなか ない。 • 精神医学の合理的適用には、基本神経科学以外に、心理学 、社会学、社会人類学、医学全般(特に神経学と内分泌学) などの包括的な実際的知識を要する。これらは、精神科医と しての仕事のための最低限の基礎知識と言える。
#5.
魂がなんであるかは我々の与り知らぬことであるが 、それがどのようなものか、どのような現れ方をするか は、われわれにとって非常に重要である ルネッサンスの精神病理学者・心理学者 ファン・ルイス・ビベス (1493.3.6~1540.5.6)
#6.
精神機能(高次脳機能:心を構成する要素)と主な内容 言語機能 認知機能 行為機能 話す、理解する、読む、書く、計算する 見て知る、聞いて知る、触れて知る 手を使う、道具を使う、作る、切る 注意機能 記憶機能 遂行機能 選ぶ、切り替える、集中する、持続する 覚える、思い出す、時間・空間に位置づける 計画・効率的に行動する 感情機能 意欲機能 知的能力 喜怒哀楽を受容・表出する 自発・能動的に行動する 判断・推理・思考する 社会性能力 対人関係を築く、社会的規則を理解する 特別支援教育に力を発揮する神経心理学入門 坂爪一幸 6
#7.
精神症状の適切な把握のために • 精神症状をどのように把握するのかという基本的困難をい かに乗り越えるかは、精神医学に興味を持つことができるか どうか、診断と治療がうまくできるかどうか、の最初の壁の一 つと思われる。 精神症状把握のための必要な知識と技能と態度(習得目標) • 精神症状を記載する用語の定義や概念の変遷を理解できる • 眼前の患者の精神症状を「了解」することができる • 「心」と「脳」の問題(心脳問題)を理解できる • 精神症状・精神疾患を理解するための多元的な視点を理解 でき、必要に応じて使い分けられる。
#8.
精神症状 • 変化した精神機能が表す現象。 • 目の前の患者の言動などの観察や病歴の聴取によ って、明らかにされる • ヒトの精神機能には、意識、知覚、思考、感情、意 欲(意思・欲動)、自我意識、記憶、見当識、睡眠、 知能、神経心理学的所見、人格(パーソナリティ・性 格)などその他、幾種類もの側面がある。実際の精 神障害ではこれらのうち1つまたは多種類が障害さ れ、多彩な症状を呈する。
#9.
精神症状の捉え方 精神症状有 精神症状無 (狭義の)精神疾患を持つ人 精神的・心理的困難 ・「精神症状」が問題になるには訴える本人か困って問題にする他者が必要 ・「精神疾患」のある人が必ず精神症状を有しているとは限らない(薬物治療 中、危機と距離が取れた場合など) ・「精神症状」の重症度、対応の切迫性、可能な対応法などの評価が必要
#10.
精神症状の記載に慣れる • 精神症状は、各精神機能(精神活動)における異常が何らか の形で表現されたものである。精神疾患の適切な診断には 、患者の訴え(自覚症状)や、患者周囲の訴えまたは医療者 が観察したこと(他覚所見)を適切な医学用語(精神科独特 の用語)に当てはめて理解され、記載・記録される。 • 本来、精神機能は個別に働くものではなく、総合的に働く(表 現される)ものである。精神症状は、意識、知能、記憶、知覚 、思考、感情、意欲などに分けて記載されることが多いが、 それぞれのまとまった状態を表現する用語が定義され、用 意されている。これらの用語が表現する状態を理解すること がスタートであり、ゴールになる。 POCKET精神科 改訂2版 編集武田雅俊・鹿島晴雄 一部改変
#11.
精神症状 • • • • • 外見・行動 話しぶり・思考 気分:主観的、客観的、疎通性 思考と信条:恐怖症、強迫、自殺念慮、妄想、誤った解釈 体験と知覚 環境について:幻覚、錯覚、非現実感 身体について:心気症、体性幻覚 自己について:離人症、させられ体験 • 認知状態:見当識、注意、集中力、記憶 • 自己洞察
#12.
精神症状 • • • • • • • • • • • • 表情、外見、態度、応対の障害 気分および感情の障害(質量) 思考の障害(思路、思考内容、思考体験) 感覚および知覚の障害(幻覚、錯覚) 意欲(欲動+意思)・行動の障害 (亢進・低下、拒絶、緊張、強迫) 意識の障害(意識混濁、意識変容、意識狭窄、せん妄) 知能の障害(精神遅滞、失語、失行、失認、実行機能障害) 記憶障害(記憶障害、失見当識、健忘、既視感、未視感) 自我の障害(能動性、単一性、同一性、境界性) 睡眠の障害(入眠障害、早朝・中途覚醒、熟眠感不全) 洞察(病識)と判断の障害 所見の総合 状態像 中枢神経症状
#13.
主な精神機能(精神活動)とその異常 精神機能 精神機能の異常 意識 ・意識混濁 ・意識変容 見当識 ・見当識障害 知能 ・先天的/後天的な知能の低下 記憶 ・記銘障害 ・追想障害 知覚 ・錯覚 ・幻覚 ・知覚変容 思考 ・思路障害 ・思考内容の異常 ・思考体験の異常 感情 ・気分の異常 ・感情の興奮性の異常 ・その他の異常 欲動、意思、行動 ・欲動の障害 ・意思の障害 自我意識 ・境界性/能動性/単一性/同一性の意識の障害 パーソナリティ ・パーソナリティの異常 睡眠 ・睡眠・覚醒障害(睡眠障害) その他 ・病識の障害 ・疎通性の障害 こころの健康がみえる みんなのメンタルヘルスガイド
#14.
精神症状の分類(精神症状を記載する用語) 意識 明識困難→昏蒙→傾眠→嗜眠→昏睡 もうろう状態、せん妄、アメンチア 知能 精神発達遅滞(知的障害) 痴呆・認知症 記憶 記銘・保持・再生・再認障害、健忘、既視・未視体験(感)、コルサコフ症候群 知覚 錯覚、パレイドリア 幻覚:幻視、幻聴、幻触、幻嗅、幻味、体感幻覚、実体意識性 思考 思考過程の異常:観念奔逸、思考制止、滅裂思考、言葉のサラダ、思考途絶 思考の体験過程の異常:思考吹入、思考奪取、思考伝播、思考察知、強迫 観念、恐怖 思考内容の異常(妄想):被害妄想(注察妄想、追跡妄想、被毒妄想)、誇大 妄想(血統妄想、発明妄想)、微小妄想(貧困妄想、罪業妄想、心気妄想)、 嫉妬妄想、カプグラ妄想 感情 爽快気分、抑うつ気分、感情鈍麻、多幸、感情失禁、病的不安 意欲 意志 意欲:行為心拍、意欲低下、食欲亢進・低下、性欲亢進・低下、小児性愛、老 人性愛、露出症 意志:衝動行為、制止(精神運動制止)、昏迷、途絶 公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療 三村将・幸田るみ子・成本迅 一部改訂
#15.
統合失調症患者の症状記載の一例 「患者は、高校卒業後、鉄工所に就職したが、3ヶ月後から仕事に行かず、 家に閉じこもるようになった。「周りの人に自分の悪口を言われる」「近所の 人に馬鹿にされる」などと訴えるようになり、「考えが抜き取られる」、「自分 の考えが声になって聞こえる」「周りの人の考えが頭に入ってくる」などと言 い始め、話すことがまとまりなくなってきた。患者は1日の大半を臥床してス マホを見て過ごすようになったが、些細なことにこだわり、壁を叩いたり、家 族に興奮して話したり、母親に対して、妙に甘えるような言動をしたかと思え ば、突然、母親に罵声を浴びせたり、まとまりない言動を生じて、時に暴力 行為も見られるようになって、精神科病院を受診して、初回入院した。その 後も入退院をくり返し、当初は、短期間就労したり、洗濯などをしていたが、 次第に、就労や家事をしなくなり、家事全般は母親任せで、1日臥床がちに 生活している POCKET精神科 改訂2版 編集武田雅俊・鹿島晴雄 一部改変
#16.
統合失調症患者の症状記載の一例 「患者は、高校卒業後、鉄工所に就職したが、3ヶ月後から仕事に行かず、 家に閉じこもるようになった(自閉)。「周りの人に自分の悪口を言われる(被 害的幻聴)」「近所の人に馬鹿にされる(被害妄想)」などと訴えるようになり、 「考えが抜き取られる(思考奪取)」、「自分の考えが声になって聞こえる(思 考化声)」「周りの人の考えが頭に入ってくる(思考吹入)」などの思考体験の 障害も呈するようになり、話すことがまとまりなくなってきた(連合弛緩)。患 者は1日の大半を臥床してスマホを見て過ごすようになった(無為・自閉)が 、些細なことにこだわり、壁を叩いたり、家族に興奮して話したり(精神運動 興奮)、母親に対して、妙に甘えるような言動をしたかと思えば、突然、母親 に罵声を浴びせたり、まとまりない言動を生じて(アンビバレンツ・二律背反) 、時に暴力行為も見られるようになって、精神科病院を受診して、初回入院 した。その後も入退院をくり返し、当初は、短期間就労したり、洗濯などをし ていたが、次第に、就労や家事をしなくなり(人格水準の低下)、家事全般は 母親任せで、1日臥床がちに生活している(荒廃状態) POCKET精神科 改訂2版 編集武田雅俊・鹿島晴雄 一部改変
#17.
統合失調症患者の症状記載の一例 「患者は、高校卒業後、鉄工所に就職したが、3ヶ月後から仕事 に行かず、自閉的となった。被害的幻聴や被害妄想を訴えるよ うになり、思考奪取、思考化声、思考吹入などの思考体験の障 害も呈するようになり、連合弛緩も見られるようになった。患者 は1日の大半を無為に過ごし、自閉症状を呈するが、些細なこ とにこだわり、精神運動興奮やアンビバレンツな行動を示し、時 に暴力行為も見られるようになったため、精神科病院を受診し て、初回入院した。その後も入退院をくり返し、次第に人格水準 の低下をきたし、荒廃状態を呈している。」 POCKET精神科 改訂2版 編集武田雅俊・鹿島晴雄 一部改変
#18.
症状の体験的理解と記載のバランス • 前述の記載はごく普通の統合失調症患者の症状記載である が、初学者や精神症状の用語になれない人には、精神科独 特の専門用語の羅列は理解が困難かもしれない。 • 複数の患者を診察・治療し、ある程度の経験を重ねると、赤 字の用語の意味することを患者が呈する一連の言動のまと まりとして理解できるようになり、それぞれの患者の具体的 な言動を超えて抽出された概念を理解することができるよう になる。そのためには、具体的な精神症状を呈する患者の 症状を詳細に観察し、その表現する言動の中から、精神症 状の用語が表現しようとする病理過程を抽出する(時に他者 のフィードバックを受け)経験・体験を重ねる必要がある • 一方で、専門家になりすぎ、専門用語の多様(極度の抽象化 か記載の簡略化)は、実臨床の妨げになることもある POCKET精神科 改訂2版 編集武田雅俊・鹿島晴雄 一部改変
#19.
“You see, but you do not observe. The distinction is clear.” 「きみは見ているだけで、観察していないんだ。見ることと観察 することとは、まるっきり違う」 ホームズがワトソンに向かって 「理を先にして、物を後にするときは、即ち上智も失なきこと能 はず。物を試み、言をその上に載すときは、即ち庸人も立つとこ ろあり」 (理屈を第一とし実物を第二とするときは、優れた人間でも過ち を犯すことになる、実際に試してみて、それに基づいてものを言 うときは、たとえ凡人でもその発見に価値がある) 山脇東洋(1705-1762)
#20.
精神症状を学ぶ必要性と重要性 現在、精神障害の診断は、いくつかの特徴的な精神症状を羅列して、それ らの項目のうち一定以上当てはまり、適切な鑑別診断や除外診断がされれ ば、その精神障害と診断する操作的(カテゴリー)診断が主流である。 診断・分析において ①特徴的な精神症状を記述する用語を理解する ②患者が示すある言動、感情などの変化が、そのような精神症状に該当す るのかをその用語を用いて記述する ③従来の使い方と照らして妥当かどうかの指導を受ける という学習過程は、精神疾患の診断、症状の経過観察、そして適切な治療 介入や看護ケア・介入を行う上で不可欠で、精神医療の触れる学生にとって 、最初に学ぶべきであり、精神科医療者になっても学び続けるべき分野の1 つである 20
#21.
21
#22.
精神症状の捉え方 • 身体医学における「症状」とは性質が異なる。「精神症状の 把握」という基本的な困難を乗り越えるにはコツがいる。 患者の主観的な体験を、患者の表出する言葉や行動に感情 移入して、自分の心をモニターにして、適度な距離感で、傾聴と 観察する。症状と徴候、特性と状態を区別して、症状とストーリ ー(物語)を「了解」しつつ、客観的に記載することが重要である • 直感的な「驚き」「違和感」(ストーリーを聞いていて「ん?よく わからんな」と感じる部分)が重要 Ex)昨日までは普通に会話できていたのに、今日は目がギラギラして、ベット周りにゴ ミが散乱している。⇒ぎょっとするような「驚き」 Ex)医療者の前ではいつも「うつです」と沈んだ表情だが、デイルームでは爆笑しなが ら電話している。⇒「あれ、変だな」 • 目の前の事象に症状名をつけてみる(自信がない時は聞く) 22
#23.
精神症状(現症)を糸口とした診断・治療 • 実臨床では、時間や情報、患者・家族との関係性、バイタル などさまざまな要素の中、「気分の落ち込みと貧困妄想があ るからうつ病他!」と直感的に診断するのではなく、まずは、 精神機能ごとに症状を観察し、各症状から状態像を診断し、 そこから考えられる鑑別診断を挙げていくことになる。 • そこから、さらに、各種検査や面接で得られた詳細な情報( 生活歴や家族歴など)との関連性を考えて、最終的に、「確 定診断」が行われることになる。 • 状態像診断は、治療の効果判定や治療方針の検討・修正な どに必要で、新患以降の再来の診察時に、限られた時間の 中、毎回行う必要がある。(うつ病が、必ずしもうつ状態とは 限らない)
#24.
症状と診断の定式化とプレゼンテーション ~症状・状態像・診断(類型)~ 精神症状 患者の訴え(自覚症状) 他覚症状(客観症状) (症例の) 精神科専門用語を使用 した症状の列挙 鑑別診断 状態像 確定診断 診断仮説 鑑別診断 (その症状と 経過から)考 えられる状態 像・鑑別診断 最も考えられる 診断名 鑑別診断 24
#25.
「状態像診断」 • 精神科診断学特有の概念 • 精神疾患の確定診断は、時間をかけた何度かの面接や行 動観察の結果、ようやく明らかになることも多い。実際の臨 床において、初診時の横断的症状把握のみでは、診断確定 に至らないことはままある • また、精神科救急場面など、診察場面での患者との言語的 コミュニケーション不十分、病歴聴取による情報不十分など の場合、その患者の“今ここで”の状態像を確定することによ って、続く検査や初期治療計画を立てる必要おあり、状態像 診断は、今日においても重要な意味を持つ
#26.
精神状態像 • 関連のある症状および症候群によって形成される全体像 • • • • • • 神経衰弱状態neurasthenic state 心気状態hypochondriacal state 不安症候群anxiety state 強迫症候群obsessive state 幻覚妄想状態hallucinatory paranoic state 緊張病症候群catatonic syndrome
#27.
西丸による異常精神状態像の六分類 状態像 神経衰弱状態 減動増動状態 含まれる諸症状、諸状態 無気力、心気症状、強迫、離人症状、神経質 など 幻覚妄想状態 錯乱状態 記憶減退状態 抑うつ状態、躁状態、不安・パニック・不機嫌・ 憤怒を伴う増動、無欲、無為、興奮状態、緊張 病症候群(興奮と昏迷) 幻覚、妄想 意識混濁、夢幻状態、せん妄、アメンチアなど 健忘症候群、ヒステリー性健忘など 欠陥状態 知的障害、認知障害、統合失調症性荒廃など 精神医学入門 西丸四方
#28.
精神状態像を診断する意義 • 精神症状(要素的精神機能)の把握を基礎にして、次いで臨 床的に大事なことが精神状態像の診断 • 要素的精神機能の障害は、個々に出現する事もあるが、普 通は関連のある症状がいくつか一定の様式で組み合わさっ て出現するので、このような一定の症状の組み合わせを症 候群と呼ぶ。 • 症状または症候群によって形成される全体像は状態像と呼 ばれ、状態像診断は治療上に不可欠。 • 病名診断は簡単にはできないことがあり、常に急がなければ ならないことはないが、状態像診断はその場でいつも行うこ とが求められる、面接ごとに、その時その時の状態像の的確 な見極めが大切。
#29.
主な精神疾患の症状群 • 統合失調症 幻覚(主に幻声、幻視は少ない)、妄想(被害妄想、周囲への関係妄想)、 精神運動興奮(興奮、混乱、滅裂)、独語・空笑(幻聴の存在を示唆)、昏 迷(問いかけに応答なし、緊張) • うつ病 抑うつ気分、不安焦燥、意欲低下、決断力・判断力の低下(思考制止進行 で昏迷へ)、妄想(自分を非難する罪業妄想、微小・心気妄想)、身体症 状(動悸、眩暈、ふらつき、心気症状) • 躁病 多弁多動(滅裂言動)、多幸、易怒興奮、妄想(誇大妄想) • 不安障害 自律神経症状(動悸、発汗、振るえ)、不安焦燥、過換気発作
#30.
症状・状態像・類型 精神機能ごとに症状 を観察する 各症状の組み合わせや関連 性などを考慮しながら、総合判 断して、状態像としてまとめる 主な症状 状態像 不眠 焦燥感 意欲低下 抑うつ状態 自責感 状態像から考えられる鑑別疾 患を挙げる 診断分類(類型) うつ病 抑うつ状態 パーソナリティ障害 幻聴 妄想 不穏興奮 幻覚妄想状態 統合失調症 「うつ」「不安」も症状と状態像と診断分類(類型)がある 30
#31.
疾患と症状の対応 統合失調症 躁状態 うつ状態 高齢者ではみられ ることがあるがま れ 高齢者ではみられる ことがあるがまれ 知覚 幻聴、幻嗅、幻味、幻 触、体感幻覚 (幻聴が最も多い) 思考 滅裂思考、言葉のサラ 観念奔逸 ダ、思考途絶 誇大妄想(血統妄 思考吹入、思考奪取、 想、発明妄想) 思考伝播、思考察知 被害妄想(注察妄想、 追跡妄想、被毒妄想) 思考制止 微小妄想(貧困妄想、 罪業妄想、心気妄 想) 感情 感情鈍麻 爽快気分 抑うつ気分 行為心拍 意欲低下、食欲亢 進・低下、性欲低下 制止、昏迷 意欲・ 意欲低下 意志 昏迷、途絶 公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療 三村将・幸田るみ子・成本迅
#32.
症状・状態像・類型(鑑別診断) 主な症状 ・抑うつ気分 ・思考制止、精神運動制止 ・微小的内容の妄想 ・睡眠障害 ・食欲の低下 ・頭重感 ・高揚気分 ・多弁・多動 ・易刺激性 ・観念奔逸 ・誇大的内容の妄想 ・睡眠障害 ・食欲の亢進 ・興奮 ・昏迷 ・カタレプシー ・拒絶症 ・無言 ・常同症 ・反響現象 ・幻覚 ・妄想 ・意識障害 ・精神運動興奮 ・幻覚 ・注意・集中困難 ・記銘障害 ・焦燥感 ・易疲労感 ・頭痛、めまい 状態像 状態像がみられる主な疾患 抑うつ状態 ・気分症(うつ病、双極症) ・統合失調症 ・神経症性障害 ・器質性精 神疾患 ・症状性精神疾患 ・物質関連症 躁状態 ・双極症 ・器質性精神疾患 ・症状性精神疾患 ・物 質関連症 緊張病症候群 (カタトニア) ・統合失調症 ・うつ病 ・双極症 ・自閉スペクトラム症 ・器質性精 神疾患 ・症状性精神疾患 幻覚妄想状態 ・統合失調症 ・物質関連症 ・意識障害 ・器質性精神疾 患 ・症状性精神疾患 せん妄 もうろう状態 神経衰弱状態 ・器質性精神疾患 ・症状性精神疾患 ・てんかん ・神経症性障害 ・うつ病 ・器質性精神疾患 ・症状性精神疾患 ・物 質関連症 みんなのメンタルヘルスガイド こころの健康がみえる 32
#33.
うつ状態の評価と鑑別診断 意識障害を伴う? 脳器質性障害を伴う? うつ状態? ※せん妄(低活動性含)、 意識障害 ※認知症、頭部外傷、脳血管障害 など アパシー? 大うつ病性 エピソードを満たす 適応障害 物質 誘発性 ※IFNなど) ストレス終結 後6ヶ月以内 に回復 ストレスの影 響が強くかつ 持続中 適応障害 身体疾患に伴う? ※甲状腺機能低下症 ど 気分障害 ※躁病エピソードの可能性・既往の有無など 単極性 うつ病 双極 Ⅰ型 双極 Ⅱ型 そのほかの 気分障害 気分障害への移行注意群 がん治療医が本当に知りたかった緩和ケアのレシピ
#34.
34
#35.
精神症状の捉え方 • まず患者の全体像の概略を観察し、次に客観症状 を観察し、ついで問診を通して患者の主観症状を把 握し、最後に、再び患者の全体的な状態をまとめて 把握する。 • 実際には、患者とできるだけ自然な人間関係を保ち ながら、観察をすすめる必要がある。そのため、客 観症状と主観症状、要素的精神機能と全体像の観 察は、たえず行きつ戻りつしながら最終的な判断へ と導かれていくこととなる
#36.
精神症状の把握の注意点 • 精神症状(心理現象・精神現象) =内的体験(個人の主観)+行動(外部表出、外部観察可) ≓行動ないし行動から観察(推測)できる内的体験(感情と情動 、症状と徴候) • 科学的対象としての精神症状の評価には、評価対象への概 念規定と名称付与、測定手続き(操作的)の作成を要する。 内的体験を行動表出に誘導する技術が必須である • 正常の3軸:価値的、統計的、個体的正常の使い分けや正常 と異常の区分点に注意(一般的には意識されない) • 症状、状態像(症状群)、病名の違いに注意(しばしば混同) 36
#37.
精神機能 快不快の気持 ち 五感、振動覚 など 知覚 エネルギー (=行動) 意欲 感情 覚える 思い出す 思考 記憶 考え (=観念) 自我意識 自分と回り(外界)が わかる(覚醒度) 知能 意識 自分(自我)と回り(外界) をわける→自分は自分 であるという意識
#38.
下位の混乱は上位の症状の把握を困難化・修飾する 幻覚・錯覚 不安 抑うつ 恐怖 怒り 知覚 意欲 感情 記銘力障害 ここの障害で 自我障害 興奮 意欲低下 思考 記憶 妄想 自我意識 ここの障害で 認知症や知的障害 知能 ここの障害で 意識障害やせん妄 意識 覚醒水準の低下 見当識障害 注意障害
#39.
精神症状のみかた • 精神症状の検査の目的は3つあり、①意識障害の 有無、②知能障害の有無、③精神科的異常の有無 の判断することにある • ①と②には神経心理学、③は精神症候学の知識と 実践能力を要する。 • ①、②の鑑別が意外と精神科医は苦手なので注意 をする必要がある
#40.
精神症状の分類 • 精神機能の基礎をなし、精神活動全体を支える「意識」の異 常 • 患者の表出面から捉えられる精神症状 (表情の異常、行動の異常、言語の異常、精神作業能力ー知能の異常・記 憶の異常) • 患者の体験面を主にした精神症状 (知覚の異常、意志の異常、感情の異常、自我意識の異常、思考の異常) 海面上の氷山の部分(表出面からの精神症状) 海面下の氷山の部分(体験面からの精神症状) 海水(意識)
#41.
状態と特性 • 人間を心理学的に検討するとき、心理的要因について、それ が状態であるか特性であるか、十分に検討を払う必要があ る • 状態:短期的に変動するものを意味する 気分や感情など • 特性:長期的に形成され、容易に変動することがないものを 意味する パーソナリティや知識など • 気質や性格が長期に形成されるものであるとすると、環境や 役割により変容する習慣的性格(役割性格)は、特性の中で もやや短期的で変容が期待できるパーソナリティといえる メディカルスタッフのための基礎からわかる人間関係論 山蔦圭輔 本田周二
#42.
パーソナリティの種類 役割性格 習慣的性格 職業などの役割 に応じた性格 置かれた環境 により変化す る性格 性格 気質 生まれながらにして 備わっているもの 誕生してからしば らくの間で身に着 けられる基本的な 特徴 メディカルスタッフのための基礎からわかる人間関係論 山蔦圭輔 本田周二
#43.
見立て・把握の手段 • 面接(医療面接・問診・相談) 人と人(単数・複数)が特定の目的を持ち、直接の顔合わせを行い、主に会 話を通して、情報交換(入手と提供)を行う。構造化面接、半構造化面接、非 構造化面接に区別。 • 観察 対象者の言動を記録・分析(参加観察と非参加観察) • 質問紙法 文あるいは文章を質問形式で対象者や関係者に提示し、言語または記号 で回答を求め、対象者の意見・態度・知識・感情・行動様式などを調べる • 心理検査法 個人の能力や性格などの測定を目標に、問題と実施・採点法、基準集団 の統計値が既知の標準化されたもので行う。 • 実験法(治療・介入) 刺激材料などの要因(独立変数)を厳密に操作した上で行う観察により得ら れた結果(従属変数)を基に分析する。
#44.
「臨床実践という動的構造」の私の認識論的図式 外部知識情報 情報 価値観 家庭・職業状況 経済状況 (私には当初不明) (理論・エビデンスなど) 能力・価値観 臨床判断 行動・治療計画 語り 他者 (患者/クライエント) ※実際は家族他複数 支援者 (援助者としての私) 観察 情報 交流(面接) 援助者としての私やクライエントや、 その周囲の状況の全てを観察する 「視点」「視るものであった視られる 対象とはならないもの」 現象が生起する場所 としての意識 支援者 (視点としての私) 総合臨床心理学原論●サイエンスとアートの融合のために 斎藤清二 改変
#45.
精神科面接で精神科医に求められる姿勢 内面に想起する イメージ、回想など 内面に想起された イメージ、回想など 交流・接近 共感し、想像し、 追体験する 感情移入的 精神科医1 患者 環境 一人称的理解・接近 「私であったら・・・」 観察し、 思考する 精神科医2 三人称的理解・接近 自分と別個の対象としての理解 客観的・対象化した理解
#46.
チャールズ・ミラー・フィッシャーの17のルール① • • • • • • • ベットサイドは君の研究場所だ。患者から真剣に学びなさい ベットサイドで課題が生じたら、すぐに決着をつけるようにしなさい 仮説を立てなさい。そして正しいと受け入れる前に、反証するようにある いは例外を見つけるように精一杯努力しなさい いつも1つかそれ以上の臨床研究のプロジェクトを進めなさい。そうする と日々のルーチンがもっと意味深くなる 臨床診断に到達しようとするときには、その疾患の5つの最もよくみられ る特徴(病歴上、身体診察上、検査上)について考えなさい。もし5つのう ち少なくとも3つがなければ、その診断は間違っているらしくなる なるべく量的に、正確に記載しなさい 症例の詳細は重要である。その分析によって、とりあえず修行が進んだ ばかりの人とエキスパートを分ける BRAIN and NERVE 脳神経内科医のキャリアパスとリーダーシップ 臨床力とは何か? どのように身につけるか? 福武敏夫
#47.
チャールズ・ミラー・フィッシャーの17のルール② • • • • • • 出会った現象を集めて分類しなさい。それらの機序や意義は、後に十分 な症例が蓄積されたときにより一層明らかになるだろう 聞いたことや読んだことは、自分自身で納得したときだけ完全に受け入 れなさい 自分自身の過去の経験と他人(文献や経験があり尊敬できる同僚)のそ れらから学びなさい 講義や講演する人は教訓的な話し方をするのが良い。良く聴き、質問し、 呈示することで他人に上手く教えることができる 論文を多くかつ入念に書きなさい。あなたの仕事やアイデアから他の人 に学んでもらいなさい 知られている疾患や診断を持つ患者たちの特異な詳細に注意を払いな さい。そうすれば後になってよく似た現象が他の症例に見られるときに役 立つだろう BRAIN and NERVE 脳神経内科医のキャリアパスとリーダーシップ 臨床力とは何か? どのように身につけるか? 福武敏夫
#48.
チャールズ・ミラー・フィッシャーの17のルール③ • • • • よい聞き手でありなさい。初心者の口からも鋭い知恵が発せられることが ある 不十分な検討のままで症例を余り合致しないとりあえずの診断で済ませ る誘惑に抵抗しなさい 患者というのはいつも自分のできる最善を行っている 人間としての患者に対し強い興味を持ち続けなさい BRAIN and NERVE 脳神経内科医のキャリアパスとリーダーシップ 臨床力とは何か? どのように身につけるか? 福武敏夫
#49.
観察・診察情報の正確な記録・可視化 ✓ 「他の専門家との協働」は専門家に要求される大事な能力である。 ✓ 医療・介護スタッフや法律家など他の援助職とチームとして支援する際、 集団としての見解が明確に共有される必要がある。 ✓ 介入テーマが、外傷や高血圧、体重コントロールなどなら、写真や画像 データ、血液・身体検査の数値で明確かつ客観的に情報共有でき、介入 後の効果判定など評価も容易である。 ✓ 数値・画像化しがたい精神症状、感情やコミュニケーションの問題などの 場合、受け取り手やタイミングにより、情報は極めて主観的になる。 ✓ 主観的な要素の大きいものを、どのように客観的に認識し、記録し、情 報共有するか、論理的に考え、トレーニングしておく必要がある。
#50.
精神症状の簡易の体系的症状チェック 表出 基本的精神症状 知・情・意の各分野 内的体験 巣症状 表情 姿勢・振舞 服装・身繕い 社交的態度(礼節、ラポール) 話し方・了解 意識 知能 記憶 性格 思考・判断 感情 行為・意思 妄想 幻覚 自我意識障害 失語 失行 失認 精神科診療のヒント 先輩が後輩に語る 太田敏男
#51.
高次脳機能障害の見取り図 非流暢性失語 前頭葉障害 遂行機能障害 情動障害 歩行失行 離断症状 半球間離断症状 半球内離断症状 頭頂葉障害 側頭葉障害 流暢性失語 (優位半球) 観念失行 聴覚失認 観念運動失行 記憶障害 構成失行 Lluver-Bucy 失読・失書 症候群 純粋語聾 Gerstmann 症候群 頭頂葉障害(劣位半球) 構成失行 着衣失行 半側空間無視 立体視障害 視覚的定位障害 動作維持困難 身体失認 病態失認 後頭葉障害 視覚失認 視覚失調 相貌失認 Balint症候群 色彩失認 純粋失読 障害の局在は 絶対的なものではない 51
#52.
52
#53.
関与しながらの観察 • 精神科医療、特に診察や面接で、不用意な言動で、患者や 家族を怒らせたり、予想外の反応が返ってきて、戸惑わなか ったことの無い人はいないであろう。診察(問診・触診)も面 接も、診察者・面接者からの言語・非言語的働きかけを要す るものであるが、観察や視診は、適切に使用すれば、リスク を少なく、相手の情報を得ることができる • 「関与しながらの観察」とは、 治療者が臨床実践を行うにあ たって重要なこととして、精神科医のサリヴァン,H.S.が提唱し た臨床的態度のこと。患者をよく「観る」ことは大切だが、この 場合の、「観る」「観察する」とは、見る、聴く、感じるなど、患 者の心とその表出を把握することである。 53
#54.
「関与しながらの観察」+α • 臨床において、学習と経験で蓄えられた精神科医としての専 門性を持ち、対象を観察し、聴き、感じ、考え、認識して、そ の認識や情報をもとに、場合によっては仮説を立て、又患者 を観て、何かを認識する。精神科医としての専門性を基盤と して、積極的・相互的に認識に行くという過程 • 患者を診て、症状に関する情報を習得し、その後、既存の概 念や診断基準に考え観てその情報の位置づけや整理を行う 。観察し認識して得た結果を精神病理体系に位置づけ、ッ分 類整理する必要がある(日常言語的記述を精神医学用語・ 精神症候学用語に翻訳する必要がある。この作業を行うに は、一般的症候学的知識、疾患ごとの主な症候学、逆に、疾 患ごとの鑑別疾患、鑑別の着眼点が必要である。 54
#55.
見立て・把握の手段 • 面接(医療面接・問診・相談) 人と人(単数・複数)が特定の目的を持ち、直接の顔合わせを行い、主に会 話を通して、情報交換(入手と提供)を行う。構造化面接、半構造化面接、非 構造化面接に区別。 • 観察 対象者の言動を記録・分析(参加観察と非参加観察) • 質問紙法 文あるいは文章を質問形式で対象者や関係者に提示し、言語または記号 で回答を求め、対象者の意見・態度・知識・感情・行動様式などを調べる • 心理検査法 個人の能力や性格などの測定を目標に、問題と実施・採点法、基準集団 の統計値が既知の標準化されたもので行う。 • 実験法(治療・介入) 刺激材料などの要因(独立変数)を厳密に操作した上で行う観察により得ら れた結果(従属変数)を基に分析する。
#56.
観察(observation) • 「対象となる実態を知るために注意深く見る」 • 知り得た情報から何かを導き出し、目的とする物事 の判断や行動をしていくために必要な行為 • 観察は、観察者がそれぞれ持っているものの見方( 認識)が必ず存在するため、たとえ同じ対象を見た としても、見る側による違いが生まれることがある PT・OT・STのためのこれで安心コミュニケーション実践ガイド 第3版 山口美和 56
#57.
観察法 • 行動を観察、記録、分析し、その行動の質的・量的 特徴や背後にある法則性を解明する方法 57
#58.
観察すべき非言語要素 身体言語 (body language) 準身体言語 (paralinguistic elements) 自己を取り巻く空 間と時間に対す る接し方(個人の 性格および生ま れ育った文化に よって決定) 身振り ジェスチャー、動作、姿勢、しぐさなど 表情 笑顔、泣き顔、顔色、ふくれっつら、仏頂面など 生理反応 および反射 赤面、身震い、発汗、過呼吸など 体つきと 身体特徴 体格、体重、身長、顔色、歯並び、刺青など 容姿 風貌、身なり、服装、髪型、アクセサリー、化粧など 声と話し振り 音声、口調、音量、言葉づかい、語調など 身体 スペース 対人間距離、座席位置など 時間概念 正確/ルーズ、単時性/複時性 カウンセリングテクニック入門 大谷彰 58
#59.
視診(観察)① ①外見(全般的な見かけ・身だしなみ) ✓ 患者がパッと見た目どんな様子か。第一印象の根拠を具体的に表現・説 明(服装、化粧、風貌、体臭や酒臭など。 ✓ 年齢や文化的背景、社会的役割に合致した服装・風貌か合わせて検討 • • • • • 仮面様顔貌、小刻み歩行→パーキンソン症状 足の横幅の広い歩行→正常圧水頭症による認知症 奇妙な服装、化粧、風貌(衒奇的)→統合失調症 濃い化粧、派手な服装→躁状態? 化粧・髪型・服装に無頓着で疲れ果てた印象→うつ状態?
#60.
視診(観察)② ②非言語的コミュニケーション • 表情、話し方、身振り、態度が内面を反映する • 「あんた馬鹿ね」の異なる意味あい • 気づかずに発する非言語コミュニケーションの存在を意識し て、意味に思いをはせることが患者と自分の理解に繋がる • 待合室での振る舞いは医師の目が届かない。 (診察室でも目が看護師にしか見えない情報は多い) • いつも1万円で支払う→認知症?精神遅滞? • 外来・病棟での様子、他患との交流、ふるまいの観察が、治療に有益な 情報をもたらす。
#61.
観察から読み取ることができる非言語情報 観察項目 獲得情報 体格 性格・生活習慣・栄養状態 みなり・外見 生活レベル(経済状態)・趣味・趣向 姿勢 身体の状態・精神状態・性格・年齢 表情 心の状態(楽しさ・喜び・悲しさ・怒り・不安)・理解の度合 顔色 体調・栄養状態・精神状態 目の動き 性格・自信の有無・落ち着き(心の動き)・精神状態 パーソナル・スペース 携帯用の縄張り portable-territory 精神状態・性格・人間関係 動作(身体の動き) 心身の状態・文化背景・しつけ(生育環境)・習慣・マナー 人柄・習得している技術・教育 時間行動 (どのように使っているか) 性格・価値観・自己管理能力・生活スタイル・身体能力・ 出身地域 身体の生理的変化 (発汗・発熱・震え) 緊張状態・体調の変化・性格 61
#62.
部位別の一例 • 目(心の窓) 瞳孔が開き、大きく見える⇒交感神経興奮(怒り、恐怖) • 口唇・口腔内 口唇:乾燥(脱水)、色(チアノーゼ) 口腔内:歯(嘔吐による溶解) 舌(舌苔) 扁桃(腫脹) 舌の動き:偏位、ジスキネジア 62
#63.
診察時の患者の表情・行動の観察のポイント 名前を呼ばれ てから患者が 入室するまで ・足取りは軽いか? 時間がかかっていないか? ・どんな履物か?(例えば寝起きにスリッパで受診するくらい急な受 診なのか? 望まない受診ではないか?) 入室時の様子 ・入る前に家族と口論していないか? ・椅子に座るのを待たずに話し出す。あるいはまったく話さない ・当たりをキョロキョロしている様子。ぴくついている様子はないか? ・凶器になるような危険物を持ち込んでいないか? 表情 ・奇異な表情(悲しい話をしているのに顔は笑顔など)をしていない か? ・清潔感はあるか? 美容や化粧ののりはよいか? ・疲労感(目の下のくま、眉間のしわなど)はないか? 診察中の態度 ・上の空、拒絶的、妙に話を合わせる,何を言っても肯定する,拒絶 する ・貧乏ゆすり、手振り身振りはないか? 震えていないか? ・退室の際の動作・振る舞いはどうか?(退室の際の言動に本音が 現れる) 精神看護学② 精神障害をもつ人の看護 メヂカルフレンド社
#64.
観察した内容の臨床現場での活用 • • • • 本人にフィードバックする 記録する 必要とする関係者に対して情報提供する 家族に報告する • 観察の際の注意点 「先入観」に惑わされない 観察した情報を確かめる 他者の観察眼も活用する 64
#65.
SNAP diagnosis ~症状⇒鑑別診断~ • 著名なるいそう、歯の溶解:摂食障害 • 手指振戦、冷汗:アルコールやベンゾジアゼピン 系薬剤の離脱症状 • 流涎、手の震え、小刻み歩行:薬剤性パーキンソ ニズム • 上品な服装にシミ:認知症 • 周囲を気にする動作:統合失調症
#66.
全般的な見かけ・身だしなみ 推察される病理や問題 服装や髪の乱れ、剃ってないひげ、 体臭、尿臭 セルフケアの減退。脳障害、統合失 調症など精神病性障害、抑うつ症状、 薬物の使用などが疑われる 不思議な服装(全身黄色など)、突飛 精神病性障害が疑われるが、信仰 なメイク(著しくはみ出した口紅、明ら 上の理由、ファッションへのこだわり かになじまないメイク)、とんちんかん などの可能性もある な装身具(統一感のないアクセサ リーなど) 酒臭 アルコール性障害に加え、気分障 害・不安障害に対して気分を紛らわ せようとしている可能性がある。面接 前の飲酒という判断力の問題も考え られる。 身だしなみが整っている 社会機能が維持されている 職場にサンダル履き、露出の多い服 判断力低下の可能性。職場で浮いて 装 いる。周囲とうまく人間関係を作れな い可能性が考えられる。
#67.
代表的精神疾患におけるフィジカルアセスメント① 疾患 部位 徴候 背景・病理 統合失調症 全身 やせ/肥満,着衣のみだれ・モノ トーン・質素・寝間着のまま 抗精神病薬の有害作用、不活発、無 頓着、気力低下 頭部 頭髪の乱れ 陰性症状で整容が不整に 顔 耳栓やサングラスをつけている 幻聴・注察妄想が悪化 頸部 胸部 脈診(不整脈に注意) 抗精神病薬の長期使用で不整脈に 上肢 指にタバコ脂 ヘビースモーカー 頭部 抜毛 発達障害が背景にあることも 顔 耳以外の部位のピアス、何カ所 も穴を開ける 若者の文化・ファッションと間違えや すい 頸部 胸部 首にためらい傷、自絞・索状痕 既遂性の高い手段であることを把握 する。他の部位の自傷を探す。服毒 にも注意。 上肢 自傷痕(手首・肘窩)、根性焼き (たばこ火傷痕) 最も多く,反復性 下肢 自傷痕 上肢から発展 自傷行為 精神看護学② 精神障害をもつ人の看護 メヂカルフレンド社
#68.
代表的精神疾患におけるフィジカルアセスメント② 疾患 部位 徴候 うつ病 全身 体重減少・るいそう、衣服はモノトーン・質素・寝間 着 食欲減退、気力低下 頭部 頭髪の乱れ 易疲労感・制止で整容が不整に 顔 憂うつ、悲哀、眉間のしわ、伏し目がち、視線固定 抑うつ気分、苦悶、自信喪失 頸部 胸部 前屈、うなだれている、動悸 抑うつ気分、パニック発作 言動 寡言・小声・単調、寡働 精神運動制止 全身 華美な服装 頭部 頭髪の乱れ、髪染め、装飾品 注意転導(不注意)で整容が不整に 顔 快活、派手な化粧、装飾品 躁的気分変調、高揚感、誇大性 頸部 胸部 香水・装飾品 四肢 マニキュア・ペディキュアが派手、指輪や高価な時 計 言動 多弁・大声・だじゃれ、多動、行為心拍(行動の抑 制ができない) 躁状態 背景・病理 躁的気分、意欲亢進 精神看護学② 精神障害をもつ人の看護 メヂカルフレンド社
#69.
代表的精神疾患におけるフィジカルアセスメント③ 疾患 離脱せん妄 神経性やせ症 /神経性無食 欲症 部位 徴候 背景・病理 頭部 頭部の振戦 交感神経が刺激されている状態 顔 過度な発汗、散瞳 首・胸 過度な発汗 言動 混乱・事実誤認、大声、怒声、過活動 意識障害、精神運動興奮 四肢 振戦、失調性歩行 交感神経刺激、アルコール性小脳症状 全身 るいそう、脱水、低体温、低血圧、産 毛の密生、無月経、粗造な(きめが粗 い)皮膚 代謝の異常、内分泌異常 顔 唾液腺腫脹、貧血、う歯・エナメル質 溶解 自己誘発性嘔吐による 頸部 胸部 食道炎症と吐血、徐脈・呼吸苦 自己誘発性嘔吐、代謝の低下・肺水腫 腹部 背部 腹部膨満、腹部大動脈音、上腸間膜 症候群,鼠径ヘルニア 腸間膜脂肪組織の消失 上肢 吐きダコ 口の中に指を入れて吐く 下肢 下腿浮腫 低アルブミン血症 行動 過活動 低栄養に基づく変化 精神看護学② 精神障害をもつ人の看護 メヂカルフレンド社
#70.
診察時の患者の表情・行動の観察のポイント 名前を呼ばれ てから患者が 入室するまで ・足取りは軽いか? 時間がかかっていないか? ・どんな履物か?(例えば寝起きにスリッパで受診するくらい急な受 診なのか? 望まない受診ではないか?) 入室時の様子 ・入る前に家族と口論していないか? ・椅子に座るのを待たずに話し出す。あるいはまったく話さない ・当たりをキョロキョロしている様子。ぴくついている様子はないか? ・凶器になるような危険物を持ち込んでいないか? 表情 ・奇異な表情(悲しい話をしているのに顔は笑顔など)をしていない か? ・清潔感はあるか? 美容や化粧ののりはよいか? ・疲労感(目の下のくま、眉間のしわなど)はないか? 診察中の態度 ・上の空、拒絶的、妙に話を合わせる,何を言っても肯定する,拒絶 する ・貧乏ゆすり、手振り身振りはないか? 震えていないか? ・退室の際の動作・振る舞いはどうか?(退室の際の言動に本音が 現れる) 精神看護学② 精神障害をもつ人の看護 メヂカルフレンド社
#71.
観察と洞察と本質 • 観察 対象の実態を知るために注意深く見ること。その様子を見て、 その変化を記録すること。変化をどの程度発見できるかが重要 • 洞察 鋭い観察力で物事を見通すこと。見抜くこと。 物事を深く鋭く 観察する能力。物事を観察して、その本質や、奥底にあるもの を見抜くこと。見通すこと。 洞察のためには観察が必要。人間の心理を洞察する • 本質 物事の本来の性質や姿。それなしにはその物が存在し得な い性質・要素 71
#72.
洞察 • 問題解決の手段であり、問題を要素に分解し、要素 間の関係を明確にし、それを全体として捉え直すプ ロセス • 人間関係やコミュニケーションにおける問題や悩み を解決するために、自分の周囲を取り巻く人物を可 視化し、その人物と自分の間に存在する利害関係 を明確にするプロセス 72
#73.
視座・視点・価値観 • 視座:ものごとを見る立場のこと • 視点:ものごとを見る見方の要点(目の付けどころ) • 価値観:その視点から何を重要視し、大切にしたい のかを判断するための基軸、考え方の基準 73
#74.
診療の場における4つの目(視座) ④ ③ 患者 医師 ① ② ①の目:医師が患者を見る目 ②の目:医師が自己の内面を見る目(メタ認知) ③の目:患者が医師を見る目(医師が患者に取ってどのように移るか) ④の目:診療の場全体を見る眼(メタ認知) 新図説精神分析的面接入門 前田重治
#75.
心理学的視点 • 人間理解を深め、具体的な人間に関わるための人 間関係や自分を俯瞰する視点 自分で自分を見る目(メタ認知) 関係性を俯瞰する目 • 人生の様々な局面で、心の多様な側面を見つめる 視点 現実・現象を多層的にみる視点 主観に寄り添いつつ、多面的・客観的に理解する 75
#76.
4つの目で枠組みを変えて捉える 虫の目 現場(ミクロ)の実 態を把握する目 第一線の現場に行き、実態(生情報)を把握 する。 細かく見る目・現場の視点 三現主義:現場・現物・現実 鳥の目 全体(マクロ)を俯 瞰・判断する目 目先の現実や利害にとらわれず、大局的 視点から自身のポジションを確認し、優先 課題を感じ取る目 魚の目 流れを感じ取る 流れやトレンドを捉え続けつつ、環境変化 (将来を予測・展望 を把握する目。 し、決断する)目 蝙蝠の目 切り替えて、別の 側面を見る目 物事を反対から見たり、一般的見方にとら われず、常識を疑い、固定観念を取り払う。
#77.
解像度を上げる4つの視点 深さの視点 原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下 げる 広さの視点 考慮する原因や要因、アプローチの多様性 を確保する 構造の視点 「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要因を、 意味のある形で分け、要素間の関係性や それぞれの相対的な重要性を把握する 時間の視点 経時変化や因果関係、物事のプロセスや 流れを捉える 解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法 馬田隆明 77
#78.
78
#79.
精神的現症検査 (Mental Status Exam:MSE) ✓ 「面接中の患者の外見、話しぶり、行動、思考の記述(カプラン・H・I)」「 検査者の精神科患者に対する面接時の観察や印象を要約した総体」と 言われる ✓ アメリカでは精神科や神経科で広く使われている技法で、精神科医や神 経科医が面接時に使う質問項目に従い、目前の患者の状態を言語化す る技術で、他の専門家との情報共有に用いられているフォーマット。 ✓ 患者本人の訴えによる主観データと、援助者の観察による客観データか らなり、患者の認知・感情・情緒的機能の現状の描写と共に、今後の精 査点を明らかとして、ケースフォーミュレーションの手がかりとなる。
#80.
精神症状の種類 ~主観症状と客観症状~ 主観症状 患者が直接体験するもので、観察者は患者の言 葉による記述を通して間接的にしか知ることので きないもの 知覚、思考、感情の異常などの多くの精神症状は 主観症状に属する 客観症状 われわれが知覚できるものとして現れる症状で、 表情、言語、行動、作業(心理検査など)、筆跡、 作品(日記、文学作品、美術作品-絵画、彫刻、建 設)など ※人の精神活動の外部への表出は、筋肉運動と、自室神経系 の変化と、言語内容とを介して行われる。患者の顔面と両手指 をよく観察する
#81.
症状と徴候 変化した機能が表す現象 症状(symptom) 兆候(sign) 本人が自覚する健康上の異常現象 医療者が外から観察して見出す現象 患者本人に知覚される現象 主観症状あるいは自覚症状 疾患や病態を医学的に直接指し示す 現象 客観症状または他覚症状 腹痛や頭痛 回盲部圧痛(虫垂炎時)、項部硬直(髄 膜炎時) ※今日、症状や兆候の使い分けは今日あんまり厳密にされていない。 精神医学の知と技 精神症状の把握と理解 原田憲一
#82.
MSE(精神的現症検査) ✓ 全般的な見かけ、身だしなみ ✓ 知覚障害 ✓ 面接時の態度 ✓ 患者の報告による気分 ✓ 感覚/意識と見当識 ✓ 面接者の観察による感情・情 ✓ 体の動き・運動機能 緒の内容や振幅 ✓ 発言の質と量 ✓ 知能 ✓ 思考過程 ✓ 洞察力 ✓ 思考の内容 ✓ 判断力 ※必要な情報を効率的かつ包括的に収集できるように構成されている。
#83.
精神的現症評価MSE(medical status examination)の内容 外見: 年齢、性別、人種、体格、姿勢、視線の合わせ方、服装、身だしなみ 、礼儀、診察者に対する注意力、目立つ特徴、顕著な身体的異常、表情、覚 醒度(緊張度) 運動: 遅延、興奮、異常な動き、歩行、緊張病症状 言語: 速度、調子、音量、量、表現、自発性 感情: 安定性、範囲、適切性、強さ、情緒、気分 思考内容: 自殺念慮、死への願望、他殺念慮、抑うつ的認知、強迫観念、 沈思黙考、恐怖症、関係念慮、誇大念慮、魔術的思考、妄想、過大評価 思考過程: 連合、一貫性、論理性、流れ、音連合、保続、言語新作、途絶、 注意 知覚: 幻覚、妄想、離人症、非現実感、既視体験、未視体験 知性: (大まかな印象)平均、平均以上、平均以下 洞察: 病識 精神科シークレット Jacobsen JL. Et al. 編 四宮滋子 他 監訳
#84.
精神現症評価の項目 外観 体格、姿勢、服装、清潔保持機能 行動 歩行、態度、視線、常同行為、不随意運動、奇異な動作 注意・ 意識水準(覚醒度)、注意転導性、見当識、失語・失行、記憶、知 認知 識・語彙、理解力、表現力、病識 情動 表情や態度に現れた情動、自覚され訴えられた情動、不安、悲哀、 抑うつ、焦燥、憤怒、場面への反応性、場面との適切さ、感情の不 安定性 言語・ 口調(声量、発語量、発話速度) 思考 思考の速さ(思考制止、思考促迫、観念奔逸) 過程 思考の連関(迂遠、滅裂、途絶、連合弛緩、保続、フラッシュバック) 知覚・ 異常な知覚(錯覚、幻覚、被影響体験、離人感、現実感喪失など) 思考 異常な思考(優格観念、妄想、作話、強迫観念、予期不安、自殺念 内容 慮など) 公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療 三村将・幸田るみ子・成本迅
#85.
精神的現症検査(MSE)① 全般的記述 外観 服装と身だしなみはどうか。姿勢はどのよう か。 行動と 精神運動活動 精神運動静止(抑制)あるいは興奮を呈して いるか。チック、げん奇症、硬直性のような異 常な運動行動をみせるか 検査者に 対する態度 臨床家に対してどのようにふるまったか。臨 床家との信頼関係のレベルはどうであったか。
#86.
精神状態検査(MSE)② 感覚と認知 覚醒と意識水準 周辺事情に関して認識が減退したようすだったか 見当識 時、所、人に対して見当識は正常か 記憶 最近の記憶(朝食に食べたもの)、遠隔記憶(子供時代の 思い出)はどうか。認知の障害を隠そうと何かしたか(作 話) 集中と注意 面接中、集中力に問題があったか。不安や気分障害、あ るいは、意識の混濁や学習欠陥によるものとおもわれた か 読み書き能力 簡単な文章を読んだり書いたりできたか 視空間能力 簡単な図形を模写できたか 抽象的思考 抽象的な方法で考えることができたか 情報と知性 の程度 教育水準や背景から期待される知的活動を達成できるか
#87.
精神状態検査(MSE)③ 気分と情動 気分 感情に関して自発的に話したか、感情の深さや強度はどの ようであったか。面接中に頻繁な気分の変動があったか。 情動 面接中、(顔の表情や声の調子などから推測して)情緒的 反応を見せたか、情緒は気分と合致していたか。 適切性 感情的反応が話されている話題と適合していたか 話し方 発話の量、速度、質はどのようだったか。 知覚の異常 幻覚や錯覚を経験していたか。そうであれば、どの感覚系 が関係していたか 思考 思考形式 あるいは形式 考えに、過剰あるいは欠損気味なところがあるか。問われ た質問についていき、適切に答えられたか 思考の内容 妄想を経験していたか。思考内容に関して、ほかに強迫観 念、先入観念、自殺あるいは殺人念慮のように注目すべき ものはあったか。
#88.
精神状態検査(MSE)④ 衝動の抑制 性的衝動、攻撃衝動、その他の衝動を抑制 できるか 判断力と洞察力 社会的判断能力を示したか、どの程度まで 自分の疾病を認識していて、どの程度その 疾病を理解しているか。 信頼性 自分の状況をどの程度正確に報告できたか。
#89.
MSEの際に考慮すべき項目 ①クライエントの外見におかしいところはないか ②クライエントのセラピストや他者(家族や友人)との関わり方は適切か ③クライエントは人物、場所、時間に対して見当識があるか(時間への見当識には、 年月日、曜日、季節が含まれる) ④クライエントは状況に適応できるか。クライエントはセラピストークライエント関係の 性質を理解し、適切な態度を取っているか。 ⑤クライエントの感情(最も優勢な感情)はどうか ⑥クライエントの気分(クライエントが述べた感情の状態)はどうか、クライエントが述 べた気分はセラピストのの観察と一致しているか ⑦言語野の異常を示す根拠はあるか。話す速度、イントネーション、抑揚、非言語的 ジェスチャーや表現を考慮すること。また、それらは話す内容と合致しているか。失語 の所見はあるか。 ⑧クライエントの考えには注視すべきものがあるか。妄想、強迫、不必要な不安や恐 怖はあるか ⑨五感に異常はあるか。幻覚や妄想の訴えはあるか 家族面接・家族療法のエッセンシャルスキル 初回面接から終結まで ジョーエレン・パターソン他
#90.
MSEの際に考慮すべき項目 ⑩クライエントの注意力や集中力は阻害されていないか ⑪短期または長期記憶の障害が、病歴や正式な検査結果と報告されていたり、発見 されていないか ⑫クライエントの社会的・倫理的判断はクライエントの文化的背景の範疇にあるか ⑬クライエントには自殺や他殺念慮あるいはその意図があるか。それを実行するた めの手段を有しているか。クライエントの衝動コントロールのレベルはどうか ⑭クライエントは、同等の教育的・職業的背景をもつ人と同程度の速さと正確さで計 算ができるか ⑮クライエントは空間認識が正しくできるか、左右の弁別ができるか ⑯適切な方向感覚があるか(慣れているはずの道で迷ったとの報告はないか) ⑰クライエントの抽象的思考力は教育レベルにふさわしいか ⑱クライエントは図形を模写することができるか 家族面接・家族療法のエッセンシャルスキル 初回面接から終結まで ジョーエレン・パターソン他
#91.
型と無形の型 • 複眼的視野・視点を持ちながら、多軸で考え、多面的に関わ る • 型(「理」=既にある理論)を持ちながらも、型にはめない(は めすぎない)思考(「物」=目前の現象について考えること)が 何より大切(批判的思考) • 一方で、型(形式)がないと、言語という曖昧な物を通しての 他者(患者・家族・多職種)とのやり取りは困難である(狭義 の論理的思考)
#92.
巨人の手の上で自由に踊るには • 長年蓄積された精神症候学、神経心理学など知識、各種ガ イドラインやマニュアルは、精神医学・精神科臨床のその時 点の英知で有るが、ある意味では過去のものである • 大いに参考にすべきだが、それらの修得そのものが臨床能 力向上に直結するわけでもなく、時間もなく、そこから外れた 物は捨象されやすいという欠点もある(例えば精神分析の重 厚長大な概念など) • 例えば、NMDA脳炎やコロナウイルスのような従来の知識や 概念では対応できない事態に遭遇する場合もある
#93.
まとめ • DSM-5、ICD-11など操作的診断基準で標準化をいかに目指 そうと、糸口になる「精神症状」の把握や記載が明確で無け れば、診断の前提となる事実が間違っており、いかに正しく思 考したところで、間違った前提からは間違った診断や治療法 しか生まれない。精神症状の把握とは、精神科医の必須の スキルであり、αで有り、Ωであると言えると思われる。 • 一方で、多忙な診療の中、面接で、患者への配慮をしつつ、 精神症状を正確に把握すること、つまり、治療的面接と診断 的面接を両立することは容易ではない(少なくとも当医には できていない)。精神科面接については、後にまた説明させ て頂く機会を持ちたいが、まずは、精神症状の把握の総論を 記載させて頂きました。説明が分かりづらくてすみません。 93
#94.
精神症候学の参考文献 入門書 基本書 応用書
#95.
精神科看護とMSE