#4.
1.痛風・高尿酸血症の治療ガイドライン2022からみた治療戦略
#5.
概念 痛風とは種々の原因によるプリン体代謝異常に基づく高尿酸血症を基盤に、急性痛風性関節炎、尿路尿酸結石および痛風腎を引き起こす疾患群に対する総称である。
なお高尿酸血症は,尿酸塩沈着症(痛風関節炎,腎障害など)の病因であり,血清尿酸値が7.0mg/dL を超えるものと定義する。性・年齢を問わない。
(日本痛風・核酸代謝学会:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.2022より)
#6.
新しい病型分類
#7.
治療ガイドライン
#8.
生活指導 食事療法 摂取エネルギーの適正化
高プリン食を極力控える
十分な水分摂取(尿量2,000mL/日以上) 日本酒1合、ビール500mLまたはウィスキー60mL BMI<25を目標に週3回程度の軽い運動
(有酸素運動) 血清尿酸値
の低下 飲酒制限 運動の推奨 肥満の解消 高尿酸血症・痛風に対する生活指導は、食事療法、飲酒制限、運動の推奨が中心となり、
肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待される。
#9.
治療目標
高尿酸血症の治療では、心血管障害など生命予後に関係する肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などの合併症もきたしやすい高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善することが最も大切である。
痛風関節炎を繰り返す患者や痛風結節を認める患者は薬物治療の適応となり、血清尿酸値を6.0mg/dL未満に維持するのが望ましい。
痛風関節炎を誘発させないために、尿酸降下薬は最小量から開始すべきで、必要に応じてコルヒチンカバーを併用する。
無症候性高尿酸血症への薬物治療の導入は血清尿酸値8.0mg/dL以上を一応の目安にするが、適応は慎重にすべきで、現時点で得られているエビデンスや薬剤の副作用について情報を患者に示し納得の上で開始することが望ましい。
#10.
2.痛風・高尿酸血症予防における新しい選択肢
#11.
食品・機能性表示食品 1. 血清尿酸値低下作用のある食品
ワイン: ビールや蒸留酒が尿酸値を上昇させるのに比べ、ワインは上昇が少ない。ワインに
尿酸値低下作用のある物質が含まれる。
コーヒー: カフェインレスのコーヒーでも尿酸値低下作用を示すが、茶は低下作用がない。
コーヒーに尿酸値低下作用のあるカフェイン以外の物質が含まれる。
乳製品: 肉・魚に比べて、乳製品は血清尿酸値を低下させる。大豆蛋白に比べて乳蛋白には
尿酸値低下作用のある物質が含まれる。
2. 機能性表示食品(機能性の食品表示が可能な保健機能食品のうち、事業者の責任において機
能が表示されている食品)
販売中の尿酸値に関係する機能性表示食品の成分は4種類(届出順)
アンペロプシン(ジヒドロミリセチン)、ルテオリン:フラボノイド
アンセリン(イミダゾールジペプチド):後述
PA-3(乳酸菌):後述
#12.
食品中のポリフェノールはフラボノイド、非フラボノイドに分類される。
コーヒーには非フラボノイドであるカフェ酸が含有され、in vitroでの弱いXOD阻害作用が報告されている。
フラボノイドとしてはミリセチン(ブドウ種子に含まれる)、ルテオリン、ケンペロール、ケ
ルセチン、イソラムネチンなどに、in vitroでのXOD阻害作用がアロプリノールと同程度であ
ると報告されている。
#13.
ヨーグルトの活用(乳酸菌PA-3株) 牛乳は栄養バランスの良い食品であることに加えて、尿酸排泄を促進させる作用をもつ。
また、ヨーグルトは牛乳を原料として乳酸菌で発酵させた食品である。
ヨーグルトを含む乳製品の摂取量が多いと、痛風の発症率が低いことが、大規模な観察研
究により示されている。株式会社 明治により発見された乳酸菌PA-3株は、他の乳酸菌と比べて、
腸管内においてプリン体を吸収されにくい形に分解し、プリン体を乳酸菌内に取り込み、栄
養源として利用する作用が強く、動物モデルにおいて、腸管から体内へのプリン体吸収を抑
制する(血清尿酸値を低減させる)ことが示された。
尿酸値の上昇を抑える乳酸菌PA-3株を機能性関与成分として配合した「明治プロビオヨーグルト
PA-3」が“機能性表示食品”として消費者庁に届け出されている。
#14.
海洋性アンセリン 20世紀初頭に発見されたアンセリンは、脊椎動物の骨格筋で合成されるイミダゾールジペ
プチドである。イミダゾールジペプチドは、β-アラニンとL-ヒスチジンからなるカルノシン、
β-アラニンと1-メチル-L-ヒスチジンからなるアンセリン、β-アラニンと3-メチル-L-ヒスチジ
ンからなるバレニンの3種類が知られている。
アンセリンは遊泳能力の高いマグロやカツオなどの回遊魚類に特徴的に多く含まれている
のに対し、近海魚にはほとんど含まれていない。さらに、アンセリンは沖縄の「鰹湯」のよ
うな風邪や食欲不振時に飲む、鰹節を使った伝統食に多く含まれていることから、その健康
機能について抗酸化作用、抗疲労作用を中心に研究が進められてきた。
#15.
複数の臨床試験で血清尿酸値上昇抑制作用を確認されている。うち1例では、血清尿酸値
が5.5 mg/dL以上7.0 mg/dL以下の健常領域である男女80名をランダムに2群に分け、プラセ
ボ錠剤、もしくはアンセリンを含む錠剤(アンセリン50 mg/日)のいずれかを12週間継続摂取
させ、摂取開始日、4、8、12週間後の血清尿酸値を評価した。その結果、摂取4週間後と12
週間後において、アンセリン摂取群ではプラセボ群と比べ、血清尿酸値が有意に低値となる
ことを確認されている。
#16.
3.多職種連携から考える高尿酸血症・痛風患者への指導
#17.
医師の役割 多職種連携とは「質の高い医療サービスの提供を目指し、異なる職種のスタッフが各々の
専門性を活かしながら同一の目標に向かった連携」と定義されている。
痛風・高尿酸血症の治療は基本的に外来診療であり、入退院や介護といった問題とはなじ
みが薄いイメージがある。ゆえに多職種で連携して介入する余地が乏しいと思われがちであ
るが、そのことは多職種連携が不必要であることを意味しない。
各専門職は基本的に対等の立場であり、それぞれの役割と繋がりを明確にしていくことが求められている。その関係性の中で医師はスタッフの一人として高い専門性を発揮すると同時に、全体を統括していくことが必要である。
#18.
看護師の役割 痛風・高尿酸血症の治療では患者の多くが30代~50代の働き盛りの男性であることから中
断率が高いと言われている。また生涯にわたる継続治療が必要なことから生活習慣の改善や
服薬アドヒアランス向上の適切な指導が重要になる。
外来診療という短い時間で患者像を捉え疾患の理解・知識をいかに読み取り指導すること
が重要となるが、患者の発言や治療行動を把握し必要に応じ多職種に繋ぐことも看護師の役
割である。
#19.
管理栄養士の役割 高尿酸血症・痛風の患者には、治療ガイドラインで推奨されている生活習慣の是正と
して「肥満の解消」、「飲酒制限」、「プリン体や果糖の過剰摂取の回避」などを具体的な指導
内容としている。
痛風患者では健常人と比して尿pHが低くなりやすいことが報告されており、酸性尿
は尿酸の排泄を低下させることから、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでも酸性尿の患
者に対し、尿アルカリ化食品の積極的な摂取等が推奨されている。
管理栄養士としてはこういった内容で患者指導を行い各職種への情報共有を密に行うことが
肝要である。
#20.
理学療法士の役割 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』では、運動は肥満を是正し、メタボリッ
クシンドロームを改善することにより血清尿酸値を低下させることが期待されるとしてい
る。また、短時間の激しい運動では血清尿酸値が上昇するが、有酸素運動ではそれほど上昇
しないとも報告されている。激しい運動による血清尿酸値の上昇が痛風発作のトリガーとな
ることもあるため、高尿酸血症・痛風患者には低強度の有酸素運動が推奨されてきた。
しかし、無酸素運動として避けられがちであるレジスタンストレーニングにも利点がある。
成人の筋肉量は20代をピークに徐々に減少する。筋肉量の減少はADLやQOLに大きな影響を
及ぼすとともに、基礎代謝量の低下や血糖値上昇を促す。レジスタンストレーニングは筋肉
に負荷をかけてトレーニングをするため、有酸素運動では達成しにくい筋肉量の維持・増加
に繋がりADLやQOLの維持・改善をもたらし、基礎代謝量の増加も期待できる。そのため、
肥満や糖尿病の改善を目的とした場合、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用が最
も効果的であることが報告されている。
理学療法士は上記のことを含めて患者指導を行うことが必要である。
#21.
最後に ・痛風・高尿酸血症ガイドライン2022からみた治療戦略、
痛風・高尿酸血症予防における新しい選択肢及び多職種連携について最近の動向をも含めて概説した。
・痛風・高尿酸血症の治療に必須となる服薬指導や生活指導をきちんと行うことが、医師のみの手に余るのは自明である。
したがって多職種連携においてそれぞれの専門職が現場の知見を活かした介入を行うことで、より高い次元での治療目標達成が可能になると考える。