#4.
消化器がん薬物治療に関する歴史の流れ 1950年代以前:外科中心 ⇒ 切除以外の治療はほぼ無力
1950~1970年代:化学療法開始 ⇒ 5-FUなどの抗がん剤の登場
1980~1990年代:多剤併用療法 ⇒ 延命効果・奏効率が向上 内科ががん薬物療法で手も足も出ない時代から、わずかな光明が見えた?
#5.
消化器内科interventionに関する歴史の流れ 1950~1970年代:内視鏡診断 ⇒ 病変の可視化
1980年代:ERCP・EST・EIS ⇒ 治療内視鏡の登場
1990年代:RFA・TACE・ESDの登場 ⇒ 画像診断下治療の発展 内科のinterventionで、直接的にがんに対して治療介入できる可能性も。
#6.
研修医・専修医時代(2001年~2003年) 学生時代に勉強した知識とも違う臨床の知識・経験を学ぶ日々。
非常に多忙であったが、日々新しい知識・経験を積む充実した毎日。
<大学病院での研修医>
医療を行うための最新知識の習得の重要性を学ぶ。
最高レベルの医療技術を知る。
<関連病院での専修医>
自らが標準治療の実践を行えるように、日々修練する。
#7.
大学の消化器内科に入局 医者人生50年あまり。
自分が医者に成り立ての頃に手も足もでなかった病気が、医者人生の
終盤に、ある程度治る病気になっていれば医者冥利につきるじゃないか。
私の場合は、それが肝臓病だった。肝硬変であり、ウイルス肝炎であった。
君たちの場合は、それが膵癌であり、胆道癌ではないのか。
若者よ、
難治癌に挑みなさい!! 難治癌である胆膵癌に取り組むことに決める。
#8.
部位別5年相対生存率(2000年~2002年診断例) (がん情報サービス.がん統計より) THE
難治癌
#9.
(Sperti C, et al. Br J Surg. 1996; 83 (5): 625–631) 術後死亡率 15%
5年生存率 12% 手術を考慮できるような
selectionのかかった患者さんでさえ、
命がけの手術を受けるものの、
半分近くの患者さんは、
2年以内に亡くなってしまう。
#10.
(Burris HA 3rd, et al. J Clin Oncol. 1997; 15 (6): 2403–2413) 2001年にわが国で使用可能になったGEM。mPFS 2.33ヶ月、mOS 5.65ヶ月。
#11.
mPFS 2ヶ月、mOS 5ヶ月の診療現場 受診 ステージング・病理診断 インフォームド・コンセント ゲムシタビン開始 初回画像評価で腫瘍増悪 緩和治療 永眠 1か月 症状出現 2か月 2か月 症状出現からバタバタの状況。少しも気持ちが落ち着く時がない。
#12.
膵癌・胆道癌の病気の特徴 胆管、十二指腸、大腸が閉塞してしまう。
#13.
胆道ドレナージ 非切除例ではたくさんのPTBD留置。術前例では、胆汁を飲ませていた。 PTBD ERCP
#14.
消化管ステント(十二指腸ステント) イレウス管を挿入する要領で、
太くて硬いステントを口からひたすら押し込む。
途中でたわみができ、さらに狭窄を越えるのが大変。
↓
1時間近く格闘して、ステント留置できることもあれば、
できないこともある。患者さんは疲労困憊。
#15.
薬物療法 Intervention GEMしかない!!
ほぼ無力。 ERCP / PTBD
消化管ステント
↓
洗練されていないけど、
とりあえず何かできる。 どっちにする? 当然、両方やりたい!! QOLを向上するが、
予後は延長しない。 両方に精通していなければ、ベストな治療ができるはずがない!! がんをコントロールできなければ、
予後は延長しない。
#16.
25年の月日が流れて・・・(折り返し地点?)
#17.
胆膵癌の化学療法の歴史 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 2019 2021 2023 2025 GEM 膵癌 胆道癌 S1 GE FFX GnP nIRI Ola 臓器横断 PEM Entre Laro Dab
Tra GCD GCP GEM Futi S1 Pemi GC Tasu
#18.
遠隔転移を有する膵癌の標準治療 遠隔転移を有する膵癌の生存期間中央値が17.0ヶ月まで延長!!! (Ohba A, et al. J Clin Oncol. 2025 Jul 28:JCO2400936. doi: 10.1200/JCO.24.00936)
#19.
CA19-9正常化, CRP ≤ 1, 化学療法後の腫瘍縮小, 化学療法 8か月以上 Score 2-4 Score 4 当初切除不能でも、抗がん剤が著効して
適切に患者選択すれば長期生存も期待できる。 (Ushida Y, Inoue Y, Sasaki T, et al: Ann Surg Oncol. 2022; 29: 5038–5050)
#20.
GC+Durvalumab GC+Pembrolizumab ついに免疫チェックポイント阻害剤の時代が胆道癌にも到来。
薬物療法で癌を根治できる可能性が出てきた!!! (Do-Youn Oh, et al:NEJM Evid 2022; 1 (8) ) (Kelley RK, et al: Lancet 2023; 401: 1853–65) 切除不能胆道癌に対する標準治療
#21.
がん遺伝子パネル検査件数 (https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/library/statistics/) 膵癌・胆道癌は2・3番目に遺伝子パネル検査が行われている癌腫である。 膵癌 胆道癌 C-CAT(2019年6月1日~2025年8月18日)
#22.
(Pishvaian MJ, et al: Lancet Oncol. 2020; 21: 508–518) Actionable molecular alteration 26% 治療標的となる遺伝子異常にマッチした治療をすると、予後が2倍に延びる。
#23.
(Nakamura H, et al. Nat Genet. 2015; 47: 1003–1010) 胆道癌ではactionableな遺伝子
変異が約40%存在する。
胆道部位ごとに治療標的となる
遺伝子変異が異なる。 わが国で保険承認されていないものの、
有望な薬剤がどんどん出てきている。
#24.
(Chen LT, et al. ESMO Open. 2024; 9: 103647) たくさんの治療選択肢が登場してきている(本邦未承認を含む)。 1次治療でICIを使うようになると、ここは関係なくなる。 15% 5% 5% 10% <1% <1% 5% 薬剤到達率
15% ⇒ 40%
#25.
(Verdaguer H, et al. Clin Cancer Res. 2022; 28 (8): 1662–1671) エビデンスレベルの高い遺伝子異常にマッチした治療をすると予後が延長。
#26.
胆道ドレナージの方法 PTBD(経皮経肝胆道ドレナージ)
ERCPによる経乳頭ドレナージ
EUS-BD(超音波内視鏡下胆道ドレナージ) (Nakai Y, et al. Gastrointest Endosc. 2020; 92: 623–631.e1) PTBD ERCP EUS-BD 2001年が幕開けの年
#27.
悪性肝門部閉塞に対する胆道ドレナージ ERCP技術の向上とEUSの登場により、より複雑な胆道ドレナージが可能に。
#28.
バルーン内視鏡下ERCP バルーン内腸鏡の登場により、様々な術後症例のERCPが可能となった。
#29.
十二指腸ステント 大腸ステント 挙上空腸ステント 非常に簡単に、様々な腸管に消化管ステントが留置可能になった。
#30.
新型胆道鏡による胆道精査
#31.
EUSガイド下胃空腸バイパス術(本邦保険申請中)
#32.
内視鏡による胆汁漏・膵液漏への積極的介入 入院期間・ドレーン留置期間が劇的に短縮する!!! <従来> ドレーン長期留置により、乾いて固まるのを待つ。
<最近> 積極的に漏れているところをつなぐ内視鏡処置を目指す。
#33.
胆管空腸吻合部離断に伴う胆汁漏 術後6日目
#34.
DP後膵液漏に対するEUS下アプローチ 術後134日目
#35.
膵中央切除後:EUS-PD rendezvous バルーン内視鏡で
吻合部見つからず。
#36.
#37.
消化器がん薬物治療に関する歴史の流れ 1950年代以前:外科中心 ⇒ 切除以外の治療はほぼ無力
1950~1970年代:化学療法開始 ⇒ 5-FUなどの抗がん剤の登場
1980~1990年代:多剤併用療法 ⇒ 延命効果・奏効率が向上
2000~2010年代:分子標的治療 ⇒ 個別化治療の可能性
2010年代~:免疫療法 ⇒ 長期生存から根治の可能性まで
2020年代~:精密医療・AI ⇒ 大量なデータに基づく統合医療へ 薬物療法も、無力の時代から長期生存・根治の可能性が見える時代へ!
#38.
消化器内科interventionに関する歴史の流れ 1950~1970年代:内視鏡診断 ⇒ 病変の可視化
1980年代:ERCP・EST・EIS ⇒ 治療内視鏡の登場
1990年代:RFA・TACE・ESDの登場 ⇒ 画像診断下治療の発展
“内科医ががんを積極治療する時代へ”
2000年代:EUS・POEMの発展 ⇒ 微細手技の内視鏡の確立
2020年代:AI・融合画像 ⇒ 精密な診断・治療の一般化など
内科医による低侵襲治療が発展し、医療の質の均てん化を目指す時代に。
#39.
内科医として胆膵難治癌への今後の道筋 薬物療法による長期生存、そしてがんの根治
分子標的薬(ただし、獲得耐性との戦い)
免疫療法(本当に効く人の選別が課題)
個別化医療&低侵襲治療
患者さんごとのがんの特性を理解した治療
ゲノムプロファイリング・・・
がんだけを攻撃する治療
T細胞/NK細胞改変、光免疫、ワクチン・・・・
患者さんごとの経過を正確に把握して治療計画
Liquid biopsyの応用
薬物療法をサポートする低侵襲でQOLを考慮した全身管理 内科でも5年生存という
言葉を使う時代を目指して。
#40.
長期予後が得られる時代が来たら・・・ おなかを切らずに、膵癌・胆道癌を治す時代は来るのか?
治療の後遺症で苦しまない。
QOLを維持した日常生活の実現(全身管理・栄養・運動etc.)。
高血圧や糖尿病のように、がんと共存して生活する時代がくる。 残りの25年で、胆膵難治癌もそのような時代が来ることを信じて。
#41.
新規薬剤開発 低侵襲
治療 無駄のないintervention 副作用
対策 緩和治療 栄養
運動 早期発見
がんの予防 全身管理 再生医療 難治癌克服を目指して、まだまだやるべきことはたくさんある。
#42.
医者人生の選択 医療の進歩のどのポイントに自分がいるのかを知ることも重要。
医者人生50年あまり。どのような医者像を自分は目指したいのか?
治らない病気が治る病気になることを目指す(基礎研究・臨床)
目の前の患者さんにより良い医療を提供する(一般診療医として)
医療システムや医療環境を良くする(行政・ビッグデータを扱う会社)
医者としてバリバリ働いているであろう45歳前後で、何をしていたいか?
今盛り上がっている分野を選ぶか、まだ未開の分野を選ぶか。 それぞれの医者像のなかで、世の中にどうやって貢献するか。
#43.
ご清聴ありがとうございました。