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Brugada症候群の概要と心電図所見
#1. 循環器内科に紹介して欲しい Brugada症候群の⼼電図 DR .CARDIO@循環器内科
#2. ⾃⼰紹介 • DR.CARDIO • 200X年 地⽅⼤学医学部卒 • 卒業⼤学病院で臨床研修 • 循環器内科医局に⼊局 • 以降は⼤学⼈事で地⽅病院を転々とし • 現在は⼤学病院で勤務中 • 病棟医⻑として各種循環器疾患を診ております
#3. Brugada症候群(BrS)とは Ø突然の⼼室細動(VF)、⼼肺停⽌を来たす。 Ø⼼電図では右脚ブロックパターンを呈し、V1〜V3誘導でST 上昇を⽰す。 Ø明らかな器質的⼼疾患、電解質異常、QT延⻑を認めない。 Ø⽐較的若年(平均年齢57歳)で突然死を発症。 BrSは突然死する病気で、適切に専⾨医へのコンサルト が必要。
Brugada症候群の疫学とリスク評価
#4. BrSの疫学、リスク評価 • Type1 or 2、3⼼電図(後述)の有所⾒率は14.2⼈/10万⼈・年(年間0.014%) • 突然死発⽣の平均年齢は57歳 • 70歳以上の症例では⼼イベントリスクは⾮常に低く (0〜2⼈/100⼈・年)1)2)、経過観察で良い • 男性が全体の7~8割 • SCN5A遺伝⼦変異と関連 • 突然死の家族歴は10%程度 1) Kamakura T, et al. Evaluation of the necessity for cardioverterdefibrillator implantation in elderly patients with Bru- gada syndrome. Circ Arrhythm Electrophysiol 2015; 8: 785-791. 2) Conte G, , et al. Clinical characteristics, man- agement, and prognosis of elderly patients with Brugada syndrome. J Cardiovasc Electrophysiol 2014; 25: 514-519.
#5. BrSの予後は症状の有無がすべて • ⼼イベント発⽣率は •VF既往例で8〜10%/年 •失神既往例で0.5〜2%/年 •無症候例で0〜0.5%/年 我が国のBrS患者460例の予後 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン, ⽇本循環器 学会2017年改訂版
Brugada症候群の心電図タイプと診断基準
#6. Type1⼼電図 • V1〜V3誘導のj点で0.2mV以上(右 図ピンク⽮印)の上昇を⽰し • coved型(ST部分が徐々に下降し cove(⼊り江)の形を⽰す)と陰性T 波を⽰す • ⾼位(2肋間上)肋間記録も含む Arthur A.M. et al. Proposed diagnostic criteria for the Brugada syndrome consensus report. Circulation. 2002, 106,19, 2514-2519・改 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン, ⽇本循環器学会2017年改訂版
#7. Type2 、3⼼電図 • V1~3誘導のj点で0.2mV以上(右図 ピンク⽮印)の上昇を⽰し • Type2はsaddle back型(⾺の鞍の 形)でSTの終末部(トラフ、右図⾚⽮ 印)が0.1mV以上を⽰す • Type3はcoved型あるいはsaddle back型を⽰しSTのトラフが0.1mV未 満のST上昇 Arthur A.M. et al. Proposed diagnostic criteria for the Brugada syndrome consensus report. Circulation. 2002, 106,19, 2514-2519・改 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン, ⽇本循環器学会2017年改訂版
#8. 診断基準 Type1Brugada⼼電図は診断に必須 必須所⾒ 副所⾒ ⼼電図 臨床歴 A. ⾃然発⽣Type1Brugada⼼電図(正常肋間あるいは ⾼位肋間記録) A. 他の原因疾患を認めない30歳代以下の⼼房粗動、 ⼼房細動 B. 発熱により誘発されたType1Brugada⼼電図(正常 肋間あるいは⾼位肋間記録) 家族歴 C. Naチャネル遮断薬負荷試験にてType1に移⾏した Type2またはType3Brugada⼼電図 主所⾒ 臨床歴 A. 原因不明の⼼停⽌あるいはVFまたは多形性VT(⼼室 頻拍)が確認される B. 夜間苦悶様呼吸 C. 不整脈原性が疑われる失神 D. 機序や原因が不明の失神 B. BrSと確定診断されている C. 発熱時の発症、夜間就眠時発症、あるいはBrS増悪 薬物との関係が疑われる⼼臓突然死を認める D. 45歳以下の原因不明の⼼臓突然死を認め、剖検所 ⾒で原因が特定されていない 遺伝⼦検査結果(保険適⽤外) E. BrSを特定する病原性遺伝⼦変異(SCN5A)を認める 有症候性︓必須所⾒1項⽬+主所⾒1項⽬ 無症候性︓必須所⾒1項⽬のみ、副所⾒は参考とする
Brugada症候群の治療フローと管理
#9. 治療フロー︓有症候性BrS 有症候性 Type1BrS⼼電図(⾃然発⽣あるいは Naチャネル遮断薬誘発) VFストーム* ⼼肺停⽌の既往 持続性頻脈性⼼室不整脈 VF、VT、不整脈原性失 神が植え込み型除細動 器(ICD)の適応! 原因不明の 失神 不整脈原性失神 痙攣 夜間苦悶様呼吸 急性期︓イソプロテレノール (クラスⅡa、保険適⽤外) 慢性期︓キニジン(クラスⅡa) ICD (クラスⅠ) *VFストーム(VF electrical storm):VFが頻発しICDの作動あ るいは体外式除細動器の使⽤が24 時間以内に3回以上起きる状況 ICD (クラスⅡa) + 頻回の適切作動 キニジン(クラスⅡa)、シロスタゾール(クラスⅡb) ベプリジル(クラスⅡb)、アブレーション(クラスⅡb) 電気⽣理学検査(EPS) (2連期外刺激以下)での VF誘発 − 慎重な経過観察 (クラスⅡa) 遺伝性不整脈の診療に関するガイドラ イン, ⽇本循環器学会2017年改訂版
#10. 治療フロー︓無症候性BrS 無症候性 Type1BrS⼼電図(⾃然発⽣あるい はNaチャネル遮断薬誘発) Naチャネル遮断薬誘発 Type1⼼電図 ⾃然発⽣Type1⼼電図 臨床および⼼電図所⾒を考慮 (年齢・性別・家族歴・SNC5A変 異・QRS棘波・J波など) EPS(2連期外刺激以下)でのVF誘発 − 慎重な経過観察 + キニジン + ICD(クラスⅡb) 慎重な経過観察 遺伝性不整脈の診療に関するガイドラ イン, ⽇本循環器学会2017年改訂版
Brugada症候群の重要なポイントまとめ
#11. Take Home Message lTips1:0.2mV以上のST上昇を伴うcoved型⼼電図(Type1)は 診断に必須条件︕ lTips2:Type1で⼼室細動、⼼室頻拍、不整脈原性失神が植込 み型除細動器の適応︕ lTips3:70歳以上の症例では⼼停⽌リスクは低いため、経過観察 で良い。