#4.
急性副鼻腔炎 ウイルス性も多いため、軽症例は抗生剤なしで3日間経過観察する。改善が乏しい場合や中等症以上なら抗生剤投与を考慮する。(細菌性=抗生剤必要ではなく、細菌性の一部に抗生剤が必要。)
起因菌としては肺炎球菌・インフルエンザ菌などが多い→エンピリック治療としてはAMPCが第一選択
眼窩合併症(小児>成人)、頭蓋内合併症などに注意。 EPOS2020、鼻副鼻腔炎診療の手引き
#5.
急性副鼻腔炎眼窩合併症のポイント 小児に多い
眼科的評価が重要(視力・視野・眼球運動・眼圧など)
ChandlerのⅢ以上なら緊急手術を考慮する。(小児の骨膜下膿瘍は保存加療で改善することもあることが知られているが、私自身は基本的に手術を行なうべきと考えている。)
CTは骨条件より軟部条件の方がわかりやすいことも多い
できればMRIの評価も行う(進展範囲評価、腫瘍との鑑別など)
5 前田陽平, 端山昌樹, 猪原秀典. 日耳鼻 124:840-848,2021
#6.
Chandler分類 6 前田陽平, 端山昌樹, 猪原秀典. 日耳鼻 124:840-848,2021
#7.
眼窩骨膜下膿瘍の例 7 左の骨条件よりも、真ん中の軟部条件の方が眼窩内病変があることがわかりやすい。
一番右のMRIではレンズ状にT2で高信号の部分があり、骨膜下膿瘍が疑わしいことがわかる。
自験例
#8.
急性副鼻腔炎にmimicされた疾患を見逃さない ①片側性副鼻腔炎:歯性副鼻腔炎や腫瘍など
片側性である時点で通常の急性副鼻腔炎ではない可能性を考える
②両側性副鼻腔炎:全身性疾患(GPA/EGPA、Malignant Lymphomaなど)
GPA/EGPA:他の血管炎症状・単神経炎症状・下気道病変・ANCAなど
Malignant Lymphoma:血中LDH・可溶性IL-2受容体など
IgG4関連疾患:血中IgG4
適宜生検を行う
鼻腔粘膜にも強い炎症がある場合は特に全身性疾患を疑う いずれも慢性副鼻腔炎の原因にもなる
#9.
慢性副鼻腔炎の分類と代表的疾患 9 特発性 二次性 片側性 孤立性副鼻腔炎※、アレルギー性真菌性副鼻腔炎 両側性 片側性 両側性 好酸球性/非好酸球性副鼻腔炎・アレルギー性真菌性副鼻腔炎 副鼻腔真菌症、歯性副鼻腔炎、副鼻腔腫瘍 GPA/EGPA、Malignant Lymphoma、IgG4関連疾患など ※孤立性副鼻腔炎は除外診断。真菌・歯性・腫瘍などの鑑別が重要。
#10.
副鼻腔真菌症と浸潤型真菌症 真菌症は通常は貯留型。粘膜そのものへの感染は起こしていない。(上図)
免疫低下状態・高齢などの場合に粘膜に浸潤し、周囲に骨破壊を伴って広がる。(下図)
浸潤型への移行の可能性から原則として手術対象。
CTでは一部に石灰化を認めるのが典型的。
MRIを撮影すると菌塊部分はT2で無信号になる
https://www.hindawi.com/journals/ijoto/2013/731640/
https://radiopaedia.org/cases/invasive-fungal-sinusitis
#11.
副鼻腔腫瘍(特に内反性乳頭腫について) 副鼻腔腫瘍は良性から悪性まで多種多様だが、最も多いのは内反性乳頭腫。内反性乳頭腫は悪性化することがあるので、切除する必要がある。
MRIではT2で一部低〜等信号になることがあるのが特徴。
副鼻腔の単独病変、片側病変は注意。
腫瘍性病変を疑う場合は生検を行う。
腫瘍に対する手術は炎症に対するESSと全くコンセプトが変わる(完全切除が必要になる)ので、事前に診断もしくは予測することが重要。
11
#12.
歯性副鼻腔炎(歯性上顎洞炎) 歯根透亮像(図A)
歯根上顎洞瘻(図B)
インプラントの迷入(図C)
歯科材料の迷入(図D) 桐広樹、端山昌樹、前田陽平、 他 頭頸部外科. 28(1):39-44, 2018 歯根部・歯牙などの感染に伴う副鼻腔炎
歯科的なアプローチ(抜歯や歯内治療)と耳鼻咽喉科的なアプローチ(投薬や内視鏡手術)の両方が必要
典型的な画像として下記の4つ
#13.
AFRS(アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎) 真菌に対するⅠ型アレルギーによっておこる副鼻腔炎
副鼻腔内に真菌を含むムチンが存在し、慢性副鼻腔炎を起こす
治療としてはESSが主。内服ステロイドが奏功することもあるが、再発に注意が必要。
片側病変もしばしばみられる
中谷彩香、前田陽平 他 日耳鼻 120: 1457―1466,2017
#14.
AFRSの画像の特徴 鼻内にはポリープ
CT 軟部条件で白い
MRI T2で抜ける 中谷彩香、前田陽平 他 日耳鼻 120: 1457―1466,2017
#15.
特発性の両側性慢性副鼻腔炎 好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎というように分けるのが最近では一般的。
非好酸球性副鼻腔炎(NECRS):1型炎症
好酸球性副鼻腔炎(ECRS):2型炎症、難治性。喘息合併が多い。嗅覚障害を呈することが多い。再発が多い。最近は生物学的製剤が使えるようになってきた。JESRECスコアで診断する。厚生労働省指定難病。
#16.
好酸球性副鼻腔炎の診断:JESREC score 病側 両側 3点
鼻茸あり 2点
CTで篩骨洞優位 2点
末梢血好酸球(%)
2< ≦5 4点
5< ≦10 8点
10< 10点
合計:11点以上を示し、鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上存在した場合をDefinite(確定診断)とする 16
#17.
特発性慢性副鼻腔炎治療について 鼻噴霧ステロイド・鼻洗浄は安全かつ効果的な治療である
非好酸球性副鼻腔炎ならまずはマクロライド少量長期投与を行う。(8〜12週)マクロライド系の少量長期投与は心血管系合併症に注意
好酸球性副鼻腔炎やアレルギー性真菌性副鼻腔炎には短期間のステロイド内服投与は有効なことがある(1~2週間)。長期間のステロイド内服投与は行わない
いずれにせよ、保存加療で効果がなければ内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を考慮する。 17 EPOS2020、鼻副鼻腔炎診療の手引き
#18.
内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)について 病悩期間が長くなるほど手術後もQOLの改善が乏しいことが知られており、保存加療が無効の副鼻腔炎に対しては、(好酸球性副鼻腔炎であろうと非好酸球性副鼻腔炎であろうと)ESSを積極的に考慮する。
特に、好酸球性副鼻腔炎のESSは特に徹底的に行うことが重要。遺残隔壁の粘膜から再発するため、隔壁を遺残させない。手術が不十分になると、再発した場合に手術が不十分で再発したのか、十分に手術したとしても再発したのかがわからなくなる。
#19.
隔壁の遺残の無いESS 19 副鼻腔の隔壁がなくなっていることが重要 自験例
#20.
不十分な手術を避ける:特にECRSでは! 20 内視鏡下鼻内副鼻腔手術 医学書院より 遺残隔壁部の粘膜から再発してくる
#21.
好酸球性副鼻腔炎再発例に対する私の治療方針 21 ESS術後再発 YES 前回手術が徹底的 全身ステロイド投与
繰り返すならBiologics NO 再度ESSが原則 それでもPolyp残るなら
ESSを考慮 前田陽平, 頭頸部外科 2022 ※閉塞機転を伴う細菌感染を繰り返すようならどの段階でもESSを考慮
#22.
Biologics(生物学的製剤)について 日本では最適使用推進ガイドラインに沿って使用される。
すなわち、術後再発、もしくは手術が何らかの理由でできない場合という前提のもとで、鼻茸スコア、鼻閉スコアなどのいくつかの条件を満たした上で使われる。
日本で認可されているのはDupilumabとMepolizumab。他の2型炎症に対するBiologicsが奏功するという報告も増えてきており、今後も選択肢として増加していくだろう。
本来は金銭的な負担が大きいが、ECRSでは難病指定による公的補助が受けられる場合があり、主治医も知識を持っておくことが重要。
#23.
副鼻腔炎診療のポイント 急性副鼻腔炎でも慢性副鼻腔炎でも二次性の特殊な副鼻腔炎を見逃さないようにする。
保存加療が無効な慢性副鼻腔炎に対してはESSを積極的に考慮する。
特に好酸球性副鼻腔炎では徹底的な手術が重要。
好酸球性副鼻腔炎の再発時には再手術、Biologicsなどから適切な治療方針を選択する。
困った時は専門家にコンサルトしてください。