テキスト全文
白内障の基本概念と原因
#1. by ドクターK TODAY'S THEME 白内障を深堀りしよう! ophthalmology @doctorK1991
#2. by ドクターK TAKE HOME MESSAGES • 最も多い白内障の原因は加齢で、80歳以上なら100% • 比較的若いのに白内障があれば、基礎疾患や薬剤に 注目する • 特に、糖尿病、ステロイド、アトピー性皮膚炎、眼 外傷歴がないかは要チェック ophthalmology @doctorK1991
#3. by ドクターK 白内障とは • 水晶体が混濁する疾患の総称を白内障という • 主な原因は加齢であるが、それ以外にも疾患や薬剤によって生じる 場合がある • 症状は視力低下や霧視、羞明などがある • 点眼薬で予防を試みることもあるが、治療として超音波乳化吸引術 が主に行われる ophthalmology @doctorK1991
加齢白内障と糖尿病白内障
#4. by ドクターK 白内障の原因 • • • • • 先天性(風疹、ヘルペス、Down 症候群など) 加齢性 糖尿病 ステロイド アトピー性皮膚炎 • 眼外傷 • ぶどう膜炎 • 眼科手術の既往 • 網膜色素変性症 • 放射線 etc ここに挙げた以外にもさまざまな原因がありますが、臨床でよく見 かける白内障の原因(加齢、糖尿病、アトピー性皮膚炎、ステロイ ド、外傷)について解説していきます。 ophthalmology @doctorK1991
#5. by ドクターK 加齢白内障 • 加齢白内障は加齢以外に原因がない白内障のこと • 有病率は、50歳代で45%、60歳代で75% 70歳代で85%、80歳以上で100% 加齢白内障は80歳以上で100%と言われていますので、超高齢化社会 になればほぼ全員が罹患する疾患になります。しかし、加齢以外に 原因がないことは必ず問診で確認する必要があります。 ophthalmology @doctorK1991
#6. by ドクターK 糖尿病白内障 • 糖尿病白内障の典型例は、比較的若年者で、血糖コントロー ル不良の状態が継続して生じる。 • 特に、糖尿病若年発症、長期の糖尿病罹病期間、検査時の高 年齢、進行した糖尿病網膜症、利尿薬の使用、血糖コント ロール不良などが糖尿病白内障の頻度を高める ophthalmology @doctorK1991
アトピー白内障とステロイド白内障
#7. by ドクターK 糖尿病白内障 • 治療は白内障手術だが、術後半年~1年の糖尿病網膜症や黄斑 浮腫の発症・進展が促進されうる。 • 特に、白内障手術までの血糖コントロールが長期間不良な症 例には注意する。 糖尿病は目に様々な合併症をきたします。白内障もその一つです。 特に、長期間血糖コントロールが悪い症例のうち、内服・インスリ ンのコンプライアンスが悪いことに起因する場合は手術後点眼など でもトラブルになりうるので手術を延期することもあります。 ophthalmology @doctorK1991
#8. by ドクターK アトピー白内障 • アトピー白内障は、アトピー性皮膚炎に伴う白内障のこと • 特に、顔面の重症アトピー性皮膚炎、顔面(特に眼の)叩打 癖などがその頻度を高める アトピー白内障は顔面のアトピー性皮膚炎とその叩打癖が白内障の 発症・増悪の原因として大きいです。現在では、ステロイド剤に加 えて、タクロリムス軟膏があるので、アトピー白内障の頻度が減る と期待されています。 ophthalmology @doctorK1991
#9. by ドクターK ステロイド白内障 • ステロイド白内障は、ステロイド投与に伴う白内障のこと • 薬物による白内障としては最も頻度が多く、特に小児は成人 に比べて発症しやすいとされる • 一度発症すると、短期間で著しい視力低下をきたしうる ophthalmology @doctorK1991
外傷性白内障の種類と治療
#10. by ドクターK ステロイド白内障 • 全身投与例(ステロイドパルス療法やステロイド内服)に よって生じることが多いが、ステロイド吸入や点眼でも発症 することがある • 特に、大量のステロイドを1年間以上全身投与された症例に発 症することが多く、プレドニン®換算で10㎎/日以下での発症 は比較的稀とされる ophthalmology @doctorK1991
#11. by ドクターK 外傷性白内障 • 外傷性白内障は、外傷が原因となり起こる白内障のこと • 加齢白内障よりも若年者に多い • 基礎疾患のない、若年者で片眼性の白内障であればまず外傷 性白内障を疑う ophthalmology @doctorK1991
#12. by ドクターK 穿孔性外傷による白内障 • 外傷性白内障は、穿孔性外傷か鈍的外傷かで対応が異なる • 穿孔性外傷による白内障は、鋭利な異物が眼を穿孔し、水晶 体に飛入するため起こる • 受傷直後に白内障になり、異物も入るため感染も考慮し緊急 手術になることが多い ophthalmology @doctorK1991
仮想症例から学ぶ白内障診断
#13. by ドクターK 鈍的外傷による白内障 • 鈍的外傷による白内障は、受傷から数カ月~数年で進行する • 白内障以外にも隅角解離、Zinn小帯断裂などきたしている恐れ があり、白内障手術の難易度が上がることもある 海に近い大学病院だったので、釣り針が眼に刺さった症例が緊急で 受診することがありました。釣り針の長さ次第では白内障になり、 緊急で手術をしていました。 ophthalmology @doctorK1991
#14. by ドクターK 仮想症例① 85歳男性 主訴)両眼視力低下 現病歴) 5年ほど前より白内障と言われていたが、日常生活に支障がないため放置していた。3日 前にほとんど見えなくなり、近医を受診した。白内障が進行しており、手術加療が必要 とのことで当院受診となった。 既往歴)高血圧 視力)右)矯正で0.01、左)手動弁 所見)水晶体混濁+ ophthalmology @doctorK1991
#15. by ドクターK 診断 加齢白内障 本症例は既往歴および内服歴はないため、進行した加齢白内障であ ると予想されます。進行した白内障であれば手術の難易度が上がり ます。また、それに伴い合併症なども出る可能性があり、そのムン テラが必要です。 ophthalmology @doctorK1991
糖尿病白内障のリスクと管理
#16. by ドクターK 仮想症例② 47歳女性 主訴)両眼視力低下 現病歴) 5年前に糖尿病と診断されていたが、眼科通院はしていなかった。1カ月前より両眼視力 が低下し、ここ数日で見えなくなったため当院受診となった。 既往歴)糖尿病(HbA1c14.5%)、高血圧 視力)右)矯正で手動弁、左)手動弁 所見)水晶体混濁+ ophthalmology @doctorK1991
#17. by ドクターK 診断 糖尿病内科に血糖コントロールを依頼した後、白内障手術施行した 術後の精査で増殖前糖尿病網膜症も見つかった 糖尿病白内障および糖尿病網膜症による視力低下 本症例は糖尿病があり、進行した糖尿病網膜症、血糖コントロール不良で あったため、糖尿病白内障高リスクである。同様の所見をもつ患者は少なく ない。そのため、白内障手術に加えて、糖尿病網膜症の治療も行ったが、視 力不良な例も経験することがある。 ophthalmology @doctorK1991
#18. by ドクターK 仮想症例③ 27歳男性 主訴)右眼視力低下 現病歴) 幼少時よりアトピー性皮膚炎があった。今年に入り、アトピー性皮膚炎の症状が強くな り、顔面を叩打する癖が出てきた。徐々に視力低下を自覚していたが、最近になり右眼 が特に見えづらくなったため当院受診となった。 既往歴)アトピー性皮膚炎 視力)右)矯正で0.3、左)矯正で0.8 所見)水晶体混濁+、その他異常なし ophthalmology @doctorK1991
アトピー白内障の診断と治療
#19. by ドクターK 診断 アトピー白内障 患者は若年であり、顔面叩打癖も特に右眼が多いようであった。所見とも一 致するため、アトピー性皮膚炎に伴う白内障と診断した。叩打癖は鈍的外傷 に近く、手術の難易度が上がることも予想され注意が必要である。 ophthalmology @doctorK1991
#20. by ドクターK 仮想症例④ 10歳女児 主訴)両眼視力低下 現病歴) 2022年1月にネフローゼ症候群に対してステロイドパルス療法を施行した。1週間後より 徐々に両眼の視力低下を自覚したため当院紹介となった。 既往歴)ネフローゼ症候群 視力)右)矯正で0.5、左)矯正で0.4 所見)水晶体混濁+、その他異常なし ophthalmology @doctorK1991
#21. by ドクターK 診断 ステロイド白内障 ステロイドを全身投与した場合、特にステロイドパルス療法ではステロイド 投与量も多くなるため白内障には注意が必要です。特に、小児は成人よりも ステロイドの影響を受けやすいため、ステロイドパルス療法を施行する場合 は術後の併診は必要です。白内障の程度によっては弱視になる恐れもありま す。 ophthalmology @doctorK1991
外傷による白内障の緊急対応
#22. by ドクターK 仮想症例⑤ 32歳男性 主訴)右眼視力低下、疼痛、充血 現病歴) 今朝、釣りをしていたら、釣り針が右眼に刺さった。右眼の視力低下と疼痛、充血を認 めたため当院受診となった。 既往歴)なし 視力)右)矯正で0.4、左)1.0 所見)水晶体混濁+、軽度結膜充血、その他異常なし ophthalmology @doctorK1991
#23. by ドクターK 診断 穿孔性外傷による外傷白内障 本例は感染症まで生じていないが、穿孔性外傷では感染症をきたすことがあ るため緊急手術となることが多い。本例も感染症を危惧して白内障手術を緊 急で行った。 ophthalmology @doctorK1991
#24. by ドクターK TAKE HOME MESSAGES • 最も多い白内障の原因は加齢で、80歳以上なら100% • 比較的若いのに白内障があれば、基礎疾患や薬剤に 注目する • 特に、糖尿病、ステロイド、アトピー性皮膚炎、眼 外傷歴がないかは要チェック ophthalmology @doctorK1991
参考文献と重要メッセージ