テキスト全文
心不全の評価とLVEFの測定方法
#4. 左室駆出率(LVEF)評価法 方法 侵襲性 再現性
心臓超音波検査 低 低
心臓核医学検査 中 高
心臓CT検査 中 高
心臓カテーテル検査 高 高
心臓MRI検査(非造影) 低 高
フラミンガム基準と体重増加の評価
#5. フラミンガムうっ血性心不全診断基準 大項目 小項目 大項目あるいは小項目
発作性夜間呼吸困難あるいは起座呼吸
頸静脈怒張
ラ音聴取
心拡大
急性肺水腫
III音奔馬調律
静脈圧上昇>16cmH2O
循環時間≧25秒
肝頸静脈逆流
足の浮腫
夜間の咳
労作時呼吸困難
肝腫大
胸水
肺活量最大量から1/3低下
頻脈(心拍≧120拍/分)
治療に反応して5日で4.5kg以上体重が減少した場合
#6. 体重増加:
急性増悪入院の30日前には体重増加が認められ, 少なくとも入院の1週間前には2ポンド以上(1kg弱) の体重増加が認められていると言われる Circulation. 2007;116:1549-1554
下腿浮腫(Pitting Edema)
湿潤した皮膚
頻脈(心拍≧120拍/分;低灌流の際も+)
うっ血所見の評価法
心不全の臨床症状と聴診所見
#7. 起座呼吸:
あふれそうなコップ
臥床により末梢にうっ滞した血液が心臓に戻るため 数分以内に呼吸困難をきたす 立位 臥位 心臓 末梢静脈 心臓 末梢静脈
#8. 発作性夜間呼吸困難(PND):
末梢の組織間液の静脈還流により,臥床後数時間 を経て(主に夜中)呼吸困難をきたす
血管内 間質 The grass is looking pretty empty.
#9. 頸静脈怒張:
中心静脈圧の上昇を示唆
半座位において外頸静脈の怒張が確認される
PTEや心膜疾患,肺疾患でも認められる
#10. ラ音聴取:
‐ 教科書的には湿性/coarse crackle
‐ しかし高齢者の誤嚥性肺炎の場合
coarse crackles/rhonchi/wheeze
squeakly sound
等の連続性ラ音を呈することもあり
‐ 肺炎と心不全を区別する特異的な聴診所見はない
‐ パルスオキシメーターは有用
普段からSpO2を測定しておき、SpO2の低下を 確認する
心エコー検査の重要性と評価法
#11. Ⅲ音奔馬調律:
左心不全におけるⅢ音の感度は16-31%、特異度は95-100%
普通の心音は「どっ-と(Ⅰ-Ⅱ)」もしくはラブ-ダッ(プ)と聞こえる
Ⅲ音があると「おっ-か-さん(Ⅲ-Ⅰ-Ⅱ)」と聞こえる
Ⅳ音もあると「お-とっ-つぁ-ん(Ⅳ-Ⅰ-Ⅱ-Ⅲ)」と聞こえる
胸水・心拡大:
#12. 心拡大:胸部レントゲン写真の妥当性は? The CTR correlated with major-axis dimensions of the right ventricle and right atrium (p<0.01 for the 2 comparisons), but not with the left-side cardiac chamber dimensions (all p values >0.05).
Contribution of right-sided heart enlargement to cardiomegaly on chest roentgenogram in diastolic and systolic heart failure.
Fukuta H: Am J Cardiol. 2007 Jan 1;99(1):62-7.
#13. LVDd=52mm,LVEF=70.7%
高度MR(+),左房径拡大
BNP=342pg/ml LVDd=65mm,LVEF=41.0%
OMI(Posterior),PCI後
BNP=20.4pg/ml
#14. 心エコーの重要性と限界 心臓の大きさを直接計測できる
左室収縮の様子を知ることができる:
FSやLVEFは負荷依存性の指標であることを知っておく
左室拡張能を予測することができる
左室末期圧を予測することができる
心不全の原因に直接せまれる
術者依存性評価法であることは知っておかなければならない
(バリアンスが大きい)
心不全の診断に有用な所見と尤度比
#15. 心臓の大きさの評価
簡便性で敏感で再現性が高く定量的なものは? IVST PWT Dd Ds LV LA Ao 心エコー図法 LV Dimension/Volumes
#16. 心不全をどう評価すべきか?
簡便性で敏感で再現性が高く定量的なものは? 0 1 2 左室流入血流波形
Velocity (m/s) LV Relaxation
LV Compliance
Atrial Pressure Normal
Normal
Normal Impaired
Normal ~
Normal ~ Impaired
Impaired
0 0.15 TD僧帽弁輪部波形
Velocity (m/s) E A E’ A’ E/E’<5 E/E’<10 E/E’10 E/E’15 LVEDP
(mmHg)
#17. 心不全らしい項目 尤度比
心不全の既往(+) 5.8
発作性夜間呼吸困難 2.6
Ⅲ音の存在 11
胸部X線写真での肺うっ血 12
心電図で心房細動 3.8 心不全診断に有用な診察所見
JAMA 294(15):1944-1956 2005
#18. 患者さんが動悸息切れを訴えている
事前確率 1倍
心不全の既往あり 陽性尤度比5.8倍
心房細動あり 陽性尤度比3.8倍
心不全である確率 = 1 X 5.8 X 3.8 = 22.04倍
#19. 心不全診断に有用な診察所見
JAMA 294(15):1944-1956 2005 心不全らしくない項目 尤度比
心不全の既往(-) 0.45
労作性呼吸困難(-) 0.48
肺野のラ音 0.51
胸部X線写真での心拡大(-) 0.33
心電図異常(-) 0.64
BNP<100pg/ml 0.11
#20. 患者さんが動悸息切れを訴えている
事前確率 1倍
心不全の既往なし 陰性尤度比0.45倍
心電図異常なし 陰性尤度比0.64倍
心不全である確率 = 1 X 0.45 X 0.64 = 0.29倍
心不全の進展ステージと薬物療法
#24. ■心不全の薬物療法
どんな患者に何を使うのか
利尿薬の使用とその効果
#26. 【注意】紹介する症例は臨床症例の一部を紹介するもので、全ての症例が同様の効果を示すわけではありません(小野薬品工業株式会社)
#29. Diuretics(Loop Diuretics)
#30. 代償不全期にはほぼ使用する、しかし
ADHFにおけるLoop利尿薬の安全性および有効性を裏付ける質の高い論文はほとんどない
各国の心不全治療ガイドラインおいても、Loop利尿薬は“高度推奨”であるにも関わらず、そのエビデンスレベルは 「C」 (専門家の意見のみに基づく)
RAAS阻害薬の効果と研究結果
#31. DIG Trial
疾病背景をマッチングさせた場合、ADHF患者における高用量のLoop利尿薬使用は、心臓関連死を31%増加させた
#32. 肺動脈カテーテルの有効性研究
高度な心不全で入院した患者でフォローアップの6ヶ月間のLoop利尿薬の投与量と死亡率との間にはほぼ直線的な関係が示されている
#34. RAS Modulator
(ACEI/ARB/MRA/ARNI)
#35. HFrEF
治療が有効・有用であるというエビデンスがあり,見解が広く一致している(複数の無作為介入臨床試験/メタ解析で実証) 禁忌がなければ使うべき
HFmrEF
知見なしだが多くの循環器医は使っている
HFpEF
エビデンス・見解から有用性・有効性がそれほど確立されていない(専門家/小規模臨床試験で意見が一致) 高血圧治療薬として使用する
高齢者
Controversialで、病状に応じて調整が必要だが、既に循環器医の元を離れている場合が多い
#36. Meta-Analysis Evaluating the Effects of Renin-Angiotensin-Aldosterone System Blockade on Outcomes of Heart Failure With Preserved Ejection Fraction Am J Cardiol. 2020 Apr 15;125(8):1187-1193 Meta-Analysis(PEP-CHF、CHARM-Preserved、I-PRESERVE、TOPCAT、PARAGON-HF)
RAAS拮抗薬とプラセボの間で、全死亡および心血管系死亡率に統計的差異なし
サクビトリル-バルサルタンは、対照群(オッズ比0.73、95%信頼区間0.61〜0.87)およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(オッズ比0.80、95%信頼区間0.71〜0.91)と比較して、HF入院リスクの有意な低下と関連
β遮断薬の効果と心不全との関係
#37. 【PARAGON-HF試験】 【対象】 年齢≥50歳 HFpEF(LVEF≥45%) 4,822例
【方法】 エンレスト® vs Valsaltanの比較試験
【結果】
一次エンドポイントである心不全による入院および心血管死の減少について有意差なし
NYHA心機能分類の改善、腎機能悪化の抑制、KCCQスコア改善についてはエンレスト®を支持する結果
HFpEFは異質性の高い疾病であり、効果は均一でない
奏効する母集団を見出す必要がある(e.q. EF≤57%、女性で効果大)
#38. Prior Heart Failure Hospitalization, Clinical Outcomes, and Response to Sacubitril/Valsartan Compared With Valsartan in HFpEF J Am Coll Cardiol. 2020 Jan 28;75(3):245-254 PARAGON-HF試験のSub-Analysis
HFpEFのバルサルタンと比較したサクビトリル/バルサルタンの相対的および絶対的利益は、入院後の高リスクウィンドウで開始されたときに増幅される
#39. Renin–Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease CQ: RAS阻害薬は軽度または中程度の慢性腎臓病の進行を遅らせるが、進行した慢性腎臓病患者にお けるRAS阻害薬の 中止は、eGFRを増加させるか、その減少を遅らせる可能性が示唆されている
D: 多施設共同非盲検試験
eGFR<30ml/分の患者をRAS阻害薬中止または継続する群に無作為に割り付け
主要転帰: 3 年後のeGFR
副次転帰:ESKDの発症,eGFR の 50%以上の低下または ESKD を含む腎代替療法の開始の複合, 入院,血圧,運動 能力,QOL(生活の質)
事前に定義したサブグループを設定(年齢,eGFR,糖尿病の種類,平均動脈圧,蛋白尿の有無)
R: eGFRは中止群で12.6±0.7ml/分/1.73m2,継続群で13.3±0.6ml/1.73m2(差,-0.7,95%信頼区間 [CI]:-2.5~1.0,P=0.42)
事前に規定したサブグループによる転帰の異質性なし
C: RAS阻害薬は,長期的なeGFRの低下率に有意な群間差を認めない
#41. HFrEF
治療が有効・有用であるというエビデンスがあり,見解が広く一致している(複数の無作為介入臨床試験/メタ解析で実証) 禁忌ななければ使うべき
HFmrEF
知見なしだが、多くの循環器医は使っている
HFpEF
エビデンス・見解から有用性・有効性がそれほど確立されていない(専門家/小規模臨床試験で意見が一致)が、一部の循環器医は使っている
高齢者
Controversialで、調整が必要(減量/中止も考慮)だが、既に循環器医の元を離れている場合が多い
#42. AFとの関係: 心不全に対しβ遮断薬の効果をみたRCT
洞調律ならHFmrEFでもHFrEFと同程度の効果が期待できるがAFだと効果なし
(ESCガイドラインではHFmrEFはHFpEFとしてフォローすべきとしている) European Heart Journal, Volume 39, Issue 1, 01 January 2018, Pages 26–35
SGLT2阻害薬の効果と臨床試験
#43. <β遮断薬とHFrEF>
AFでも洞調律でもLVEFは同じように改善する
死亡率は洞調律でのみ減少する
HFpEFではLVEFの有意な改善もない European Heart Journal, Volume 39, Issue 1, 01 January 2018, Pages 26–35
#44. HFpEFとβ遮断薬 Association between use of β-blockers and outcomes in patients with heart failure and preserved ejection fraction JAMA. 2014,19:312;2008-18 5年生存率: BB+群45%、BB-群42%
全死因死亡または心不全による入院の複合アウトカムは抑制なし
HFpEF患者へのβ遮断薬治療については、さらなる検証が必要
#45. β遮断薬はすべて同じではない 心不全治療薬として使用できるβ遮断薬は、日本国内ではカルベジロールとビソプロロールだけ
心不全に使えるメトプロロールは「メトプロロール塩酸塩」のみで、国内で販売されている「メトプロロール酒石酸塩(セロケン®)」とは別のもの
#46. SGLT2-I
(New Hope for HFpEF)
#47. HFrEF
手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致している(複数の無作為介入臨床試験/メタ解析で実証) 禁忌ななければ使うべき
HFmrEF/pEF
新規治験あり、今後GL変更の可能性大
高齢者
Controversial 栄養状態に考慮が必要
#48. ■ EMPEROR-Reduced試験
心血管死+心不全による入院の複合エンドポイントの発生は,empagliflozin群361例(19.4%),プラセボ群462例 (24.7%)と有意な群間差を認めた(HR 0.75,p<0.001)
心不全の非薬物療法と運動療法
#49. ■ EMPEROR-Preserved試験
empagliflozin群は415例(13.8%)と,プラセボ群511例(17.1%)にくらべ有意に低下(HR 0.79, P<0.001) 主に心不全による入院リスクが抑制されたことによるもの
心血管死:HR 0.91
心不全による入院:HR 0.71
#50. HFrEFに対する予後改善薬の効果 死亡リスク(相対)
1.00 ┤■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 無治療
0.84 ┤■■■■■■■■■■■■■■■ ACEi(SOLVD)
0.55 ┤■■■■■■■■■■■ +β遮断薬(MERIT-HF)
0.39 ┤■■■■■■■■ +MRA(RALES)
0.33 ┤■■■■■ ARNIへ置換(PARADIGM-HF)
0.27 ┤■■■■ +SGLT2i(DAPA-HF)
#51. HFrEF(+HFmrEF)治療;実践への落とし込み 「1剤ずつ様子を見る」戦略は明確に不利
β遮断薬だけでもHR 0.66
しかし4剤揃うとHR 0.27
→ 未導入薬がある = それだけで予後を落としている
入院中に:ARNI or ACEi、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬
→ 可能な限り同時導入
→ 外来で用量最適化
#52. HFpEFに対する予後改善薬の効果 イベントリスク(CV死+HF入院)
1.00 ┤■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 無治療
0.87 ┤■■■■■■■■■■■■■■■ ARNI(PARAGON-HF)
0.77 ┤■■■■■■■■■■■■ +MRA(TOPCAT)
0.62 ┤■■■■■■■■■ +SGLT2阻害薬(EMPEROR/DELIVER)
#53. Milton Packer. Circulation. Heart Failure and a Preserved Ejection Fraction: A Side-by-Side Examination of the PARAGON-HF and EMPEROR-Preserved Trials, Volume: 144, Issue: 15, Pages: 1193-1195, DOI: (10.1161/CIRCULATIONAHA.121.056657) © 2021 American Heart Association, Inc. ■ HFpEFに対するARNiとSGLT2iの直接対比
#54. Estimating the Benefits of Combination Medical Therapy in Heart Failure with Mildly Reduced and Preserved Ejection Fraction
Circulation 2022
Combination Rx (ARNI+MRA+SGLT2i) estimated to have substantial benefits in averting clinical events across broad range of LVEF up to 60-65%.
#55. HFpEF治療;実践への落とし込み HFpEF治療の現実的優先順位(積み上げ効果は乏しい)
SGLT2阻害薬(最優先)
うっ血 → 利尿薬
高血圧 → RAS阻害薬 / ARNI
選択的にMRA(フィネレノンに期待)
心不全治療におけるリハビリテーション
#57. ■塩分制限
Reduction of dietary sodium to less than 100 mmol in heart failure (SODIUM-HF): an international, open-label, randomised, controlled trial
The lancet VOLUME 399, ISSUE 10333, P1391-1400, APRIL 09, 2022
In ambulatory patients with heart failure, a dietary intervention to reduce sodium intake did not reduce clinical events. 100 mmol ≒6g
#58. ■ ICDの適応(クラスⅠ/エビデンスレベルA)
以下のすべてを満たす患者
①冠動脈疾患(ICM:発症から 40日以上経過)またはNon-ICM ②十分な薬物治療 ③ NYHA心機能分類II度以上の心不全症状 ④ LVEF≦35% ⑤非持続性心室頻拍
■ CRTの適応(クラスⅠ/エビデンスレベルA、B)
NYHA心機能分類II度で以下のすべてを満たす
①最適な薬物治療 ② LVEF≦30% ③左脚ブロック QRS幅150ミリ秒以上 ④洞調律
NYHA 心機能分類 III/IV 度で以下のすべてを満たす
①最適な薬物治療 ② LVEF≦35% ③左脚ブロック QRS幅120ミリ秒以上 ④洞調律
#59. ■ ASVの適応(クラスⅡa/エビデンスレベルB )
ガイドラインに基づく心不全治療の最適化が行われている心不全入院患者に対する、うっ血に基づく症状軽減を目的とした治療
#60. ■ 運動療法(心リハ)の適応・効果
<クラスⅠ/エビデンスレベルA>
HFrEF患者の自覚症状の改善と運動耐容能改善を目的として,薬物療法と併用して実施
<その他クラスⅡa/エビデンスレベルB~C>
HFrEF患者におけるQOLの改善および心事故減少,生命予後改善を目的として実施
運動耐容能低下を示すHFpEF患者の運動耐容能改善を目的として実施
ICDまたはCRT-D植込み後の心不全患者の運動耐容能改善およびQOL改善効果を目的として実施する場合
薬物治療により安定した肺高血圧症患者の運動耐容能改善およびQOL改善を目的として,経験のある施設において監視下運動療法を実施
デコンディショニングの進んだ患者や身体機能の低下した患者の筋力ならびに筋持久力改善により日常生活活動やQOLの向上を目的としてレジスタンストレーニングを実施
いずれの場合も質の担保が必要とされている
#61. 4つの身体機能領域(筋力、バランス、可動性、持久力)を含む、段階的に調整された漸進的なリハビリテーション介入